実家を相続したらどうする?活用方法や手続きの流れ、相続税対策を解説

「実家を相続することになったけど何から手続きすれば良いかわからない」「空き家になった実家をどう活用すれば良いのだろう」と、実家の相続ではこのようなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?

実家を相続するにはいくつかの手続きと相続税対策が必要です。正しい知識がなければ損をしてしまうこともあります。

この記事では、実家の相続に関する手続きの流れや相続税対策、有効な活用方法を紹介します。

最後まで読んでご自身の相続に役立ててください。

相続した実家をどう活用するか?6つの選択肢

誰も住まなくなった実家にはいくつかの活用方法があります。

どのような方法があるのか、6つの選択肢を見ていきましょう。

相続人が住む

まず考えられる選択肢として、相続人が実家に住む方法です。

元々実家に住んでいる場合はこの方法を取る方が多いでしょう。

遠方に実家がある方でも、相続を機に移り住むケースもあります。

立地や築年数の問題もありますが、立地に不満がなければ建て替えやリフォームをして住むのも良いでしょう。

売却する

もし今後誰も住む予定がなければ売却するのも一つの方法です。

売却すれば維持費は一切不要になり、管理の手間も省けます。

空き家を維持するには固定資産税や修繕費など、金銭的な負担のほかにも定期的に手入れを行う手間もかかります。

誰も住んでいない家は傷みやすいため、窓を開けて風を通したり、カビや害虫の予防を行ったりしなければなりません。

実家が遠方だと何度も足を運ぶための時間や交通費も負担になります。

売却をする決心がすぐにつかない場合は、管理をしばらく不動産会社などに任せるのも選択肢の一つです。

賃貸住宅として貸す

法定相続人のうちの誰かが住む予定があれば、売却をせずに賃貸住宅として他人に貸し出す方法もあります。

賃貸として貸し出せば賃貸収入が入るため、実家の維持費がまかなえる可能性も出てきます。

ただし、実家が比較的新しくきれいな状態ならそのまま貸し出せますが、リフォームが必要になるケースも多いです。

実家を賃貸にするためにかかるリフォーム代は、数百万円と高額になる傾向があります。

もしリフォームに300万円がかかり、家賃が5万円にしかならないとしたら、リフォーム代を回収するのに最低でも5年かかります。

立地や家の造りによって家賃の相場は大きく変わりますが、実家が賃貸をするのに向いているか知るためには不動産会社に相談するのがおすすめです。

更地にして活用する

実家の建物が古くそのまま活用できない場合は、一度更地にしてから活用するのもおすすめです。

更地にすると活用の幅が広がり、以下のような活用ができます。

  • 駐車場経営をする
  • 賃貸アパートや貸店舗を建てて経営する
  • 更地のまま土地を人に貸し出す
  • トランクルームを設置して貸し出す
  • 資材置き場として貸し出す

いくつか例をあげましたが、これ以外にも多くの活用方法があります。

土地の運用に慣れている不動産会社なら、その土地に合った活用方法を提案してくれます。

「実家に住む予定はないけど、土地は持っておきたい」という方は、更地にして活用することを検討するのも一つの方法です。

相続放棄をする

相続する財産がほとんど価値がない不動産だけの場合は、相続放棄も検討します。

もし相続した実家を使う予定があるなら相続すれば良いですが、使う予定がないのなら安易に相続するのはリスクが伴います。

特に、田舎の山奥などの資産価値が低い土地や、買い手が付きにくい不動産には注意が必要です。

「とりあえず相続したけど、使い道がなく維持費がかかるため売却したい」と思っても、立地や資産価値によっては買い手が見つからず、何年経っても売れないケースも珍しくありません。

そこで、相続時に不要と判断ができるなら相続放棄も視野に入れるのが良いでしょう。

ただし、注意点として、相続放棄をすると対象となる不動産だけでなく、ほかの全ての財産(現金や有価証券など)も放棄することになります。

そのため、ほかに価値のある財産がある場合は慎重な判断が必要です。

また、相続放棄は相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内に行わなければなりません。

国に帰属する制度を使って手放す

不要な土地を国に引き渡す「相続土地国庫帰属制度」を利用する方法もあります。

財産を全て放棄する相続放棄と違い、相続土地国庫帰属制度は一度全てを相続した後に不要な土地を国に帰属する手続きです。

「ほかの財産は引き継ぎたいけど、土地だけ手放したい」という場合には、この制度が適しています。

売りに出してもなかなか買い手が付かない土地でも、国に帰属することが可能です。

ただし、国に引き取ってもらうにはいくつかの条件をクリアしなければなりません。

たとえば、実家の相続では建物が建っているケースがほとんどですが、解体して更地にする必要があります。

このほかにも条件があるため、法律に詳しい専門家に相談しながら進めると良いでしょう。

実家を相続する際に必要な手続き

実家を相続するときには正しい手続きを行わなければなりません。

手続きは以下の流れで行います。

  1. 遺言書を確認する
  2. 法定相続人・相続財産の調査をする
  3. 相続放棄を検討する
  4. 遺産分割協議(相続財産がマイナスの場合)
  5. 相続登記をする
  6. 相続税の申告をする

順を追って詳しく解説します。

1.遺言書を確認する

相続が発生したら最初に遺言書がないかを確認します。

遺言書は公正証書で親族に預けたり、法務局で自筆証書遺言の保管がされていたりします。

事前に親族に遺言書を託されていない場合でも、自筆の遺言書が自宅から出てくるケースも多いです。

自筆の遺言書を見つけたらその場で開封せずに、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。

検認とは、遺言書の偽造や変造を防止して内容を明確にするためのものです。

勝手に開封してしまうと5万円以下の過料が課せられます。

ただし、遺言書が公正証書になっていたり、法務局に保管されていたりする場合には検認の手続きは必要ありません。

2.法定相続人・相続財産の調査をする

次に、法定相続人が誰であるか、また相続財産がどのくらいあるのかを調査を進めます。

調査が正しくできていないと後から新たな法定相続人が発覚したり、財産の相続に漏れが生じたりします。

後から新たな法定相続人が現れれば、財産分与をもう一度最初からやり直すことになりかねません。

また、相続財産に関しても、正確な調査ができない場合は申告漏れにつながり、再び手続きが必要になります。

相続状況が複雑なほど詳しい知識が必要になり、どちらの調査も見落としが発生しやすくなります。

心配な場合は専門家に依頼するのが安心です。

後からトラブルにならないためにも、調査は漏れのないよう正確に行いましょう。

3.相続放棄を検討する(相続財産がマイナスの場合)

財産調査の結果、負債が財産を上回ることが判明した場合は、相続放棄を検討する必要があります。

故人が残した負債は、法定相続人が支払う義務を負うことになります。

相続では、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含めて全て引き継ぐ仕組みです。

なお、「限定承認」という方法を選べば、プラスの財産の範囲内で負債を支払い、残った財産があればそれを相続することが可能です。

負債がどれくらいあるのか把握できない場合には、限定承認を選ぶことでリスクを抑えることができます。

4.遺産分割協議

法定相続人の間で話し合い、誰がどの財産を引き継ぐのか相続割合を決めることを「遺産分割協議」といいます。

法律に基づいた割合でそのまま遺産を分割する場合は遺産分割協議が不要なこともありますが、たとえば法定相続人の1人が実家を単独で相続する場合には、遺産分割協議書を作成する必要があります。

特に実家を共有名義にせず、1人が相続するケースはよく見られるため、遺産分割協議が必要なケースも多いです。

遺産分割協議書の作成は自分でも可能ですが、大事な内容は漏れなく記載しないと後々のトラブルになるため注意が必要です。

法律に慣れた専門家なら見落としがちな点もアドバイスをしてくれるので、トラブル防止のために専門家への依頼をおすすめします。

5.相続登記をする

実家の相続には相続登記の手続きが必要です。

相続登記とは、前所有者の名義から相続人に名義変更をすることです。

戸籍謄本や住民票などの必要書類をそろえて、法務局へ申請を行います。

以前は義務化されていなかったため、相続登記を行わないままになっている実家もありましたが、2024年4月1日より義務化されています。

そのため、相続が発生したことがわかってから3年以内に相続登記を行わなければなりません。

状況にもよりますが、想像以上に手間と時間がかかる手続きなので早めに取りかかりましょう。

自分でも申請は可能ですが、専門知識が必要なため司法書士に依頼するのが一般的です。

6.相続税の申告をする

相続税の申告と納税は故人が亡くなったと知った日から、10ヶ月以内に行わなければなりません。

そのためには法定相続人調査と財産調査を行い、遺産分割協議を申告期限前に終わらせておく必要があります。

申告時に遺産分割が済んでいない財産は、税額を軽減できる特例が受けられません。

また、10ヶ月を過ぎると罰則として加算税や延滞税が課せられます。

余分な負担を減らすためにも申告と納税は期限内に終わらせましょう。

実家を相続するときにかかる費用

実家などの不動産を相続する際には、不動産の価値に応じた費用が発生します。

以下では、どのような費用がいくらかかるのかを解説します。

相続税

相続税は相続する財産の合計額に対して課税されます。

一般的なものを例にあげると、次のようなものが課税対象です。

  • 現金
  • 預貯金
  • 有価証券
  • 不動産
  • 宝石や美術品

相続税を計算する際には控除額が決められており、「3,000万円+600万円 × 法定相続人の数」で計算が可能です。

法定相続人が3人なら「3,000万円+600万円 × 3人=4,800万円」で、控除額は4,800万円となります。

法定相続人が3人のケースでは、相続財産が4,800万円以下の場合には相続税はかかりません。

相続財産から控除額を引いた金額が取得金額となり、取得金額に対して相続税が課税されます。

財産が5,000万円なら「5,000万円ー4,800万円=200万円」で200万円が課税対象です。

取得金額によって課税される税率は異なります。

以下の表を参考にして税額の計算に役立ててください。

取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超~3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超~5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超~1億円以下 30% 700万円

登録免許税

登録免許税とは、不動産の相続登記(名義変更)をする際に発生する税金です。

税額は不動産の評価額の0.4%となります。

評価額が1,000万円の実家なら「1,000万円 × 0.4%=4万円」の計算で、登録免許税は4万円です。

実家の評価額は毎年4月頃に送られてくる固定資産税通知書に記載されています。

通知書が見当たらない場合は、役所で取得できる固定資産評価証明書で確認ができます。

相続した実家の相続税対策

実家の相続でかかる税金は特例措置が適用されれば税額を下げられます。

3つの相続税対策を紹介するので、ご自身の相続が特例を受けられるケースに当てはまるかを確認してみましょう。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、故人が住居や事業のために使っていた土地を相続する際に、相続税評価額を軽減できる特例です。

故人が実家を住居として使用していた場合は80%の軽減率、賃貸の事業で使用していた場合は、貸付事業用宅地とされ、50%(貸付事業用宅地以外は80%)の軽減率となっています。

また、特例を受けられる実家の面積も住宅なら330㎡までと上限が決まっています。(賃貸事業用宅地の場合は200㎡、賃貸事業以外の宅地の場合は400㎡)

しかし、全ての相続人がこの特例を受けられる訳ではなく、対象者と満たすべき要件が国税庁の『No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)』に以下表の様に定められています。

自身が該当するかどうかを確認してみましょう。

※注釈については国税庁の『No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)』の上記表下にある注釈を確認ください。

相続財産を売却したときの取得費の加算特例

相続で得た財産を一定期間内に売却した場合には、相続税額の一部を取得費として加算して譲渡益を減らすことが可能です。

譲渡益は売却額から取得費を引いたもので、譲渡益に対して税金がかかるため、取得費を増やすことで税額が下げられます。

特例が適用される要件は、次のとおりです。

  • 相続や遺言書によって譲られた財産である
  • その財産の取得時に相続税がかかっている
  • その財産を相続税の申告期限の翌日から3年以内に譲渡している

譲り受けた不動産が高値で売れた際に、税額が高くなるのを防げます。

空き家の3000万円特別控除

相続後に空き家になっている実家を売却すると、3,000万円までを特別控除できます。

売却したときの譲渡益から3,000万円を引けるため、売ったときの利益が3,000万円以下なら所得税はかかりません。

以下の要件に全て当てはまると控除が可能です。

  • 昭和56年5月31日以前に建てられた家である
  • マンションのように一棟の建物内が2つ以上に別れた区分所有建物登記がされていない
  • 相続開始の直前に故人以外は住んでいなかった
  • 令和9年12月31日までに売却している

ただし、3,000万円の特別控除は、取得費の加算特例とは併用ができません。

実家の相続でやってはいけない注意点

実家を相続する際にやってはいけないことがあります。

知らずに失敗したということにならないよう注意が必要です。

解体すると後悔するケースがある

実家を解体して更地にするのは慎重に検討しましょう。

更地にしてしまうと住宅用地の特例を受けられなくなり、固定資産税が上がってしまいます。

固定資産税が最大6倍になるともいわれていますが、実際は3~4倍程度上がるケースが多いようです。

また、建築基準法により一度建物を取り壊してしまうと建物の面積の制限を受け、同じ広さの家を建てられない場合もあります。

昔は建築ができたとしても、現在の建築基準法では再建自体が認められない土地も存在します。

再建不可の土地と認定されてしまうと住宅用地としての価値を失い、売却も難しくなるため注意しましょう。

放置すると特定空き家に指定される

空き家のメンテナンスを怠り、倒壊の恐れや景観を損なうなどの害がある物件は、自治体から特定空き家に指定されます。

特定空き家に指定されると住宅が建っていても更地と同様の扱いになり、固定資産税が最大6倍にまで上がってしまいます。

空き家を維持するには周囲に迷惑をかけないよう定期的なメンテナンスが必要です。

自治体から勧告を受けた後も改善を行わず放置を続ければ、強制的に取り壊しが入る可能性もあります。

共有名義はトラブルになりやすい

法定相続どおりに遺産分割をする場合は、実家を法定相続人全員の共有名義にすることもあるでしょう。

しかし、共有名義は後々のトラブルにつながりやすいため注意が必要です。

土地の貸し出しや売却には法定相続人全員の同意が必要になり、自分の意志だけでは進められません。

自分の所有分だけを売る方法もありますが、このケースで買い手を見つけるのは難しいことです。

次の世代の相続時にも新たな法定相続人が増えてしまい、さらに厄介な事態になりかねません。

誰も住まない実家は手放すべき?判断基準とは

空き家を持ち続けるのにも固定資産税やメンテナンス費用などの維持費がかかります。

手放すべきか迷うようなら、以下の判断基準を参考にしてください。

  • 将来誰も住む予定がない
  • 立地などが悪く活用方法がない
  • 実家が遠方にあり管理ができない
  • 特定空き家に指定された
  • 売却しないと遺産分割が進まない

これらの条件に当てはまるなら売却も検討してみましょう。

大きな決断になるため決めかねる場合は、処分以外の方法も含めて不動産会社に相談するのがおすすめです。

実家の相続のことなら静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへ

実家の相続には手続き・相続税対策・今後の活用など、行うことや決めることが多くあります。

相続の状況によっては複雑でご自身の手には負えないこともあるでしょう。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは司法書士・税理士・弁護士と連携を取り、相続に関するお悩みをノンストップで解決します。

実家の管理・運用・処分についても静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへお任せください。

相続人の方のご希望に沿えるよう、最善の方法をご提案いたします。

電話でのお問い合わせ

メールでのお問い合わせはこちら