相続手続き代行とは?生前整理から不動産売却まで丸ごと任せる方法を解説

相続

相続は人生で何度も経験するものではなく、多くの人にとって初めて向き合う複雑な手続きです。

被相続人(故人)の出生から死亡までの全ての戸籍謄本類や相続人全員の戸籍収集、相続人の確定と調査、遺産分割協議、不動産の相続登記、さらには相続税申告まで、やるべきことが膨大にあります。

相続手続き全てを自分で正確に行うには相当な労力と専門知識が必要となり、手続きの一部には期限が設けられているものもあります(たとえば相続放棄は相続開始を知った日から3か月以内、相続税申告は死亡を知った日の翌日から10か月以内など)。

こうした負担を軽減し、ミスなく確実に進めるために役立つのが「相続手続き代行」サービスです。

専門家に依頼すれば、必要書類の収集・作成や財産の調査、各種申請手続きを代行してもらえるため、自分で奔走する必要がなくなり、手続き漏れや期限超過の心配も減ります。

本記事では、相続手続きを代行できる専門家の種類とその役割、代行可能な手続き範囲、費用相場、依頼の流れや注意点を詳しく解説します。

相続のプロの力を上手に活用し、安心して相続に臨むためのポイントを確認していきましょう。

  1. 相続手続きを代行できる専門家の種類と役割
    1. 司法書士
    2. 行政書士
    3. 弁護士
    4. 税理士
    5. 不動産業者
  2. 相続手続きを代行できる範囲
    1. 生前の準備
      1. 財産や権利関係の整理
      2. 遺言書作成
      3. 財産目録の作成・不動産名義の確認
    2. 相続発生後の手続き
      1. 戸籍収集や相続人調査
      2. 相続関係説明図の作成
      3. 遺産分割協議書の作成
      4. 預貯金や株式の名義変更
      5. 保険金や年金の請求
      6. 遺品整理
      7. 相続放棄や限定承認の対応
      8. 海外財産や国外相続人が関わる場合の対応
    3. 不動産に関する手続き
      1. 相続登記(不動産の名義変更)
      2. 不動産の査定・売却代行
      3. 共有不動産の処理(売却・分割・賃貸活用)
        1. 共同売却
        2. 持分売却
        3. 現物分割
        4. 代償分割
        5. 賃貸活用
    4. 相続税の申告
      1. 相続財産の評価
      2. 相続税の計算
      3. 各種特例の適用判断
      4. 税務署への申告書提出
  3. 相続手続き代行の費用相場
    1. 戸籍収集・相続人調査、金融機関手続き代行
    2. 相続登記(不動産名義変更)
    3. 遺産分割協議書の作成
    4. 相続手続きまるごと代行
    5. 相続税申告の税理士報酬
  4. 相続手続き代行を依頼する流れ
    1. 1.初回相談・ヒアリング
    2. 2.必要書類の確認・収集
    3. 3.委任契約の締結
    4. 4.相続手続きの実施
    5. 5.完了報告・引き渡し
  5. 相続手続き代行を依頼する際に確かめておきたいこと
    1. 専門家の得意分野は何か
    2. 費用体系がわかりやすいか
    3. ワンストップ対応が可能か
    4. トラブル対応力があるか
    5. 実績があり評判が良いか
  6. 相続手続き代行を上手に活用して安心の相続を

相続手続きを代行できる専門家の種類と役割

 

相続手続きを代行できる専門家には主に以下の5種類です。

  • 司法書士
  • 行政書士
  • 弁護士
  • 税理士
  • 不動産業者

それぞれ担当できる範囲や得意分野が異なります。

対応できる相続業務 税理士 弁護士 司法書士 行政書士 △について備考
相続人の調査 ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎
相続財産の調査 ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎
相続放棄 × ⚪︎ ⚪︎ ×
遺産分割協議の作成 ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ 相続税申告がある場合のみ
相続税の申告 ⚪︎ × × 整理し登録のある弁護士
不動産の名義変更 × ⚪︎ × ほぼ司法書士に依頼
預貯金の解約払い戻し ⚪︎ ⚪︎ ⚫︎ 相続税申告がある場合のみ
有価証券の名義変更 ⚪︎ ⚪︎ ⚫︎ 相続税申告がある場合のみ
自動車の名義変更 ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ 相続税申告がある場合のみ
相続人同士の紛争解決 × ⚪︎ × 家庭裁判所提出書類のみ

※⚫︎は財産管理業務は不可

相続手続きは法律・税務・不動産といった多岐にわたる分野が絡むため、通常は複数の専門家が連携して対応することがほとんどです。

たとえば、不動産の相続登記を担う司法書士、役所提出書類の作成を担う行政書士、相続人間の争いを解決する弁護士、相続税の申告を扱う税理士、そして遺産に含まれる不動産の査定・売却を行う不動産業者など、それぞれが専門分野を活かして役割を果たします。

ここからは、それぞれの専門家が相続代行で担う主な役割について解説します。

司法書士

司法書士は登記のプロフェッショナルであり、相続手続きにおいて中心的な存在です。

特に不動産が遺産に含まれる場合には不可欠な専門家で、被相続人名義の不動産を相続人名義へ変更する相続登記(不動産の名義変更)を代行します。

相続登記に必要な資料の収集や書類作成は、司法書士が担います。

遺産に不動産が含まれるケースでは、名義変更手続きを正確に行うため司法書士への依頼が無難でしょう。

なお、司法書士事務所によっては他士業(弁護士・税理士等)と提携して遺産承継業務(相続財産の管理・処分を含む一括代行サービス)に対応しているところもあります。

行政書士

行政書士は役所提出書類作成の専門家で、相続手続きの準備段階で活躍します。

相続人調査のために必要な被相続人や相続人の戸籍謄本を役所で取得する代行や、相続財産目録の作成補助、遺産分割協議書の作成支援など、書類作成に関わる手続きをサポートしてくれる存在です。

たとえば行政書士に依頼すれば、戸籍謄本や住民票などの収集をスムーズに代行してもらうことができます。

また遺産分割協議書の文案作成も専門分野の一つであり、法的に有効な形で相続人全員の合意内容を文書化するのを手伝ってくれます。

行政書士は税務申告や登記申請そのものは扱えませんが、必要書類一式を揃える局面で頼りになる存在です。

相続人間に争いがなく、遺産に不動産が含まれないケースで費用を抑えて代行を利用したい場合、行政書士への相談は有力な選択肢と言えるでしょう。

弁護士

弁護士は相続人間の対立やトラブル解決に欠かせない専門家です。

遺産分割でもめそうな場合や、遺留分侵害額請求(取り分を侵された相続人の請求)など法的トラブルがある場合は、代理人として交渉や調停・訴訟を行えるのは弁護士だけです。

弁護士に依頼すれば、他の相続人との遺産分割協議の代理交渉から家庭裁判所での調停申立て、訴訟対応まで一任できます。

不動産の名義変更や預金解約等の基本的な手続きも弁護士は代理権を持って行えるため、相続に関するほぼ全ての手続きを幅広くカバーできる点が強みです。

ただし、登記は司法書士に依頼するのが実務上一般的です。

特に争続(相続を巡る紛争)に発展する恐れがある場合には、初めから弁護士に相談しておくと安心でしょう。

弁護士は税務にも精通していることが多く、必要に応じて税理士や司法書士とも連携しながら総合的にサポートしてくれます。

税理士

税理士は相続税の申告や節税対策を扱う税務の専門家です。

相続財産の評価額を算出し、基礎控除額や各種特例の適用を踏まえて適正な相続税額を計算し、税務署への申告書作成・提出まで一貫して代行します。

特に土地や非上場株式など評価の難しい資産が含まれる場合、税理士の専門知識が不可欠です。

税理士に依頼すれば、小規模宅地の特例(一定の要件を満たせば評価額80%減)や配偶者控除(配偶者の相続分は1億6千万まで非課税)など節税につながる特例の適用可否を判断して適切に活用し、正確な申告書を作成してくれます。

相続税申告が必要なケースでは税理士への依頼は必須です。

なお税理士は税務署等への提出書類に関してのみ戸籍類の取り寄せが可能なため、相続人調査や財産目録作成についても一定のサポートを受けられる場合があります。

不動産業者

不動産業者(宅地建物取引業者)は、相続財産の中で多くを占める不動産の活用や売却に携わる専門家です。

相続した不動産を現金化したい場合には、不動産会社が物件を査定して適正価格を算出し、売却の仲介を行います。

買主探しから契約手続き、物件の引き渡しまで一連の売却プロセスをサポートしてくれるため、不動産をスムーズに処分することが可能です。

また、不動産会社は地域の市場動向に詳しく、必要に応じて賃貸による活用や有効活用の提案を行うこともあります。

司法書士や税理士とも連携し、売却後の名義変更手続きや譲渡所得税の申告なども含めて円滑に進むよう調整してくれる点も心強いところです。

特に地元密着型の企業で実績のある不動産業者であれば、相続した不動産の管理・運用・処分まで安心して任せることができるでしょう。

相続手続きを代行できる範囲

 

相続手続き代行の対象範囲は、以下の4つです。

  • 生前の準備
  • 相続発生後の手続き
  • 不動産に関する手続き
  • 相続税の申告

専門家に依頼できる内容は場面ごとに異なります。

それぞれの局面でどのようなサポートが受けられるのかを理解しておくことで、効率的かつ安心な相続につなげることが可能です。

ここからは相続手続きを代行できる範囲について解説します。

生前の準備

相続が発生する前から専門家のサポートを受けておくことで、相続発生後のトラブルを防ぎ、手続きを円滑に進められます。

いわゆる生前対策や生前整理と呼ばれる段階で、以下のような準備をしておくことが可能です。

  • 財産や権利関係の整理
  • 遺言書作成
  • 財産目録の作成・不動産名義の確認

ここからは相続手続き代行の生前の準備について解説します。

財産や権利関係の整理

生前に自身の財産や権利関係を整理し、把握しておくことは、将来の相続に備える第一歩です。

具体的には、銀行口座・不動産・株式・保険などあらゆる資産がどこにどれだけあるのかを明確に洗い出し一覧表(財産目録)にまとめます。

一覧表にまとめることにより、相続が発生した際にご家族がスムーズに遺産を把握し、手続きを進められるようになります。

また、不動産については権利証や登記簿を確認して名義が正しく自分になっているか、共有名義になっていないかをチェックしておきましょう。

生前に財産を整理しておけば、相続人同士の誤解や思わぬ遺産漏れを防ぐことができ、相続手続き全体が円滑になります。

遺言書作成

自分の意思に沿った遺産分配を実現し、相続人間の紛争を防ぐためには、遺言書を作成しておくことが有効です。

専門家に相談すれば、遺言に盛り込みたい内容の整理から、法律に則った形式の遺言書を作るためのアドバイスを受けることができます。

遺言書によって「誰に何を相続させるか」のルールが明確になるため、残された家族が遺産分割でもめるリスクを大きく減らせます。

遺言書は自筆証書遺言であれば全文を自書しなければなりませんが、行政書士や弁護士に文案のチェックを依頼したり、公正証書遺言であれば公証人と連携して作成したりすることで、安全確実な遺言作成が可能です(公正証書遺言の場合、専門家が証人となることもできます)。

生前対策として遺言書を作成しておくことは、「相続争いを防ぐ最後のプレゼント」とも言われます。

専門家の助言を得ながら早めに準備しておくと良いでしょう。

財産目録の作成・不動産名義の確認

上記の財産整理と関連しますが、財産目録(資産一覧表)を作成しておくことも重要です。

専門家に依頼すれば、所有する財産の種類や所在を詳しく調査し、一覧表にまとめる作業を代行・サポートしてもらえます。

特に不動産については、登記簿上の名義や権利関係を事前に確認しておくことが大切です。

過去の相続登記が未了で先代の名義のまま放置されている土地建物がないか、共有状態の不動産がないか、といった点を洗い出しておくことで、いざ相続が始まった際に手続きが滞るのを防げます。

財産目録が整備され、不動産の名義も確認済みであれば、ご家族は余計な労力を割かずに手続きを進めることができるでしょう。

相続発生後の手続き

相続が発生すると、限られた期間内にやらなければならない手続きが一気に押し寄せます。

葬儀や法要で忙しい中、相続手続きまで短期間で対応するのは大変ですが、代行サービスを利用することで大幅に負担を軽減できます。

以下は、相続開始後に専門家へ依頼できる主な手続きです。

  • 戸籍収集や相続人調査
  • 相続関係説明図の作成
  • 遺産分割協議書の作成
  • 預貯金や株式の名義変更
  • 保険金や年金の請求
  • 遺品整理
  • 相続放棄や限定承認の対応
  • 海外財産や国外相続人が関わる場合の対応

ここからは相続発生後に専門家に依頼できる手続きを解説します。

戸籍収集や相続人調査

まず着手すべきなのは、相続人の確定です。

被相続人にどんな相続人がいるかを調べるために、戸籍一式の収集が必要になります。

具体的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍一式と、相続人全員の現在の戸籍謄本です。
一つの戸籍で済むケースはほとんどなく、明治時代の戸籍まで遡ることもしばしばあります。

戸籍謄本類の取り寄せは、被相続人の本籍地だけでなく転籍先や相続人各自の本籍地など複数の役所に問い合わせ・請求を行う必要があり、大きな負担です。

行政書士や司法書士に依頼すれば、役所への戸籍請求を代理で行い、必要な戸籍一式を漏れなく集めてくれます。

専門家による相続人調査を利用することで、自分で戸籍の束を追う手間や戸籍の見落としによる相続人漏れを防ぐことができます。

相続関係説明図の作成

集めた戸籍謄本類の情報をもとに、相続関係説明図を作成することも可能です。

相続関係説明図は、被相続人と全相続人の続柄を家系図のような形で図示した書面で、相続手続きの各所で役立ちます。

専門家に依頼すれば戸籍収集からこの図面の作成まで代行してもらうことが可能です。

相続関係説明図を作成して法務局で交付を受けておけば(法定相続情報証明制度の利用)、金融機関や法務局に戸籍一式を提出する代わりにこの図の写しを提出することで手続きを進められるため、何度も戸籍の束を提出する手間が省けます。

司法書士や行政書士にとって馴染みのある業務ですので、戸籍集めから一括して依頼し、作成してもらうと良いでしょう。

遺産分割協議書の作成

相続人が複数いる場合、遺産分割協議によって「誰がどの財産を相続するか」を全員で話し合い、合意内容を文書化する必要があります。

遺産分割協議で話し合った合意内容を文書化してあるのが遺産分割協議書です。

専門家は、この協議書の案文作成や形式チェックをサポートしてくれます。

行政書士や司法書士であれば法律にしたがった体裁の協議書を作成してくれますし、内容について弁護士のチェックを受けることで一層安心です。

遺産分割協議書には相続人全員の署名・実印押印が必要であり、法的に有効な形で作成しないと後々無効主張される恐れもあります。

行政書士に依頼すれば遺産分割協議書の作成支援をしてもらえますので、不安な場合は専門家の力を借りましょう。

出来あがった協議書は不動産の相続登記や預貯金の払い戻し手続きなど様々な場面で提出する重要書類ですので、正確に作成することが肝心です。

預貯金や株式の名義変更

故人名義の銀行預金や証券口座(株式等)についても、相続発生後は相続人への名義変更または解約払戻しの手続きが必要です。

銀行や証券会社ごとに提出書類や手順が異なり、相続人全員の署名押印が必要なケースも多いため、自分で各金融機関とやり取りするのは手間です。

行政書士は銀行や証券会社などの金融機関での名義変更手続きについて、委任状等を備えて代行するサービスも提供しています。

遺産分割協議書が整っていれば、その内容に従って専門家が銀行口座の解約払戻請求を行い、残高を相続人に分配するサポートをしてくれます。

また証券会社に対しては、株式等の相続手続き書類の作成提出を代行し、名義を書き換えたり売却して現金化したりする支援を行ってもらうことが可能です。

行政書士や司法書士はこうした預貯金・有価証券の解約手続きもまとめて扱ってくれることが多く、1件あたり数万円程度の費用で依頼できるのが一般的です。

保険金や年金の請求

被相続人が生命保険に加入していた場合、死亡保険金の請求手続きを行う必要があります。

また、故人が受給していた年金については支給停止の手続きや、場合によっては未支給年金(死亡月までの未払い年金)の請求手続きが必要です。

保険金や年金は基本的には相続人自身で行う手続きですが、希望すれば行政書士等が書類作成をサポートしてくれる場合があります。

保険金請求では保険会社所定の請求書に戸籍や住民票、医師の死亡診断書などを添付して提出しますが、書類不備なく速やかに請求することで受取までの時間を短縮できます。

専門家に相談すれば、必要書類の案内や記入方法の指導を受けられるでしょう。

未支給年金の請求も、年金事務所への提出書類作成を手伝ってもらうことが可能です。

いずれも請求期限があります(保険金は契約によるが3年程度、未支給年金は5年以内など)ので、早めに対処しましょう。

遺品整理

相続手続きとは直接関係しませんが、遺品整理も残されたご家族にとって大きな負担となる作業です。

故人の衣類や生活用品、家具や家財道具などを整理し、形見分けするものと処分するものに分けたり、不用品を処分したりしなくてはなりません。

特にご家族に高齢者が多い場合や、故人の住居が遠方にある場合などは、遺品整理専門の業者に依頼するケースも増えています。

遺品整理業者に依頼すれば、一軒家丸ごとであっても複数人で短期間のうちに片付けを行ってくれます。

「生前整理をしておくと良い」と言われるのは、相続発生後の遺品整理が遺族にとって精神的・肉体的に大変な作業だからです。

専門業者や便利屋と提携している士業事務所もありますので、遺品の整理や処分に困った際は紹介してもらうと安心です。

遺品整理まで含めてサポートしてくれる「相続まるごと代行サービス」も存在し、残された家族の負担軽減に一役買っています。

相続放棄や限定承認の対応

相続財産の中に借金などマイナスの財産が多い場合、相続放棄または限定承認という選択肢があります。

相続放棄とは最初から相続人でなかったことにする手続き、限定承認とはプラスの財産の範囲内で負債を清算する手続きです。

相続放棄や限定承認はいずれも家庭裁判所への申述により行いますが、期限は相続開始を知った時から3か月以内とシビアです。

専門家に依頼すれば、戸籍や財産状況の確認を踏まえた上で相続放棄すべきかアドバイスを受けられ、放棄申述書の作成から裁判所への提出まで代行してもらえます。

司法書士や弁護士は家庭裁判所に提出する放棄申述書類の作成代理も業務範囲です。

また、複数の相続人がいる場合に誰が放棄するか戦略的に判断する必要があるケースもあり、そうした相談にも応じてもらえます。

限定承認は相続人全員の共同申述が必要で手続きも複雑なため、弁護士に依頼するのが一般的です。

いずれにせよ、期限内に正確に手続きするため専門家のサポートを受けることをおすすめします。

海外財産や国外相続人が関わる場合の対応

相続財産や相続人が海外に関係する場合、手続きはさらに煩雑になります。

たとえば、被相続人が海外に銀行口座や不動産を持っていた場合、その国の法律に従った相続手続きを踏まえなければなりません。

海外の財産について現地の相続手続き(たとえば不動産のプロベート〈検認手続〉など)が必要となるケースでは、現地の弁護士や専門業者と連携する必要が出てきます。

また、戸籍や遺産分割協議書等を外国で使うには翻訳・公証・領事認証といったプロセスを経なくてはなりません。

たとえば国外の不動産を相続登記するには、現地の言語に翻訳された宣誓供述書や死亡証明書、遺産分割協議書の翻訳文などが要求されるケースがあります。

専門家に依頼すれば、こうした翻訳手配や各種証明取得も含めてサポートが受けられます。

海外在住の相続人がいる場合も、委任状の取り交わしや在留証明の取得など手続きが必要になるため、国際相続に明るい専門家に相談すると安心です。

国内だけでは完結しない相続案件では、経験豊富な専門家の助力によってスムーズに進められるでしょう。

不動産に関する手続き

不動産は相続財産の中でも特に手続きが多岐にわたり、専門家の支援が欠かせない分野です。

不動産の相続登記は2024年(令和6年)4月1日の法改正により義務化され、迅速な対応が求められるようになりました。

第七十六条の二(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

引用元:不動産登記法 | 第76条の2

また、相続した不動産をどう分けるか・処分するかは相続人にとって大きな問題です。

不動産に関する手続きで、相続手続きを代行してもらえるのは以下の3つです。

  • 相続登記(不動産の名義変更)
  • 不動産の査定・売却代行
  • 共有不動産の処理(売却・分割・賃貸活用)

ここでは、不動産に関する主な相続代行サービスの内容を確認します。

相続登記(不動産の名義変更)

相続によって取得した不動産の名義変更(所有権移転登記)は、2024年の法改正により義務化されました。

相続人が不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請をしなければならず、怠ると10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

この相続登記手続きは司法書士の専門分野であり、必要書類も多く複雑になりがちなため、ほとんどのケースで司法書士に依頼するのが一般的です。

司法書士に依頼すれば、戸籍・住民票・固定資産評価証明書などの必要書類を確認・収集し、遺産分割協議書に従った登記申請書を作成して提出まで代行してくれます。

不動産の数が多かったり相続人が多数いたりする場合でも、専門家が漏れなく手続きを進めてくれるため安心です。

なお、義務化に伴い相続登記を怠ると不動産の売却や担保設定が困難になるだけでなく、所有者不明土地の一因となり得るため注意が必要です。

相続登記は早めに司法書士へ相談し、期限内に完了させましょう。

不動産の査定・売却代行

相続した不動産を手放して現金化したい場合、不動産会社による査定・売却代行サービスを利用できます。

遺産に占める不動産の評価額は大きいことが多く、適正価格で売却するには専門的な査定が欠かせません。

不動産業者に依頼すれば、物件の現地調査や市場動向の分析を行い、妥当な査定価格を提示してくれます。

その上で、不動産仲介のプロとして広告掲載から買主探し、内覧対応、価格交渉、売買契約の締結、物件の引き渡しまで一連の売却手続きをサポートしてもらうことが可能です。

司法書士とも連携し、売却後の所有権移転登記(買主への名義変更)も滞りなく進めます。

不動産を売却して得た代金は遺産分割協議で定めた割合に応じて各相続人に分配されます。

専門家の助けを借りれば、市場に精通した適切な売却戦略のもと、相続不動産を円滑に現金化することが可能です。

不動産の種類(戸建てかマンションか土地のみか)や状態によっては、売却ではなく賃貸に出すことで継続収入を得る選択肢もあります。

こうした活用方法についても不動産会社と相談しながら決めると良いでしょう。

共有不動産の処理(売却・分割・賃貸活用)

相続によって不動産を共有名義で取得するケースも少なくありません(例:兄弟で父の家を共有相続した等)。

共有不動産は、相続人全員の合意がないと扱いが難しいものです。

専門家の助けを借りながら次のような解決策を検討できます。

  • 共同売却
  • 持分売却
  • 現物分割
  • 代償分割
  • 賃貸活用

このように共有不動産の処理方法はいくつかありますが、いずれにせよ相続人全員の合意形成が重要です。

専門家は法律面・税務面から各方法のメリット・デメリットを説明し、相続人間の話し合いをサポートしてくれます。

どうしても話し合いで解決できない場合は、弁護士を通じて共有物分割請求訴訟(裁判所で強制的に共有関係を解消する手続き)を行うことも考えられます。

共有不動産の問題は専門家の知恵を借りながら、相続人間で最善の落とし所を見つけることが大切です。

共同売却

共有者全員で協力して不動産全体を売却し、売却代金を持分に応じて分配する方法です。

共有者間で「売却して現金化する」意思が一致すれば、不動産業者が買主を探し契約まで進めてくれます(この際、全員の同意が必要)。

共有者全員での売却が成立すれば、遺産分割を実質的に完了できます。

持分売却

どうしても共有者の一人が不動産を手放したくない場合、自分の持分だけを他の共有者または第三者に売却することも可能です。

ただし第三者に持分を売却すると引き続き共有関係が残るため、新たなトラブルを生む可能性があります。

共有持分の買取業者なども存在しますが、できれば他の共有者に買い取ってもらうのが円満でしょう。

現物分割

不動産を物理的に分割できる場合は、筆を分けて各相続人の単独所有にする方法です。

土地であれば分筆し、建物であれば区分所有や床面積按分で分割することが考えられます。

ただし現実には土地の形状や法規制上、綺麗に分けられない場合も多いです。

代償分割

共有状態を解消するため、一人が不動産を単独取得し、他の相続人には代償金(持分に相当する金銭)を支払う方法です。

相続人の一人に資力があれば有力な手段で、不動産は単独所有になるため後々の管理処分が容易になります。

賃貸活用

共有のまま賃貸物件として第三者に貸し出し、得られた家賃収入を相続人間で配分する方法です。

売却せず資産として保有しつつ、収益を分け合う形ですが、物件管理の合意や収入配分で揉めないよう事前にルールを決めておく必要があります。

相続税の申告

相続税が発生する場合(基礎控除額※を超える遺産がある場合)は、相続の開始があったことを知った日の翌日(通常は被相続人の死亡日の翌日)から10か月以内に税務署へ申告・納税しなければなりません。

申告期限があるうえ、専門的な税知識が要求されるため、税理士のサポートが重要になります。

相続税申告において専門家が代行できる主な業務は以下の4つです。

  • 相続財産の評価
  • 相続税の計算
  • 各種特例の適用判断
  • 税務署への申告書提出

ここからは相続税申告において専門家が代行できる主な業務について解説します。

※基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数。遺産がこの額以下なら申告不要です。

相続財産の評価

税理士は、相続財産の種類ごとに適正な評価額を算出します。

現預金のように額面がはっきりしているものはともかく、問題は不動産や株式など評価が複雑な資産です。

不動産の場合、国税庁の路線価等を用いて評価額を計算しますが、土地の形状や利用区分によって細かい調整が必要です。

税理士は専門知識を駆使してこうした不動産評価を行い、適切な評価額を導き出します。

また、非上場株式についても会社の純資産価値等から評価額を計算します。

財産評価を誤ると税額も狂ってしまうため、税理士のチェックは欠かせません。

相続税の手続きが必要な方は、迷わず税理士へ相談してください。

とくに不動産評価や準確定申告がある場合は、専門的な助言が役立ちます。

相続税の計算

財産評価が定まったら、各相続人の取得財産に基づいて相続税額の計算を行います。

税理士は税法に基づき、基礎控除や各種非課税枠(生命保険金の非課税枠など)を適用した課税遺産総額を計算し、法定相続分に応ずる税額を算出します。

その上で、実際の遺産分割に従った配分での納付税額を計算する流れです。

この過程は税率構造が累進的であるため複雑です。

さらに、配偶者の取得分については配偶者控除として1億6,000万円まで非課税になる特例があるため、多くの場合で配偶者に相続させた方が節税になります。

税理士は配偶者控除などを踏まえて分割シミュレーションを行い、節税できる分割案の提案まで行ってくれることがあります。

こうして計算された相続税額に基づき、相続人ごとの納付額も決定することで相続税の計算は完了です。

相続税は基本的に現金一括納付ですが、納税資金が足りない場合は物納や延納の検討も必要です。

税理士は延納申請手続き等についても助言してくれるでしょう。

各種特例の適用判断

相続税には、要件を満たせば税額が大きく減る各種特例制度があります。

代表的なものが、被相続人の居住用宅地等の評価を最大80%減額できる小規模宅地等の特例や、配偶者には配偶者が実際に取得した財産のうち、①1億6千万円 または ②法定相続分 のどちらか多い額までは非課税になる配偶者控除です。

そのほか、農地を相続した場合の納税猶予制度や、一定の事業用資産を相続した場合の特別控除など、数多くの特例があります。

税理士は被相続人や相続人の状況、財産の内訳を精査し、適用できる控除や特例を漏れなく適用してくれます。

特例は要件を一つでも満たさないと適用できません。

自分では気づかないものもあるため、専門家の目でチェックしてもらう価値が大いにあります。

特例の適用によって相続税が大幅に減額・免除されるケースもあり、税理士に依頼するメリットの一つとなっています。

税務署への申告書提出

税理士は最終的に相続税申告書を作成し、提出代行します。

相続税申告書は主税局所定の様式に従い、各種明細書や添付書類(戸籍、遺産分割協議書写し、不動産評価明細、生命保険金支払証明書など)を添えて管轄の税務署に提出します。

申告期限は死亡後10か月以内のため、専門家と契約する際は余裕を持って依頼することが重要です。

税理士による申告代行では、提出用の書類一式が綴じられた状態で用意されるため、相続人は最終内容を確認して署名押印するだけで済みます。

提出も税理士が代理送付または窓口提出します。

申告後、納税については金融機関での振込や現金納付となりますが、その段取りも税理士が案内してくれるため安心です。

こうして申告と納税が完了すれば、税務上の相続手続きは終了です。

なお、相続税申告の税理士報酬は一般に遺産総額の0.5〜1.0%程度が相場と言われています。

たとえば遺産総額1億円なら50万〜100万円前後、5,000万円なら25万〜50万円程度が目安です。

事前に複数の税理士から見積もりを取り、報酬額とサービス内容のバランスを比較して選ぶとよいでしょう。

相続手続き代行の費用相場

 

相続手続き代行の費用は、依頼内容や依頼先の専門家によって大きく異なります。

一部分の手続きのみを頼むのか、全てまとめて依頼するのかでも費用感は変わるものです。

以下に主なサービスの費用相場を示します(※あくまで目安です)。

  • 戸籍収集・相続人調査、金融機関手続き代行
  • 相続登記(不動産名義変更)
  • 遺産分割協議書の作成
  • 相続手続きまるごと代行
  • 相続税申告の税理士報酬

ここからは相続手続き代行のサービスごとの費用相場を解説します。

戸籍収集・相続人調査、金融機関手続き代行

戸籍一式の収集代行は数万円程度、預貯金口座の解約代行は1件あたり2~3万円程度が一般的です。

たとえば行政書士に依頼した場合、遺産分割協議書の作成支援が2~3万円程度、銀行預金の払戻手続き1件につき2~3万円程度、車の名義変更も2~3万円程度と比較的リーズナブルな設定が多いようです。

必要書類の実費(戸籍発行手数料や郵送費など)は別途負担となります。

相続登記(不動産名義変更)

司法書士に不動産登記を依頼する場合の費用相場は、1件あたり5~6万円前後です。

不動産の個数や評価額、相続人の人数によって報酬が加算されていき、物件が複数ある場合はその分費用も増えます。

登録免許税(固定資産評価額の0.4%)などの実費も必要です。

近年義務化されたこともあり、司法書士事務所によって相続登記パックのような定額プランを用意しているところもあります。

遺産分割協議書の作成

専門家に協議書の作成を依頼する場合、3~5万円程度が一般的な相場です(行政書士に依頼した場合の報酬額)。

相続人の人数や相続財産の種類が多い場合はもう少し費用がかかることもあります。

弁護士に内容チェックまで依頼する場合はさらに費用が加算されるでしょう。

公証役場で遺産分割協議証明書を作成する(全員で署名した協議書を公証人に認証してもらう)場合は、別途公証人手数料が数万円かかります。

相続手続きまるごと代行

司法書士事務所等が提供する相続登記フルプラン(相続人調査から不動産登記・預金名義変更までまとめて代行)の場合、費用相場は20~50万円程度とされています。

手続き内容の複雑さや相続人の数が多いと追加費用が発生し、50万円を超えることも。

反対に、不動産が無く書類作成代行が中心の場合は20万円以下で収まることもあります。

銀行や信託銀行が提供する「相続手続き一括代行サービス」では、遺産額に応じて数十万円+遺産額の数%といった料金体系になっていることもありますので、依頼前に内訳まで確認しましょう。

相続税申告の税理士報酬

前述の通り、遺産総額の0.5~1.0%が目安です。

たとえば遺産総額1億円なら50万~100万円、5,000万円なら25万~50万円ほどとなります。

ただし土地が多数ある・非上場株がある等で評価に手間がかかる場合や、申告期限まで時間がない場合などは報酬が割増しになる場合もあります。

逆に遺産額が小さい場合は最低報酬額が設定されていることも。

税理士法人の中には定額プランを掲げている所もありますが、多くは遺産額や相続人の数に応じた料率で報酬を算定します。

契約前に見積もりをもらい、報酬に何が含まれるか(書面添付費用や戸籍収集代行費用が含まれるか等)も確認しましょう。

相続手続き代行を依頼する流れ

 

相続手続き代行を依頼するときは、初回の相談から契約締結、そして実際の手続き遂行、最後に完了報告まで一連の流れがあります。

各ステップをあらかじめ知っておけば、依頼中も安心して状況を把握できます。

相続手続き代行を依頼する流れは以下の通りです。

  1. 初回相談・ヒアリング
  2. 必要書類の確認・収集
  3. 委任契約の締結
  4. 相続手続きの実施
  5. 完了報告・引き渡し

ここからは相続手続き代行を依頼する流れについて解説します。

1.初回相談・ヒアリング

まずは専門家に連絡し、相続手続き代行サービスを利用したい旨を相談します。

多くの事務所では初回相談を無料で実施中です。

この相談で、相続人の続柄や人数、遺産の概要(不動産の有無・預貯金額・負債の有無など)、遺言書の有無、相続人同士の関係性(揉めているかどうか)などをヒアリングされます。

こちらからは、どの範囲を代行してほしいのか希望を伝えます(例:「戸籍集めと登記だけお願いしたい」「すべて任せたい」等)。

専門家は話を伺った上で、想定される手続きや必要書類、だいたいの費用感などを教えてくれることがほとんどです。

相続登記フルプラン等の具体的なサービス内容もここで説明されるでしょう。

疑問や不安があれば遠慮なく質問します。

相談後、正式に依頼するかどうかを検討します。

他の事務所の意見も聞いてみたい場合は、この段階でセカンドオピニオンを求めるのもよいでしょう。

2.必要書類の確認・収集

依頼することを決めたら、手続きに必要な書類を確認します。

すでに手元にある書類(被相続人の出生から死亡までの戸籍、預金通帳、不動産権利証、遺言書など)は専門家に提示し、不足している書類があればどちらが集めるか打ち合わせます。

戸籍類や住民票、印鑑証明書などは専門家が代行取得可能です。

金融機関の残高証明書や不動産の評価証明書が必要な場合もありますので、この段階でリストアップします。

専門家が書類収集を代行する場合、後ほど実費(役所手数料や郵送代等)を請求されますので了承しておきます。

必要に応じて、相続人全員の署名押印が求められる書類(委任状や遺産分割協議書)があるため、専門家からフォーマットを用意してもらい、各相続人に案内・回付する流れも確認しましょう。

3.委任契約の締結

正式に依頼する内容と費用が決まったら、委任契約を締結します。

契約書には、専門家が代行する手続きの範囲や報酬額、実費の精算方法、支払い時期などが明記される仕組みです。

合わせて、専門家が代理人として各種手続きを行うための委任状や、金融機関への届出用書類などにも署名押印します。

このとき、専門家からプライバシーポリシーや守秘義務についての説明もあるでしょう。

費用の支払いについては、契約時に着手金を支払う場合と、完了時にまとめて支払う場合があります。

どのタイミングでいくら支払うかも契約時に確認しておきます。

契約書にサインしたら正式な依頼関係が成立し、いよいよ相続手続き代行業務がスタートです。

4.相続手続きの実施

契約内容に従って、専門家が具体的な相続手続きを進めます。

司法書士であれば戸籍収集~相続関係説明図作成~登記申請を行い、行政書士であれば役所から必要書類を取り寄せて遺産分割協議書等の作成を行う流れです。

税理士には財産資料を提供し、相続税申告書の作成に着手してもらいます。

多岐にわたる場合は各分野の専門家が分担して同時並行で進めることもあります。

たとえば不動産登記の準備と並行して銀行手続きを進め、税申告も進める、といった具合です。

相続まるごと代行サービスの場合、司法書士事務所などが窓口となり、提携の税理士・弁護士・不動産会社と協力しながらワンストップで手続きを進めます。

適宜、進捗状況の報告を受けながら、不明点があれば連絡を取り合います。

相続人自身で対応すべき事項(たとえば生命保険金の受取など専門家が代理できないもの)が残っている場合は、その対応方法の指示を受けることも。

紛争が発生した場合は、弁護士が代理人として交渉・調停に臨みます。

基本的には専門家に任せつつ、要所要所で書類への署名や本人確認などの協力をする形になります。

5.完了報告・引き渡し

全ての手続きが完了したら、専門家から完了報告を受けます。

具体的には、不動産の相続登記が完了した場合は新しい権利証(登記識別情報通知)や登記事項証明書、預貯金の払戻しが完了した場合は口座残高がゼロになった通帳や解約証明書、相続税の申告が完了した場合は申告書控え一式、といった具合に成果物となる書類が手元に戻ってきます。

司法書士からは相続登記完了証や法定相続情報一覧図の写し、行政書士からは作成した遺産分割協議書、税理士からは相続税申告書の控えと領収証書(納税証明)等を受け取る流れです。

専門家から受け取った書類を相続人間で確認し、問題がなければ専門家への報酬を支払います(着手金を除く残額の支払い)。

最後に、今回の相続手続きで取得・整理した書類一式を受け取ります。

戸籍の束や分割協議書の原本、各種完了書類などは将来のため大切に保管しましょう。

以上で一連の相続手続き代行サービスの利用は終了です。

専門家によっては、「今後名義変更した不動産を売却するときもサポートできます」「確定申告が必要な場合は別途相談ください」などとアフターフォローの案内がある場合もあります。

相続手続き代行を依頼する際に確かめておきたいこと

 

相続手続き代行を依頼する際には、「誰に依頼するか」「費用は適正か」「ワンストップ対応か」など、事前にいくつか確認しておきたいポイントがあります。

信頼できる専門家を選ぶことで、安心して任せることができます。

以下はチェックすべき項目です。

  • 専門家の得意分野は何か
  • 費用体系がわかりやすいか
  • ワンストップ対応が可能か
  • トラブル対応力があるか
  • 実績があり評判が良いか

ここからは相続手続き代行を依頼する際に確かめておきたいことについて解説します。

専門家の得意分野は何か

まず、依頼しようとしているその専門家(または事務所)が何を得意としているかを把握しましょう。

相続手続きと言っても、主に登記を扱う司法書士なのか、税務専門の税理士なのか、法律トラブルに強い弁護士なのかでサービス内容が変わります。

たとえば、「遺産に不動産が含まれるので登記を任せたい」「相続税の申告が必要なので税理士にお願いしたい」「書類収集や作成が中心だから行政書士で十分そうだ」といった具合に、自分の状況に合った専門家を選ぶことが重要です。

最近は司法書士と税理士が共同で運営する相続専門の相談窓口もあり、そのような所では登記も税申告も一括対応してもらえます。

反対に、相続人同士の争いが懸念される場合は最初から弁護士を窓口にした方がスムーズなこともあります。

各士業の業務範囲と強みを理解した上で、適材適所で依頼先を選びましょう。

費用体系がわかりやすいか

費用については不明瞭な点がないかを必ず確認します。

見積もりをもらったら、「どの業務にいくらかかって、合計いくら」なのか内訳まで理解しましょう。

特に「相続まるごとパック○○万円」など一括料金の場合、含まれる範囲(戸籍収集や不動産登記申請の登録免許税、税理士報酬などが含まれるか否か)を確認します。

不動産の個数増加や相続人追加で別途加算があるか、遺産額によって報酬率が変動するか、といった追加費用条件もチェックしましょう。

料金体系が明確で、高額すぎないかどうかは重要な判断基準です。

複数の事務所を比較する際は、提示された金額だけでなくサービス内容と費用のバランスを考慮します。

なお、信託銀行などでは遺産額比例の手数料を課す場合があり、士業事務所より割高になるケースも見られます。

費用に関する疑問点は契約前にすべて質問し、納得してから依頼するようにしましょう。

ワンストップ対応が可能か

相続手続きには複数分野の専門知識が関わるため、ワンストップで対応可能かどうかもポイントです。

ワンストップ対応とは、一つの窓口で相談すれば、必要に応じて他分野の専門家とも連携して全て処理してくれる体制を指します。

たとえば司法書士事務所で税理士や弁護士と提携している場合、依頼者はその事務所とだけやり取りすれば、登記も税申告もトラブル対応も一括して進めてもらえます。

これは依頼者にとって便利で安心です。

逆にワンストップ体制が無い場合、自分で別々に専門家を探して依頼・連絡調整する手間が生じます。

最近では、地方銀行や信託銀行でも各士業とネットワークを組んで相続ワンストップサービスを実施しているところがあります。

依頼先を選ぶ際には、「この事務所に任せれば自分の相続手続きの範囲全部をカバーしてくれるか?」を確認しましょう。

ワンストップ対応だと安心感は高いですが、その分費用がやや高くなる傾向もありますので、その点も踏まえて検討します。

トラブル対応力があるか

相続人間で意見の対立が起きたり、法的な争いに発展する可能性が少しでもあるなら、トラブル対応力のある事務所を選ぶことが大切です。

具体的には、弁護士と連携できるか(または弁護士資格者が在籍しているか)がポイントです。

司法書士や行政書士は基本的に交渉や裁判の代理はできませんので、いざ揉めた時は弁護士にバトンタッチする必要があります。

その際、最初から提携弁護士がいる事務所であればスムーズです。

「もし相続人同士でもめたら弁護士を紹介してもらえるのか?」と事前に聞いておくと安心でしょう。

事務所によっては、弁護士・税理士・司法書士がチームを組んでいるところもあります。

たとえば税理士法人内に弁護士が所属していたり、司法書士事務所が弁護士事務所と協力関係にあるケースです。

そうした体制なら、紛争が起きても途切れなくサポートが続きます。

また、遺産整理業務(遺産を預かって分配まで管理する業務)まで対応している事務所であれば、財産管理の観点からも頼りになります。

相続は感情的なトラブルに発展しやすいため、万一の対応力も事前に考慮しておきましょう。

実績があり評判が良いか

最後に、その専門家(事務所)が相続案件の取扱実績を豊富に持ち、信頼に足る人物かどうかを見極めます。

相続分野が得意で解決実績が豊富なところであれば、ノウハウが十分蓄積されており、複雑な案件でも適切に処理してもらえることが期待できます。

各事務所のホームページに実績件数や過去の事例紹介が載っている場合もあるのでチェックしてみましょう。

また、実際に相談してみての印象や、口コミ・評判も参考になります。

相談時にこちらの話を親身に聞いてくれるか、説明がわかりやすいかといった対応姿勢も重要な判断材料です。

相続手続きは数ヶ月にわたることも多いので、相性も大切です。

疑問に丁寧に答えてくれて信頼できると感じられる専門家を選びましょう。

逆に経験が浅かったりコミュニケーションに不安を感じる相手だと、手続きに時間がかかったりトラブルを招くおそれもあります。

大切な相続を任せるパートナーですから、実績と人柄両面で納得のいく専門家を選ぶことが重要です。

相続手続き代行を上手に活用して安心の相続を

 

相続手続きは煩雑で専門知識が不可欠ですが、代行サービスを上手に利用することで大幅に負担を減らし、ミスなく円滑に進めることができます。

生前準備の段階から専門家に相談しておけば、相続発生後の対応もスムーズです。

自分の状況に合った専門家を見極め、依頼する範囲や費用を事前に確認しておくことが成功の鍵となります。

特に費用面では内訳を明確にし、不明点を残さないようにしましょう。

また、一箇所で全て任せられるワンストップ対応のサービスを選べば、複数の専門家への橋渡しも不要で安心です。

代行サービスを上手に活用し、トラブルのない安心できる相続を実現しましょう。

静岡県で相続相談先をお探しの場合、静鉄不動産と各専門士業が連携する「静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター」では初回相談無料で相続手続きの代行について相談を受け付けています。

不動産会社と司法書士・税理士・弁護士ら専門家がチームを組んでワンストップで対応しています。

生前対策から相続発生後の手続き、相続不動産の売却まで一括で任せることが可能です。

専門家選びに迷ったら、このような実績あるサポート窓口に問い合わせてみるのも良いでしょう。

いずれにせよ、信頼できるプロの力を借りて、ご自身とご家族にとって最善の形で相続を乗り切ってください。

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記事監修者
司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

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