未登記建物を相続すると、登記簿に建物が登録されていないため通常の相続とは違った対応を進めなければなりません。
相続人が登記の順序や必要な資料を誤ると、建物が売れなかったり、担保に入れられなかったり、相続人同士で争いが起こったりするといった不利益が生じます。
この記事では、未登記建物を相続した際に知っておくべき知識から具体的な手続き、注意点までを解説します。
未登記建物の相続に関しては静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターまでご相談ください。
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未登記建物を相続する際の手続きの流れ

未登記建物の相続では、いきなり登記申請をすることはできません。
事実関係の確認から始め、順序どおりに手続きを進めることが重要です。
大まかな流れは、次の通りです。
- 必要な情報を揃える
- 未登記建物を相続する人を決める
- 遺産分割協議の内容を確定させる
- 建物の表題登記を行う
- 所有権保存登記を行う
順を追って未登記建物を相続する手続きの流れを確認していきましょう。
1.必要な情報を揃える
まず行うべきことは、「その建物がどのような建物なのか」を正確に把握することです。
具体的には、次のような事項を確認します。
- 所在地
- 種類(居宅・倉庫など)
- 構造(木造・鉄骨造など)
- 床面積
- 建築年月
建築当時の図面や建築確認通知書が残っていれば理想的ですが、古い建物では資料が見当たらないケースも少なくありません。
その場合は、固定資産税の納税通知書や評価証明書、現地の状況などから情報を整理します。
資料が不足している場合には、土地家屋調査士による現地測量が必要になることもあります。
この段階で情報を正確に整理しておくことが、その後の登記手続きをスムーズに進めるポイントです。
2.未登記建物を相続する人を決める
未登記建物には登記簿がないため、相続が発生しても名義の移転という手続きはできません。
そのため、まず「誰がこの建物を取得するのか」を相続人の間で決める必要があります。
相続人が複数いる場合、取得者が確定しなければ、その後の表題登記や所有権保存登記に進むことができません。
したがって、遺産分割協議の前提として、建物を単独で取得するのか、共有にするのかを明確にしておきましょう。
3.遺産分割協議の内容を確定させる
建物の取得者が決まったら、他の相続財産も含めて遺産分割協議を行います。
未登記建物であっても、遺産分割協議書には次の事項を具体的に記載します。
- 建物の所在地
- 種類・構造・床面積(可能な限り特定できる内容)
- 取得する相続人の氏名
なお、建物を特定できる表現で記載することが重要です。
相続人全員が署名押印した遺産分割協議書は、後の所有権保存登記の際に必要となります。
4.建物の表題登記を行う
未登記建物の場合、最初に行う登記は「表題登記」です。
表題登記とは、「この場所に、このような建物が存在します」と公的に登録する手続きです。
この手続きは土地家屋調査士が担当します。
- 建物の現況を調査
- 床面積などを測量
- 図面を作成
- 法務局へ申請
登録免許税はかかりませんが、測量や図面作成を依頼する費用が必要です。
なお、増改築が行われている場合など、現況と資料が一致しないケースもあります。
そのままでは登記できないため、現況を正確に反映させることが大切です。
5.所有権保存登記を行う
表題登記が完了すると、登記簿が新たに作成されます。
そのうえで行うのが「所有権保存登記」です。
これは、「この建物の所有者は誰か」を公的に示すための登記です。
相続による所有権保存登記では、主に次の書類を添付します。
- 被相続人の戸籍関係書類
- 相続人の戸籍・住民票
- 遺産分割協議書
- 固定資産評価証明書
登録免許税は、原則として固定資産評価額の0.4%です。
ただし、一定の要件を満たす住宅用家屋については、租税特別措置法第72条の2により、税率が0.15%に軽減される特例があります(令和9年3月31日までの適用)。
第72条の2(住宅用家屋の所有権の保存登記の税率の軽減)
第七十二条の二 個人が、昭和五十九年四月一日から令和九年三月三十一日までの間に住宅用の家屋で政令で定めるもの(以下第七十五条までにおいて「住宅用家屋」という。)を新築し、又は建築後使用されたことのない住宅用家屋を取得し、当該個人の居住の用に供した場合には、当該住宅用家屋の所有権の保存の登記に係る登録免許税の税率は、財務省令で定めるところにより当該住宅用家屋の新築又は取得後一年以内に登記を受けるものに限り、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、千分の一・五とする。
引用元:租税特別措置法 | 第72条の2
この登記が完了して初めて、相続人が法律上の所有者として公的に認められます。
売却や担保設定(抵当権の設定)などを行うためには、この所有権保存登記が不可欠です。
未登記建物の相続にかかる費用の目安

未登記建物の相続では、一般的な相続に比べて次のように追加で費用がかかるケースが多いです。
依頼内容や依頼を受ける側の料金体系にもよるため、費用相場は一概には言えませんが、主に次のような費用がかかってきます。
| 区分 | 内容 | 費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 土地家屋調査士報酬 | 表題登記(建物の調査・測量・図面作成・申請) | 約8万円~(※) | 建物の規模・資料の有無により変動 |
| 司法書士報酬 | 所有権保存登記(相続書類作成・申請) | 約3万円~(※) | 相続人の人数や戸籍の量により変動 |
| 登録免許税 | 所有権保存登記にかかる税金 | 固定資産評価額 × 0.4% | 例:評価額1,000万円 → 4万円 |
| 戸籍等取得費用 | 戸籍・除籍・改製原戸籍など | 数千円程度 | 通数により変動 |
| 住民票・評価証明書 | 相続人の住民票、固定資産評価証明書など | 数百円~数千円 | 自治体により異なる |
※依頼先の料金体系や行う内容によって金額が変わります。
なお、建物の資料が残っていない場合や、増改築がある場合には、測量や調査の手間が増え、その分費用が加算されることがあります。
費用は建物の状況や相続関係によって変わるので、見積もりを確認しておくことが重要です。
未登記建物を相続する際のチェックポイント

未登記建物を相続した場合、「とりあえず登記をすればよい」と思われがちですが、実際にはそれ以外にも確認しておくべき重要な点がいくつかあります。
後から問題が生じないよう、次のポイントを順番に確認していきましょう。
- 登記に必要な資料が揃っているか確認する
- 土地と建物の名義が一致しているか確認する
- 境界が確定しているか事前に確認する
- 違法増築がないか確認する
- 固定資産税の軽減措置が適用されるか確認する
- 相続後の固定資産税の変動に注意する
- 相続登記の申請義務を守る
それぞれくわしく解説します。
登記に必要な資料が揃っているか確認する
未登記建物、とくに築年数の古い建物では、建築確認通知書や図面などの資料が残っていないケースが少なくありません。
登記を行うためには、建物の所在・構造・床面積などを客観的に確認できる資料が必要になります。
資料が不足している場合には、以下のような対応が必要になります。
- 現地調査
- 関係者への聞き取り
- 補完資料の収集
資料が完全に揃っていなくても表題登記ができる場合はありますが、調査や測量に時間と費用がかかることがあるのです。
「書類が見当たらない」と分かった時点で、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
土地と建物の名義が一致しているか確認する
建物を相続しても、土地の名義が被相続人ではない場合があります。
たとえば、以下のようなケースです。
- 土地は親名義のまま
- 共有持分が整理されていない
- 別の相続が未処理
土地と建物の名義が一致していないと、売却や建替え、解体、担保設定といった手続きが進まないことがあるので、注意が必要です。
遺産分割を行う際には、建物だけでなく土地も含めて整理する必要があります。
名義関係は早めに確認しておきましょう。
境界が確定しているか事前に確認する
隣地との境界があいまいなまま解体や建替えを進めると、工事中にトラブルになることがあります。
たとえば、フェンスの位置や境界杭の有無、塀の所有権などをめぐって紛争になることがあります。
境界が未確定の場合は、土地家屋調査士に依頼して境界確認を行うのが一般的です。
費用は状況によりますが、一定の負担が生じます。
ただし、工事が止まったり、紛争になったりするリスクを考えれば、事前の確認は重要です。
違法増築がないか確認する
建物の一部を増築しているにもかかわらず、建築確認を受けていない場合、その部分が建築基準法に適合していない可能性があります。
建築基準法第6条では、一定規模の建築や増築については事前に確認を受けることが義務付けられています。
第6条(建築物の建築等に関する申請及び確認)
第六条 建築主は、第一号若しくは第二号に掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号又は第二号に規定する規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第三号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事又は建築副主事(以下「建築主事等」という。)の確認(建築副主事の確認にあつては、大規模建築物以外の建築物に係るものに限る。以下この項において同じ。)を受け、確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第一号若しくは第二号に掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号又は第二号に規定する規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第三号に掲げる建築物を建築しようとする場合も、同様とする。
引用元:建築基準法 | 第6条
違法増築があると表題登記や所有権保存登記ができないだけでなく、火災保険や住宅ローンの利用が難しくなることもあるのです。
違法状態のままでは新たな建築確認が下りず、解体や建替えが進みません。
増築を行った場合は速やかに建築確認と登記を済ませ、違法状態を解消することが重要です。
固定資産税の軽減措置が適用されるか確認する
住宅が建っている土地については、地方税法により固定資産税の課税標準が軽減される特例があります。
しかし、未登記建物が建つ土地については、土地が住宅用と認識されないため固定資産税の軽減措置を受けられないことがあります。
第349条 3の2(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)
第三百四十九条の三の二 専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(前条(第十一項を除く。)の規定の適用を受けるもの並びに空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)第十三条第二項の規定により所有者等(同法第五条に規定する所有者等をいう。以下この項において同じ。)に対し勧告がされた同法第十三条第一項に規定する管理不全空家等及び同法第二十二条第二項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第二条第二項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。以下この条、次条第一項、第三百五十二条の二第一項及び第三項並びに第三百八十四条において「住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、第三百四十九条及び前条第十一項の規定にかかわらず、当該住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の三分の一の額とする。
引用元:地方税法 | 第349条 3の2
しかし、未登記建物の場合、自治体が住宅として把握できていないことがあります。
その結果、「住宅が建っているのに更地として課税される」というケースが生じることがあるのです。
その場合、本来よりも税額が高くなってしまう可能性があります。
登記後に軽減措置が適用されることもあるため、課税明細書の内容を確認しましょう。
相続後の固定資産税の変動に注意する
固定資産税は法律に基づき、毎年1月1日現在の状況で課税されます。
第359条 (固定資産税の賦課期日)
第三百五十九条 固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。
引用元:地方税法 | 第359条
未登記建物について表題登記を行うと、建物の構造や床面積などが課税台帳に反映され、固定資産税の評価額が増減する場合があります。
また、1月1日時点で住宅として認識されていない場合、その年は軽減措置が適用されないこともあります。
第349条 3の2(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)
第三百四十九条の三の二 専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(前条(第十一項を除く。)の規定の適用を受けるもの並びに空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)第十三条第二項の規定により所有者等(同法第五条に規定する所有者等をいう。以下この項において同じ。)に対し勧告がされた同法第十三条第一項に規定する管理不全空家等及び同法第二十二条第二項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第二条第二項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。以下この条、次条第一項、第三百五十二条の二第一項及び第三項並びに第三百八十四条において「住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、第三百四十九条及び前条第十一項の規定にかかわらず、当該住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の三分の一の額とする。
引用元:地方税法 | 第349条 3の2
相続後は、翌年度の課税明細を確認し、不明点があれば市区町村へ問い合わせることが重要です。
相続登記の申請義務を守る
令和6年4月1日に施行された法改正により、相続によって取得した土地・建物については、相続開始を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。
第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
引用元:不動産登記法 | 第76条の2
また、正当な理由なく期限内に申請しない場合は10万円以下の過料を科される可能性があると法律で定められています。
第164条(過料)
第百六十四条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
引用元:不動産登記法 | 第164条
過去に発生した相続でまだ名義変更をしていない不動産も相続登記義務の対象です。
ただし、施行前の相続については経過措置(猶予期間)が設けられており、概ね令和9年(2027年)3月31日までの対応が呼びかけられています。
(Q3)相続登記の義務化は、いつから始まったのですか?
(A3)
相続登記の義務化は、令和6年4月1日から始まりました。
ただし、令和6年4月1日より前に相続したことを知った不動産も、相続登記がされていないものは、義務化の対象になります。
(Q4)いつまでに相続登記をすればいいですか?
(A4)
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をする必要があります。
また、令和6年4月1日より前に相続したことを知った不動産で、相続登記がされていないものについては、令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。
引用元: 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
未登記建物についても相続登記義務は同様に適用されるため、早めに手続きを進めましょう。
未登記建物の相続手続きは専門家に相談して確実に進めよう

未登記建物の相続では、登記や税務、保険、建築確認など複数の分野が絡みます。
自己判断で進めると資料不足や違法増築の指摘で手続きが停滞したり、過料を負担することになりかねません。
土地家屋調査士、司法書士、建築士、税理士などの専門家に早めに相談すれば、建物の現状調査や必要書類の準備、遺産分割協議のアドバイスを受けることができ、スムーズな登記申請につながります。
また、保険会社への名義変更や火災保険の継続など、専門家が関与することでトラブルを避けられるのもメリットです。
静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、未登記建物の相続に関する相談を受け付けています。
安心して相続手続きを進めるためにも、早めにご相談ください。
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