個人事業主が亡くなると、事業に関連する財産や負債も相続の対象となります。
個人事業は事業主個人と強く結びついているため、相続が発生すると相続人の生活にも影響が出やすいという特徴があります。
まずは事業を続けるのか、廃業するのかを早い段階で決めることが大切です。
そのうえで預金・売掛金・不動産などの財産と、借入金などの負債を整理し、必要な名義変更や契約の見直しを進めていきます。
この記事では、故人が個人事業主だった場合の特有の財産の扱いや、相続人にどのような意思決定や手続きが必要になるのかを解説します。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、必要に応じて税理士などの他士業とも連携しながら、個人事業主の相続に関するご相談を承っております。
個人事業主の相続についてお困りの方は、まずはお気軽にご相談ください。
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個人事業主の相続の特徴

個人事業主の場合、会社のように「事業」と「個人の財産」が分かれていません。
亡くなった方が事業で使っていた預金や設備、在庫や売掛金はもちろん、借入や未払いも含めて、基本的には相続の対象として整理する必要があります。
個人事業主の相続には、主に次のような特徴があります。
- 事業用資産も相続財産に含まれる
- 借入・未払いなどの債務も相続の対象になる
- 事業用の財産や契約が被相続人個人名義になっていることが多い
ここからは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
事業用資産も相続財産に含まれる
事業で使っていた設備や車、機械、工具、在庫、売掛金なども、亡くなった方の財産として相続の対象になります。
自宅とは別に考えられがちですが、個人事業主の場合は事業用の資産も含めて相続財産として把握しなければなりません。
事業用資産は多岐にわたるため、見落としが起こりやすい点にも注意が必要です。
不動産や備品、商品、道具、取引先から入金予定の売掛金など、種類がばらばらのため、できるだけ早く整理しておきましょう。
借入・未払いなどの債務も相続の対象になる
相続対象になるのは、財産だけではありません。
個人事業に関する借入金・未払い金などの債務もあわせて確認する必要があります。
たとえば、金融機関からの借入や仕入先への買掛金、リース料の残額、外注費や家賃の未払いなどがある場合、相続人の負担に影響します。
事業資産が多く見えても、実際には負債のほうが多いケースもあるため、まずは全体像をつかむことが欠かせません。
負債を十分に把握しないまま相続の手続きを進めると、後になって想定外の支払いが見つかるおそれがあります。
事業を継続する・しないに関係なく、通帳や借入書類、請求書、契約書などをできるだけ早めに整理して、内容を確認しておくことが大切です。
事業用の財産や契約が被相続人個人名義になっていることが多い
個人事業主の場合、銀行口座や各種契約、許認可などの名義が事業主個人になっているケースも多いです。
そのため、事業主が亡くなると、名義変更や契約の承継手続きが必要となり、相続後の事業継続に支障をきたすことがあります。
たとえば、個人名義のままになりやすいものには、次のようなものがあります。
- 事業用の入出金に使用していた預金口座
- 店舗や事務所の賃貸借契約
- リース契約
- 電話やインターネット回線
- クレジット決済や各種決済サービス
- 会計ソフトや業務システムの契約
相続人が「そのまま事業を引き継ぎたい」と考えていても、すべてをそのまま継続して使えるとは限りません。
名義変更や契約の再締結に時間がかかると、売上の入金や支払いに支障が出たり、必要な設備やサービスを利用できなくなったりするおそれがあります。
そのため、相続後は、どの契約や口座が本人名義になっているのかを整理したうえで、引き継ぎに必要な手続きを一つずつ確認していくことが求められます。
個人事業主の相続発生後に事業継続を判断する際のポイント

個人事業主が亡くなった場合、相続人は事業を続けるか、廃業するかを早めに考える必要があります。
この判断を後回しにすると、資金繰りや契約の見直し、相続手続きなどが進めにくくなり、事業そのものに支障が出るおそれがあります。
事業を継続するかどうかを考えるときは、主に次の3つの点を確認することが大切です。
- 収益性を確認する
- 後継候補の有無を確認する
- 負債の状況を確認する
ここからは、それぞれのポイントを順に見ていきましょう。
収益性を確認する
まず確認したいのは、今後も事業として成り立つ見込みがあるかどうかです。
個人事業を引き継ぐ場合、相続手続きだけでなく名義変更や契約の整理、税務の手続きなど、さまざまな負担が発生します。
手続き負担や運営負担を踏まえても、事業を承継する実益があるかを慎重に検討する必要があるのです。
たとえば、亡くなった方の人脈や技術によって成り立っていた事業の場合、相続人や親族が引き継いでも同じように利益を出すのが難しいことがあります。
一方で、固定客が多い店舗、安定した取引先がある仕事、継続収入が見込みやすい事業などは、引き継ぎやすいといえます。
収益の見通しを考えるときは、売上だけでなく、事業継続に必要な費用や人手も含めて無理なく続けられるかを見ることが大切です。
後継候補の有無を確認する
事業を続けるためには、実際に引き継ぐ人がいるかどうかも重要なポイントです。
家族や親族の中に事業を継ぎたいという方がいても、その人が事業の内容を理解しているか、実際に運営していけるかまで確認する必要があります。
取引先とのやりとりや入出金の管理、契約の見直し、必要書類の提出など、実務面で対応しなければならないことが多いためです。
そのため、後継候補がいない場合や、後継候補がいても事業承継が現実的でない場合には、廃業を前提に相続手続きを進めるほうが適切なこともあります。
事業を無理に残そうとするより、財産や契約関係を整理して区切りをつけた方が、相続人の負担を抑えられるケースもあります。
負債の状況を確認する
借入金や未払い金がどの程度あるのかは、事業を継続するか廃業するかを見極めるうえで無視できないポイントです。
たとえ事業用の財産があったとしても、その額を上回る負債がある場合、相続人に大きな負担が残ってしまうおそれがあるでしょう。
たとえば、金融機関からの借入に加え、仕入先への未払い、リース料、外注費、家賃などの支払いが重なっていると、事業を引き継いでも返済や資金繰りに追われる可能性があります。
そのため、このようなケースでは、事業を承継するかどうかだけでなく、相続そのものをどのように進めるべきかという視点からも検討しなければなりません。
負債が資産を上回る可能性がある場合には、相続放棄や限定承認を含めて早期に方針を検討する必要があります。
なお、いずれも原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に検討・申述する必要があります。
個人事業を承継する場合に確認すべき手続き

事業を引き継ぐと決めたら、できるだけ早く必要な手続きを進めることが大切です。
個人事業は、銀行口座や契約、許認可などが亡くなった方の個人名義になっていることが多くあります。
そのため、相続が始まってもそのままでは事業を続けられるわけではありません。
特に優先して確認したい手続きは、次の通りです。
- 銀行口座・契約の名義変更
- 税務署への開業届の提出
- 許認可の再取得・引き継ぎ
ここからは、各手続きについて詳しく解説していきます。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続登記や遺産整理に関するご相談を承っており、必要に応じて税理士などの他士業とも連携しています。
個人事業主の相続でお困りの方は、必要書類や状況が整理できていない段階でも、お問い合わせください。
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銀行口座・契約の名義変更
まず優先して確認したいのが、銀行口座と各種契約です。
個人事業主の口座は本人名義のため、金融機関が死亡の事実を把握すると口座は凍結され、自由に使えなくなります。
事業の売上の入金や仕入れ先への支払いに使っていた口座が止まると、事業の継続にすぐ影響が出てしまいます。
そのため、事業を引き継ぐ場合は、新たな事業用口座の準備や取引先への通知、入出金口座の切替えを早めに進める必要があります。
各手続きが遅れると、売上の受け取りや支払いに混乱が生じやすくなります。
あわせて見直したいのが、事業に関わる契約です。
たとえば、次のようなものが挙げられます。
- 店舗や事務所の賃貸借契約
- リース契約
- 電気・ガス・水道
- 電話やインターネット回線
- 決済サービス
- 会計ソフトなどの業務契約
事業にかかわる契約は、名義変更で足りるものもあれば、契約の再締結が必要なものもあります。
どの契約を引き継ぐのか、どれを終了するのかを一覧にして、優先順位をつけて整理することが大切です。
税務署への開業届の提出
個人事業は法人ではないため、亡くなった方の事業をそのまま同じ名義で引き継ぐことはできません。
後継者が事業を続ける場合は、自分が新たな事業主として手続きを行う必要があります。
このとき、後継者側の開業に関する届出だけでなく、亡くなった方に関する廃業届や準確定申告などの税務手続きも必要になります。
被相続人に関する手続きと、後継者に関する手続きは別であるため、注意しましょう。
また、次に当てはまる場合は、追加で提出が必要となる書類があります。
- 青色申告を使いたい場合
- 従業員への給与支払いがある場合
- 消費税に関する届出が必要な場合
必要な届出を忘れると、税務上の取扱いに影響が出る可能性もあるため注意が必要です。
許認可の再取得・引き継ぎ
業種によっては、事業を続けるために許認可の確認が必要です。
たとえば、飲食業あ建設業、宿泊業などでは、許可や届出の有無を確認しておかなければなりません。
注意したいのは、許認可の扱いが業種ごとに異なることです。
届出によって引き継げるものもあれば、あらためて申請し直さなければならないものもあります。
また、一定期間内に手続きをしないと営業を続けられなくなる場合もあるでしょう。
そのため、「すでに許可があるから問題ない」と考えるのではなく、そのまま引き継げるのか、それとも再取得が必要なのかを事前に確認しておく必要があります。
個人事業を廃業する場合に確認すべき手続き

事業を引き継がず、廃業する場合は、事業に関わる財産と負債を一つずつ整理していく必要があります。
何から手をつければよいかわからず放置すると、回収できたはずのお金を受け取れなかったり、相続人の負担が長引いたりするおそれがあります。
廃業をする場合、次のことを優先して確認しましょう。
- 在庫や設備の処分・換価
- 売掛金回収
- 借入・未払いの清算
ここからは、それぞれについて詳しく解説していきます。
在庫や設備の処分・換価
廃業する場合は、残っている商品や材料、機械、備品、車両などを整理し、必要に応じて売却や処分を進めます。
事業で使っていたものであっても相続財産に含まれます。
そのため、相続人が使わないものであっても放置せず内容を確認しましょう。
特に在庫や設備は、放置しておくと価値が下がってしまうものもあります。
換価可能なものは早期に売却を検討し、処分費用が見込まれるものは見積りを踏まえて対応方針を決めると、遺産整理を進めやすくなります。
現金化できたお金は、負債の支払いや相続に必要な費用に充てやすくなるのです。
また、家族がそのまま使うつもりのものがある場合でも、勝手に処分したり、持ち帰ったりすると相続人間のトラブルや遺産分割に影響するおそれがあります。
相続人間の紛争や手続上の不備を防ぐためにも、処分前に司法書士などへ相談のうえ進めることをおすすめします。
売掛金回収
売掛金とは、すでに仕事や販売は終わっているものの、まだ受け取っていない売上のことです。
廃業をする場合でも、売掛金は大切な相続財産の一部です。
そのため、どこから、いくら受け取ることができるのか確かめて、回収を進める必要があります。
まずは、請求書や契約書、納品書、通帳の記録などを確認し、未回収の売掛金を整理しましょう。
- 請求書
- 契約書
- 納品書
- 通帳の入出金記録
資料が不足していると、請求が困難になることもあります。
時間が経ちすぎると相手方との連絡が取りづらくなることもあるため、早めに行動を起こしましょう。
借入・未払いの清算
財産を整理するだけでなく、残っている借入金・未払いについても確認しなければなりません。
たとえば、金融機関からの借入、仕入先への未払い、外注費、家賃、リース料などが残っている場合があります。
こうした費用は「どこに」「いくら」「何の支払いがあるのか」の内容を整理しながら清算を進めましょう。
未払いを放置すると、利息や遅延損害金が発生したり、相続人の負担になったりするおそれがあります。
ただし、負債が大きい場合は注意が必要です。
借入や未払いの額によっては、相続放棄や限定承認を検討したほうがよいケースがあります。
相続の方針を決める前に不用意に財産を処分したり、支払いを進めたりすると、相続を承認したものとみなされ(単純承認)、相続放棄ができなくなるリスクがあるため注意が必要です。
そのため、負債が重いと感じたら早い段階で専門家へ相談することも検討しましょう。
個人事業主の相続は早い段階で手続きの全体像を整理しよう

個人事業主の相続では、財産・負債・契約関係を整理する必要があります。
十分に整理せずに進めると、手続きが複雑になり、相続人の負担が増えるおそれがあります。
特に、事業を続けるか廃業するかを決めないままだと、手続きの優先順位が定まらず、時間がかかります。
まずは全体を見て、「すぐやること」と「決めてからやること」に分けて整理しましょう。
相続人だけで財産調査や手続きを進めることが難しい場合は、早めに司法書士へ相談することをおすすめします。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、司法書士・税理士・弁護士がチームで連携し、幅広い相続のお悩みの解決をお手伝いしています。
相続の状況をすべて把握できていなくても構いません。
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