親からアパートを相続したけれど、「どうしたらいいのかわからない…」という方も多いのではないでしょうか。
相続したアパートがあまり収入につながっていないと、「このまま持ち続けていいのか」「売ったほうがいいのか」と迷ってしまいます。
この記事では、アパートを相続したときに取れる選択肢から、それぞれのメリット・デメリット、相続の手続きまでわかりやすく説明します。
親からアパートを相続したとき、どう活用するかには、大きく分けて次の4つの選択肢があります。
以下からは、それぞれの選択肢について、どのような特徴があるのか、注意点とともに解説していきます。
相続したアパートにきちんと入居者がいて、利益(家賃収入)が見込める状態なら、経営を引き継いで続けるというのは有力な選択肢となるでしょう。
ただし、古いアパートであれば、水回り(キッチン・トイレ・お風呂など)を中心に、設備を新しくするための工事・リフォームが必要になることもあります。
たとえば、以下のようなメンテナンスは避けられません。
入居率を上げるには、こうした手入れが重要です。
自分では何が必要かわからないという場合は、建物診断をしてくれる専門家に相談するのもよい方法です。
もしも、アパートを維持するための費用が出せない、あるいは建物が古すぎて修理しても儲けが出そうにないという場合は、売却という選択肢があります。
売却には、以下のようにいくつかの方法があります。
建物の解体には、お金がかかります。
たとえば、木造なら比較的安く済みますが、もし地下に古い配管やごみが埋まっていた場合は費用が高くなることもあります。
また、不動産に詳しい会社がそのままの状態で買ってくれることもあるため、解体しないで売るという選択もありえます。
売るときは、複数の会社に見積もりを出してもらって比較する(相見積もり)ことが重要です。
相見積もりをすれば、以下のようなメリットがあります。
今のアパートが古すぎて、リフォームしてもあまり収益が出なそうなときには、思い切って建て替えをするという方法もあります。
周辺地域のニーズや人口、家賃相場を調べたうえで、「新しいアパートにすれば入居者が集まりそう」と判断できるなら、建て替えは有効な選択です。
新築のアパートなら、以下のようなメリットがあります。
また、土地をすでに持っているため、土地代がかからないという点もゼロから賃貸経営を始めるのに比べて、大きな強みです。
さらに、土地を担保(借金の保証として差し出すもの)にして、建築資金のローンを組むことも可能なので、比較的少ない自己資金でも始めやすいです。
ただし、ローンを組むには本人の収入状況や年齢、建物の事業計画の妥当性などが審査対象になります。
銀行などの金融機関に対し、納得してもらえるだけの正当性ある計画を示す必要があります。
「アパート経営を続けるのは大変そう」「そもそも大家業をやる気がない」という場合は、土地をまったく別の形で使うという選択もあります。
たとえば、以下のような活用法が考えられます。
ただし、エリアによって向いている使い方・向いていない使い方があるため、「どうしたらよいかわからない」と感じたら、土地活用に詳しい専門業者に相談してみるのが安心です。
何社かから話を聞いて、条件・費用・リスクなどを比較したうえで判断するのが理想です。
アパートを相続しても、「このまま経営を続けたほうがいいのか、やめたほうがいいのか」と悩むことは多いものです。
アパート経営を続けるかやめるかを判断するためのポイントは、次の3つです。
どれも経営に大きく関わる内容です。
以下から、一つずつ詳しく確認していきましょう。
アパートを経営し続けるためには、以下の図式である状態が大前提です。
入ってくるお金(家賃収入)よりも、出ていくお金(支出)のほうが少ない状態=収支がプラスであること |
具体的には、毎月の家賃収入から次のような費用を引いて、手元にお金が残るかどうかを確認します。
こうした支出を差し引いたうえで赤字になってしまうようなら、経営を続けるのはリスクが大きい可能性があるため、売却や他の土地活用も視野に入れるべきです。
仮に今の時点で毎月の収支がプラスだったとしても、油断はできません。
次の2つの数字を見て、将来のリスクが大きくないかを確認することが重要です。
入居者が減ったり、古くなって家賃を下げざるを得なくなったりすると、ローンの返済が難しくなる可能性があります。
また、入居者が出ていくたびに、室内のリフォーム費用が発生するため、経営がうまくいっているように見えても、将来的に赤字になるケースもあります。
「予想外の出費に対応できるだけの余裕があるか」という視点も忘れずに持っておきましょう。
アパート経営には、「建物の維持管理」が欠かせません。
小さな修繕で済む場合もあれば、何百万円単位の大規模な修繕が必要になることもあります。
たとえば、以下のような修繕は10~15年に一度は発生する可能性が高く、金額も大きくなります。
たとえ今の収支がプラスでも、このような大きな出費が一度でも発生すれば、赤字に転落することも十分あり得ます。
そのため、 「いつ」「どれくらいの金額で」修繕が必要になるかを、事前にある程度つかんでおく必要があるのです。
修繕のタイミングや内容については、管理会社や建築士などの専門家に相談することで、見通しが立てやすくなります。
親からアパートを引き継ぐことで、以下のメリットがあります。
ここでは、親からのアパート相続によって得られる主なメリットを3つ紹介します。
アパートを持っていれば、入居者からの家賃収入という「定期収入」を毎月得ることができます。
たとえば、部屋数や入居状況によりますが、月に10万円前後の収入が見込めるケースも珍しくありません。
しかも、管理業務を不動産会社に任せてしまえば、自分で何かする必要はほとんどありません。
ほぼ「何もしなくても、決まったお金が入ってくる」状態になります。
このような安定した収入があると、生活や老後の不安が減るだけでなく、大きな出費や転職・退職など、将来の判断にもゆとりが生まれます。
相続のとき、「現金で1億円持っていた場合」と「1億円の評価のアパートを持っていた場合」では、アパートのほうが相続税が少なく済むのが一般的です。
なぜなら、相続税の計算では、以下のようなルールがあるからです。
つまり、「現金よりも賃貸アパートのほうが、相続税の負担が軽くなる」という仕組みになっているのです。
インフレ(物価の上昇)が進むと、現金の価値は目減りしてしまいます。
たとえば、今100万円あっても、10年後に同じ100万円で買える物が減っている、というような状態です。
その一方で、アパートのような不動産は、インフレ時にも価値が下がりにくく、家賃も物価と一緒に上がる可能性があるため、価値を守りやすい資産とされています。
もちろん、不動産の価格はエリアや建物の状態により変動しますが、「現金だけを持っているよりは価値が残りやすい」と考える専門家は多いです。
アパートを持っていることで、「資産を分散して持つことができる=リスクを減らす」という意味でもメリットがあります。
親からアパート経営を相続するデメリットは、次の3つです。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
アパートを相続したとき、相続税がかかる可能性があります。
税金がかかるかどうかは、「相続財産の合計が基礎控除の範囲を超えるかどうか」で決まります。
基礎控除とは、「これ以下の財産には相続税をかけませんよ」という基準のことで、その金額は次の式で求めます。
3,000万円+600万円×法定相続人の人数 |
この金額を超えた場合、その超えた部分にだけ相続税がかかります。
また、アパートにはローンが残っていることも多く、さらに固定資産税や建物の管理費用も必要です。
そうした支払いを含めて、「相続税を払う余裕がない」と判断されれば、アパートを売却するという選択肢も検討せざるを得なくなります。
アパートは所有しているだけで一定の費用がかかる資産です。
特に古いアパートでは、建物の劣化や設備の老朽化により、入居者が集まりにくくなることもあります。
そのため、以下のような定期的な維持・管理の出費が避けられません。
こうした費用を定期的に投じないと、空室が増えて収入が減り、赤字になる可能性もあります。
アパートは「放置しているだけでお金が入る」と誤解されがちですが、現実には安定収入を得るには定期的な投資(修繕・改装)が必要です。
アパート経営には、家賃収入という安定的なメリットがある一方で、いくつものリスクも背負うことになります。
たとえば、以下のようなものです。
こうしたリスクを全く想定せずにアパートを引き継ぐと、「思っていたより大変だった」と感じることになります。
アパート経営のリスクとリターンはセットです。
定期収入のある事業であると同時に、事業としての責任も負うことを理解しておきましょう。
アパートを親から相続する場合には、法律や税金に関わるいくつかの重要な手続きがあります。
手続きの流れは、次の7ステップに分けられます。
それぞれのステップについて、順番に詳しく見ていきましょう。
まず最初に確認すべきは、アパートにローンが残っているかどうかです。
ローンの確認方法として、以下を確かめることが挙げられます。
こうした資料をもとに、銀行へ問い合わせましょう。
ローンが残っていた場合は、団体信用生命保険に加入していたかが大切なポイントです。
団体信用生命保険とは、被相続人(親)が亡くなったときにローン残高を保険金で返済してくれる保険です。
アパートに限らず、不動産の相続では、以下のように「誰がどう相続するか」を決めなければいけません。
アパートのような不動産は、お金のように細かく分けることができないため、分割方法の選択が重要です。
基本的な分割方法は、以下の表の通りです。
分割方法 |
内容 |
---|---|
現物分割 |
1人がアパートを相続し、他の人は他の財産を相続する |
代償分割 |
1人がアパートを相続し、他の人にはお金で精算する |
共有分割 |
複数人で共同名義として相続する |
換価分割 |
売却して現金化し、それを分ける |
準確定申告とは、亡くなった方の生前の収入についての税金(所得税)を、家族が代わりに申告して納めることです。
アパート経営をしていた人が亡くなった場合、その家賃収入は準確定申告の対象です。
期限は、相続が発生したことを知ってから4か月以内です。
相続財産が基礎控除を超える場合、相続税を申告して、納める必要があります。
基礎控除の計算式は、次の通り。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数 |
相続税の申告と納付の期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。
申告書は、被相続人が住んでいた地域を管轄する税務署に提出します。
相続登記とは、相続した不動産の名義を新しい所有者に変更する手続きです。
これまでは任意でしたが、2024年4月から法律改正により義務化されました。
期限は、不動産を相続した事実を知った日から3年以内と定められています。
正当な理由がないまま登記をしなければ、10万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります。
アパートの名義変更(相続登記)が済んだら、入居者に対して「大家(オーナー)が変わった」ことを伝える必要があります。
特に、家賃の振込先が亡くなった親の口座だった場合、その口座は凍結されて使えなくなってしまうため、新しい振込先を伝えるなどの連絡が必要です。
オーナー変更の通知は口頭ではなく、書面で通知するのが基本です。
手続きを終えたら、いよいよアパートをどうするかを判断します。
以下のような視点で検討しましょう。
最終的には、「今後も家主としてアパートを経営するのか、それとも売却するのか」を判断することになります。
アパートを相続するときに、あとあとトラブルになりやすいポイントが次のようにあります。
詳しく見ていきましょう。
兄弟や家族間で「公平に分けよう」と考えた結果、アパートを共有名義(一つのアパートを複数人の名義で共同所有すること)にしてしまうケースがあります。
一見、平等で良いように思えますが、実際には以下のような問題が起こりやすいです。
このように、後から名義人が増えてしまうと、ますます話が進みにくくなります。
そのため、最初から共有名義にしないことが大切です。
アパートを相続した場合、そのまま何も手続きせずに放置してしまう方がいます。
しかし、相続登記と呼ばれる手続きが済んでいなければ、法的にはそのアパートの所有者が変わったことが認められません。
相続登記をしていないと、以下のような面倒ごとが起きてしまいます。
アパートを相続した場合は、できるだけ早く登記名義の変更(相続登記)を行うことが必須です。
もし相続の状況が複雑な場合は、司法書士という法律専門職に相談するのが得策です。
以下のようなケースでは、専門家のサポートが現実的です。
自分で手続きをしようとして、書類の不備や記入ミスで最初からやり直しになることもあります。
また、相続登記や遺産分割協議書の作成には時間もかかるもの。
そのため、時間や精神的な負担を避けたい場合には、初めから司法書士へ依頼することで、スムーズかつ確実に手続きを進められ、メリットといえるでしょう。
初回相談無料の事務所も多く、費用対効果としても悪くない選択肢です。
今回は、アパートを相続する際の注意点と、相続後にどう対応すべきかについて解説しました。
アパート経営は、うまくいけば毎月安定した家賃収入を得られる心強い副収入になります。
家賃がローン返済や管理費を上回っていれば、生活にゆとりが生まれるのも事実です。
ただし、アパート経営には、入居者の急な退去や修繕費の発生など、予想外の対応も必要です。
そのため、「少し余裕のある経営体制」が求められがち。
もし、「このまま経営していいのか迷っている」「手放すべきか悩んでいる」といったお悩みがある場合は、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへご相談ください。
当センターでは、司法書士・税理士・不動産の専門家などが連携し、数多くのアパート相続案件をサポートしてきた実績とノウハウがあります。
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