相続した別荘をどうするかは、「売却する」か「所有し続ける」かの2択です。
ただし、どちらを選んでも、手間や費用、税金の問題がついて回ります。
たとえば、所有すれば維持費や管理の負担がかかり、売却すれば準備や諸経費が発生します。
どちらを選ぶにせよ、判断材料や制度を事前に理解しておくことが大切です。
この記事では、相続した別荘の取り扱い方法について、「売却」「所有」の判断ポイントや活用例、などをわかりやすく解説します。
別荘を相続した場合、その後どうするかの選択肢は「売却する」か「所有し続ける」かの2つだけです。
それぞれ、次のように考え方にポイントがあります。
以下からはそれぞれ、どんなメリットやデメリットがあるのかを整理しながら見ていきましょう。
別荘を売るか持ち続けるかを判断するうえで、大事なポイントは次の3つです。
たとえば、あまり使う予定がないのに、管理費や税金だけがかかり続けるような別荘であれば、思い切って売却した方が経済的に得になることが多いです。
ただし、売却にも手間や費用はかかります。
不動産会社を探したり、売却のための登記や書類準備、税金の支払いなどが必要です。
一方、維持費を払いつつ所有し続ければ、自由に使えるという利点もあります。
こうした3つの要素を総合的に考えて、「今の自分にとって一番メリットが大きいのはどちらか」を判断しましょう。
相続した別荘を手放さずに所有し続ける場合、主に次のような使い方があります。
セカンドハウスとは、自宅とは別に持つ「もうひとつの家」のことです。
週末や長期休暇のときに、自然の中でリフレッシュできる場所として使えます。
一方で、ゲストハウスとして貸し出す場合は、民泊サービス(インターネット上の宿泊予約サイトなど)に登録して、宿泊施設として活用することになるでしょう。
ただし、こうした法には次のような注意点があります。
また、人に貸す場合は、建物の使用が激しくなるため、維持費(ランニングコスト)は高くなることが多いです。
セカンドハウスとして使うよりも、修繕費やクリーニング費用が多くなる点も踏まえておく必要があります。
別荘を手放す方法として、売却以外にも「寄付」や「譲渡」があります。
寄付とは、お金をもらわずに無償で誰かにあげることです。
譲渡は、無償または低価格で第三者へ不動産を渡すことを意味します。
寄付が成立する可能性があるのは、以下のようなケースです。
しかし、ほとんどの自治体は「別荘の寄付」を受け入れていません。
その理由は、以下の通りです。
したがって、基本的には売却か自己所有による運用が現実的な選択肢だと考えておくべきです。
相続した別荘を売却しようと思ったとき、「簡単に売れそうにない」と感じる方も多いのではないでしょうか。
実際に、別荘の売却は一般的な家と比べて難しいケースが多く、以下のようなさまざまな注意点や準備について知っておきたいところです。
それぞれ、具体的に何に気をつければ良いのかを詳しく見ていきましょう。
別荘は、一般的な一戸建てやマンションと違い、買い手を見つけるのが難しい物件です。
なぜ難しいのかというと、次のような理由が重なっているからです。
このような理由から、たとえ購入価格を安くしても、月々の維持費や管理費が重くのしかかり、買い手にとっては負担が大きくなってしまいます。
特に通年で使用しない場合、誰かに掃除や点検をお願いする必要もあり、温泉地にある別荘では「温泉使用料」まで別途かかることもあります。
こうした理由から、別荘の売却は普通の家よりも時間がかかりやすく、結果として「売れにくい」といわれるのが現実です。
別荘は税金の面でも、普通の住まい(マイホーム)と比べて不利な点があります。
たとえば、住むための家を売るときは、利益が出ても最大で3,000万円まで税金がかからない「特別控除」という制度があります。
また、もし家を売って損をした場合でも、その損失を給与所得などの収入と相殺して、払った税金を一部戻してもらえる「損益通算」という仕組みも使えるのです。
しかし、別荘にはこうした優遇制度は一切ありません。
たとえ売却で損をしても、その損失を税金の計算に使うことはできないうえに、利益が出た場合はそのまま課税されてしまいます。
つまり、税金面でも「住む家」と「別荘」はまったく違う扱いになっていて、それもまた売却のハードルを高くしている一因なのです。
別荘を少しでも高く売却したい場合は、以下の2つの考え方が重要です。
買取業者を利用する場合は、見極めが大切です。
しかし、専門性が高い不動産の知識を持ち合わせていなければ、見極めポイントを探し出すのも難しいでしょう。
以下からは、別荘を高値で売りたい時に、買取業者を利用する際の見極めポイントを2つ紹介します。
不動産会社であればどこでも別荘を取り扱える、というわけではありません。
別荘は一般住宅と事情が異なるため、別荘や空き家の取引に慣れている専門業者を選ぶ必要があります。
そうした業者なら、買い取った後の活用(リフォームして民泊にする、別荘オーナーへ再販するなど)にノウハウがあるため、適正価格での買取が期待できるのです。
一方、一般的な不動産を幅広く取り扱う業者では、別荘の取扱い経験が少なく、買取を断られたり、相場よりも低い査定額を提示されたりするリスクがあります。
業者選びの際は、必ず以下の点を確認してください。
特に「契約直前で価格を下げてくる」ような悪質業者も一部存在するため、査定額の根拠を聞いて納得できる業者を選ぶことが重要です。
別荘をスムーズに売却するには、ただ売り出すだけでなく、事前の準備や環境整備が欠かせません。
売却を進めるうえで大切な具体的な対応ポイントとして、以下3つが挙げられます。
それぞれの内容について、以下から詳しく解説していきます。
売却が決まるまでの間、別荘の見た目や状態は重要です。
買い手が内見に訪れた際、清潔でしっかり管理されている物件の方が圧倒的に印象が良く、成約につながりやすくなります。
そのため、水回り・外壁・庭木など、手入れを怠らず維持しておくことが望ましいです。
別荘を丸ごと改装するつもりで物件を探している買い手もいますが、それでも水回りや設備インフラの整備、建物の基礎など、基本的な部分はチェックしてくるため、対応は必須なのです。
もし別荘の建物が古くて劣化が激しい場合は、思い切って取り壊して更地にすることも選択肢です。
買い手によっては、建物付きよりも、更地のほうが自由に設計・建築できる分、魅力的に映ることがあります。
ただし、建物の状態や立地条件によっては、建物を残したほうが良いケースもあるため、専門家に相談のうえで判断しましょう。
スムーズに売却を進めるためには、あらかじめ「ここまでなら値下げしてもいい」と思える最低金額を設定しておくことが大切です。
このラインが決まっていないと、価格交渉で迷いが出てしまい、結果としてチャンスを逃す可能性もあります。
明確な基準を設けておけば、売却のタイミングも逃さず、後悔のない判断ができます。
「どうせ使わないし、売却も難しそうなら、いっそ相続したくない」という場合には、相続放棄という選択肢もあります。
ただし、以下の点に注意が必要です。
注意点 |
詳細 |
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別荘だけを選んで放棄することはできない |
相続放棄をすると、現金や預貯金などのプラスの財産もすべて放棄することになる |
放棄しても、しばらくは管理責任が残る |
裁判所が「相続財産清算人」を選ぶまでは、あなたに管理義務が発生することもある |
放棄するには、家庭裁判所への申立てが必要 |
状況により手続きや費用(予納金)が発生する |
相続放棄には、「負担から解放される」代わりに「ほかの財産も受け取れない」というトレードオフがあります。
慎重に判断し、必要なら司法書士や弁護士に相談しましょう。
別荘を相続したときも、普通の家と同じように「土地」と「建物」それぞれに相続税がかかります。
相続した別荘にかかる相続税について、知っておきたいポイントは以下2つです。
ここからは、別荘の土地と建物の相続税評価額の算出方法や確認方法を詳しく見ていきましょう。
土地にかかる相続税を計算するためには、以下を行う必要があります。
計算方法には「路線価方式」と「倍率方式」の2つがあります。
どちらで計算するかは、土地の場所によって変わります。
さらに、まず計算の前には「地目(ちもく)」という土地の種類を確認しましょう。
以下から、それぞれについて詳しく説明します。
土地の評価額を計算する前に、その土地がどのように使われていたかを示す「地目(ちもく)」を確認しておく必要があります。
地目は、被相続人が亡くなった時点での状況で判断され、次のような種類があります。
こうした地目は「登記簿謄本」という法的な土地情報の書類で確認することができます。
土地の評価方法を決めるために、まずその場所が「路線価地域」なのか「倍率地域」なのかを確認します。
それぞれ、以下のような評価方法を持つものです。
評価方法 |
詳細 |
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路線価方式 |
道路ごとに国が定めた価格(=路線価)をもとに計算 |
倍率方式 |
・路線価が設定されていない場所 ・市町村の評価額に倍率をかけて計算 |
確認方法は、国税庁のホームページにある「路線価図」と「評価倍率表」を調べること。
地名が見つからなければ、それは倍率地域です。
計算式は、以下のようになります。
別荘の建物部分の評価額は、「固定資産税」の評価額と同じです。
固定資産税は、普通の家と同じ扱いで計算されます。
新しいか古いか、築年数に応じて価格が決まります。
評価額は、毎年市区町村から送られてくる「納税通知書」に書かれているものです。
ほか、より正確に知りたい場合は「固定資産評価証明書」を取得しましょう。
証明書は、役所の窓口に行かなくても郵送でも取り寄せが可能です。
申請方法は、お住まいの自治体のホームページで確認できます。
相続する際の「別荘の価値(=評価額)」を下げて、相続税を少なくするための方法は、次の通りです。
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
別荘地に建っている土地が傾いている(傾斜地)場合、実際に建物を建てるためには平らに整えるための工事(造成工事)が必要です。
たとえば、斜面になっている土地に家を建てたい場合、まず重機で土をならして平らにする「造成」という作業を行う必要があります。
造成の費用は土地の使いやすさに影響し、評価額を下げる材料となります。
造成に関するポイントは、次の通りです。
ただし、「この土地が傾斜地に当たるのかどうか」の判断や評価方法はとても専門的なので、「もしかしたら傾いているかも?」と思った時点で、税理士や不動産の専門家に相談するのが安心です。
造成費を差し引けるかどうかの判断は、土地の傾きの角度や地形に応じて違います。
市町村が公開している「評価の基準」や過去の評価事例なども、専門家はチェックしてくれます。
土地や建物の価格には、「実勢価格(市場で実際に売買される価格)」と「評価額(税金を計算するために決められた価格)」があります。
一般的には、相続税の評価額は実勢価格のおよそ80%とされています。
しかし、別荘地の場合、実勢価格が大きく下がっていても、評価額が変わらないままになっているケースが多くあります。
こうした場合、「実際に売ったらもっと安いはずなのに、相続税だけ高くなる」ということが起きます。
このような価格のズレ(価格の歪み)がある場合は、実勢価格を評価額として使える可能性があります。
実勢価格を評価額として使うには、「不動産鑑定士」による正式な評価書や、周辺の売買事例などが必要になります。
自分だけで判断せず、必ず専門家のサポートを受けましょう。
ここまで、別荘を所有するのか売却するのかの判断ポイントや相続税の算出方法などについて解説しました。
別荘を相続したあとに「所有するべきか」「売ったほうがいいか」などの悩みを解決するための、よくある質問として、次が挙げられます。
ここからは、別荘の相続に関してよくある4つの質問にお答えしていきます。
別荘を残すか手放すかを考えるときは、以下の3つのポイントが判断材料になります。
使う予定がなければ、売却も選択肢になります。
とはいえ、売ってくれる相手が見つからないこともあるため、そのときはしばらくは所有を続けることも一つの方法です。
はい、使っていない別荘を「貸す」ことで収入を得ることもできます。
たとえば、以下のような貸し方があります。
貸し方 |
詳細 |
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戸建賃貸経営 |
普通の一軒家として、1年以上の契約で貸す方法 |
貸別荘経営 |
1か月や1シーズンなど、短期間だけ貸し出す方法 |
旅館業・民泊経営 |
・1泊ごとの貸し出し ・この場合は「旅館業の許可」が必要 |
旅館業の許可を取るには、消防や衛生の基準を満たすことが必要です。
建物の構造によっては、改装が必要なこともあります。
はい、相続した別荘が火災や自然災害、盗難などで損害を受けたときのために、火災保険や家財保険に加入しておくのが安全です。
たとえ普段住んでいない建物でも、「住む予定がある」場合には一般の住宅として扱われ、普通の火災保険に入れます。
ただし、保険会社によっては「空き家」とみなされることもあります。
その場合は「一般物件用の火災保険」になるので、契約前に保険会社に確認しましょう。
相続税の計算は、次のように行います。
ただし、実際の税額は土地の場所、建物の古さ、ほかの財産との合計などによって大きく変わります。
国税庁のホームページには「相続税の計算シミュレーター」があります。
ある程度の目安を知るには便利ですが、正式な計算は税理士などの専門家に依頼するのが確実です。
今回は、別荘を相続したときに「価値を下げて節税する方法」「所有・売却の判断」「貸す・保険・税金」といった内容を紹介しました。
別荘の相続は、通常の家と違って売りにくかったり、税金の優遇措置が使えなかったりと、難しい点がいくつかあります。
どうしたら良いか迷うときは、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターに相談してみてください。
相続や売却のサポートに慣れた専門家が対応し、弁護士・税理士・不動産会社などとのネットワークをご利用いただけます。
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