不動産を売却する場合、「生前に売るべきか」「相続が発生してから売るべきか」で、かかる税金や手続きの流れは大きく変わります。
どちらが有利なのか分からず、判断に迷われる方も少なくありません。
本記事では、不動産を相続前に売却する場合と、相続後に売却する場合の違いについて、税務面や手続き面のポイントを整理しながら分かりやすく解説します。
不動産の相続前と相続後の売却、どちらが良いのか迷っている場合は、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターにご相談ください。
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相続前に不動産売却を検討した方がよいケース

不動産は「いつ売るか」によって、税金や手続きの負担が大きく変わります。
相続前に売却を検討した方がよい代表的なケースは次の通りです。
- 譲渡所得の特例を本人が使える場合
- 判断能力が十分に保たれている場合
- 不動産の分割で相続人間の対立が想定される場合
それぞれのケースについてくわしく解説します。
譲渡所得の特例を本人が使える場合
ご自宅や以前住んでいた家を売却する場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。
いわゆる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」です。
この特例は、あくまで「その家に住んでいた本人」が売却する場合に使える制度です。
本人名義のうちに売却すれば、譲渡所得税や住民税の負担を大きく軽減できる可能性があります。
一方で、相続後に相続人が売却する場合には、この特例をそのまま使えるとは限りません。
「将来的に売却する予定がある」「税負担をできるだけ抑えたい」という場合は、生前のうちに売却したほうが有利になるケースもあります。
具体的に特例が使えるかどうかは、居住状況や売却時期によって異なるので、事前に確認することが重要です。
判断能力が十分に保たれている場合
不動産の売買契約は、法律行為です。
民法では、契約時に意思能力(自分の行為の結果を理解できる能力)がない場合、その契約は無効とされています。
高齢になり、認知症などで判断能力が低下している状態で契約を締結した場合、後になって「契約は無効だ」と主張される可能性があるのです。
すると、売買自体が問題となり、買主との間で紛争に発展するおそれもあります。
また、判断能力が不十分になると、成年後見制度の利用が必要になり、手続きが複雑化します。
家庭裁判所の関与も必要となり、売却までに時間がかかるケースも少なくありません。
本人の判断能力が十分なうちに売却をすすめることで、次のようなメリットがあります。
- 売却価格や条件を自ら決められる
- 手続きをスムーズに進められる
- 将来的な無効リスクを避けられる
実務上、司法書士や金融機関は売主の意思確認を厳格に行います。
そのため、高齢などで判断能力に心配がある場合には、相続前の売却を検討される方がスムーズです。
不動産の分割で相続人間の対立が想定される場合
不動産は、現金のようにきれいに分けることができない財産です。
相続人が複数いる場合、次の点で意見が対立することが少なくありません。
- 誰が不動産を取得するのか
- 評価額はいくらとするのか
- 代償金をどう支払うのか
生前に不動産を売却し、現金化しておけば、相続時には法定相続分や遺言の内容に応じて分配しやすくなります。
結果として、遺産分割協議の負担や紛争のリスクを軽減できます。
もちろん、遺言書で分割方法を指定する方法もありますが、不動産そのものを残すよりも、売却して現金で残しておくほうが、相続人間の調整は比較的簡単です。
「相続人の関係が複雑」「将来的にもめる可能性がある」と感じる場合は、生前売却も一つの有効な選択肢といえるでしょう。
相続後に不動産売却を検討した方がよいケース

不動産は、必ずしも「生前に売ったほうが得」とは限りません。
相続が発生してから売却したほうが、次のように税負担を抑えられるケースもあります。
- 相続してから売ったほうが利益が小さく計算される場合
- 相続した空き家で3,000万円の控除が使える場合
- 生前に売ると税金が高くなってしまう場合
それぞれの場合についてくわしく見ていきましょう。
相続してから売ったほうが利益が小さく計算される場合
不動産を相続した場合、その後に売却するときの税金(譲渡所得税)の計算には、いくつかの特例が関係します。
まず前提として、相続税の計算に用いる不動産の評価額(路線価など)と、売却時の譲渡所得の計算で使う「取得費」は、考え方が異なります。
この2つを混同しないことが大切です。
相続税の面では、「小規模宅地等の特例」により、一定の要件を満たせば土地の評価額を最大80%減額できる場合があります。
ただし、次に挙げる複数の要件を満たす必要があります。
- 宅地の種類(居住用・事業用など)
- 面積の上限
- 取得する相続人の要件
- 相続税の申告をしていること
「同居していたから必ず8割減になる」というものではありません。
さらに重要なのが、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例です。
相続税を納めた方が、相続開始から3年10か月以内にその不動産を売却した場合、納めた相続税の一部を取得費に加算することができます。
取得費が増えると、譲渡所得(売却益)は小さく計算され、結果として譲渡所得税の負担を抑えられる可能性があるのです。
この特例が使える場合は、相続後に売却したほうが税負担が軽くなるケースもあります。
相続した空き家で3,000万円の控除が使える場合
被相続人が住んでいた家(いわゆる空き家)を相続し、一定の要件を満たして売却した場合には、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があるのです。
これを「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」といいます。
適用期間や金額には制限があり、次の要件を満たす必要があります。
- 令和9年(2026年)12月31日までの譲渡であること
- 売却まで事業用・賃貸用として使用していないこと
また、建物を解体して土地のみを売却する場合でも、相続から解体までの間に事業や貸付に使っていないことなど、細かな条件があります。
生前に本人が売却する場合とは異なる制度なので、「空き家特例が使えるかどうか」を確認したうえで、売却時期を検討することが大切です。
生前に売ると税金が高くなってしまう場合
譲渡所得税は、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて課税され、所有期間や所得状況によって税率が異なります。
たとえば、所有期間が5年以下の場合は短期譲渡となり、税率は高くなります。
一方で、10年を超える自宅の場合は軽減税率の適用が可能ですが、それでも状況によっては負担が大きくなることがあるのです。
また、生前に不動産を売却して現金に換えた場合、相続時にはその現金が額面どおり評価されます。
不動産であれば、相続税評価は時価より低く算定されることが一般的ですし、小規模宅地等の特例が使える可能性もあります。
しかし、現金にはそのような評価減はありません。
そのため、総合的に比較すると、売却したほうが有利になる場合があります。
相続前・相続後に不動産を売却するときの注意点

不動産を「相続前に売るか」「相続後に売るか」を検討する際は、メリットだけでなく、次の注意点も押さえておく必要があります。
- 売却時の税負担は、事前に概算でも試算しておく
- 現金化すると、相続税の負担が増えることがある
- 「売却するかどうか」で家族間の意見が割れやすい
- 「売却」と「贈与」を取り違えると課税関係が変わる
十分に整理しないまま進めると、想定外の税負担や家族間のトラブルにつながるおそれがあります。
売却時の税負担は、事前に概算でも試算しておく
不動産を売却した場合、売却代金そのものではなく、取得費や譲渡費用を差し引いた「譲渡所得」に対して、所得税・復興特別所得税・住民税が課税されます。
実務上、次のような事情があると、税負担が想定より大きくなることがあります。
- 取得費が不明で、概算取得費(売却価格の5%)で計算される
- 所有期間が5年以下で短期譲渡となる
- 3,000万円特別控除などの要件を満たさない(または併用できない)
売却を決める前に、概算でもよいので税額を試算し、税理士と連携して確認することが重要です。
現金化すると、相続税の負担が増えることがある
不動産は、相続税評価(路線価等)により時価より低く評価されることが一般的です。
さらに、要件を満たす場合は小規模宅地等の特例により評価減が認められることもあります。
一方、生前に売却して現金化すると、現金は額面どおり評価されるため、相続税の課税対象額が増える結果となることがあるのです。
介護費用の確保など明確な目的がない場合は、相続税への影響も含めて検討しましょう。
「売却するかどうか」で家族間の意見が割れやすい
生前売却は本人が意思決定できますが、「残してほしい」「今売る必要があるのか」など、相続人予定者の感情面を含めて意見が割れることがあります。
相続後の売却は、相続人が複数いる場合、原則として全員の同意が必要となるため、合意形成が整わないと売却が進みません。
早い段階で説明と話し合いの場を設け、方向性を共有しておくことが望ましいです。
「売却」と「贈与」を取り違えると課税関係が変わる
親子間などで不動産を無償または著しく低い価格で移転した場合、実質的に贈与と判断され、贈与税が課される可能性があります。
また、名義だけを先に移転し、対価の授受がないまま第三者へ売却すると、譲渡所得税の負担者や売却代金の帰属が不明確になり、トラブルの原因となります。
売買契約書の作成と、対価の授受(金融機関口座を通じた送金等)により、実体関係と資金の流れを一致させることが重要です。
結局、相続前と相続後のいつ不動産売却するべき?

相続に関係する不動産は、「いつ売るか」によって税金や手続きの負担が大きく変わります。
ただし、どちらが必ず有利とはいえません。
ご家族の関係、財産の内容、借入の有無などによって最適な時期は異なります。
判断にあたっては、次の視点から順に整理していくことが重要です。
- 手元にいくら残るのか
- 家族間のトラブルを避けられるか
- 本人が安全に意思決定できるか
- ローンを完済できるか
- 共有者全員の同意が得られるか
- 法律上すぐに売却できる不動産か
それぞれの視点について解説します。
不動産相続に心配がある場合は、私たち「静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター」にご相談ください。
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手元にいくら残るのか
売却後に実際に残る金額は、概ね次のように計算できます。
| 売却代金 − 取得費 − 譲渡費用 − 税金 |
相続前に売却する場合は、次の点がポイントになります。
- 3,000万円特別控除が使えるか
- 軽減税率の対象になるか
相続後に売却する場合は、下記の特例や控除などが使える可能性があります。
- 取得費加算の特例
- 空き家の3,000万円控除
さらに、相続税の評価や小規模宅地等の特例の有無によって、相続税額も変わります。
重要なのは、「どの制度が使えるか」を具体的に確認し、概算でもよいので数字で比較することです。
感覚ではなく、試算に基づいて判断することが失敗を防ぐポイントです。
家族間のトラブルを避けられるか
売却時期によって、家族の関わり方も変わります。
生前に売却する場合は、所有者本人が意思決定できます。
そのため、相続人間での遺産分割協議は不要になります。
もっとも、「なぜ今売るのか」「残してほしかった」など、家族間で意見が分かれることもあります。
一方、相続後に売却する場合は、相続人全員の同意が必要です。
一人でも反対すれば、不動産全体の売却はできません。
ご家族の関係性や将来の見通しを踏まえ、どちらが円滑に進められるかを考えることが重要です。
本人が安全に意思決定できるか
不動産の売却は法律行為です。
契約時に意思能力がなければ、その契約は無効となる可能性があります。
高齢で判断能力の低下が疑われる場合には、慎重な検討が必要です。
次に、判断能力が不十分な場合に生じるリスクや必要な手当について解説します。
- 判断能力が不十分な場合に生じる法的リスク
- 判断能力が不十分な場合に必要となる法的手当
ここから、それぞれ詳しく解説します。
判断能力が不十分な場合に生じる法的リスク
判断能力が不十分な状態で売買契約を締結すると、次のような問題が生じます。
- 契約が無効と主張される
- 家族間で責任問題になる
- 買主との間で訴訟に発展する
契約が無効となれば、売却自体がなかったことになる可能性もあります。
関与した家族が損害賠償を求められるケースも考えられます。
判断能力が不十分な場合に必要となる法的手当
判断能力に不安がある場合は、成年後見制度の利用を検討します。
成年後見人が選任されると、本人に代わって財産管理や契約行為を行うことができます。
特に、本人が居住していた不動産を売却する場合には、家庭裁判所の許可が必要です。
適切な法的手続きを経ずに売却すると、無効となるおそれがあります。
安全な取引を行うためには、契約前に法的な枠組みを整えておくことが重要です。
ローンを完済できるか
住宅ローンが残っている不動産には、通常、金融機関の抵当権が設定されています。
原則として、ローンを完済しなければ抵当権は抹消できません。
そのため、売却代金で残債を完済できるかどうかを事前に確認する必要があります。
売却価格が残債を下回る場合は、次の対応が必要になります。
- 自己資金で不足分を補う
- 任意売却を検討する
まずは、想定売却価格とローン残高を比較することが出発点です。
共有者全員の同意が得られるか
共有名義の不動産を「全体として」売却するには、共有者全員の同意が必要です。
持分がわずかであっても、反対する共有者がいれば全体売却はできません。
各共有者は自分の持分のみを売却することは可能ですが、持分売却は買い手が限られるため、実務上は容易ではありません。
共有者間で合意が得られるかどうかを事前に確認しておくことが重要です。
法律上すぐに売却できる不動産か
すべての土地が自由に売却できるわけではありません。
たとえば、次のようなケースが挙げられます。
- 農地の場合は農地法の許可が必要
- 市街化調整区域内の土地は建築や用途に制限がある
農地転用の許可を得ずに売買した場合、契約が無効となる可能性もあります。
また、許可取得までに相当の期間を要することもあります。
宅地以外の土地を売却する場合は、事前に自治体や農業委員会への確認が必要です。
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不動産をいつ売却するかは、単に「高く売れるかどうか」だけで決められる問題ではありません。
- 次のような複数の要素が関係します。
- 売却後、実際にいくら手元に残るのか
- 家族全員の合意が得られるか
- ご本人の判断能力に問題はないか
- 相続後の手続き負担はどの程度か
- ローンや共有関係、農地などの法的制限はないか
判断の順番としては、「売却できる前提が整っているか」→「相続前後での手取りの差」→「家族関係と判断力のリスク」で整理することをおすすめします。
売却のつもりが、実質的に贈与と評価されてしまうと、課税関係が大きく変わります。
名義変更の方法や対価の授受の仕方によっては、想定外の税負担が生じることもあるのです。
そのため、不動産の名義を動かす前の段階から、しっかりと事実関係を整理しておくことが重要です。
不動産を相続前、相続後、どちらで売った方が得になるのか迷ったら、「静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター」へご相談ください。
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