不動産しかない相続では、遺留分の扱いに悩むケースが少なくありません。
現金のようにそのまま分けられないため、誰がどのように負担するのかが問題になりやすいからです。
遺留分の計算方法や請求の進め方を理解していないと、相続人同士のトラブルに発展する可能性もあります。
また、不動産の評価方法や支払条件によって、最終的な負担額が変わる点にも注意が必要です。
この記事では、不動産のみの相続における遺留分の考え方から、計算方法や注意点、請求の進め方まで解説します。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、相続の状況整理や不動産に関する手続きの進め方についてご相談を承っております。
まずは、現在の状況や必要な手続きを整理するところから確認していきましょう。
電話でのお問い合わせ

不動産しかない相続における遺留分の計算方法

相続財産が家や土地だけでも、遺留分は金額で整理します。
不動産をそのまま分ける話と、遺留分の金額を出す話は別なので、まずは計算の順番を落ち着いて押さえることが大切です。
相続開始時の価値を基に全体の取り分を求め、各相続人の割合と掛け合わせる流れは、次の通りです。
- 遺留分算定の基礎となる財産額を確定する
- 各相続人の法定相続分を確定する
- 法定相続分に遺留分割合を掛ける
不動産の評価と生前贈与の扱いは計算の母体になるため注意が必要です。
ここからは、各段階について詳しく見ていきましょう。
1:遺留分算定の基礎となる財産額を確定する
最初にするのは、遺留分の計算の土台になる財産総額を決めることです。
不動産しかない場合は、家や土地がいくらになるかが出発点になります。
ここが決まらないままでは、遺留分がいくらになるのかも決まりません。
実際には、亡くなった時点での不動産の価値を基に考えます。
ただし、固定資産税評価額や路線価をそのまま当てはめればよいわけではありません。
税金の計算で使う金額と、実際に売買される金額は同じとは限らないためです。
そのため、遺留分の算定においては、実務上、相続開始時における時価(客観的な交換価値)に基づき評価を行います。
また、家や土地の金額だけを確認して終わりではありません。
住宅ローンなどの債務が残っているなら、その分もあわせて確認しましょう。
不動産の評価額だけで判断してしまうと、実際の計算とずれてしまうためです。
さらに、生前贈与がある場合は、内容や時期によって計算に入るものと入らないものがあります。
不動産しかない相続ほど、こうした前提整理が必要です。
【注意】計算対象に含めない財産
不動産しかない相続では、「家や土地の価値だけを見て計算すればよい」と考えがちです。
しかし実際には、過去の贈与や支出の内容によっては、遺留分の計算に影響することがあります。
とはいえ、すべての贈与やお金の動きが計算対象になるわけではありません。
あらかじめ「含めるもの」と「含めないもの」を整理しておくことで、不要な混乱を避けることができます。
基礎財産に含まれないことが多い例は、次の通りです。
- 相続人に対する、相続開始前10年間になされた贈与
- 扶養の範囲の支出
- 特別受益に当たらない軽微な移転
ここから、個別に詳しく確認していきましょう。
相続人に対する、相続開始前10年間になされた贈与
相続人への贈与は、すべてが遺留分の計算に入るわけではありません。
まず見ておきたいのは、誰に対する贈与かという点です。
相続人への贈与は、原則として相続開始前10年以内で、しかも婚姻、養子縁組、生計の土台になるようなまとまった援助として受けたものが計算の対象になります。
そのため、かなり前の贈与まで一律にさかのぼって算入されるわけではなく、過去の援助がすべて計算対象になるとは限りません。
不動産しかない相続では、住宅取得資金の援助などが問題になりやすいです。
一方で、時期が古いものや、遺留分の計算に入る種類に当たらないものは、対象外になることもあります。
過去の援助を話題にする際は、古いか新しいかだけでなく、相手が相続人か、どのような目的の贈与だったかまで整理して見ていくことが大切です。
第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。
当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。
)」とする。
引用元:民法 | 民法第1044条
扶養の範囲の支出
親が子の生活費や学費を負担していた場合でも、そのすべてが遺留分の計算に影響するわけではありません。
通常の生活費や一般的な学費は、扶養の範囲として扱われ、遺留分の算定には含まれないことが多いです。
不動産しかない相続では、現金のやり取りが少ない分、こうした支出が争点になりやすい傾向があります。
ただし、金額が高額であったり、長期間にわたっていたりする場合には、単なる扶養とはいえないケースもあるため注意が必要です。
名目だけで判断せず、実態に基づいて検討することが大切です。
特別受益に当たらない軽微な移転
家族間での祝い金や小遣いなど、日常的な金銭のやり取りは珍しくありません。
こうした軽微な金銭の移転まで、すべて遺留分の計算に含めるわけではありません。
社会通念上、通常の範囲といえるものであれば、特別受益には当たらず、遺留分の算定から外れることが一般的です。
不動産しかない相続では、現金の話が少ないため、こうした細かなやり取りが問題視されることがありますが、すべてを遡って検討する必要はありません。
まずは、その金額や性質が「相続の前渡し」といえる規模なのかを見極めることが重要です。
2:各相続人の法定相続分を確定する
次に、相続人ごとの法定相続分を確認しましょう。
ここでは、実際に家や土地を誰が取るかではなく、法律上どの割合になるのかだけを見ることになります。
不動産しかない相続では、実際に居住していた人が不動産を取得する話と、法律上の取り分が混同されやすいため、いったん切り分けて考えることが大切です。
まず確認したいのは、誰が遺留分を持つ立場なのかです。
兄弟姉妹には遺留分がないため、相続人ではあっても遺留分の請求ができるとは限りません。
配偶者や子、場合によっては親が対象になります。
相続人の組み合わせによって割合は変わるので、最初に家族関係を整理しておくと、その後の計算が進めやすくなります。
3:法定相続分に遺留分割合を掛ける
財産総額と法定相続分がわかったら、最後に遺留分の割合を掛けて、各人の遺留分を金額で見ていきましょう。
ここで初めて、「最低限どのくらいの取り分になるのか」が具体的に見えてきます。
考え方は、まず相続全体に対する遺留分の割合を出し、そのうえで各人の法定相続分に応じて分ける流れです。
たとえば、配偶者と子が相続人なら、全体の遺留分を分け合う形になります。
不動産しかない相続でも、計算の流れ自体は同じです。
ただし、ここで出た金額がそのまま請求額になるとは限りません。
すでに受け取っている財産があるか、相続で別に取得するものがあるか、負担する債務があるかによって、最終的な金額は変わります。
不動産しかない相続では、評価額だけでなく、誰が何を受け取り、何を負担するのかまで見て、最後に請求額を整理することが大切です。
不動産のみでも遺留分支払いは現金のみ!注意しておきたいポイント

不動産しかない相続では、「家や土地をそのまま渡せば済む」と考えられがちです。
しかし、遺留分は原則として金銭で清算する(金銭債権となる)ことになります。
家や土地そのものの取得とは別に、遺留分ではまず金銭でいくら支払うのかを整理することになります。
特に押さえたい点は、次の通りです。
- 不動産そのものを渡す義務はない
- 支払資金がない場合は売却することになる
- 誰が払うか間違えないようにする
以下から、順番に詳しく見ていきましょう。
不動産そのものを渡す義務はない
遺留分を請求されたとしても、請求された側が家や土地の持分をそのまま渡さなければならないわけではありません。
基本は、お金で清算する形です。
つまり、請求する側にとって大事なのは「不動産をもらうこと」ではなく、「支払うべき金額をはっきりさせること」です。
請求を受けた側も、「不動産しかないから対応できない」と考えるのではなく、「お金をどう準備するか」を考えなくてはなりません。
当事者同士で合意ができれば、不動産の一部を渡す形で解決することもあります。
しかし、このような解決ができるのは、話し合いで合意できたときに限られます。
最初から現物を渡す義務があるわけではありません。
支払資金がない場合は売却することになる
遺留分はお金で支払うため、手元に現金がなければ資金を用意しなければなりません。
不動産しかない相続では、家や土地を売って支払資金を作ることが現実的な方法になる場面があります。
特に、預貯金がほとんどない場合は、売却を視野に入れて考える必要が出てきます。
ただし、すぐに売るしかないと決まるわけではありません。
受遺者が金銭を直ちに準備できない場合には、裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることができます。
また、事情によっては支払時期を調整しながら進めることもあります。
自宅が含まれているなら、生活への影響も大きいため、売却するかどうかは慎重に考える必要があります。
遺言に「不動産を1人に渡す」と書かれていても遺留分は請求できる
遺言で「家は長男に相続させる」「土地は配偶者に相続させる」と書かれていても、遺留分までなくなるわけではありません。
最低限の取り分を持つ相続人であれば、内容によっては遺留分を請求できます。
不動産を1人に集める遺言があっても、そのまま絶対に通るとは限らないということです。
ただし、請求には期限があります。
遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年、または相続開始から10年で行使できなくなります。
話し合いでまとまらないときは、請求する意思をきちんと相手に伝えることが大切です。
不動産しかない相続では、評価額や支払い方法でもめやすいため、早めに動いておくほうが安心です。
誰が払うか間違えないようにする
遺留分の支払いは、相続人なら誰でも払うという話ではありません。
実際には、遺言や贈与で利益を受けた人が負担する形になります。
相手を取り違えると、話し合いも請求も遠回りになりやすいため、最初に整理しておきたいところです。
負担の順番は、次の通りです。
- 遺贈を受けた者が先に負担する
- 生前贈与を受けた者が後順位で負担する
- 複数人が受け取っている場合は価額割合で負担する
以下から、詳しく見ていきましょう。
遺贈を受けた者が先に負担する
遺言で利益を受けた人がいるなら、贈与を受けた者より先に負担するのが原則です。
不動産しかない相続では、「家を長男に相続させる」「土地を配偶者に相続させる」といった形が多いため、不動産を受け取った人がまず支払う立場になることがよくあります。
そのため、遺留分の話になったときは、「いま名義を持っているのは誰か」だけでなく、「遺言で利益を受けたのは誰か」を確認することが大切です。
請求する側も、まず誰に請求すべきかを整理しておくことが大切です。
生前贈与を受けた者が後順位で負担する
遺言で財産を受け取った人だけでは足りないときに、生前贈与を受けた人の負担が問題になります。
つまり、順番としては、まず遺言で受け取った人を見て、その次に生前贈与を受けた人へ進む形です。
ただし、生前贈与なら何でも対象になるわけではありません。
遺留分の計算に入る贈与かどうかを見たうえで考える必要があります。
昔の小さな援助まで当然に負担対象になるとは限らないため、そうした点は切り分けて整理することが大切です。
複数人が受け取っている場合は価額割合で負担する
財産を受け取った人が1人ではない場合、誰がどれだけ負担するかを分けて考える必要があります。
不動産しかない相続では、「自宅は配偶者」「別の土地は長男」というように、複数の人が別々に受け取ることも珍しくありません。
複数の人が別々に受け取る場合は、受け取った財産の価値に応じて負担額を分けることになります。
ここで難しくなるのが、不動産の評価額です。
どの不動産をいくらで見るかが決まらないと、誰がどれだけ負担するかも決まりません。
負担の話と評価額の話は別々ではなく、同時に整理していく必要があります。
協議がまとまらないときほど、まず不動産の評価方法をそろえることが大切です。
不動産しかない遺留分相続における請求までの進め方

不動産しかない相続で遺留分を請求する場面では、感情だけで進めると話がこじれやすくなります。
大切なのは、順番を決めて整理しながら進めることです。
進め方の全体像は、次の通りです。
- 財産目録を確定させる
- 遺留分侵害額を計算する
- 内容証明で請求意思を示す
それぞれの進め方を、以下から詳しく見ていきましょう。
なお、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、財産目録の整理や遺留分に関する手続きの進め方についてご相談を承っております。
迷いがある場合は、無料相談をご利用ください。
電話でのお問い合わせ

財産目録を確定させる
まず行いたいのは、相続財産の内容をきちんと見える形にすることです。
不動産しかない相続では、家や土地の内容と評価額がはっきりしていないと、遺留分の計算も話し合いも進みません。
確認したいのは、不動産の所在地や地番、建物の内容、持分の有無、担保が付いているかどうかといった基本事項です。
あわせて、住宅ローンなどの残りがあるなら、そうした金額も整理しておく必要があります。
不動産の価値だけを見て進めると、あとから話がずれる原因になります。
財産目録は、単なる一覧表ではありません。
あとで争いになりそうな点を早めに洗い出すための土台です。
不動産しかない相続ほど、最初の整理が甘いと、その後の話し合いが長引きやすくなります。
遺留分侵害額を計算する
財産の内容が固まったら、次は遺留分侵害額を計算しましょう。
ここで注意したいのは、最低限の取り分を出すだけでは足りないという点です。
実際にいくら請求するのかを考えるには、相手方がどれだけ財産を受け取り、請求する側がどれだけ受け取っているのかまで見なければなりません。
不動産しかない相続では、遺言で1人が家や土地をまとめて受け取り、他の相続人がほとんど取得しない形になりやすいです。
そうした場合、請求する側の取り分が少なくなり、請求額が大きくなることがあります。
反対に、請求を受ける側は、自分がどの財産を受け取り、どこまで負担する立場なのかを整理しておくことが大切です。
金額を曖昧なまま話し合いに入ると、感覚のずれだけが大きくなります。
不動産の評価額、各人の取得分、負債の有無までそろえてから計算することで、話し合いの土台が整います。
内容証明で請求意思を示す
請求額の整理ができたら、次は請求する意思を相手にはっきり伝えましょう。
ここで大切なのは、ただ口頭で伝えるだけで終わらせないことです。
不動産しかない相続では、評価額や支払い方法で争いになりやすいため、いつ、誰に、どのような内容で請求したのかを残しておく必要があります。
そこで使われることが多いのが内容証明です。
内容証明を送っておくと、請求した事実を後から確認しやすくなります。
話し合いがまとまらず、あとで調停や裁判に進んだ場合でも、最初にどのような請求をしたのかを示しやすくなります。
また、遺留分の請求は、いつまでもできるわけではありません。
不動産しかない相続では、「評価がまだ決まらないから」と先送りにしがちです。
しかし、動き出しが遅れると不利になりやすいです。
まずは財産を整理し、請求額を固め、期限を意識しながら意思表示まで進めることが大切になります。
不動産しかない相続で遺留分が問題になる場合は早めに整理しよう!

不動産しかない相続で遺留分が問題になると、家や土地をどう分けるかだけでは済みません。
まず財産の全体像を確認し、次に相続人ごとの取り分を整理し、そのうえで遺留分の金額を見ていく流れになります。
順番を飛ばしてしまうと、協議の途中で前提がずれやすくなります。
また、今の遺留分は、不動産そのものを返してもらう話ではなく、お金で清算するのが基本です。
そのため、不動産しかない場合は「いくらになるのか」だけでなく、「そのお金をどう用意するのか」まで考えなければなりません。
すぐに現金を準備できないケースでは、売却を考える場面もあります。
また、支払い時期を調整しながら進めることもあります。
さらに注意したいのは、遺言があっても遺留分の話が終わるとは限らないことです。
請求できる立場にある人が期限内に動けば、遺留分を求める話は残ります。
一方で、気になりながら対応を先送りすると、後に請求や協議を進めにくくなることがあります。
不動産しかない相続では、評価額の見方、誰が負担するのか、共有のままにしてよいのかなど、つまずきやすい点がいくつもあるのです。
このような理由から、一人で判断を急がず、まず前提を整理することが大切です。
静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、不動産の把握や評価、相続手続きの進め方に加え、遺留分に関するご相談も承っています。
お悩みの方は、まずは無料相談をご利用ください。
電話でのお問い合わせ




コメント