家族や親戚が亡くなり、相続が発生した方のなかには「相続手続きの期限はいつまでなのだろう」「万が一、期限を過ぎてしまったらどうなるのだろう」と、気になっている方も多いのではないでしょうか。
基本的な相続の期限として、3か月後の相続放棄、または10か月後の相続税の申告・納付に分けられます。
相続の手続きを後回しにしてしまい、期限が迫っている場合は、早急に対処しなければいけません。
この記事では、相続やそのほかの諸手続きに設定された期限や期限に間に合わなった場合の対処法を解説します。
被相続人の死亡と相続に関する手続きの期限を一覧表にまとめました。
それぞれの手続きの詳しい期限は次項にて詳しく説明しています。
7日以内 |
死亡届の提出 |
---|---|
14日以内 |
社会保険と年金関連の手続き |
3か月以内 |
相続放棄・限定承認の申請 |
4か月以内 |
所得税の申告と納付 |
10か月以内 |
相続財産の調査と収集 遺産分割協議 預貯金や有価証券の換金または名義変更 不動産の名義変更 借入債務の承継手続き 相続税の申告と納付 |
被相続人の死後に速やかに行うべき諸手続きは2つです。
それぞれの手続きについて、詳細を説明します。
人が亡くなったときに、まず提出しなければいけないのは死亡届です。
死亡届の提出期限は死後7日後と決められています。
死亡すると医師は親族へ、死亡診断書もしくは死体検案書を渡します。
死亡届と死亡診断書はセットになっていますので、死亡届の部分に必要事項を記入の上、市町村役場へ提出すると手続き完了です。
市町村役場は死亡届を受け取ると、戸籍を書き換えます。
死亡届を提出する時に火葬許可申請書を提出すると、死体埋葬火葬許可証をもらえますので、その後は葬儀会社と相談して葬儀を進めましょう。
被相続人が年金受給者だった場合は、年金の受給停止手続きが必要です。
国民年金は死亡後14日以内、厚生年金は死亡後10日以内と期限が定められています。
報告もなく年金を受け取ってしまうと不正受給と見なされる可能性があるため、早めに書類を提出しましょう。
そのほかには、健康保険の資格喪失手続きも必要です。
国民健康保険は市町村役場、社会保険は加入している健康保険組合に連絡して書類を提出します。
社会保険の被保険者が死亡した場合、不要されていた人は、健康保険組合から埋葬料の名目でお金がもらえます。
期限が設定されている相続手続きには、以下があります。
それぞれ詳しく解説します。
相続放棄と限定承認の期限は3か月に設定されています。
相続人の確定と調査が終わった後、相続人は以下の3つの相続方法から一つ選ばなければいけません。
単純承認 |
被相続人の財産と負債をすべてそのまま相続する方法 |
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限定承認 |
相続する財産の範囲内で負債を引き継ぐ方法 |
相続放棄 |
財産も負債も一切引き継がず、相続人の権利を完全に放棄する方法 |
単純承認は、いわゆる通常の相続で、被相続人の財産を丸ごと相続します。
相続放棄も限定承認の手続きもしない場合、自動的に単純承認したと見なされます。
3か月という期間は、相続人が相続方法を選択するために設けられた熟慮期間です。
どうしても3か月以上時間がかかる場合は、熟慮期間延長の申立という手続きをすると、3か月経過した後でも相続放棄や限定承認が認められるケースもあります。
準確定申告は、被相続人を代行して相続人が行う確定申告のことをいいます。
被相続人の確定申告の義務は、相続人が引き継ぐという決まりです。
準確定申告が必要なケースは次のとおりです。
準確定申告の期限は、相続人が相続の事実を知った日から4か月です。
4か月を過ぎると延滞金が発生します。
相続税の申告と納付期限は、相続の事実を知った翌日から10か月以内に行わなければなりません。
申告と納税の期限が同じ期日である点に注意が必要です。
どうしても期限内に納税ができない場合は、延納と物納という方法を選択できます。
延納は相続税を将来に渡って分割払いする方法で、延納の申請をするには次の4つの条件を満たす必要があります。
相続財産のほとんどが不動産で、現金が十分になく、不動産の売却に時間を要する場合は延納制度の活用を検討すると良いでしょう。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められている最低限の遺産取得割合です。
もし、遺言や生前贈与によって自身の遺留分が侵害された場合、侵害を受けた相続人は、遺産を多く受け取った相手に対して遺留分侵害額の請求を行うことができます。
遺留分侵害額請求権の期限は、相続の事実と遺留分侵害の事実を知った日から1年以内です。
具体的には、被相続人の死亡と不公平な遺言書が残されていた双方の事実を知った日から1年です。
また、不公平な遺言書の存在を知らずに10年を過ぎた時点でも遺留分侵害額請求権は消滅します。
被相続人の死亡保険金の保険金請求権は3年です。
3年の時効が過ぎてしまうと保険金が受け取れなくなってしまうので、注意が必要です。
相続した不動産の相続登記は、2024年から義務化され3年の期限が設けられました。
不動産の相続の事実を知った日から3年以内です。
以前に相続した人にも義務化の制度が適用されるため、過去の未登記分まで確認する必要があります。
もし、未登記のままにしておくと10万円以下の罰金が課される可能性がありますので、注意が必要です。
相続に関連する手続きの中には、特に期限が設定されていないものもあります。
期限が設定されていない手続きとして、以下があります。
それぞれの詳細を説明します。
遺産分割協議や調停、審判に期限は設けられていません。
しかし、遺産分割協議が進まなければ、相続や相続放棄の話を進めることができず、不動産や預金に手をつけることができないため、実質、期限があると考えておいたほうが良いでしょう。
遺産分割協議が長引けば長引くほど各種控除が使えなくなるため、相続税が上がってしまう可能性もあります。
銀行など、預貯金口座の名義変更と預金の解約払い戻しにも期限は設けられていません。
しかし、5年以上そのままにしておくと時効になってしまう可能性があるため、注意が必要です。
さらに10年が経過してしまうと、休眠口座扱いとされてしまい、公益活動に預金が使われてしまうこともあります。
休眠預金でも申請すると引き出しできるケースは多いとはいえ、余計な手続きを増やさないためにも、できるだけ早めに対応しておいたほうが良いです。
相続の手続きが遅れることで被る不利益は、以下のとおりです。
それぞれの詳細を説明します。
相続税の申告期限を過ぎてしまうと、相続税に関する特例や税額控除が適用されなくなります。
相続税に関する特例や税額控除は、いずれも大幅な減税ができますが、期限内に相続税の申告をすることが前提条件です。
相続税の申告期限を過ぎてしまうと軽減税率が適用されなくなり、相続税額が高くなる可能性もあります。
相続税に適用される軽減税率は、以下の3つです。
小規模宅地等の特例 |
一定の要件を満たすことで、相続した土地の相続税評価額を最大80%減額できる特例 |
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相続税の配偶者控除 |
配偶者の取得金額が「1億6,000万円以下(または法定相続分まで)」であれば、配偶者に課税される相続税が非課税となる税額控除 |
農地の納税猶予の特例 |
農地を取得した相続人が今後も農業を継続する場合、取得した農地の相続税の納税が猶予される |
これらの特例は、申告期限内に手続きをしないと適用されません。
期限ギリギリになって慌てないように早めに専門家へ相談し、スムーズに申告を進めましょう。
相続税の申告期限を過ぎてそのままにしておくと、無申告加算税や重加算税、延滞税によって負債を抱えてしまう可能性があります。
それぞれの税金は、以下のようなケースで発生します。
ケース |
概要 |
|
---|---|---|
無申告加算税 |
期限内に申告しなかった場合に課される | 税務署の指摘を受けた場合は、15%または20%の税金が加算される |
重加算税 |
意図的に財産を隠したり、虚偽の申告をした場合に課される | 無申告だった場合は、納めるべき税金の40%が加算される |
延滞税 |
納付が遅れた場合に課される | 申告期限の翌日から納付日までの日数に応じて課される税金で、年率で計算される |
税金に対するペナルティは、そのままにして置くと雪だるま式に金額が大きくなります。
場合によっては大きな負債を抱えてしまう可能性があるため、注意が必要です。
納付期限が過ぎてしまう場合は、できるだけ早めに税理士へ相談して適切な対応をとる必要があります。
相続手続きをそのままにしておくと、時間が経つにつれて相続人が増えていき、手続きが複雑になる可能性があります。
特に相続人が亡くなると、相続権が次の世代へ引き継がれます。
相続人が増えていき、長い時間が経つほどに相続人が増えすぎて、手続きが複雑化していくというわけです。
相続人が多くなると、遺産分割協議に参加すべき人も増え、全員の合意を得ることが難しくなるおそれがあります。
また、相続関係を証明するための戸籍謄本等の収集も、人数が増えるほど煩雑になります。
万が一相続手続きが間に合わない場合に、とるべき対処法を3つ紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
期限後申告とは文字どおり、期限が過ぎた後に税務署へ申告書を提出する方法です。
無申告に気がついた時点で、税務署に「期限後申告書」を提出します。
申告が遅れた場合、無申告加算税や延滞税といったペナルティが発生しますが、自主的に申告すれば税率が軽減される措置があります。
期限を過ぎてしまった場合でも、できるだけ早く対応することが重要です。
どうしても期限内に間に合わない場合は、相続税を概算の評価額で申告と納付をとりあえず済ませておく方法があります。
概算で申告する場合は、想定される評価額よりも少し多めに申告しておくと、後で税務調査を受けるリスクを減らすことができます。
多めに申告しておけば、延滞税や過少申告加算税が課されることはありません。
多く収めた相続税は更生の請求によって、還付を受けることができます。
なお、更生の請求は、申告期限から5年以内です。
忘れないうちに早めの申告を心がけましょう。
申告期限までに遺産の分割方法が決まらない時は、未分割申告にて対応します。
未分割申告とは、一旦法定相続分で遺産分割を行なったとする申告書を作成して「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付する仮の相続税申告のことをいいます。
仮申告の後に、申告期限から3年以内に遺産分割方法を決定し、決まった金額に基づいてすでに支払った相続税の過不足を修正申告、または更生の請求にて精算して完了です。
相続の手続きには期限が設けられているものがほとんどです。
期限内に滞りなく手続きを完了させなければいけません。
特に相続税の申告と納税は忘れてそのままにしておくと、後になって高額な税金を請求される可能性があります。
手続きに間に合わないときの救済措置も用意されているので、手続きが停滞して期限内の申告が難しい場合は、早めに対応したいところです。
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