借地権付き建物は相続できる!手続き方法やトラブルにならないための注意点を解説

借地に建つ家を相続することになり「どのような流れで手続きをすれば良いのか」「何に気を付ければ良いのか」とお困りの方もいるのではないでしょうか。

借地に建つ家も法的に相続は可能です。通常の相続と違う点は借地権も一緒に引き継ぐことですが、借地権があることによって疑問点やトラブルが増える傾向にあります。

事前に借地権の相続について知識を得ておくと、不要なトラブルを避けられるでしょう。

この記事では、借地権付き建物を相続する際の手続きの流れや注意するべきポイントを解説します。

借地権とは

借地権とは、建物を建てる目的で賃貸料を払って土地を借りる権利のことです。

契約を交わせば、他人から借りた土地に自分の家を建てて住むことが可能です。

その結果、「土地は借地で家は持ち家」という形になります。

借りている土地全てに借地権が発生するのではなく、以下の条件に当てはまるものが借地権とみなされます。

  • 建物を建てて活用している借地
  • 土地の賃貸料を払っている借地

建物を建てずに駐車場や資材置き場として借りている土地は借地権とはみなされません。

また、お互いの合意のもと無償で土地を借りている場合は借地権は発生しませんが、「地上権」が設定されている土地は例外です。

地上権とは一般的な借地権よりも借主の権利が強い契約ですが、地上権が設定されていることはほとんどないでしょう。

自分が相続する借地権の内容がよくわからない方は、専門家に見てもらうことをおすすめします。

借地権の種類

借地権には種類があります。

以下では、一般的によく使われる2種類の借地権を解説します。

普通借地権

借地権の契約が終了しても更新ができるのが普通借地権です。

権利の存続期間は最低30年となっており、それ以下の短い期間の設定はできません。

存続期間の終了後は初回の更新時に20年で更新され、それ以降は10年ごとになります。

借主が更新を希望すれば、貸主は正当な理由がない限り更新を拒否することはできません。

更新をせずに契約を終える場合には、借主所有の借地にある建物を貸主に買い取ってもらう「建物買取請求権」が認められます。

借主の意志によって建物買取請求権が発生し、貸主にこれを拒む権利はありません。

借主に有利なのが普通借地権の特徴です。

定期借地権

定期借地権とは、権利の存続期間が終了すると契約更新ができない借地権です。

存続期間は50年以上と長く設定されます。

普通借地権のように建物買取請求権は認められず、存続期間が終了したら建物を取り壊し更地にして返す必要があります。

契約が満了したことによる立ち退きのため、立ち退き料の要求はできません。

普通借地権とは反対に、貸主にとって有利な条件といえます。

建物のリフォームや建て替えを行う際には、存続期間の残りを考えて行いましょう。

契約の更新はできませんが、貸主と借主の同意があれば新しく再契約を結びなおすことは可能です。

借地権付き建物は相続が可能

借地権と借地に建つ借主所有の建物は、どちらも相続の対象となります。

建物は故人の所有物なので、相続財産だとわかりやすいでしょう。

一方、土地は借り物のため故人の所有物ではありませんが、借地権という権利は故人の所有財産とみなされます。

そのため、借地権も相続の対象となり、名義人が亡くなった後も継続して借地の利用が可能です。

借地権と建物は地主の許可なしで相続できる

借地権と借地権付き建物を相続するには地主の許可は不要です。

相続で借主が変わるのを拒否する権利は地主にはありません。

建物は名義変更の手続きが必要ですが、借地権の名義変更や契約書の更新は不要とされています。

そのため、地主との間で特別な手続きは必要ありません。

法定代理人以外への名義変更は地主の許可がいる

遺言書によって法定相続人以外の人が財産を譲り受けることを遺贈といいます。

遺贈で借地権を引き継ぐ場合には地主の許可が必要であり、何かしらの理由で拒否されれば名義変更はできません。

地主が承諾してくれない場合は弁護士に相談したり、家庭裁判所へ申立てを行ったりすることで遺贈が認められるケースもあります。

引き継ぐ人が法定相続人であれば許可は不要なので、混同しないようにしましょう。

【5ステップ】借地権付き建物を相続する手続き

借地権付き建物を相続するには、以下の流れで手続きを進めます。

  1. 借地権の契約内容を確認する
  2. 遺産分割協議をする
  3. 相続することを地主に知らせる
  4. 必要書類を集める
  5. 法務局へ相続登記の申請をする

手順ごとに詳しく解説します。

1.借地権の契約内容を確認する

まずは借地権の契約書を探します。

どのような契約内容になっているかの確認が必要です。

まれにお互いの口約束だけで土地を貸しているケースもありますが、通常は書面で契約書を残します。

見つからない場合は地主に連絡を取り、お願いすれば契約書を見せてもらえるでしょう。

しかし、地主の名前も連絡先も一切わからないこともあるかもしれません。

そのようなときは、借地の登記簿謄本を取れば地主の名前や住所が記載されています。

契約書が見つかったら次の箇所に注目して内容を確認していきます。

  • 更新のできる普通借地権と更新のできない定期借地権のどちらになっているか
  • 権利の存続期間の残りは何年か
  • 地代はいくらか

このあたりの内容がわかれば、今後建物をリフォームして使っていくか、相続をするかしないかなどの判断材料になります。

2.遺産分割協議をする

遺言書がなく、法定相続人が複数いる場合は遺産分割協議が必要です。

法定相続通りに遺産を分けるなら遺産分割協議は不要ですが、建物や借地権は相続人のなかの誰か1人が引き継ぐケースが多く見られます。

誰か1人が引き継ぐときには、相続人全員の同意を得て遺産分割協議書を作成しなければなりません。

遺産分割協議書は自分でも作成が可能ですが、専門家に頼むのが一般的です。

後々のトラブルを防ぐためのものなので、自分で作成をして重要な事項の記載が漏れてしまっては意味がありません。

記載するべき内容に漏れがないかを専門家に確認しながら進めましょう。

借地権と建物は複数の相続人で共有名義にもできますが、全員の意見が一致しないと契約更新や売却ができないため、おすすめできません。

3.相続することを地主に知らせる

誰が相続するのかが決まったら地主に相続することを伝えます。

地主へは口頭で伝えるだけで十分です。

借地権は名義変更を行う必要がないため、新しい契約書を作成する必要もなく、特別な手続きも求められません。

ただし、例外として借地権の登記(名義の登録)がされているケースがあります。

この場合は借地権も名義変更を行わなければなりませんが、借地権が登記されているケースはかなり少ないです。

一方で法定相続人以外が引き継ぐケースでは、地主に名義変更の承諾を得る必要があります。

口頭での承諾も可能ですが、できれば書面で残しておくのがおすすめです。

4.必要書類を集める

借地権の手続きは不要ですが、建物は名義変更の手続きを行わなければなりません。

手続きを行うには相続のパターンに合わせて、以下の書類が必要です。

相続方法 必要書類
遺産分割協議による相続 ・被相続人の戸籍謄本
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
・法定相続人の戸籍謄本(抄本)
・法定相続人の印鑑証明書
・固定資産課税明細書
・不動産を相続する人の住民票
・遺産分割協議書
法定相続 ・被相続人の戸籍謄本
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
・法定相続人の戸籍謄本(抄本)
・法定相続人の住民票
・固定資産課税明細書
遺言書による相続 ・遺言書
・被相続人の戸籍謄本
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
・不動産を相続する人の戸籍謄本(抄本)
・不動産を相続する人の住民票
・固定資産課税証明書

相続関係が複雑な場合や法定相続人以外の人が引き継ぐ場合は、別の書類が必要になることもあるため法務局へ確認しましょう。

参考記事:相続不動産の登記に必要な書類とは?ケース別の書類一覧や注意点を解説

5.法務局へ相続登記の申請をする

相続する家などの建物は、所有者の名義変更をするための相続登記という手続きが必要です。

以前は相続登記をしないケースもありましたが、現在は義務化されており、相続が発生してから3年以内に行わなければなりません。

申請書と集めた必要書類を持参して法務局へ申請を行います。

申請書は用紙をどこかでもらうのではなく自分で用意して、法務局のホームページに載っている記載例を参考にしながら作成します。

ただし、自分で行うと何度もやり直しになるケースが多く、難しい作業なので専門家に依頼すると良いでしょう。

申請は建物がある地域を管轄する法務局へ行うため、遠方の場合は郵送でのやり取りとなります。

借地に建つ家を相続する際の注意点

借地権付き建物を相続する際には知っておくべき注意点があります。

知らずに損失を被ったり契約違反を犯してしまったりしないよう、事前に知識を身に付けておきましょう。

建て替えや売却には地主の許可がいる

相続したときにはすでに家が古く、増改築や建て替えを考えることも多いです。

建て替えは地主の許可が必要であり、無断で行うと契約違反を指摘される可能性もあります。

増改築についても制限が設けられているケースがあるため、事前に契約書の確認が必要です。

雨漏りの修理など、生活に支障をきたさないための改修は増改築とはみなされず、許可がなくても行えます。

ただし、地主に誤解を与えないように事前に知らせておくほうが良いでしょう。

また、借地権は売却をすることが可能ですが、地主の許可を得てから行わなければなりません。

何かしらの理由で建て替えや売却の許可が得られない場合には、裁判所に申立てを行えます。

名義変更の承諾料を払う義務はない

借地権を相続する際に、名義変更の承諾料を要求されても支払う義務はありません。

法律上では支払いの義務はないため、両者間の個人的な取り決めとなります。

もし慣例として払うのであれば、相場に合った金額かどうかを確認してから払いましょう。

一般的には借地権価格の10%程度が相場です。

法定相続人以外の人が借地権を引き継ぐことを遺贈といいますが、この場合は承諾料が必要となります。

地主が通常の相続とそれ以外の遺贈を混同して請求してくることもあるため注意しましょう。

地代の値上げや立ち退きに応じる必要はない

相続で借主が変わる際に地代を値上げされたり、立ち退きを言い渡されたりするケースもあります。

しかし、このような要求に応じる義務はありません。

故人が交わした契約をそのまま相続人が引き継ぐことになるため、相続をきっかけに一方的な契約内容の変更は不可能です。

もし契約時から長い年数が過ぎ、地代が現在の相場に比べて安すぎるようなら、両者の合意のもと地代を見直しても良いでしょう。

ただし、地主側からの強制力はないため、合意できない地代の値上げや立ち退きには応じる必要はありません。

借主以外の名義で家を建てない

借地には借地権をもつ名義人以外の名義で建物を建ててはいけません。

たとえば、将来家を子どもに相続させることを考えて、家を子どもの名義で建てようと考えるケースもあるでしょう。

しかし、借地権が親の名義であれば、子どもの名義で家を借地に建てるのは転貸しとみなされ、契約違反となります。

もし子どもの名義で家を建てたいのであれば、先に借地権の名義を子どもに変えてから家を建てる必要があります。

地主の同意が得られれば子どもの名義でも家を建てられますが、その際は後々のトラブル防止のため、書面で承諾内容を残しておくことが重要です。

原則として借地権と借地上の建物は同一名義でなければなりません。

借地権付き建物の相続に関するよくある質問

ここまで、借地権付き建物を相続する際の手続きの流れや注意するべきポイントについて解説してきました。

以下では、借地権付き建物を相続する際によくある質問に回答します。

借地権付き建物は相続放棄できる?

借地権付き建物を相続放棄することは可能です。

家も借地権も不要であれば相続放棄をすることによって、管理の手間や費用がかからず負担から開放されます。

ただし、相続放棄には以下の2つの注意点があります。

  • 手続きは相続が発生したと知ってから3ヶ月以内に行う
  • 相続放棄すると全ての財産を放棄しなければならない

相続放棄は期限を過ぎるとできなくなってしまうため、早急に手続きが必要です。

手続きを行うと全ての財産も放棄することになり、「借地権付き建物だけを選んで放棄する」という選択はできません。

手続きが完了したら取り消しはできないため、慎重に決める必要があります。

ほかに預貯金などの財産が残っていないのなら、相続放棄を選ぶのも良いでしょう。

ほかの財産を引き継ぎたい場合は、一度全てを相続した後に借地権付き建物を手放す方法を取る必要があります。

借地権に相続税はかかる?

借地権も相続税の対象です。

相続税は借地権も含め他の不動産や金融資産など、全ての相続財産の総額に対して課税されます。

ただし、総額が3,600万円を超えなければ相続税はかかりません。

非課税になる金額は法定相続人の数によって異なり、次の計算式で決まります。

3,000万円+600万円 × 法定相続人の数

法定相続人が2人なら「3,000万円+600万円 × 2人=4,200万円」の式で算出し、4,200万円を超えなければ相続税はゼロです。

借地権の評価額は自己所有の土地に比べて価格が低いため、所有の土地よりも納税額は低くなります。

普通借地権なら国税庁が公表している路線価(1平方メートル当たりの価額)の、3割~9割程度で評価額が定められています。

借地権を途中で解約することはできる?

原則として借地権を存続期間の途中で解約することはできません。

どちらかの一方的な都合で解約が成立してしまうと、もう一方の権利が守られなくなってしまうからです。

誰も借地権付き建物を使う予定がなければ、借地権と建物の売却を検討するのもおすすめです。

残りの存続期間が長いと買い手が付きやすいのですが、残りの期間が短いと売却は難しくなります。

売却ができなければ契約終了まで待つことになりますが、地主に一度途中解約の相談をしてみるのも良いでしょう。

一方的な都合での解約は認められませんが、両者の合意のもとであれば問題ありません。

地主もほかのことに土地を活用したいと考えている場合もあるため、そのようなタイミングであれば喜んで解約に応じてくれるでしょう。

地主が底地を売却したら自分の借地権はどうなる?

自分の借りている借地を地主が第三者に売却を行うこともあります。

このような場合でも借地権の契約は無効とはならず、契約内容もそのまま第三者に引き継がれるため、何も変わることなく使用できます。

地主が変わったことがきっかけで地代の値上げや立ち退きを要求されるケースもありますが、正当な理由なく応じる必要はありません。

今までの契約内容を一方的に変えることはできず、借主の権利は守られます。

借地権付き建物の相続でお悩みなら静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへ

借地権付き建物の相続は地主とのトラブルの可能性が否定できません。

ほとんどの方は専門的な知識がないため戸惑うことも多いでしょう。

また、手続きや調査などに莫大な時間と手間がかかります。

自分でできるところまでを行うのは賢明な方法ですが、最終的には専門家に任せるのが安心です。

専門家であれば法律に詳しく見落としがちな点にも気付いてくれるため、手続きにミスが起こるのを防げます。

静鉄不動産と相続サポートセンターでは、司法書士・税理士・弁護士の各専門家と連携して最善のサポートが可能です。

大事な相続で後悔が残らないよう、一人ひとりに合ったご提案をいたします。

相続全般に関するお悩みから相続後の不動産の活用方法まで、幅広く対応できます。

相続が発生した方も、これから発生する可能性がある方も、お気軽に静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへご相談ください。

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