相続登記を行う際に、相続人が自分で手続きを行えない場合に必要となるのが委任状です。
しかし、初めて作成する人にとっては、何をどのように書けばよいのか、またどのようなケースで必要になるのかが分かりにくいものです。
実際、相続登記や委任状は、書き方の前に「そもそも何が必要なのか」という整理の段階で迷われる方が少なくありません。
この記事では、相続登記で使う委任状について、その仕組みや書き方などを分かりやすく整理します。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、相続が始まった直後の状況整理から、不動産を含めた全体像の確認までを一緒に行っています。
初めての相続手続きで何を準備すべきか迷われている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
相続登記における委任状の役割

相続登記に必要な委任状とは、相続人が代理人に対して相続登記申請などの手続きを委任したことを証明する書類です。
相続登記の申請は本来、名義を受け継ぐ相続人自身が行うのが原則です。
しかし、仕事や体調などの事情で自分で行えない場合に第三者に代理を依頼できます。
その際に提出を求められるのが委任状であり、法務局や関係機関において正式な代理権限を証明する重要書類となります。
委任状が適切に用意されていることで、代理人は相続人に代わって登記手続きを進めることが可能です。
ただし、内容に不備があると法務局で受理されず手続きが滞ってしまいます。
委任状は「誰(委任者)が、誰(受任者)に、どの不動産について、どのような登記手続きを委任するか」を明確に示す必要があり、相続人全員の意思を形式的に示す意味でも欠かせない書類です。
正しく作成・提出することで、代理人による円滑な相続登記手続きを支える役割を果たします。
相続登記で委任状が必要なケース

相続登記で委任状が必要となるのは、相続人本人以外の人物が登記申請を行う場合です。
具体的には、次の表のようなケースでは委任状の提出が求められます。
| ケース | 委任状が必要な理由・ポイント | 補足・具体例 |
|---|---|---|
| 司法書士や弁護士に依頼する場合 | ・相続登記の手続きを専門家(司法書士・弁護士)に代理してもらう際は、必ず委任状が必要 ・資格者であっても相続人本人ではない第三者が申請するため、法務局に対し正式な権限証明が必要 |
例:司法書士に相続登記を依頼する際、委任者(相続人)→司法書士あての委任状を添付 |
| 親族や友人などが代理人となる場合 | ・相続人の配偶者・子・兄弟姉妹・友人などが代理で手続きを行う場合も委任状が必要 ・家族であっても法定代理人でない限り、委任状がなければ法務局は手続きを受理しない |
例:高齢の親の代わりに子どもが申請する場合など |
| 共同相続人のうち1人が代表して手続きを行う場合 | 複数の相続人の中で1人が他の相続人全員を代表して登記申請する場合、他の相続人から代表者への委任状が必要 | 例:遺産分割協議で「長男が代表して登記を行う」と決まった場合、他の相続人全員が長男宛に委任状を作成 |
| 任意後見人や財産管理人に依頼する場合 | ・任意後見人や財産管理人は法定代理人ではなく契約による代理人 ・そのため、相続人本人が委任の意思を示した書面(委任状)が必要 |
例:高齢の相続人が任意後見契約を結び、後見人が登記申請を代行するケース |
| 未成年の相続人がいる場合 | ・未成年の相続人がいる場合は、原則として親権者(法定代理人)が手続きを行う ・戸籍謄本の添付で親権者を証明する |
・委任者欄:未成年本人の氏名を記載 ・署名欄:「法定代理人〇〇(親権者名)」と署名 ・両親が揃っている場合や片親の場合を問わず、親権者を確認 |
親権者による未成年者の代理について誤った形式で委任状を作成すると、委任状自体が無効となり相続登記が進みません。
未成年が相続人となる場合は、事前に戸籍等で親権者を確認し、正しい方法で委任状を用意することが不可欠です。
なお、司法書士や親族に登記手続きを任せる場合でも、「このケースで本当に委任状が必要なのか」「どこまで任せられるのか」と判断に迷う場面があります。
当社では、相続人の状況や不動産の内容を踏まえたうえで、委任状が必要なケースかどうかの確認からご相談をお受けしています。
専門的な判断が難しい場合も、お気軽にお問い合わせください。
相続登記で委任状が不要なケース

次のようなケースでは、相続登記に委任状が不要です。
| ケース | 委任状が不要な理由・ポイント | 補足・具体例 |
|---|---|---|
| 相続人本人が自分で手続きする場合 | ・相続登記は原則として相続人自身が申請可能 ・本人が直接手続きする場合は、他者に委任する必要がないため委任状は不要 |
相続人本人が自ら法務局に登記申請書と必要書類を提出する場合 |
| 未成年後見人や成年後見人などの法定代理人が申請する場合 | ・法定代理人には法律上の代理権があるため、委任状を別途作る必要はない ・親権者や成年後見人が本人に代わって登記を行える |
・相続人が未成年 → 親権者が戸籍謄本を添付して申請(委任状不要) ・相続人が成年被後見人 → 成年後見人が「後見登記等に関する登記事項証明書」を添付して申請(委任状不要) |
| 共同相続人全員が法定相続分どおりに登記申請する場合 | 遺産分割をせずに相続人全員が法定相続分どおりに登記を行う場合は、全員が共同申請人となるため委任関係が発生しない | ・相続人全員が法定相続分で共有登記を申請する場合 ※代表者がまとめて提出しても「代理」ではなく「共同申請」扱い ※ただし代表者以外には登記識別情報が交付されないため、便宜上委任状を作成するケースもある |
ただし不要な場合であっても、添付書類として戸籍謄本や後見登記の証明書など代理権限を証明する資料は別途提出しなければならない点に注意しましょう。
また、実務上は「手続き上本当に委任状が不要か」迷うことも多いため、不安な場合は専門家に確認することをおすすめします。
相続登記の委任状に記載すべき項目

相続登記で提出する委任状には、決まった書式はありません。
必要な情報が揃っていれば、役所指定の用紙でなくとも相続登記の申請に使えます。
市販のテンプレートや依頼した司法書士が用意する様式を使っても構いませんが、形式より内容の正確さが重視されます。
相続登記の委任状に必ず記載すべき主な項目は、次の通りです。
- 相続登記申請を委任する旨
- 委任者(相続人)の情報
- 代理人の情報
- 登記の目的
- 登記の原因
- 不動産の表示
- 委任者(相続人)の署名・押印
以下からは、各項目について具体的にどのように書けばよいかを詳しく解説します。
相続登記申請を委任する旨
まず委任状の本文で「登記申請を委任する」旨を明記することになります。
通常、委任状のタイトル(「委任状」)を記載した後、代理人となる人の住所・氏名を記載し、続けて次のような文言を記載します。
「私は、上記の者を代理人と定め、次の登記申請に関わる一切の権限を委任する」
この一文によって、相続登記の申請手続きを代理人に一任する意思を表明します。
言い回しは上記のような定型で問題ありません。
ポイントは、誰にどの範囲の手続き権限を与えるのかが明確に伝わることです。
委任者(相続人)の情報
委任状には委任者となる相続人自身の情報も正確に記載しましょう。
具体的には、相続人の住所と氏名です。
住所は住民票の表記どおりに記載する必要があります。
氏名も戸籍や住民票のとおり正式に記載しましょう(※婚姻等で登記名義人の氏名が被相続人と異なる場合は、別途氏名変更登記が必要になる場合があります)。
なお、共同相続で複数の相続人がそれぞれ不動産を取得する場合には、各相続人の持分(相続割合)を記載することが必要です。
一般的な委任状の書式では、被相続人の氏名を冒頭に記載し、次行以降に「相続人○○(住所)持分○分の○」という形で相続人ごとの住所・氏名と持分を一覧で記載します。
相続人が一人で不動産全部を相続する場合は持分欄は「全部」などとします。
代理人の情報
次に代理人(受任者)の情報を記載することになります。
委任状では、誰に代理を依頼するのかを明示しなければなりません。
そのため、受任者となる人物の住所と氏名を正確に書きます。
受任者の住所も基本的に住民票等の公的記録どおりに記載し、ハイフン等で区切っても構いません。
受任者が司法書士や弁護士などの場合は、氏名の後ろに「○○司法書士」「○○弁護士」など資格を明記しておくと親切です。
個人の親族等であれば単に氏名を書くだけで問題ありません。
大切なのは、法務局が「誰が代理人として手続きを行うのか」を一見して把握できるようにすることです。
登記の目的
登記の目的の欄には、相続によって不動産の所有権や持分をどのように移転するのかを記載することになります。
被相続人がその不動産を単独で所有していた場合、登記の目的は「所有権移転」と記載します。
相続によって所有権そのものが被相続人から相続人に移転することを意味するものです。
一方、被相続人が不動産を共有していた場合(たとえば被相続人が1/2持分を持っていたなど)、登記の目的は「○○(被相続人の氏名)持分全部移転」と記載することになります。
共有持分の全部を相続で移転するケースを示す記載です。
共有持分の一部のみを移転する場合(たとえば持分のうち一部だけある相続人が取得するような特殊ケース)には「持分一部移転」とすることもあるものの、通常の相続登記では遺産分割の結果として持分全部移転となることが多いです。
いずれの場合も、登記の目的は登記事項証明書(登記簿謄本)上の権利関係に対応した記載にする必要があります。
不明な場合は事前に登記事項証明書を取得して確認してから記載しましょう。
登記の原因
登記の原因の欄には、当該不動産について権利が移転することになった原因(事実や法律行為)とその発生日を記載します。
相続登記の場合、被相続人の死亡によって権利が移転するため、原因は「令和○年○月○日相続」という形で記載します。
日付は被相続人が亡くなった日(相続が開始した日)を和暦で記入するのが一般的です。
たとえば被相続人が令和5年4月1日に亡くなった場合、「登記原因令和5年4月1日相続」となります。
「相続」は原因事象、令和5年4月1日はその効力が発生した日付です。
日付は戸籍謄本や除籍謄本で確認できるため、正確に間違いなく記載しましょう。
なお、相続登記では登記原因証明情報として被相続人の死亡の事実を証する戸籍や除籍謄本等を添付します。
登記の原因の日付と戸籍の記載日が一致しているかも審査されるため、一字一句ミスのないよう記載することが重要です。
不動産の表示
不動産の表示には、相続登記の対象となる不動産の内容を記載します。
基本的には登記事項証明書(不動産登記簿)の「表題部」に記載されている情報を写します。
具体的には、以下のような項目です。
| 不動産の種類 | 主な記載項目 |
|---|---|
| 土地の場合 | ・所在(〇〇市〇〇町) ・地番・地目(宅地・畑など) ・地積(○○平方メートル) |
| 建物の場合 | ・所在(〇〇市〇〇町〇番地〇) ・家屋番号・種類(居宅、店舗など) ・構造(木造瓦葺2階建など) ・床面積(○○㎡) |
| 区分建物(マンションの一室など)の場合 | ・一棟の建物の表示(所在・建物名など) ・専有部分の家屋番号 ・建物の名称 ・種類 ・構造 ・床面積 ・敷地権の目的たる土地の表示 ・敷地権の割合 |
ただし、法務局では、委任状については土地なら「所在・地番」、建物なら「所在・家屋番号」程度の記載でも問題ないとしています。
たとえば「○○市○○町1番2の土地」や「○○市○○町1番地2家屋番号1番2の建物」という簡略な表記でも受理されています。
とはいえ、対象不動産を特定できるよう正確に記載する必要がある点は変わりません。
不動産の所在地や地番を誤って記入すると全く別の土地の話になってしまうため、手元の権利証(登記済証)や固定資産税納税通知書の課税明細書などを参照しながら慎重に記載しましょう。
もし相続財産に多数の不動産が含まれており、一枚の委任状に収まりきらない場合は次の「注意点」の項で述べるように複数ページにまたがって記載することも可能です。
その場合でも各不動産の表示は上記の要領で漏れなく記載してください。
委任者(相続人)の署名・押印
委任状の末尾には、作成日付を記入し、委任者の住所・氏名を記載したうえで、署名(自署)または記名押印を行います。
署名・押印については、不動産登記の委任状では実印でなく認印でも問題ありません。
一般的に役所提出書類は実印が望ましいイメージがありますが、登記申請の委任状で重要なのは「本人の意思による委任」であることであり、印鑑の種類は問われません。
市区町村に登録した実印でなく、いわゆる認印やシャチハタ以外のスタンプ印でも有効です。
なお、法令上は「署名(自署)した場合は押印不要」とされており、反対にパソコン等で氏名を印字した場合(記名)は押印が必要です。
実務では相続人本人が自署し、念のため認印を押すケースも多く見られます。
いずれにせよ、記名のみで押印がない委任状や、署名も押印もない委任状は無効となるため注意しましょう(本人が内容を承認したと認められず、代理権が証明できません)。
相続登記の委任状に添付する書類

相続登記で代理人による申請を行う場合、委任状そのものに加えて次のいくつかの書類を併せて提出する必要があります。
- 本人確認書類
- 代理人に関する資料
- その他(法務局で求められる可能性がある)
ここからは、委任状とともに法務局から提出を求められる主な書類を詳しく紹介します。
本人確認書類
代理人が相続登記を申請する場合に、法務局へ提出する必須書類は「委任状(代理権限証明情報)」であり、原則として委任者本人の本人確認書類の提出は求められません。
ただし、司法書士などの専門家に相続登記を依頼する場合や、法定相続人情報の提供依頼などの関連手続を代理で行う場合には、委任者本人の意思確認・本人確認のために、本人確認書類の提示や写しの提出を求められることがあります。
この本人確認は、法務局の申請要件というよりも、司法書士の職務上の義務(犯収法対応等)や、手続内容に応じた確認として行われるものです。
主に次のような書類が、本人確認書類として使われます。
- 運転免許証のコピー(表面と裏面を両面提出)
- マイナンバーカード(個人番号カード)のコピー(顔写真付きの表面。裏面の個人番号は不要)
- 住民票の写し(発行後3か月以内のもの)
- 健康保険証のコピー(氏名・住所が記載されている面)
委任状と本人確認書類の住所が違う場合の対処
委任状に記載した委任者の住所と、提出する本人確認書類に記載の住所が一致しないケースでは注意が必要です。
たとえば転居後に運転免許証の住所変更をしていない場合や、住民票と免許証で住所表記が異なる場合などです。
法務局は委任状の住所と本人確認資料の住所が異なると、代理権の証明が不十分と判断することがあります。
そのようなときは、次のような対応を行うことになります。
| 想定される状況 | 対応方法 | 補足・具体例 |
|---|---|---|
| 本人確認書類が旧住所のままの場合 | 現住所が確認できる補助書類を併せて提出する | 住民票の写し、現住所宛の郵便物(公共料金の請求書など) |
| 委任状の住所と本人確認書類の住所が不一致の場合 | 委任状は住民票に基づく現住所で記載し、併せて「住所が相違する理由書」を作成・添付する | 「引越し直後で運転免許証の住所変更が未了であるため」などの説明文 |
| 免許証の住所変更漏れがある場合 | 住民票の写しを同時に提出し、同一人物であることを補完的に証明する | 免許証+住民票をセットで提出することで本人確認が円滑になる |
委任状と本人確認資料の住所がやむを得ず不一致になる場合にはそのまま提出せず、必ず補助的な証明資料を付け加えましょう。
住所相違を放置して提出してしまうと、登記官から追加資料の提出を求められたり、最悪の場合申請が補正・却下となることもあります。
せっかく申請した手続きが遅延しないよう、提出前に住所の整合性を確認しておきましょう。
代理人に関する資料
代理人が登記申請を行う場合、代理権限および代理人の身元を証明する資料も必要になります。
代理人の立場や資格によって提出すべき書類は異なります。
主な書類は、以下のとおりです。
| 代理人の区分 | 提出が求められる主な資料 | 補足・具体例 |
|---|---|---|
| 司法書士・弁護士が代理人の場合 | 資格証明書(資格証明情報) | 司法書士名簿の登載事項証明書など ※資格者代理人として申請できる立場であることを証明するために添付する ※弁護士の場合も同様の取り扱い |
| 任意後見人・財産管理人が代理人の場合 | 契約書や審判書の写し | 任意後見契約公正証書、家庭裁判所による任意後見監督人選任の審判書など ※任意後見が正式に開始し、代理権が発生していることを示す資料が必要 |
また、家族信託などで財産管理を委任されている人が代理を務める場合も、当該契約書の写し等で権限を示すことが必要です。
その他(法務局で求められる可能性がある)
法務局は登記申請の内容を審査する過程で、提出された情報だけでは判断が難しい場合や不明点がある場合に、追加の資料提出を求めることがあります。
相続登記の委任状提出に関連して、代表的に求められることがある補足資料は次のとおりです。
| 項目 | 内容 | 具体例・補足 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本の追加提出 | 相続関係に不明点がある場合、すでに提出した戸籍とは別に、追加の戸籍謄本の提出を求められることがある。 | 代襲相続(被相続人より先に子が死亡し、孫が相続人となるケース)がある場合、その親子関係を補足する戸籍が必要になることがある |
| 相続関係説明図の訂正・追加 | 登記申請時に添付した相続関係説明図に不明点や誤りがある場合、訂正や補足を求められることがある。 | 法務局の指示に従い、続柄の修正や相続人の追加、補足資料の提出を行う |
| 遺産分割協議書の写し | 申請情報だけでは相続人全員の合意内容が確認できない場合、遺産分割協議書のコピーの提出を求められることがある。 | 特に、相続人間で取得する財産に偏りがあるケースでは、全員の合意を確認するため提出が必要となることがある |
| 不動産の登記事項証明書 | 登記内容の事前確認のため、対象不動産の最新の登記事項証明書(登記簿謄本)の提出を求められることがある。 | 通常は申請前に確認しているが、法務局から要請があった場合は提出する |
| 委任状の再提出・補正 | 提出した委任状に記載漏れ、誤記、押印漏れなどの不備があった場合、再提出や補正を求められることがある。 | 押印漏れ箇所への追加押印、新たに作成し直した委任状の提出など |
相続人に改めて署名押印を依頼しなければならないケースもあるため、提出前のチェックが重要です。
委任状と遺産分割協議書の関係
相続登記で委任状を作成する際は、遺産分割協議書の内容との整合性に十分注意する必要があります。
遺産分割協議書には誰がどの財産を取得するかが全相続人の合意のもと記されています。
その内容に基づいて登記申請を行うため、委任状の記載内容も協議書と矛盾しないようにしなければなりません。
たとえば、遺産分割協議書で「不動産Aは長男Xが相続し、登記手続きは長男Xが代表して行う」旨が書かれているとします。
この場合、もし長男X自身が申請せず司法書士に依頼するなら、他の相続人全員から司法書士への委任状が必要です。
あるいは長男Xが代表して自分で申請する場合でも、協議書に記載のない別の親族Yが代理人として申請することはできません。
協議書の取り決めと異なる委任状が出されると、法務局は代理権の根拠が不十分と判断し、申請を受理しない可能性があります。
静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、不動産の名義変更(相続登記)を見据えて、司法書士など士業と情報共有しながら遺産分割の内容と登記手続きが矛盾していないかを確認しています。
協議書段階から登記申請を念頭に置いて進めることで、後々の手続きがスムーズに進むようサポートいたします。
相続登記の委任状を作成する際の注意点

相続登記の委任状は、代理人に登記申請の権限を与える重要書類です。
そのため内容に不備があると法務局で受理されず、補正や再提出が必要になる場合があります。
記載内容や署名方法、書類の扱い方に注意して作成することが大切です。
委任状を作成する際に知っておきたい主な注意点は、次の通りです。
- 記載漏れ・誤記
- 白紙委任状
- 委任状が複数枚に及ぶ場合は、「契印」を押印する
- 実印か認印を使う
- 委任状の有効期間
- 撤回の方法
- 遠方の相続人に原本を郵送すると手続きが遅れやすい
以下から、それぞれ詳しく解説します。
記載漏れ・誤記
委任状の記載事項に漏れや誤りがあると、法務局で代理権が正しく認められないことがあります。
特に、以下の項目は戸籍や住民票、登記事項証明書などと照合しながら正確に記載する必要があります。
- 相続人(委任者)や代理人(受任者)の氏名
- 住所
- 不動産の表示
- 登記の目的・原因
住所に旧字体と新字体の違いがある、氏名のフリガナを誤記した、地番を記載し忘れた、といったミスでも補正の対象となります。
また、記載漏れや誤記が多い委任状は信頼性を欠くため、内容によっては再度正しく作成し直すよう指示されることもあります。
委任状を作成したら提出前に第三者の目でチェックするくらい慎重に確認しましょう。
なお、万一書き間違いを見つけた場合には、後述する訂正方法(二重線と訂正印)で対応するものの、訂正箇所が多いと見た目にも不自然になります。
重大な誤記が判明した場合は、潔く白紙から書き直すほうが結果的に早いこともあります。
白紙委任状
白紙委任状とは、本来記載しておくべき項目の一部を空欄のまま委任者が署名押印してしまった書類を指します。
たとえば代理人名や不動産の表示を空欄にして相続人が署名押印し、後から他人がその空欄を埋めるようなケースです。
白紙委任状は記入漏れの段階では本人の意思確認が不十分なうえ、後から内容を書き換えられるリスクがあります。
委任者の意図しない事項を勝手に記入されてしまうと、重大なトラブルに発展しかねません。
相続登記では、委任する範囲(対象手続きや不動産)が明確であることが重要であり、空欄がある状態の委任状は適切とはいえません。
そのため、相続人本人としても内容を確認できない白紙委任状は作成しないようにしましょう。
やむを得ず一部未定の事項がある場合でも、未定部分が決まり次第、必ず委任者自身が内容を記入してから署名押印するようにしてください。
委任状が複数枚に及ぶ場合は、「契印」を押印する
委任状の記載内容が多く1枚に収まりきらず複数ページにわたる場合、各ページのつながりを証明するために「契印」を押します。
契印とは、2枚以上の書類が正当につながった一続きの文書であることを示すためにまたがって押す印のことです。
具体的には、複数の紙を重ねてページの境目に半分ずつ印影がかかるように実印または契約印を押印します。
もし契印がないと、悪意の第三者によって後から1ページ目と2ページ目を差し替えられる余地が生じるなど、文書の真正さに疑義が生じてしまいます。
相続登記の委任状では、不動産が多数ある場合などに2枚以上になることがあるため、必ず契印を行いましょう。
契印により、提出先である法務局にも「全ページが委任者の意思で作成された連続した文書」であることが伝わり、安心です。
実印か認印を使う
前述のとおり、相続登記の委任状に使用する印鑑は実印である必要はなく、認印でも構いません。
登記申請書を本人名義でする場合は実印+印鑑証明が必要ですが、委任状の場合は代理権限の確認が主目的であるため、印鑑の種類自体は問われない取り扱いです。
「重要な書類だから念のため実印で」と感じる方は実印を押してももちろん問題ありませんが、法律上は署名(自筆サイン)していれば押印省略可でもあります。
ただし、署名せずにパソコン等で印字した場合は押印が必要です。
実務上は、本人直筆の署名+認印押印という形で作成される例が多く見られます。
いずれの場合も、相続人本人が自ら内容を確認し意思表示していることが伝われば要件は満たします。
委任状の有効期間
相続登記の委任状には、一般的に有効期限の記載は不要です。
委任状に「この委任状は〇年〇月〇日まで有効」といった期限を設ける欄はありません。
原則として、一度発行・提出した委任状は、登記手続きが完了するまで有効とみなされます。
委任契約は基本的に当事者の意思で終了させることができるため、登記申請が完了する前であれば、事情が変わった場合などに後述する方法で撤回することが可能です。
撤回の方法
いったん代理人に相続登記を委任したものの、事情が変わって委任を取りやめたい場合(委任状の撤回)には、速やかにその旨を通知する必要があります。
具体的な撤回の方法としては、法務局または代理人に対して書面で撤回の意思表示を行う形が一般的です。
以下に撤回のタイミングや内容、注意点をまとめました。
| タイミング | 方法 | 内容・注意点 |
|---|---|---|
| 登記申請後(登記完了前) | 法務局への取下げ申請 | ・登記申請がすでに提出されている場合でも、登記が完了するまでの間であれば、申請人はいつでも申請を取り下げることができる ・代理人経由で申請している場合でも、委任者本人が法務局に「申請意思の撤回による取下げ願」を提出することが可能 ※代理人が取下げ手続きを行うには、当初の委任状に「取下げ権限」が含まれている必要があり、含まれていない場合は取下げ専用の新たな委任状が必要となる点に注意 |
| 登記申請前 | 代理人への通知(委任の解除) | ・まだ登記申請が行われていない場合は、委任していた代理人に対し、委任契約を解除する旨を伝える ・確実な方法としては、「〇年〇月〇日付の委任状による委任を撤回します」と記載した書面(内容証明郵便など)で通知することが望ましい ・口頭でも法律上は撤回可能だが、後日のトラブル防止のため書面による通知が推奨される |
なお、代理人が司法書士である場合、委任を撤回するとその司法書士は代理人として申請行為を行えなくなります。
相続登記手続き自体を続行するには、改めて別の司法書士に依頼し直さなければなりません。
一度提出した申請を途中で止めると、登録免許税の還付など手続きが煩雑になるケースもあります。
そのため、どうしてもという場合以外は、最初の委任時に慎重な検討をおすすめします。
遠方の相続人に原本を郵送すると手続きが遅れやすい
相続人が遠方に住んでいる場合でも、委任状のやり取りは郵送で行うことが可能です。
実印の押印や署名をもらうために現地に出向く必要はなく、書類を郵送して記入押印してもらい、返送してもらう方法で対応できます。
ただし、郵送でのやり取りはどうしても日数がかかるため、手続きに期限がある場合は余裕を持った準備が必要です。
また、郵送で委任状を作成する際にありがちなのが、記載内容の誤りです。
不動産の所在地や地番、登記原因の日付など、細かな項目で書き間違いが生じやすい部分があります。
遠隔地の相続人に委任状を書いてもらう場合には、あらかじめ必要情報を正確に伝えておくことが重要です。
具体的には、登記事項証明書のコピーや固定資産税通知書の写しを同封して参考にしてもらったり、記入例を作成して送りましょう。
さらに、原本の送付・返送には時間を要するため、スケジュールにも注意します。
たとえば相続登記の申請期限ギリギリに郵送で委任状を取り交わそうとすると、郵便事情によっては間に合わない恐れもあります。
なるべく早めに手配を始め、必要に応じて速達郵便や宅配便を利用するなどして遅延リスクを下げましょう。
委任状を用意できないときの代替手段
相続人が高齢で自筆署名が困難であったり、前述のように遠方でなかなか郵送のやり取りが進まなかったりする場合があるかもしれません。
そうした場合には、次のような代替策があります。
| 方法 | 内容 | 補足・具体例 |
|---|---|---|
| 公証役場で委任証書を作成する | ・相続人本人が公証役場に出向き、代理人に相続登記を委任する旨の委任状(委任証書)を、公証人に作成してもらう方法 ・公証人が本人の意思を直接確認したうえで作成するため、信用性が高く、本人確認も確実に行われる |
・公正証書による委任状を用いることで、法務局での審査がスムーズに進む傾向がある ・高齢者や、意思確認をより厳格に求められるケースで有効 |
| 早めに司法書士に相談する | 委任状の取り交わしが難航しそうな場合、早めに司法書士へ相談することで、状況に応じた代替案を提案してもらえることがある | ・署名が困難な相続人について家庭裁判所で後見人選任を検討 ・法定相続情報証明制度を活用し、提出書類を簡素化する対応 |
専門家と相談しながら、最適な手続きを選ぶことがおすすめです。
代理人選びがトラブルにつながりやすい
相続登記の代理人は、相続人本人に代わって重要な登記手続きを行う立場です。
そのため、信頼できる人物を選ぶことが重要です。
親族だからといって無条件に安心とは限らず、逆に司法書士など資格者であっても相性があります。
代理人選びの際は以下の点に注意しましょう。
| 代理人の種類・観点 | 注意点 | 補足・具体例 |
|---|---|---|
| 親族を代理人にする場合 | ・親族が代理人となる場合でも、委任者本人が作成した委任状が必要 ・家族であっても、本人の意思確認ができる形で作成する必要がある ・代理できる範囲は委任状に記載された内容に限定される |
後々のトラブルを避けるため、委任状には対象となる不動産や手続き内容を具体的に記載し、口頭の約束もできるだけ書面に残しておくと安心 |
| 司法書士や弁護士に依頼する場合 | 資格者に依頼する際は、資格証明の有無や費用の見積もりを事前に確認することが重要 | ・司法書士であれば司法書士会、弁護士であれば弁護士会の名簿で登録状況を確認できる ・委任状や見積書の内容を丁寧に説明してくれる相手を選ぶと安心 |
| 必要書類や手続き方法の確認 | 誰を代理人にするかによって、相続登記の進め方や必要書類が異なる場合がある | 司法書士に依頼する場合は戸籍収集から登記申請まで任せられることが多いが、親族が代理人の場合は戸籍の取り寄せを相続人本人が行うなど役割分担が生じることがある ※事前に「誰が何を行うか」を明確にしておくとよい。 |
誰を代理人に選ぶかによって、相続登記の手続きの進み具合や安心感は変わります。
当社は、不動産の相続手続きを円滑に進めるため、実績のある司法書士や税理士と日常的に連携しております。
相続人様の状況に応じて、最適な進め方や専門家をご紹介し、一括して手続きを支援できる体制を整えています。
相続登記の委任状の提出方法

作成した委任状は、登記申請書とともに法務局へ提出します。
提出方法は、代理人の種類や依頼方法によって次のいずれかとなります。
| 提出者 | 提出方法 | 内容・補足 |
|---|---|---|
| 司法書士が代理で申請する場合 | ・オンライン申請 ・書面申請 | ・司法書士が必要書類一式を法務局に提出する ・委任状も他の添付書類と併せて司法書士から一括提出される |
| 相続人本人(または代表者)が申請する場合 | ・法務局の窓口提出 ・郵送提出 |
・相続人本人が自ら書類をそろえて法務局へ申請する ・共同相続人の代表者がまとめて提出するケースもあり、その場合は代表者が一括して持ち込む ・提出後は法務局で審査が行われ、特に問題がなければ1〜2週間程度で登記が完了する |
提出した委任状は、原則として登記完了後も返却されません。
必要であれば提出前にコピーを取って、控えを保管しましょう。
また、委任状が受理されると、以後は基本的に代理人とのやり取りになります。
万一内容に不備があった場合、法務局から代理人宛に連絡が行き、補正対応となります。
不安な点がある場合は、登記の専門家である司法書士などに書類チェックだけお願いしましょう。
当社では、相続登記という名義変更の手続きだけで終わらせず、その後の不動産の管理や活用まで見据えたサポート相談を承っています。
提出前の段階から全体の流れを確認し、お客様にとって最適な形で手続きを進められるようお手伝いいたします。
相続登記の委任状でよくある質問

相続登記の委任状に関して、相続人の人数が多い場合の対応や、記載を間違えたときの修正方法など、実務上よく寄せられる疑問があります。
よくある質問は、次の通りです。
- 複数の相続人がいる場合はどうすればいいの?
- 字を間違った場合はどうすればいいの?
- 不備を指摘された場合はどうすればいいの?
以下から、各質問について、Q&A形式で回答していきます。
複数の相続人がいる場合はどうすればいいの?
相続人が複数いる場合、基本的には相続人一人につき一通の委任状を作成します。
それぞれの相続人が自分の意思で代理を委任する必要があるため、1枚の委任状に複数人分の署名をまとめるのではなく、個別に作成するのが一般的です。
相続人ごとに委任状を分けることで、各人の委任意思が明確に示せるからです。
なお、遺産分割協議により相続人のうち1人だけが不動産を取得し、その人が代表して自分名義の登記を行う場合があります。
このケースでは他の相続人は登記申請人とはならないため、他の相続人から代表者への委任状は不要です(協議書に全員の同意署名があることで足ります)。
字を間違った場合はどうすればいいの?
修正液や修正テープの使用は認められていません。
書き損じがあった場合は、二重線を引いてその上から訂正印(委任状に押印したものと同じ印鑑)を押して修正します。
たとえば「田中」を「佐中」と誤記した場合、「佐」の字に二本線を引き(消しすぎないよう一本線ではなく二本線)、「田中」の正しい文字を横に書き加え、「田中」の近くに訂正印を押します。
訂正印は、委任状の署名欄に押したものと同じ印鑑を用いるのが原則です。
署名のみで押印がない場合は原則修正不可となるため、その場合は書き直します。
また、訂正箇所が複数に及ぶと見づらくなるため、訂正は最小限にとどめるのが望ましいです。
特に重要事項を間違えたときは、潔く最初から作り直した方が確実でしょう。
不備を指摘された場合はどうすればいいの?
法務局から委任状の不備を指摘された場合は、指摘内容に従って不足情報を補い、必要に応じて委任状を再作成します。
法務局から指摘された際の主な対応方法は、以下の通りです。
| 不備の種類 | 対応方法 | 補足説明 |
|---|---|---|
| 記載漏れの補充 | ・不動産の地番などを記載し忘れた場合は、追記が可能であれば追記し訂正印を押す ・追記が難しい場合は、新しい委任状を作り直す |
軽微な漏れなら訂正印で対応可能だが、重要項目の場合は再作成が望ましい |
| 押印の欠落 | ・原本を返却してもらい、該当箇所に押印して再提出する ・郵送申請の場合は、一度書類を送り返してもらい押印後に再送付する |
代理人経由の場合も、押印は必ず委任者本人に依頼する |
| 登記の目的や原因の誤り | たとえば「持分全部移転」とすべきところを「所有権移転」と記載した場合などは、新しい委任状を作成し直す | 相続人本人の再署名・押印が必要 |
| 代理権の根幹に関わる不備 | 委任者や受任者の氏名・住所の誤り、親権者署名の欠落などは、正しい内容で委任状を再取得する | ・代理権の証明に関わる不備は軽微訂正で済ませてはいけない ・再作成が原則 |
法務局からの指摘を確認し、内容に沿って補正すれば手続きは問題なく進みます。
補正が完了すれば、改めて審査がなされ登記が完了します。
重要なのは「慌てず正確に対処すること」。
疑問があれば担当登記官や依頼している司法書士に相談しましょう。
正しく委任状を作って相続登記をスムーズに進めよう

相続登記を代理人に依頼する場合、委任状は手続きを進めるうえで欠かせない重要書類です。
記載内容に誤りがあると補正が必要になり、手続きに時間がかかることがあります。
逆に言えば、必要事項を正確に記載し、署名・押印や作成日など基本要素をきちんと整えることで、相続登記は驚くほどスムーズに進みます。
特に遠方の相続人がいる場合や代理人を選定する際には、事前の情報共有や資料確認を丁寧に行うことで、手続きの滞りを防止できるのです。
たとえば不動産の情報は登記事項証明書を互いに確認しあう、日付や氏名の漢字は戸籍どおりかチェックする、といった基本を押さえて委任状を準備しましょう。
相続登記は単なる名義変更手続きにとどまらず、法律や税金など幅広い知識が関わる複雑な場面でもあります。
静岡で相続に直面した際は、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターにぜひご相談ください。
地域に根ざした実績と、司法書士・税理士など専門士業との強力な連携により、相続登記をはじめとする複雑な手続きを一括で支えます。
単に不動産の名義変更を代行するだけでなく、その後の管理や活用まで見据えた総合的なサポートが受けられる点も当センターの特徴です。
「委任状の書き方に不安がある」「相続全体の流れが見えず困っている」といった方は、ぜひ私たちにおまかせください。
適切な委任状を作成し、スムーズに相続登記を完了させるお手伝いをするとともに、大切な不動産の将来まで見据えた安心をご提供いたします。
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