不動産の相続登記を自分でやる方法と注意点|必要書類や費用も解説

不動産を相続したら相続登記を行う義務があります。

「手続きを専門家に依頼せず、自分で行いたい」と考えている方もいるでしょう。

しかし、相続登記は人生で何度も経験することではないため、初めてで何から手をつければ良いかわからないのが現状ではないでしょうか。

相続登記にはいくつかの手順が必要です。

この記事では、相続登記を自分で行う場合に必要な書類や費用、手順などを初めての方にもわかりやすく解説します。気を付けるべき注意点も紹介するのでぜひ参考にしてください。

不動産の相続登記は自分でも可能だが、注意点もある

不動産の相続登記は司法書士に依頼せずに自分でもできます。

自分で行えば司法書士に支払う報酬がかからないため、大幅に費用を減らせます。

ただし、不動産の相続登記は気軽な気持ちでできるものではないため、時間と手間をかける覚悟が必要です。

ほとんどの方は登記に関する専門的な知識は持ち合わせていないでしょう。

知識がなければ時間がかかるのは当然で、書類に不備が出て何度も公的機関とやり取りを繰り返さなければなりません。

問題なくスムーズに進めているつもりでも、自分では気付かない点が抜け落ちてしまう危険性もあります。

相続登記を自分で行うには時間と手間のほかにも、知識が必要だと心得ておきましょう。

不動産の相続登記を自分で行う手順6ステップ

相続登記を自分で行うには、次の手順で進めます。

  • ステップ1:相続する不動産を把握する
  • ステップ2:法定相続人の調査と決定をする
  • ステップ3:必要に応じて遺産分割協議書を作成する
  • ステップ4:申請書を作成する
  • ステップ5:必要書類をそろえる
  • ステップ6:法務局へ申請する

具体的にどのようなことをするのか手順ごとに詳しく解説します。

ステップ1:相続する不動産を把握する

まずは相続する不動産全てを漏れがないように調査しましょう。

後から把握していなかった不動産が出てくると申告漏れにつながり、改めて相続手続きをやり直さなければなりません。

亡くなった方の所有不動産を調べるには以下の3つの方法があります。

  • 固定資産税の納税通知書
  • 権利証などの登記資料
  • 名寄帳(なよせちょう)

不動産を所有していると、毎年4月ごろに行政から固定資産税の納税通知書が届きます。

納税通知書には税金が課せられている不動産が記載されるため、通知書で確認する方法が多く使われます。

しかし、注意が必要なのは、課税対象外の不動産は納税通知書に記載されない点です。

たとえば、公共のために利用されている個人所有の土地や、評価額が30万円未満の土地などは課税対象外となり、通知書には反映されません。

そのため、納税通知書で全てを把握するのは難しいでしょう。

一つの方法だけで判断せずに、権利証などの登記資料が保管されていないか自宅を探してみることをおすすめします。

もし見つからない場合は、役所の資産税課で「名寄帳」を発行してもらうのが有効です。

名寄帳は同じ市区町村の不動産が一覧でまとめられていて、非課税の不動産も記載がされています。

把握漏れがないように二重三重に調査を行うことが重要です。

ステップ2:法定相続人の調査と決定をする

法定相続人の調査は、亡くなった方の死亡から出生までの戸籍をさかのぼってたどれば可能です。

まずは故人の最新の戸籍謄本を役所で取得し、その謄本に書かれている情報を元に前本籍地の戸籍謄本も取得します。

次に前本籍地の戸籍謄本の情報からさらにさかのぼって前々本籍地の謄本を取得します。

この作業を出生にたどり着くまで繰り返し、故人と同じ戸籍謄本に記載されている関係者がいたら、その人やその親族は法定相続人になる可能性のある人たちです。

関係者を調べることで法定相続人となる人を探し出せます。

調査の結果、相続関係が複雑だった場合は法定相続人の相関図を作るのがおすすめです。

全ての法定相続人がそろったら、誰が不動産を相続するのかを話し合いで決めます。

ステップ3:必要に応じて遺産分割協議書を作成する

法定通りの相続ではなく相続割合を変える場合には、遺産分割協議書の作成が必要です。

不動産の相続は共有名義にせず、誰か1人が引き継ぐケースも珍しくありません。

1人だけが引き継ぐときには遺産分割協議書がないと相続登記が行えないため、作成が必須となります。

ただし、次の2パターンであれば遺産分割協議書の作成は不要です。

  • 法定相続通りの共有取得にする
  • 遺言書に従って1人の取得にする

後々のトラブルにつながらないよう、必要な内容は全て遺産分割協議書に記載します。

自分で作成するのが不安な場合は専門家への依頼を検討しましょう。

ステップ4:申請書を作成する

相続の内容が決まったら、法務局に提出するための申請書を作成します。

申請書は決まった用紙をどこかでもらうのではなく、自分でA4用紙を用意して白紙の状態から作成します。

どのような様式で作成するかは法務局のホームページで確認可能です。

法定相続・遺産分割・遺言書での相続と、それぞれのパターンによって書き方が異なります。

パソコンでの入力と手書きの作成、どちらでもかまいません。

手書きで作成する場合には、水に強くて消えない油性インクのペンを使うことをおすすめします。

記入事項の訂正をするときは訂正印を押して「◯字削除・◯字加筆」と記載するなどの訂正方法が決まっています。

また、紙で作成する方法以外に、オンラインでの申請書作成も可能です。

法務局が提供する「申請用総合ソフト」をパソコンにインストールすれば、オンラインで申請書を作成し、そのまま提出できます。

オンライン申請は紙を使用せずスムーズに手続きが進められるため、パソコン操作に抵抗がない方には便利な選択肢です。

ステップ5:必要書類をそろえる

法務局へ提出する書類を取得します。

主に故人と法定相続人の戸籍謄本などが必要です。

相続パターンによって必要書類が異なるため、次項の「不動産の相続登記に必要な書類」で詳しく解説します。

故人の転籍がほとんどなく、法定相続人が妻と子だけのシンプルなケースだと、比較的簡単に取得できるでしょう。

故人に子がおらず、法定相続人が兄弟や甥・姪になるケースでは、取得する書類が複雑になり難易度が高くなります。

ステップ6:法務局へ申請する

全ての書類がそろったら法務局へ申請します。

申請先の法務局は、相続する不動産を管轄する地域の法務局です。

どこの法務局が管轄かはホームページで確認できます。

遠方の場合は郵送でのやり取りが可能ですが、同梱する返送用切手の額などを先に確認してから送りましょう。

直接法務局へ行く場合は、予約なしでは受け付けてくれない法務局もあるため、事前に予約が必要かの確認をします。

相続登記に不慣れな方だと申請をしても書類に不備があり、一度では通らないケースがほとんどです。

何度も足を運ぶつもりで根気強く対応しましょう。

不動産の相続登記に必要な書類

相続登記の必要書類は相続のパターンによって異なります。

3つのパターン別に一覧にしたので参考にしてください。

法定相続による相続 ・被相続人の戸籍謄本
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
・法定相続人の戸籍謄本(抄本)
・法定相続人の住民票
・固定資産課税明細書
遺言書による相続 ・被相続人の戸籍謄本
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
・法定相続人の戸籍謄本(抄本)
・法定相続人の印鑑証明書
・固定資産課税明細書
・不動産を相続する人の住民票
・遺産分割協議書
遺言書による相続 ・被相続人の戸籍謄本
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
・法定相続人の戸籍謄本(抄本)
・法定相続人の印鑑証明書
・固定資産課税明細書
・不動産を相続する人の住民票
・遺言書

細かい状況によっては表に含まれない書類が必要になるケースもあるため、提出前に管轄の法務局に最終確認を行いましょう。

不動産の相続登記を自分で行う場合の費用

自分で相続登記を行う場合にかかる費用は以下の2つです。

  • 必要書類を取得する費用
  • 登録免許税

実際にいくらかかるのかを次項で解説します。

必要書類を取得する費用

相続登記では必要書類の取得費用が必ずかかります。

費用は以下の通りですが、各自治体によって一部異なります。

戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) 450円 / 1通
除籍謄本(除籍全部事項証明書) 750円 / 1通
改製原戸籍謄本 750円 / 1通
戸籍の附票 300円 / 1通
住民票の除籍 200円 / 1通
住民票 300円 / 1通
固定資産課税証明書(固定資産評価証明書) 200円 / 1通
印鑑証明書 300円 / 1通

1通ごとの費用なので、故人が転籍を繰り返していれば戸籍謄本の数もその分だけ増えます。

また、兄弟や甥・姪などが相続する場合には、必要枚数が多い傾向にあります。

登録免許税

登録免許税とは、不動産登記をする際に国に納める税金です。

相続や譲渡で不動産の名義を変える際にかかります。

税額は固定資産評価額の0.4%と決められており、たとえば評価額が1,000万円の土地を登記する場合の税額は4万円です。

「1,000万円 × 0.4%=4万円」の計算式で算出できます。

評価額は役所で固定資産評価証明書を取得すれば記載されています。

不動産の相続登記を自分で行うときの注意点

経験したことのない不慣れな手続きでは、自分では気付きにくい見落としがちな点があります。

やり直しが難しいケースもあるため、間違いのないよう手続きをしなければなりません。

自分で相続登記を行う際の注意点を解説します。

不動産の相続登記には期限がある

相続登記には、必ず終わらせなければならない期限が設けられています。

不動産の所有者が亡くなり、自分が法定相続人であると知った日から3年以内に手続きを完了する必要があります。

以前は相続登記が義務化されておらず、手続きをせずに放置されるケースも多く見られました。

しかし、2024年4月1日以降は相続登記が義務化され、これに伴い期限も厳格化されています。

それ以前に相続が発生した不動産についても、2024年4月1日から起算して3年以内に相続登記を行うことが求められます。

「忙しいから」と後回しにしていると、書類の準備や手続きに想定以上の時間がかかり、期限内に間に合わなくなる可能性があります。

期限を守らなかった場合、罰則として10万円以下の過料が科されることもあるため注意が必要です。

登記漏れが起きる可能性がある

相続する不動産の調査が不十分だと、登記漏れが発生するリスクがあります。

特に注意が必要なのは、土地が1箇所に見えても、登記が2筆以上に分かれている場合です。

このようなケースでは、見落としが起こりやすいため、細心の注意を払う必要があります。

また、戸建て住宅の場合、所有している不動産は「土地と建物だけ」と思いがちですが、前面の道路を近隣住民と共有しているケースも少なくありません。

このような共有不動産は、固定資産税の納税通知書には記載されないため、見落としやすいポイントです。

不動産の登記漏れは、何年も経過した後で気づくことが多く、その場合、再度一から手続きをやり直さなければならないこともあります。

時間も手間も大きな負担となるため、最初の段階でしっかりと調査することが重要です。

法定相続人の調査で漏れが起きる可能性がある

法定相続人の調査も漏れが起きやすい部分なので、注意が必要です。

せっかく自分で戸籍謄本を調べても、知識がなければ誰が法定相続人になるのか判断ができません。

また、本来法定相続人になるはずだった人が相続前に亡くなっている場合の「代襲相続」では、より詳しい知識が必要になります。

特に、法定相続人が兄弟や甥・姪などのケースでは相続関係が複雑になり、調査の範囲を通常よりも広げなければなりません。

故人に異母兄弟がいないかなども調べることとなり、膨大な労力が必要です。

ほかの法定相続人の存在が明らかになっても、連絡を取るのは容易ではありません。

中途半端な知識で調査を進めると、重要な法定相続人を見落としてしまうリスクがあります。

必要に応じて専門家に相談し、正確で漏れのない調査を心がけましょう。

相続登記を専門家に任せたほうが良いケース

ここまで、自分で相続登記を行う方法を解説しましたが、状況によっては専門家に任せたほうが良いケースもあります。

相続登記やそれに関連する業務は、司法書士や弁護士に依頼することが可能です。

自分で手続きを進めるのが難しい場合や時間が取れない場合などは無理をせず、専門家の力を借りるのがおすすめです。

専門家に依頼したほうが良いケースを5つ紹介します。

手続きに膨大な時間を割けない

仕事や介護、子育てなどで手続きに十分な時間が取れない方は、専門家に依頼するのがおすすめです。

相続登記は自分でもできますが、想定以上の膨大な時間がかかります。

不動産や法定相続人の調査を進めるだけでも、何週間、場合によっては何ヶ月もかかることがあります。

全て準備を終えて法務局へ申請をした後も、必要書類の不足や申請書の間違いなどで、何度も法務局とやり取りをしなければなりません。

時間が余っているくらいの方でなければ、相続登記は難しいのが現実です。

自分で手続きを始めてはみたものの、途中で限界を感じて司法書士に依頼する方も少なくありません。

平日に会社を頻繁に休めない

必要書類を取得するための役所や申請先の法務局は、平日の日中に営業をしています。

平日の日中に時間が多く取れる方でなければ、スムーズに手続きを進めるのは難しいケースが多いです。

手続きが数回で終わるケースはほとんどないため、何度も会社を休んだり早退をしたりしなければなりません。

自治体によっては週に一度の時間外営業や、月に一度の休日営業をしている役所もあります。

しかし、手続きのチャンスが少ないため、かなりの期間を費やす覚悟が必要です。

頻繁に休みを取れない場合は、専門家に依頼すると良いでしょう。

相続する不動産が遠方にある

相続登記は相続する不動産を管轄している法務局へ申請を行います。

自分の居住地が東京でも、不動産が沖縄にあれば沖縄の法務局へ申請を行わなければなりません。

遠方だと何度も足を運ぶのは難しいケースも多いです。

郵送やオンラインでも手続きは可能ですが、対面で顔を合わせずやり取りをするぶん、内容がわかりにくいというデメリットがあります。

また、オンラインは専用ソフトのインストールや電子証明書が必要なため、一般の方にはハードルが高いといえます。

司法書士に依頼すれば遠方の法務局でもオンライン申請できる環境が整っているため、迅速に手続きが可能です。

登記されていない不動産を相続する

以前は相続登記が義務化されていなかったため、先代の相続で登記をしないままになっている不動産もあります。

たとえば、祖父が亡くなった後に父が相続登記を行わず、次の法定相続人に未登記の不動産が引き継がれるようなケースです。

このようなケースを「数次相続」といい、通常の相続登記よりも複雑になります。

より多くの書類が必要になり、専門知識がないと難しい手続きです。

引き継ぐ不動産が登記されていないとわかったら、司法書士に依頼をしましょう。

法定相続人の間で揉めている

法定相続人の間で意見が対立しトラブルが生じると、話し合いが難航し、相続手続きがなかなか進まなくなることがあります。

こうした状況が続くと、法定相続人同士の関係が悪化し、最悪の場合、修復が難しくなることも考えられます。

特に、感情的な対立がエスカレートすると、冷静な話し合いがさらに困難になるため、早めの対応が重要です。

もし「揉めそうだ」と感じたら、早い段階で弁護士に相談するのが賢明です。

弁護士が間に入ることで、法定相続人同士の直接的な衝突を避けられるため、争いがエスカレートするのを防ぐことができます。

相続登記のご相談は静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへ

ここまで、自分で相続登記を行う手順や注意点を解説しました。

自分で全て手続きすれば専門家へ支払う報酬が不要なため費用の節約になります。

ただし、自分で行うには膨大な時間と知識が必要なため、難しい部分は専門家に頼るのがおすすめです。

「相続登記を専門家に任せたほうが良いケース」に当てはまる方は、専門家への依頼を検討してみましょう。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、相続に関する手続きがノンストップでできるよう、さまざまな専門家が在籍しています。

相続登記は司法書士へ、相続人同士のトラブルは弁護士へと、状況によって適した専門家が対応します。

相続登記はご自身の未来に関わる大切な手続きです。

「どうすれば良いかわからない」という場合も、最適な方法をご提案いたします。

相続登記のご相談は静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。

電話でのお問い合わせ

お問い合わせの電話番号リンク

メールでのお問い合わせはこちら