不動産をお持ちの方にとって、「この不動産をいつ・どのように家族へ引き継ぐか」は、いずれ必ず向き合うことになる問題です。
多くの場合は、ご本人が亡くなった後、相続によって名義が移転しますが、相続と生前贈与では、かかる税金の種類や金額、必要な手続き、そして不動産の名義が移るタイミングが大きく異なります。
十分に比較しないまま判断すると、「思っていたより税金が高額だった」「ほかの相続人との関係がこじれてしまった」といった結果になりかねません。
本記事では、不動産を「相続で引き継ぐ場合」と「生前贈与する場合」のそれぞれのメリット・注意点、そして生前贈与が向いている具体的なケースなどについて分かりやすく解説します。
静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、不動産の状況やご家族の関係を丁寧に整理したうえで、どの方法が適しているのかを一緒に検討いたします。
「まだ決めきれていない」という段階でも問題ありません。初回のご相談は無料ですので、どうぞお気軽にご相談ください。
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不動産の相続と生前贈与の違い

不動産を家族に引き継ぐ方法には、「相続」と「生前贈与」があります。
どちらも不動産の名義を次の世代へ移す方法ですが、前提となる仕組みや進み方は大きく異なります。
まず押さえておきたいのは、相続は「亡くなったときに自動的に始まるもの」であり、生前贈与は「生きている間に自分の意思で行うもの」という点です。
この違いが、その後の手続きや税金、トラブルの起こりやすさにも影響します。
それぞれの基本的な違いを整理すると、次のとおりです。
| 観点 | 相続 | 生前贈与 |
|---|---|---|
| 定義 | 所有者が亡くなった時点で、不動産が法定相続人などに引き継がれる制度 | 所有者が生きている間に、不動産を特定の相手へ無償で譲る契約 |
| 発生のタイミング | 死亡と同時に法律上当然に発生 | 当事者間で贈与契約が成立した時点で発生 |
| 引き継ぐ範囲 | 不動産だけでなく、預貯金や借金なども含めて承継 | 原則として贈与する不動産のみ(借金は自動では移らない) |
| 手続きの進め方 | 相続人全員で遺産分割協議を行うのが原則 | 所有者が相手を決め、贈与契約を締結 |
| 名義変更 | 遺産分割後に相続登記を行う。相続人が複数いる場合は共有名義になることもある | 贈与契約の成立により所有権が移転し、登記手続きによって名義が変更される |
| よくある問題 | 誰が取得するかで意見が対立しやすい | 一度名義を移すと簡単には元に戻せない |
相続では、亡くなった後に相続人間で話し合いを行い、最終的に誰が取得するかを決めます。
そのため、話し合いがまとまらなければ名義変更が進まないこともあります。
一方、生前贈与であれば、所有者の意思で相手を決め、その時点で登記を行うことができます。
つまり、将来ではなく、今名義を確定できる点が大きな違いです。
もっとも、生前贈与には注意点もあります。
たとえば、贈与には原則として贈与税がかかります。
また、書面で契約を交わした贈与は、原則として一方的に取り消すことができません。
民法第550条では、次のように定められています。
第550条(書面によらない贈与の解除)
第五百五十条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
引用元:民法 | 第550条
裏を返せば、書面で行った贈与契約は、原則として解除できないということです。
不動産の贈与は通常、契約書を作成し登記まで行いますので、簡単に白紙に戻すことはできません。
ご家族の関係や将来の状況が変わったとしても、当事者間の合意で契約を解除すること自体は可能ですが、一度完了した登記を元に戻す場合、税務上は『新たな贈与』とみなされて多額の税金がかかるリスクがあります。
不動産は「相続」「生前贈与」するメリットを比較

不動産を相続する場合、生前贈与する場合、どちらが良いかはご家庭の状況次第です。
相続は税制面で有利に働くケースが多い一方で、相続人間での協議が必要になるため、意見がまとまらない可能性があります。
生前贈与は名義を早期に確定できる反面、贈与税の負担や、いったん移した財産を簡単に戻せないという点に注意が必要です。
重要なのは、次のような各ご家庭の事情を踏まえて判断していくことです。
- 相続人の人数や関係性
- 財産全体の規模
- 不動産の利用状況(自宅か収益物件か)
- 将来売却する予定があるか
静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、不動産の状況やご家族の関係を丁寧に整理したうえで、どの方法が適しているのかを一緒に検討いたします。
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不動産を「相続」するメリット
不動産を家族に引き継ぐ方法として相続を選ぶ場合、相続を前提とした税制や特例が使えるため、結果として税負担を抑えやすいという特徴があります。
もっとも、相続が常に有利とは限りません。
- 財産総額はいくらか
- 相続人は何人か
- 自宅なのか収益物件なのか
- 将来売却予定はあるか
上記のような各ご家庭の事情によって結論は変わります。
ただし、不動産については、相続税の基礎控除や各種特例の存在により、税制面では相続が有利になるケースが多い傾向があります。
不動産を相続することを選んだ場合のメリットは以下の通りです。
- 相続税の基礎控除が使える
- 税負担が軽くなりやすい
- 自宅に住み続けやすい
- 生前に手続きをしなくてよい
それぞれくわしく見ていきましょう。
相続税の基礎控除が使える
相続には、一定額までは税金がかからない「基礎控除」があります。
現在の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。
たとえば、法定相続人が配偶者と子1人の合計2人であれば、「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」が基礎控除額です。
仮に評価額5,000万円の自宅を相続する場合、「5,000万円-4,200万円=800万円」が課税対象となる計算です。(※)
もちろん、実際の相続税は総額方式や累進税率を用いて計算するため単純ではありませんが、基礎控除内に収まる場合は相続税がかからず、原則として申告も不要です。
不動産は評価額が大きくなりやすい財産ですが、相続であればこの基礎控除を活用できるため、生前贈与より税負担が生じにくい場合があります。
税負担が軽くなりやすい
相続税の計算では、実際の売買価格(実勢価格)ではなく、国税庁が定める「相続税評価額(路線価や固定資産税評価額など)」を基準にします。
一般的に、相続税評価額は市場価格より低くなる傾向があります。
そのため、同じ不動産でも、実勢価格より圧縮された金額で税額を計算できる点が特徴です。
さらに、相続には「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の特例」という特例があります。
配偶者の税額軽減
配偶者が取得した財産については、1億6,000万円、または法定相続分相当額のいずれか多い金額までは、配偶者に相続税がかからない場合があります。(※)
小規模宅地等の特例
自宅の土地など一定の宅地については、評価額を最大80%減額できる制度があります。
たとえば、評価額4,000万円の土地に80%減額が適用されると、相続税計算上の評価は800万円となる計算です。(※)
ただし、この特例が使えるかどうかは、次のような条件を満たす必要がありますが、適用できれば税負担に大きな差が出ます。
- 同居の有無
- 居住継続の要件
- 面積の上限
- 申告の有無
なお、この小規模宅地等の特例は生前贈与には適用されません。
自宅に住み続けやすい
相続では、「誰が所有するか」と「誰が住み続けるか」を分けて考えることができます。
代表的なのが配偶者居住権です。
たとえば、次のような形にすれば、配偶者は亡くなるまで自宅に住み続けることができます。
- 所有権は子どもが相続
- 配偶者には居住権を設定
従来は、自宅を配偶者が相続しなければ住み続けにくい場面もありましたが、その場合は自宅の評価額が大きく、他の財産を取得できず生活資金に困るケースもありました。
配偶者居住権を活用すれば、住まいを確保しつつ、財産の分配を調整しやすくなるというメリットがあります。
生前に名義を移してしまう場合と比べ、柔軟な対応が可能です。
ただし、「配偶者居住権」は、設定しただけでは第三者に対抗できず、司法書士による「配偶者居住権の設定登記」が重要です。
生前に手続きをしなくてよい
相続は、所有者が亡くなった時点で発生します。
生前贈与のように、次のような手続きを事前に行う必要はありません。
- 贈与契約書の作成
- 登記申請
- 贈与税の申告
所有者は、生前はこれまでどおり不動産を所有し続けることができます。
高齢の方にとって、生前贈与の契約や登記手続きは精神的・体力的な負担になることもあります。
その点、相続であれば、生前に無理に動く必要がないという安心感があります。
※実際の税額計算や特例の適用可否については、個別の状況により異なるため、必ず税理士にご確認ください(当サポートセンターでは提携税理士と連携してサポートしております)
不動産を「生前贈与」するメリット
生前贈与の最大の特徴は、「いつ・誰に・どの不動産を渡すか」を所有者ご本人が決められることにあります。
相続のように将来の発生を待つのではなく、生前のうちに名義変更まで完了させることができるため、家族間の調整を前倒しで行える点が大きな違いです。
生前贈与は自由度が高い反面、税金や家族関係への影響も大きいため、十分な検討が必要です。
- 他の相続人との公平性
- 将来の生活資金の確保
- 税負担の見通し
- 不動産の将来的な活用方法
これらを整理したうえで進めることが重要です。
不動産を生前贈与することを選んだ場合のメリットは以下の3つです。
- 相続時の争いを防ぎやすい
- 不動産の名義を生前に決められる
- 資産を計画的に引き継げる
では、以上のポイントについて詳しく見ていきましょう。
生前に動かす場合は、名義だけでなく家族関係や資金面も先に整理しておくと安心です。
静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは現状の整理から、専門家と連携してサポートいたします。
相続時の争いを防ぎやすい
生前贈与では、不動産を誰に引き継がせるかをあらかじめ決め、登記まで完了させます。
そのため、相続が発生した後に、次のような話し合いをする必要がなくなります。
- 「自宅は誰が取得するのか」
- 「売却して分けるのか」
- 「共有にするのか」
不動産は現金のように均等に分けることができません。
そのため、相続人が複数いる場合、不動産の取り扱いは争いになりやすい部分です。
たとえば、「長男に自宅を継がせたい」という意向がある場合、生前贈与によって名義を長男に移しておけば、相続開始後に兄弟間で自宅の帰属を巡る協議は不要になります。
もちろん、他の財産とのバランスをどう取るかという問題は残りますが、それは生前のうちに話し合って調整することが可能です。
相続発生後に感情的な対立が生じる前に整理できる点は、生前贈与のメリットです。
不動産の名義を生前に確定できる
生前贈与では、贈与契約を締結し、所有権移転登記を行うことで、名義が直ちに受贈者へ移ります。
名義が受贈者に移れば、その不動産の次のような管理や処分は受贈者の判断で行うことができます。
- 売却する
- 賃貸に出す
- 建て替える
- 担保に入れる
親が存命中は子どもに処分権限はありませんが、生前贈与によって名義が移れば、早い段階から資産活用を始めることができます。
また、遺言がない場合の相続では、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
協議がまとまらなければ登記も進みません。
生前に名義を確定しておくことで、承継後の運用を円滑に開始できるというメリットがあります。
一度移した名義は簡単には戻せないため注意!
もっとも、生前贈与には注意点もあります。
不動産の名義を受贈者に移した後、それを元の所有者に戻すには、あらためて売買や贈与の手続きを行う必要があるという点です。
その際には、次のような税金や問題が発生する可能性があります。
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 贈与税や譲渡所得税の問題
また、原則として受贈者の同意がなければ再移転はできません。
極端な例ですが、受贈者が第三者に売却したり、担保に入れたりする可能性も法的には否定できません。
生前に名義を確定できるというメリットがある一方で、後から柔軟にやり直すことは難しいという点は十分理解しておく必要があります。
贈与契約を締結する前に、ご家族全体で将来の取り扱いを整理し、合意形成しておくことが重要です。
静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、不動産をどうすれば良いのか、各ご家庭の状況を把握しながら最適なサポートを行っています。
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資産を計画的に引き継げる
生前贈与では、どの財産をいつ移すかを段階的に設計できます。
複数の不動産をお持ちの場合、次のような組み合わせも可能です。
- 収益物件は先に贈与する
- 自宅は相続に残す
たとえば、賃貸物件を早期に子どもへ贈与すれば、将来の賃料収入や価値上昇分は子どもの財産になります。
結果として、親の相続財産を圧縮できる場合があります。
一方、自宅は相続財産として残せば、親はそのまま住み続けることができます。
また、暦年贈与の非課税枠(年間110万円)を活用し、長期間にわたり少しずつ財産を移す方法もあります。
たとえば、子や孫など複数人に毎年110万円ずつ贈与すれば、人数分の非課税枠を活用できます。
時間をかけて分散して移転できる点は、生前贈与ならではの特徴です。
不動産の相続より生前贈与が向いているケース

不動産は、通常は所有者が亡くなった時点で相続によって引き継がれます。
もっとも、ご家庭の事情や財産の内容によっては、相続を待たずに生前贈与を選んだほうが合理的な場合もあります。
生前贈与は、次のような条件が整っている場合に有効な選択肢の1つです。
- 承継先が明確である
- 家族間の合意が得られている
- 税務面の見通しが立っている
一方で、一度名義を移すと簡単には元に戻せないというデメリットも。
相続と生前贈与のどちらが適しているかは、財産全体の状況やご家族の関係によって異なるため、よく状況を整理した上で、どちらにするのが良いかを判断しましょう。
ここでは、生前贈与が向いている4つの代表的なケースを解説します。
- 特定の人に不動産を引き継がせたい場合
- 相続人が複数いて分割が難しい場合
- 相続税対策が必要な場合
- 相続後の手続きを減らしたい場合
それぞれくわしく見ていきましょう。
特定の人に不動産を引き継がせたい場合
「この不動産は、この子に継いでほしい」という明確な希望がある場合、生前贈与は有効な方法です。
相続では、遺言がない限り、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
仮に遺言があっても、他の相続人が遺留分を主張する可能性は残ります。
その結果、思い描いたとおりに承継できないケースもあります。
たとえば、次のような場合、生前に名義を移しておけば、相続開始後にその不動産を巡って協議する必要はありません。
- 事業用の土地建物を事業承継者に渡したい
- 同居している子に自宅を引き継がせたい
承継先を確実に決めたい場合には、生前贈与が選択肢となります。
相続人が複数いて分割が難しい場合
不動産は、現金のように単純に分けることができません。
分割方法としては、次のような方法がありますが、共有名義は、将来の売却や建て替えの際に全員の同意が必要となる、また、売却する場合も、意見が一致しなければ進まない、などの課題があります。
- 共有名義にする
- 売却して現金化する
- 物理的に分筆する
そのため、相続人が複数いる場合、不動産は遺産分割の中でも対立が生じやすい財産です。
生前贈与であらかじめ承継者を一人に定めておけば、不動産の分け方自体が論点になりません。
他の相続人には預貯金など別の財産で調整することも可能です。
結果として、遺産分割協議を円滑に進めやすくなります。
相続税対策が必要な場合
相続財産が基礎控除を大きく超える見込みがある場合、生前贈与を活用することで将来の相続税負担を抑えられる可能性があります。
たとえば、将来的に値上がりが見込まれる土地を早めに贈与しておけば、その後の価格上昇分や賃料収入は贈与を受けた側の財産になります。
結果として、親の相続財産の増加を抑える効果があります。
また、年間110万円の非課税枠(暦年贈与)を利用し、長期間にわたって少しずつ財産を移す方法も一般的です。
ただし注意が必要なのは、相続開始前の一定期間内の贈与は、相続税の計算上加算されるという点です。
2024年以降は、相続開始前7年以内の贈与のうち一定部分が相続財産に加算されます。
そのため、相続税対策として生前贈与を検討する場合は、できるだけ早い段階から計画的に進めることが重要です。
相続後の手続きを減らしたい場合
相続が発生すると、次のような相続手続きが必要になります。
- 相続人の確定
- 遺産分割協議書の作成
- 相続登記
- 相続税申告
不動産が複数ある場合や、遠方に所在する不動産がある場合は、相続人の負担が大きくなることがあります。
生前贈与であらかじめ名義を移しておけば、その不動産については相続後の名義変更手続きは不要です。
特に、次のような不動産の場合は、生前に整理しておくことで、相続後の負担を軽減できます。
- 権利関係が複雑な不動産
- 管理が難しい遠方の土地
- 共有関係を解消しておきたい物件
もっとも、生前贈与にも契約書の作成や登記といった手続きは必要です。
ただし、それを生前のうちに終えておくことで、ご家族が相続後に慌てずに済むというメリットがあります。
相続か生前贈与で迷ったら専門家と状況を整理しよう!

不動産を「相続にするか」「生前贈与にするか」については、どちらが常に正しいという答えはありません。
- 財産の総額はいくらか
- 相続人は誰か
- 自宅か収益物件か
- 将来売却の予定はあるか
こうした前提条件が少し変わるだけで、適した方法も変わります。
また、税金だけを見て判断するのも適切とはいえません。
- 名義変更の手続きの負担
- 家族間の合意形成のしやすさ
- 配偶者の住まいをどう守るか
- 将来の紛争リスク
これらを総合的に考える必要があります。
静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、不動産の整理を軸にしながら、税理士や弁護士、司法書士と連携し、ご家庭の状況に応じたサポートを行っています。
不動産は、単に「名義を変える」問題ではありません。市場動向や適正評価、将来の活用方法も踏まえて判断する必要があります。
「生前贈与」か、「相続」か、迷っている段階こそ、整理の始めどきです。
初回のご相談は無料です。
まずは現状の確認から、お気軽にお問い合わせください。
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