相続時の空き家特例とは?気になる要件や適用条件を徹底解説

相続した空き家を売却なり、処分したい方にとってありがたい制度が「空き家特例(被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除)」です。

空き家特例には、相続した空き家を税制面から後押しすることによって、増え続ける空き家の放置を防ぎ、市場への流通を促進するという国の目的があります。

空き家特例を活用することで、相続した空き家の売却などをしやすくなるため、空き家を相続した方はぜひこの制度を知っておきましょう。

この記事では、空き家特例の適用条件や併用できる他の特例などについて詳しく解説します。解説します。

空き家特例とは|相続した不動産の譲渡所得が軽減される制度

空き家特例とは、相続した空き家を売却した時の譲渡所得(利益)から最高3,000万円までを控除できる制度です。

譲渡所得とは、譲渡価格(売却金額)から不動産取得費(※不動産取得費には、被相続人が購入した金額や改修費が含まれますが、これらの証明書類がない場合は概算取得費として売却額の5%で計算され、課税額が高くなる場合があります)と譲渡費用を差し引いた金額のことです。

この譲渡所得に3,000万円の特別控除を適用できます。

空き家特例は、相続などで空き家を所有することになった方の、売却に関する税負担を少なくすることで、放置された空き家を減らす目的のために制定された制度です。

なお、相続によって取得した財産の総額が、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合には、空き家特例の有無にかかわらず、相続税の申告と納税が必要です。

空き家特例はあくまで売却時の譲渡所得税に関する優遇制度であり、相続税の申告義務を免除するものではないため、注意しましょう。

空き家特例を利用する場合、適用要件が細かく定められているため、自分の状況が合致するか事前によく確認する必要があります。

対象になる物件や敷地

空き家特例を利用できる人は、原則として、被相続人の子や配偶者などの法定相続人であり、かつ家屋や敷地を相続または遺贈で取得した個人です。

被相続人と生計を共にしていなかった甥や姪など、直系血族・配偶者以外のケースでは適用が認められない可能性があるため注意が必要です。

空き家特例の対象となる空き家や敷地は、以下の要件を満たしている必要があります。

  • 相続開始の直前まで被相続人が1人で居住していた家であること
  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと

敷地については家屋とセットで譲渡されることが原則です。

例外的に家屋を取り壊して更地で譲渡する場合、一定条件を満たせば適用の対象となります。

空き家特例の適用要件

空き家特例には次の適用要件が定められています。

  • 相続または遺贈によって空き家を取得している
  • 相続の開始日から3年を経過した年の12月31日までに譲渡が完了している
  • 売却代金が1億円以下
  • 相続した時から譲渡までに事業・貸付・居住の目的での利用がない
  • 一定の耐震基準に適合している
  • 親子や夫婦など身内での譲渡でない
  • 他の特例を受けていない

定められた要件をすべて満たす必要があります。

一つでも満たさない場合は、特例の適用を受けることはできません。

空き家特例の利用を検討する方は、国税庁のホームページや税務署で確認することをおすすめします。

【2024年以降】空き家特例の最新改正ポイント

空き家特例2024年の改正にて期限が延長され、現在は令和9年12月31日までとなっています。

その他、2024年に改正された空き家特例の詳細は次のとおりです。

  • 買主が譲渡の日から翌年の2月15日までの間に耐震改修と取り壊しを行った場合も対象物件になる
  • 相続人が3人以上いる場合、空き家特例の控除額3,000万円は取得割合に応じて分割適用される

大きな変更点は、売却した後に買主が耐震補修と取り壊しを実施した場合でも、特例が適用できるようになったという点です。

2023年末までの売却では、耐震改修や取り壊しは売主の責務でしたが、2024年以降では、買主が取り壊しを行っても適用されるように変更されています。

2024年の改正には、売主の負担を軽減することによって、さらに空き家の解消を進める狙いがあります。

また、2023年までは、相続人の人数に間計なく控除額は一律3,000万円でしたが、2024年以降は相続人の人数が3人以上の場合、1人あたりの適用可能控除額が最大2,000万円となることがあります。

空き家特例の申請に必要な書類

空き家特例を申請するためには、確定申告時に要件を満たしていることを証明するための書類添付が必要です。

必要書類は次のとおりです。

  • 譲渡所得の内訳書
  • 登記事項証明書
  • 被相続人居住用家屋等確認書
  • 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
  • 売却代金が1億円以下であることがわかる書類

登記事項証明書には、相続または遺贈によって取得した事実と、昭和56年5月31日以前に建築された空き家であることの証拠、区分所有の建物でないことが記載されている必要があります。

登記事項証明書は「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産にかかる不動産番号等の明細書」に不動産番号を記載すると、添付を省略することも可能です。

耐震基準適合証明書は、更地で売却した場合においては添付不要です。

空き家特例と併用できる特例

空き家特例と併用できる特例の詳細を説明します。

  • 小規模宅地等の特例との併用
  • その他に併用できる特例

小規模宅地等の特例との併用

小規模宅地等の特例は、被相続人が居住していた家を相続した場合に、相続税の評価額を最大80%減額できる制度です。

相続時に小規模宅地等の特例を利用して、その後売却する際に空き家特例を利用することもできます。

ただし、それぞれの適用には個別の要件があるため、両者を同時に使うには注意が必要です。

たとえば、小規模宅地特例で評価減した土地を相続後に一部売却する場合、その売却部分が空き家特例の対象とならないケースもあるのです。

このように、空き家特例の適用範囲が制限される可能性もあるので、必ず専門家に確認しましょう。

参考記事:実家を相続したらどうする?活用方法や手続きの流れ、相続税対策を解説

その他に併用できる特例

空き家特例のように租税特別措置法によって制定されている特例は、他の特例との併用ができない原則があります。

しかし、状況次第では住宅ローン控除との併用ができる可能性があります。

相続した空き家を取り壊し、新たに住宅を建てて居住した場合、その新築住宅で住宅ローンを利用していれば、一定の要件のもとで住宅ローン控除を受けることができる、という具合です。

居住用財産の3,000万円特別控除などの譲渡所得に関する特例との併用はできません。

空き家特例の申請をする際の注意点

空き家特例を申請する際の注意点を4つ紹介します。

  • 納税額がゼロ円でも確定申告をする必要がある
  • 被相続人の家屋を相続以前に取得している場合は適用外になる
  • 店舗や倉庫は適用対象外となる
  • 旧耐震基準の住宅はそのままでは適用対象外になる

納税額がゼロ円でも確定申告をする必要がある

空き家特例の適用を受けるためには、譲渡所得税が0円で納税の必要がない場合でも、確定申告が必要です。

空き家特例の適用要件の一つに確定申告が義務付けられているため、納税額が0円でも申告しなければいけません。

確定申告書に特例を希望する旨を記載したうえで、必要な書類を添付して提出します。

納税額がないから確定申告しなくても良いと自分で判断してしまうと、本来受けられるはずだった空き家特例の措置が受けられなくなってしまいます。

被相続人の家屋を相続以前に取得している場合は適用外になる

原則として、相続の開始前から相続人が自己居住用の建物を所有していた場合、その建物は空き家特例の対象にはなりません。

被相続人の家が空き家だったとしても、相続人がすでに別の居住用物件を所有している場合、相続人が新たに取得した被相続人の家を自分の居住のために使っていた、とは言い切れません。

このような状況では特例の趣旨から外れるため、適用外とされています。

ただし、例外的に相続人が被相続人と同居しており、被相続人の家屋だけを相続した場合など、一定の条件を満たすことで対象となる可能性もあります。

店舗や倉庫は適用対象外となる

空き家特例は被相続人が居住のために利用していた家と敷地を対象としているため、居住の目的がない建物は対象外となります。

倉庫は物品の保管を目的とした建物で、店舗は事業のための建物なので、居住用として認められません。

相続後に空き家となっていたとしても、被相続人が生前住んでいたわけではないため、空き家特例の適用外です。

ただし、店舗兼住宅など用途が事業と居住用を兼ねている場合、居住部分と非居住部分において、取り扱いが異なる場合があります。

旧耐震基準の住宅はそのままでは適用対象外になる

空き家特例を受けるためには、耐震性の確保が必要です。

1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた旧耐震基準の建物でも空き家特例を受けることはできますが、売却までに耐震改修工事を行い、現行の耐震基準を満たさなければいけません。

2024年以降の改正では、買主が譲渡後の翌年2月15日までに耐震改修、もしくは解体を行っても対象となるケースがあります。

旧耐震基準の建物でも空き家特例を受けることはできますが、あらかじめ適用要件を確認しておく必要があります。

空き家特例を確実に受けるにはどうすればいい?

空き家特例は適用要件が細かいため、自分で判断するのが難しいケースもあります。

空き家を売却した後で、実は適用外だった、という事態は避けたいところです。

まずは、以下のポイントを確実に抑えつつ、自分でできることを確実に準備しましょう。

  • 適用要件をしっかりと理解する
  • 必要書類をあらかじめ漏れなく用意しておく
  • 確定申告を忘れない
  • 自分で対応できないと感じたら専門家へ相談する

空き家特例に関する手続きにおいて、多くのケースで専門家の力が必要となるでしょう。

空き家特例に関する手続きに関わる主な専門家、業者は司法書士や税理士、土地家屋調査士、不動産業者などです。

とはいえ、士業や業者へそれぞれ依頼し、手配を進めていくのはとても大変な作業です。

窓口の分だけ費用もかさみます。

業者へ依頼するときは、一つの窓口で完結できる連携力の高いところへ依頼するのが望ましいです。

空き家特例に関するよくある質問

空き家特例についてよくある質問を2つピックアップして紹介します。

  • 建物を売却後に取り壊しても適用が受けられる?
  • 店舗兼住宅の場合は適用が受けられる?

建物を売却後に取り壊しても適用が受けられる?

売却後に買主が建物を取り壊す場合は、適用が受けられます。

しかし、買主が取り壊しをしなければ、適用は受けられません。

空き家特例の適用要件に、売却前に売主が建物を取り壊して更地で譲渡する、または耐震改修を行うと定められています。

2024年以降の改正では、買主が譲渡後の翌年2月15日までに耐震改修または解体工事を行った場合も特例が適用されると変更されました。

しかしこの適用要件は、あくまで買主側に関するものです。

売主が建物を売却した時点では、取り壊し等の要件を満たしていない点に注意が必要です。

店舗兼住宅の場合は適用が受けられる?

居住部の割合と状況によって適用の判断が分かれます。

空き家特例の対象となるのは、被相続人が主に居住用として利用していた部分です。

店舗として利用していた領域が大部分に及んでいると、原則として適用不可です。

一定割合の領域を居住目的で利用していた場合や、被相続人が該当の建物を生活拠点としていたと認められる場合は、適用が認められる可能性があります。

具体的な判断は、建物の登記簿上の種類や構造、被相続人の生活状況、それぞれの部分の利用状況を総合的に考慮した上で行われます。

空き家の相続なら静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへ

空き家特例は空き家の売却を検討している方にとって、とても重要な制度です。

3,000万円もの控除が受けられるため、大幅に納税額を減らすことができます。

「空き家を売却したいけど、譲渡所得税が気になって踏ん切りがつかない」という方には渡りに船と言うべき制度です。

しかし、どんな空き家でも制度が適用されるわけではありません。

適用要件がやや厳しいため、空き家特例を検討するときは、制度の概要や要件をしっかり確認する必要があります。

「自分の空き家が空き家特例を使えるのかよくわからない」と言う方は、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへご相談ください。

数多く取り扱ってきた空き家相続のノウハウを元に、それぞれの課題に対して最適な提案を行っています。

空き家の売却に関わる司法書士や税理士など、すべて一つの窓口で対応できるため、余計な手間や費用もかかりません。

空き家特例のサポートも行っていますので、納税額が気になる方もお気軽にお問い合わせください。

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