不動産は家族信託すべき?向く家族やできること・できないことまで徹底解説!
2026.06.04
高齢の親が持つ自宅や不動産をどのように管理し、引き継いでいくべきか、悩みを抱えている方は少なくありません。
内閣府の令和7年版高齢社会白書では、2022年時点の認知症高齢者数は443.2万人、MCI(軽度認知障害)の高齢者数は558.5万人と推計されています。
判断能力の低下に備えて、親が元気なうちから不動産の管理方法を考えておくことが大切です。
この記事では、不動産を家族信託にすべきなのか、また家族信託でできること・できないことについて詳しく解説します。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、司法書士・税理士・弁護士と連携し、家族信託に関するご相談を承っています。
家族信託を考えているけれど、何から始めればよいかわからない方も、お気軽にご相談ください。
記事監修者
司法書士 川上直也
当センターの受付を担当しております。
司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。
ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
不動産の管理・承継対策として家族信託が検討される理由

不動産の家族信託は、親名義の不動産について、将来の管理や処分の判断が難しくなる前に、誰がどのように管理するのかを決めておく方法として検討されます。
特に自宅、賃貸不動産、空き家になりそうな家がある場合は、親が元気なうちに方向性を整理しておくことが大切です。
そのため、不動産を持つ家族が家族信託を検討する背景には、次のような不安や課題があります。
- 親名義の不動産は、判断能力の低下後は動かしにくくなる
- 相続まで何も準備しないと、管理や承継の方針が決まらない期間が生じやすい
- 不動産は、預貯金よりも分け方や管理方針で意見が分かれやすい
民法は、意思能力がないときの法律行為を無効としています。
第3条の2
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
引用元:民法 | 第3条の2
そのため、親の判断能力が低下した後は、親名義の不動産を売却したり、賃貸借契約を結んだりすることが難しくなる場合があります。
また、2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。
第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
引用元:不動産登記法 | 第76条の2
相続登記や管理方針が決まらないまま時間が経つと、不動産が空き家のまま放置されるリスクも高まります。
実際に総務省統計局が2024年9月25日に公表した「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」でも、空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%で過去最高でした。
さらに、不動産は現金より家族で意見が割れやすい財産です。
民法では、共有物の変更には原則として共有者全員の同意が必要であり、管理に関する事項は各共有者の持分価格の過半数で決するとされています。
第251条(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
第252条(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
不動産を残すのか、売却するのか、賃貸に出すのかで意見が分かれると、共有不動産は方針を決めるだけでも負担が大きくなります。
早めに管理権限や承継方針を整理しておかないと、不動産が空き家化・共有化し、活用や処分が進みにくくなるおそれがあります。
不動産で家族信託が使われやすい場面

不動産で家族信託が検討されやすい代表的な場面は、次の通りです。
- 親の自宅を将来売却する可能性がある場合
- 賃貸不動産を家族が継続して管理したい場合
- 共有にしたくない不動産がある場合
- 空き家化を防ぎたい場合
ここからは、それぞれの場面で何が問題になりやすいのか、具体的に見ていきましょう。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、自宅・賃貸不動産・共有不動産・空き家などの状況を踏まえ、不動産の家族信託が適しているか、登記や権利関係の観点から整理しています。
ご自身のケースで家族信託を検討すべきか、相続登記や遺言など別の方法がよいのか迷う場合は、お気軽にご相談ください。
親の自宅を将来売却する可能性がある場合
親の自宅は、今すぐ売る予定がなくても、将来は介護費用の確保、施設入所、住み替え、相続前の整理などで売却が必要になることがあります。
家族信託がこうした場面で検討されるのは、親の判断能力があるうちに「将来売却する場合、誰が判断し手続きを進めるのか」を決めておけるからです。
一方で、本人の判断能力が不十分になった後は、民法上、意思能力のない法律行為は無効になり、成年後見で本人の居住用不動産を処分する場合は家庭裁判所の許可が必要です。
第3条の2
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
引用元:民法 | 第3条の2
第859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)
第八百五十九条の三 成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
引用元:民法 | 第859条の3
自宅を将来売却する可能性がある場合は、必要なタイミングで手続きを進められなくなるおそれがあります。
賃貸不動産を家族が継続して管理したい場合
賃貸不動産を家族が継続して管理したい場合も、家族信託が使われやすいです。
賃貸アパートや貸家は、次のような判断が継続的に発生します。
- 賃料を受け取る
- 修繕を決める
- 賃料や契約条件を見直す
- 空室対策を検討する
親の判断能力が低下すると、こうした判断が遅れて賃貸経営そのものが止まり、収入や建物管理に影響が出るおそれがあります。
こうした場面で家族信託が使われやすいのは、「賃貸不動産の管理を誰が担うか」を先に決めやすいからです。
信託契約の内容に応じて、受託者が賃料の受領や修繕、売却などの判断を担う形を設計できます。
賃貸不動産の家族信託は、管理方法だけでなく、信託登記や税務上の取扱いもあわせて確認しておくことが大切です。
共有にしたくない不動産がある場合
共有にしたくない不動産がある場合も、家族信託が検討されることがあります。
不動産を相続で共有にすると、あとから売却する、建て替える、活用方針を変えるといった判断が重くなりがちです。
法律では、共有物の変更や処分には共有者全員の同意が必要だと定められています。
第251条(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
引用元:民法 | 第251条
兄弟姉妹の人数や関係性まで考えると、共有は一見公平に見えても、実際には管理や処分の判断が進みにくい状態になりやすいといえます。
家族信託がこうした場面で検討されるのは、「不動産を最終的に誰に承継するか」と、「その前の管理役を誰にするか」を分けて設計しやすいからです。
不動産の共有化や登記名義が整理されない状態を避けたい場合は、家族信託によって「誰が管理するのか」「最終的に誰へ引き継ぐのか」を整理しやすくなります。
空き家化を防ぎたい場合
空き家は、誰も住まなくなった時点から管理の負担が生まれやすい不動産です。
相続や転居後に家を放置すると、管理不全や資産価値の低下につながりやすくなります。
また、空き家を放置すると次のようなリスクがあります。
- 資産価値の低下
- 売却困難
- 倒壊や外壁落下
- 不法侵入・放火など
家族信託がこうした場面で検討されるのは、「親が施設に入った後、この家を賃貸に出すのか、売却するのか、解体するのか」を事前に決めやすいからです。
空き家になってから慌てて考えるのではなく、空き家になる前に管理や活用の方針を整理しておくことで、家族が対応しやすくなります。
不動産の家族信託で実現できること・できないこと

家族信託は、不動産の管理や承継について、あらかじめ家族間でルールを定めておく仕組みです。
ただし、家族間の対立や税務上の問題まで、自動的に解決できる制度ではありません。
家族信託でできることは、次の通りです。
| できること | 不動産でいうと |
|---|---|
| 管理と承継のルールを先に決める | 自宅を売却する条件、賃貸物件の管理方針、最終的な引き継ぎ先を決めやすくなる |
| 家族内の判断役を決める | 売却、賃貸、修繕、管理を誰が担うかを明確にできる |
| 共有化や空き家化を防ぎやすくする | 名義や判断が分かれて、不動産が活用できない状態を避けやすくなる |
| 二次承継まで考える | 親から子、さらに次の世代へと、不動産をどのように承継するかを設計しやすくなる |
不動産を信託する場合は、信託契約だけでなく信託登記も必要になるため、書類作成だけで終わらせず、登記や運用まで見据えた設計が重要です。
一方で、家族信託でできないことは、次の通りです。
| できないこと | 不動産でいうと |
|---|---|
| 家族の対立を自動で消す | 管理役や売却代金の扱いを説明しないと、不信感が残る |
| 税務や相続の手続きを制度1つで完結させる | 相続税、贈与税、所得税などの税務、登記、遺産分割などは別途確認が必要 |
| 本人の介護や生活支援まで担う | 財産管理が中心のため、介護契約や生活支援は別に考える必要がある |
家族信託は「不動産の管理・処分を滞らせないための設計」には向いているものの、家族への説明、登記、税務、相続まで自動で整う制度ではありません。
実務では、契約内容、登記、税金、家族への説明をひとつの流れとして確認することが重要です。
不動産の家族信託と遺言・後見との違い

遺言・後見制度・家族信託は、どれか1つが常に優れているという関係ではありません。
大切なのは、「どのような場面で有効な制度なのか」「何を解決する制度なのか」を分けて見ることです。
遺言・後見制度・家族信託の違いは、次の表の通りです。
| 制度 | 主に機能する時期 | 役割の中心 | 不動産に関する主な使い方 |
|---|---|---|---|
| 家族信託 | 元気なうちに設計する | 生前の管理と承継をつなぐ | 将来の売却・賃貸・修繕を家族が進めやすい |
| 遺言 | 亡くなった後 | 財産の分け方を決める | 生前の売却や賃貸管理には使いにくい |
| 後見 | 判断能力が不十分になった後 | 本人を守る | 居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が関わる |
不動産を今後どのように管理・処分するかまで考えるなら、制度名だけで比べるのではなく、家族の状況や不動産の承継先を踏まえて判断することが大切です。
不動産の家族信託を検討する前に決めておきたいこと

家族信託は、制度の知識から入るよりも、まず「不動産をどのように管理・承継したいのか」を整理することが大切です。
家族信託を考える前に家族で整理すべき論点は、次の通りです。
- 不動産を「残す」「売却する」「活用する」のか
- 誰を受託者にするのか
- 他の相続人や家族へどう説明するか
- 登記、税務、相続をどうするか
ここからは、制度を入れる前に決めておきたい内容を順番に見ていきましょう。
不動産を「残す」「売却する」「活用する」のか
最初に決めるべきなのは、対象となる不動産を最終的にどうしたいのかです。
実家として残すのか、介護費用のために売却するのか、賃貸不動産として活用するのかによって、家族信託の設計内容は変わります。
目的が曖昧なまま進めると、契約内容も曖昧になり、実際に売却や管理が必要になった場面で判断に迷いやすくなります。
特に実家や将来空き家になりそうな不動産では、「売る」「活かす」「適切に管理する」という判断を早めに決めておきましょう。
残す、売却する、賃貸に出すといった方針が固まっていない段階では、家族信託の契約内容も定まりにくくなります。
誰を受託者にするのか
家族信託では、受託者と呼ばれる管理役を誰にするかが論点になります。
受託者は、「信頼できる人」という理由だけで決めると、実際の管理で行き詰まることがあります。
不動産の所在地に近いか、賃貸管理や支払い管理を続けられるか、他の相続人から見て偏りがないか、長期で引き受けられるかまで確認しましょう。
受託者には、実際に財産管理を担える体制や意思が必要です。
管理役が曖昧な家族信託は、形だけの契約になりがちです。
他の相続人や家族へどう説明するか
家族信託は、親と一部の家族だけで進めると、後から他の相続人や家族が不信感を抱くことがあります。
制度として正しくても、「なぜその人が管理するのか」「家賃や売却代金は誰のために使うのか」が伝わっていなければ、他の家族が納得しにくくなります。
説明すべき内容は、少なくとも次の4点です。
- なぜ家族信託を使うのか
- 誰が管理役になるのか
- 家賃や売却代金は誰のために使うのか
- 最終的に誰へ不動産を承継するのか
こうした内容を事前に整理しておくと、他の家族にも目的を伝えやすくなります。
登記、税務、相続をどうするか
不動産を家族信託に入れる場合、契約書を作るだけでは足りません。
不動産は登記によって権利関係を公示するため、家族信託を設定する場合は、信託の内容を登記に反映する必要があります。
第97条(信託の登記の登記事項)
第九十七条 信託の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 委託者、受託者及び受益者の氏名又は名称及び住所
二 受益者の指定に関する条件又は受益者を定める方法の定めがあるときは、その定め
三 信託管理人があるときは、その氏名又は名称及び住所
四 受益者代理人があるときは、その氏名又は名称及び住所
五 信託法(平成十八年法律第百八号)第百八十五条第三項に規定する受益証券発行信託であるときは、その旨
六 信託法第二百五十八条第一項に規定する受益者の定めのない信託であるときは、その旨
七 公益信託に関する法律(令和六年法律第三十号)第二条第一項第一号に規定する公益信託であるときは、その旨
八 信託の目的
九 信託財産の管理方法
十 信託の終了の事由
十一 その他の信託の条項
引用元:不動産登記法 | 第97条
税務面については、税理士に確認することも欠かせません。
国税庁は、受益権の設定内容によって贈与税が課税される場合があると示しています。
新たに信託の設定を行った場合などで、適正な対価を負担することなく受益権等を取得したときは、贈与税が課税されます。
また、信託を設定する時点において受益者等の存しない信託で、将来、委託者の親族等が受益者等となる信託の設定を行った場合(例えば、信託を設定した時点ではまだ生まれていない孫等を受益者等として指定した場合)などには、信託の受託者に対して、贈与税が課税されます。
引用元: 国税庁「No.4427 新たに信託の設定等を行った場合」
また、所得税法では、一定の信託について、信託財産に関する収益や費用を受益者に帰属させる取扱いが定められています。
第13条(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)
第十三条 信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者の収益及び費用とみなして、この法律の規定を適用する。ただし、集団投資信託、退職年金等信託又は法人課税信託の信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用については、この限りでない。
引用元:所得税法 | 第13条
さらに、信託していない不動産や相続発生後の不動産には、相続登記義務化も関係します。
第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
引用元:不動産登記法 | 第76条の2
家族信託だけを切り離して考えるのではなく、登記、税務、相続手続きとの関係を一体で確認しましょう。
不動産の家族信託が向いているケース・別の方法を検討すべきケース

家族信託が適しているかどうかは制度名だけで判断せず、「不動産を今後どのように管理・処分するのか」「誰が受託者になるのか」「家族間で合意形成ができるのか」を踏まえて検討しましょう。
| 家族の状態 | 理由 |
|---|---|
| 不動産を将来も管理・処分する可能性があるケース | あらかじめ決めた家族が受託者として不動産の管理・処分を行えるため、将来の手続きが止まるリスクを減らせる |
| 特定の家族に管理を任せたいケース | 実際に管理を担う家族が決まっている場合は、賃貸借契約、修繕対応、売却手続きなどを進めやすくなるため |
| 不動産を早めに売却する方針が固まっているケース | 売却手続きの準備、遺言書の作成、相続登記への備えなどを優先した方がよい場合があるため |
| 家族内の合意形成が難しいケース | 弁護士などを交えた法的整理、遺言、後見制度などを先に検討した方が安全な場合があるため |
制度名だけで選ぶのではなく、不動産の管理・処分の方針と家族関係を踏まえて検討することが大切です。
不動産の家族信託は相談先選びが重要!

不動産の家族信託は、契約書を作るだけで終わるものではありません。
信託契約の内容を登記に反映する必要があり、賃貸不動産であれば管理方法や収益の扱い、将来の相続まで見据えて設計することが大切です。
また、税務上の取扱いや相続時の影響も関係するため、司法書士だけでなく、必要に応じて税理士や弁護士などと連携しながら進める必要があります。
相談先を選ぶ際は、家族信託の契約内容だけでなく、不動産登記や税務、相続後の承継まで見据えて相談できる体制があるかを確認しましょう。
家族信託を形式的に作るだけでは、実際に不動産を売却・賃貸・管理する場面で思うように活用できないことがあります。
そのため、不動産の家族信託を検討する際は、登記や税務、相続全体を踏まえて提案してくれる相談先を選ぶことが重要です。
不動産の家族信託は登記・税務・相続を含めて検討しよう

不動産の家族信託は、「契約を作るかどうか」だけで判断するものではありません。
信託登記や税務上の確認、法的リスクに加えて、売却・管理・空き家対策まで含めて検討することで、家族の状況に合った設計をしやすくなります。
家族信託だけで足りるかどうかは、不動産の状況と相続全体を踏まえて判断することが大切です。
静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、司法書士・税理士・弁護士が連携し、相続登記から家族信託、空き家対策までワンストップで相談できる体制を整えています。
不動産が関係する相続では、「家族信託や相続登記を誰に相談すればよいかわからない」「税務や法律面もあわせて確認したい」と悩む方も少なくありません。
不動産の家族信託が適しているのか、相続登記や遺言など別の方法を検討すべきなのか迷っている方は、早い段階でご相談ください。
資産組換えとは?不動産での考え方も含めて徹底解説!
2026.06.04
資産組換えとは、現在保有している土地や建物、現金などの資産について、相続や管理のしやすさを踏まえて持ち方を見直すことです。
相続した不動産を売却して現金化する、相続人間で分けやすい形にする、管理しやすい状態へ整理するなど、相続や維持費の負担に備える方法として検討されます。
相続や不動産、税金が関わる資産の見直しは、判断を誤ると後から思わぬ負担が生じることもあります。
そのため、まずは現在の資産状況を整理し、どのような選択肢があるのかを把握することが大切です。
この記事では、資産組換えの基本や、不動産を含む資産を見直す際の考え方について解説します。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、相続登記や不動産の名義整理をはじめ、相続に関するご相談を承っています。
税務や不動産売却に関する内容は、必要に応じて税理士や不動産会社などと連携しながら進めることも可能です。
相続登記や不動産の名義整理をきっかけに、資産の見直しを検討している方は、お気軽にご相談ください。
記事監修者
司法書士 川上直也
当センターの受付を担当しております。
司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。
ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
資産組換えとは

資産組換えとは、現在保有している資産の内容や名義、管理方法を見直し、相続や管理の目的に合わせて整理することです。
たとえば、使っていない土地や建物を売却して現金化する、古い不動産を売却し、必要に応じて別の不動産への買い替えを検討する、将来の相続で分けやすい形にしておく、といった方法があります。
資産組換えは、単に資産を売ったり買ったりすることではありません。
次のように相続、税金、不動産の管理、将来の家族間での分けやすさなどをふまえて、資産全体のバランスを見直す手段です。
- 相続対策や納税資金の準備につなげる手段
- 管理負担や収益性を見直す手段
- 将来のリスクを減らす手段
ここからは、それぞれ順番に見ていきましょう。
相続対策や納税資金の準備につなげる手段
資産組換えは、相続時の遺産分割や納税資金の準備を見据えて、資産の持ち方を整理する方法として検討されます。
たとえば、現金は基本的に額面で評価されます。
一方、不動産は土地や建物の評価方法によって、相続税評価額が変わることがあります。
また、土地の使い方や建物の有無によって、固定資産税や相続税評価の扱いが変わる場合もある点に注意が必要です。
そのため、資産をすべて現金で持つのがよいのか、不動産として持つのがよいのか、あるいは一部を売却して納税資金を確保しておくべきなのかは、家族構成や資産の内容によって異なります。
特に不動産は、相続の場面で次の表のような問題につながることがあります。
| よくある状況 | 起こりやすい問題 |
|---|---|
| 相続財産の多くが不動産である | 相続人同士で公平に分けにくい |
| 現預金が少ない | 相続税や維持費の支払いに困ることがある |
| 複数人で不動産を共有している | 売却や活用の判断が進みにくい |
| 古い建物や使っていない土地がある | 管理費や固定資産税の負担だけが続く |
このような場合、事前に資産の内容を整理し、売却・買い替え・賃貸活用などによって、相続時の遺産分割や納税資金の準備がしやすくなる場合があります。
ただし、税金に関する判断は専門的な知識が必要であり、資産の種類や使い方によって結果が変わります。
そのため、税務については税理士に、登記や名義整理については司法書士に確認しながら進めることが大切です。
管理負担や収益性を見直す手段
資産組換えは、収益を生んでいない不動産や管理負担の大きい資産を見直し、今後の管理や承継を考えるきっかけになります。
たとえば、空き家や使っていない土地を所有している場合、そこから収入が得られなくても、固定資産税、管理費、修繕費などの負担は続きます。
建物が古くなると、草木の管理や近隣への配慮、老朽化への対応も必要です。
総務省の調査によれば、全国の空き家は900万2千戸に達し、管理されていない住宅が増えている現状があります。
総住宅数のうち、空き家は900万2千戸と、2018年(848万9千戸)と比べ、51万3千戸の増加で過去最多となっており、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%と、2018年(13.6%)から0.2ポイント上昇し、過去最高となっている。
引用元:総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」
このような不動産は、そのまま持ち続けるのではなく、次のような組換えをすることもできます。
| 組換え前の資産 | 組換え後の例 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 空き家 | 売却して現金化 | 管理負担を減らし、相続時に分けやすくする |
| 使っていない土地 | 賃貸住宅や駐車場として活用 | 賃貸活用によって収入を得られる可能性がある |
| 老朽化した収益物件 | 別の不動産への買い替えを検討 | 修繕リスクを抑え、収益性の改善を目指せる |
| 分けにくい不動産 | 一部売却して現金を確保 | 納税資金や遺産分割に備えやすくなる |
大切なのは、「持っていること」そのものが目的になっていないかを見直すことです。
不動産は資産である一方、使い方を決めないまま放置すると、費用や手間だけがかかることもあります。
今後も保有する意味があるのか、売却したほうがよいのか、別の不動産へ買い替えたほうがよいのかを整理することで、不動産の管理方針や相続時の扱いを整理しやすくなります。
ただし、収益不動産への買い替えを検討する場合も、購入後の管理や修繕、将来の承継まで確認する必要があります。
入居者募集、建物管理、修繕、将来の売却可能性なども含めて検討する必要があります。
将来のリスクを減らす手段
資産組換えは、将来起こり得るトラブルを減らすための備えにもなります。
特に不動産は、相続が発生した後に問題が表面化しやすい資産です。
たとえば、相続人が複数いる場合、不動産を共有名義にすると、売却や活用をする際に全員の同意が必要になることがあります。
時間が経つほど関係者が増え、話し合いがまとまりにくくなる場合があります。
また、空き家や利用していない土地を放置することで発生するリスクは次の通りです。
- 建物の老朽化による倒壊や修繕負担
- 草木の繁茂や害虫などによる近隣トラブル
- 固定資産税や管理費、修繕費の負担が続く
- 売却したいときに買い手が見つかりにくくなる
- 相続人同士で処分方法を決められなくなる
- 権利関係が複雑になり、名義変更や売却に時間がかかる
こうしたリスクを避けるには、相続が起きてから慌てて対応するのではなく、元気なうちに資産の状況を整理しておくことが重要です。
たとえば、将来使う予定のない不動産については、売却や賃貸活用、一部の現金化などを検討し、相続人が分けやすい形に整理しておく方法が考えられます。
資産組換えは、税負担だけで判断するものではありません。
ご家族が将来困らないように、資産の持ち方を整えておくための大切な選択肢です。
不動産の資産組換えとは

不動産の資産組換えとは、現在保有している土地や建物について、売却・買い替え・活用・権利関係の整理などを通じて、管理や相続がしやすい状態に見直すことです。
不動産は、現金のようにすぐ分けたり使ったりしにくい資産です。
さらに、固定資産税や管理費、修繕費がかかることもあり、使い道がないまま持ち続けると負担だけが大きくなる場合があります。
そのため、不動産の資産組換えでは、「このまま持ち続けるべきか」「売却して現金化したほうがよいか」「賃貸活用や別の不動産への買い替えを検討すべきか」「相続前に権利関係を整理したほうがよいか」といった視点で考えることが大切です。
不動産で行う代表的な資産組換えの考え方は、主に次の通りです。
- 売却して分けやすい資産にする
- 賃貸活用や買い替えを検討する
- 権利関係や形を整理する
ここからは、不動産に絞って資産組換えの考え方を具体的に見ていきましょう。
売却して分けやすい資産にする
不動産を売却して現金化すると、相続人間で分けやすくなったり、納税資金を準備しやすくなったりします。
不動産を現金化すると、必要なときに使いやすくなり、相続人間で分けやすい資産にしやすくなります。
たとえば、不動産のままでは相続人同士で分けにくい場合でも、現金にしておけば遺産分割がしやすいです。
また、相続税の納税資金、施設入居費、生活費、別の投資資金などにも充てやすくなります。
特に、次のような不動産は、現金化を検討することがあります。
| 不動産の状態 | 現金化を検討する理由 |
|---|---|
| 使っていない空き家 | 管理費や修繕費だけがかかりやすい |
| 老朽化した建物 | 今後、修繕費や解体費が発生する可能性がある |
| 相続人が誰も住む予定のない実家 | 将来の管理者が決まらず、空き家になるおそれがある |
| 分けにくい土地や建物 | 現金化することで相続人間で分けやすくなる |
| 収益を生んでいない土地 | 売却代金を別の目的に使える |
ただし、不動産を売却すると、売却益に対して税金がかかる場合があります。
相続した不動産を売却する場合などには、一定の条件を満たすことで税制上の特例を利用できる可能性もあります。
しかし、要件の確認が必要です。
そのため、「売れば解決する」と考えるのではなく、売却価格や税金、相続人への分け方、登記手続きへの影響をあわせて確認することが大切です。
賃貸活用や買い替えを検討する
賃貸活用や買い替えを検討することも、不動産の資産組換えの一つです。
収益不動産とは、賃貸住宅、店舗、事務所、駐車場など、賃料収入を見込める不動産のことです。
使っていない土地や低収益の不動産を、収入を生む不動産に替えることで、資産全体の効率を高められる可能性があります。
たとえば、次のような組換えが考えられます。
| 組換え前 | 組換え後の例 | 期待できること |
|---|---|---|
| 使っていない土地 | 賃貸住宅として活用 | 家賃収入を見込める |
| 空き家 | 売却して収益物件を購入 | 管理負担を減らしながら収益化を目指せる |
| 老朽化したアパート | 新しい賃貸物件へ買い替え | 修繕リスクを抑えやすくなる |
| 低収益の不動産 | 立地や需要に合う不動産へ持ち替え | 収益性の改善を目指せる |
収益不動産への持ち替えは、毎月の収入が期待できる点がメリットです。
一方で、空室、修繕、入居者対応、管理会社への委託費用なども考える必要があります。
また、相続対策として収益不動産を検討する場合でも、税金面だけで判断するのは危険です。
将来の入居需要、建物の維持管理、借入金の返済、相続人が引き継げるかどうかまで確認しておく必要があります。
収益不動産への組換えは、不動産・税務・相続の判断が重なりやすい分野です。
無理な借入れや、需要の見込みが薄い物件への買い替えは、かえってご家族の負担になることもあります。
権利関係や形を整理する
不動産の資産組換えでは、売却や買い替えだけでなく、権利関係や不動産の形を整理することも重要です。
たとえば、相続によって土地や建物が共有名義になっている場合、売却や建て替え、活用を進めるには共有者同士の話し合いが必要になります。
意見が分かれると、資産を動かしたくても動かせない状態になってしまうことがあります。
また、名義変更がされていない不動産や、境界がはっきりしていない土地、古い建物が残っている土地なども、売却や相続の場面で手続きが進みにくくなりがちです。
権利関係や形の整理には、次のような方法があります。
| 整理したい内容 | 主な対応例 |
|---|---|
| 共有名義を解消したい | ・持分の売却 ・共有者間での買い取り ・土地の分割 など |
| 相続登記が終わっていない | ・名義変更を行い、所有者を明確にする ※2024年4月1日から相続登記は義務化されているため、早めに対応することが大切 |
| 土地の境界が不明確 | ・測量を行う ・隣地との確認を行う |
| 古い建物が残っている | ・解体 ・リフォーム ・売却方法の見直しを検討 |
| 分けにくい不動産がある | ・売却して現金化する ・土地を分ける ・別の資産へ組み替える |
こうした整理をしておくことで、不動産を売りやすくしたり、相続人同士で分けやすくしたりできます。
不動産は、名義や権利関係が複雑になるほど、手続きに時間がかかりやすくなります。
特に相続が何度も重なると、関係者が増え、話し合いが難しくなることも。
そのため、不動産の資産組換えでは、「何に買い替えるか」だけでなく、「今の不動産を売れる状態・分けやすい状態に整えること」も大切な対策です。
資産組換えが必要な状態

資産組換えが必要な状態とは、今のまま資産を持ち続けることで、税金・維持費・相続トラブルなどの負担が大きくなる可能性がある状態です。
特に不動産は、持っているだけで固定資産税や管理費、修繕費がかかります。
さらに、相続が発生したときに分けにくかったり、名義や権利関係が複雑になったりすると、ご家族の間で話し合いが進みにくくなることもあります。
資産組換えを検討したい主なサインは、次の通りです。
- 税負担が過大になっている状態
- 収益が低いまたは出ていない状態
- 相続や分割が難しい状態
ここからは、どのような状態が「資産組換えを検討したほうがよい状態」なのかを詳しく見ていきましょう。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続・不動産・税務が関わる資産の悩みに対して、現状整理の段階からご相談をお受けしています。
今の資産状況が組換えを検討すべき段階かどうか迷われている方は、まずは状況整理からご相談ください。
税負担が過大になっている状態
固定資産税や相続税などの負担が重く、今の資産の持ち方に見合っていない場合は、資産組換えを考えるサインです。
たとえば、使っていない土地や建物であっても、所有している限り固定資産税はかかります。
建物が古くなれば、修繕費や解体費が必要になることも。
収入を生んでいない不動産に税金や維持費だけがかかり続ける状態は、資産全体で見ると負担が大きくなりやすいといえます。
また、相続の場面では、不動産の評価や資産全体のバランスによって、相続税の負担や納税資金の準備が問題になることがあります。
財産の多くが不動産に偏っていると、相続税を支払うための現金が不足する可能性もあるのです。
税負担が気になる場合は、次のような点を確認しておきましょう。
| 確認したいこと | 見直しの考え方 |
|---|---|
| 固定資産税の負担が重い | 使っていない不動産を売却する、活用方法を見直す |
| 維持費や修繕費がかかっている | 保有を続けるべきか、売却や解体も含めて検討する |
| 相続税の納税資金が足りない | 一部を現金化し、納税資金を準備する |
| 資産の多くが不動産に偏っている | 現金や分けやすい資産へ組み替える |
税金の負担は、資産の種類や使い方によって変わります。
そのため、「とりあえず売る」「とりあえず持ち続ける」と判断するのではなく、税務や相続の専門家と一緒に確認することが大切です。
収益が低いまたは出ていない状態
保有している資産が収益を生んでいない場合も、資産組換えを検討するきっかけになります。
たとえば、空き家や遊休地を所有している場合、家賃収入などがないにもかかわらず、固定資産税、火災保険料、管理費、草木の手入れ、修繕費などがかかることがあります。
使う予定がない不動産をそのままにしておくと、毎年の負担だけが続いてしまうのです。
また、収益物件であっても、空室が多い、修繕費がかさむ、地域の賃貸需要が下がっているなどの理由で、思ったほど利益が出ていないケースもあります。
収益が低い、または出ていない資産には、次のような見直し方があります。
| 現在の状態 | 組換えの方向性 |
|---|---|
| 空き家のままになっている | 売却して現金化する、賃貸活用を検討する |
| 使っていない土地がある | 駐車場や賃貸住宅として活用する、売却する |
| 老朽化した賃貸物件を持っている | 修繕・建て替え・売却・買い替えを比較検討する |
| 収益より維持費が大きい | 保有を続ける意味があるか見直す |
| 将来使う予定がない | 相続前に分けやすい形へ整える |
資産組換えによって、収益を生まない不動産を売却して現金化したり、賃料収入を見込める不動産へ持ち替えたりすることで、資産全体の効率を改善できる可能性があります。
ただし、収益不動産に組み替える場合も、空室リスクや管理の手間、修繕費、借入金の返済などを考えなければなりません。
収益性だけでなく、将来ご家族が引き継げるかどうかも含めて検討しましょう。
相続や分割が難しい状態
相続が発生したときに、財産を分けにくい状態になっている場合も、資産組換えを早めに考えたほうがよいケースです。
特に不動産は、現金のように簡単に分けることができません。
相続人が複数いる場合、誰が住むのか、誰が管理するのか、売却するのか、共有にするのかを話し合う必要があります。
不動産を共有名義にすると、一見公平に見えることもあります。
しかし、将来売却や建て替えをする際に共有者全員の同意が必要になり、意見が合わないと手続きが進まなくなることがあるのです。
さらに、次の相続が起きると関係者が増え、権利関係が複雑になるおそれもあります。
相続や分割が難しくなりやすい状態には、次のようなものがあります。
| 状態 | 起こりやすい問題 |
|---|---|
| 相続財産の多くが不動産である | 相続人同士で公平に分けにくい |
| 相続人のうち一人だけが不動産を使っている | 他の相続人との間で不公平感が出やすい |
| 共有名義の不動産がある | 不動産全体の売却や変更には共有者全員の同意が必要になるため、活用方法によっても合意形成が必要になる場合がある |
| 名義変更が終わっていない不動産がある | 売却や相続手続きに時間がかかる |
| 誰も住む予定のない実家がある | 空き家となり、管理負担が残りやすい |
このような場合は、相続が起きる前に、不動産を売却して現金化する、相続人間で分けやすい資産へ組み替える、名義や権利関係を整理するなどの対策が考えられます。
資産組換えは、将来のご家族の負担を減らすための準備でもあります。
税金、収益性、相続時の分けやすさを総合的に見ながら、早めに現状を整理しておくことが大切です。
資産組換えの代表的な方法

資産組換えには、資産の状況や目的に応じていくつかの方法があります。
たとえば、使っていない不動産を売却して現金化する方法もあれば、収益を生む不動産へ買い替える方法、今ある土地や建物を活用し直す方法、共有名義や管理方法を整理する方法もあります。
大切なのは、「どの方法が一番よいか」を先に決めるのではなく、「何を解決したいのか」から考えることです。
納税資金を準備したいのか、収益を増やしたいのか、相続人同士で分けやすくしたいのかによって、選ぶべき方法は変わります。
資産組換えの代表的な方法は、次の通りです。
- 売却して現金化する
- 収益物件への買い替えを検討する
- 建て替えや活用方法を検討する
- 家族信託や共有関係の整理を検討する
ここからは、それぞれの方法の特徴や注意点を見ていきましょう。
売却して現金化する
売却して現金化する方法は、資産組換えの中でも比較的わかりやすい方法です。
使っていない土地や空き家、維持費がかかり続ける建物などを売却すれば、現金として使いやすい資産に変えることができます。
現金化することで、相続税の納税資金、遺産分割のための資金、生活費や介護費用、別の不動産への買い替え資金などに活用しやすくなります。
売却を検討しやすい不動産は、次の表の通りです。
| 売却を検討しやすい不動産 | 理由 |
|---|---|
| 誰も住む予定のない実家 | 空き家になると管理負担が続きやすい |
| 使っていない土地 | 固定資産税だけがかかる状態になりやすい |
| 老朽化した建物 | 修繕費や解体費が必要になる可能性がある |
| 相続人で分けにくい不動産 | 現金化すると分割しやすくなる |
| 収益が出ていない不動産 | 売却代金を別の目的に使える |
ただし、不動産を売却して利益が出た場合は、税金がかかることがあります。
また、相続した空き家を売却する場合は、一定の要件を満たせば譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除を受けられる特例があります。
ただし、家屋の状態、売却時期、相続人の人数などによって適用可否や控除額が変わるため、事前の確認が必要です。
そのため、売却を進める前に、売却価格の見込み、税金、手取り額、相続人への分け方を確認しておくことが大切です。
売却は、不動産を現金化して分けやすくする方法の一つです。
しかし、税金や相続の見通しを立てずに進めると、思ったより手元に資金が残らないこともあります。
収益物件への買い替えを検討する
収益物件への買い替えは、今ある不動産を売却し、賃料収入などが見込まれる不動産を取得する方法です。
たとえば、使っていない土地や古い建物を売却し、賃貸マンション、アパート、店舗、事務所、駐車場などの収益物件への買い替えを検討するケースがあります。
収益を生まない資産を、毎月の収入が見込める資産に変えることで、資産の収益性や管理方法を見直せる可能性があります。
一方で、収益物件は「購入すれば安心」というものではありません。
空室が発生することもあれば、修繕費や管理費がかかることもあります。
借入れをして購入する場合は、返済計画も慎重に確認する必要があります。
収益物件への買い替えを検討する場合は、次のような点を確認しましょう。
| 確認したいこと | 内容 |
|---|---|
| 立地 | 入居者や利用者の需要が見込める場所か |
| 収支予測 | 家賃収入から管理費・修繕費・税金・借入金返済額などを差し引いても成り立つか |
| 空室リスク | 入居者が決まらない期間があっても対応できるか |
| 管理体制 | 自分で管理するのか、管理会社に任せるのか |
| 相続後の引き継ぎ | ご家族が将来管理しやすい資産か |
収益物件への買い替えは、収入を得られる可能性がある一方で、運営や管理の負担も伴います。
税金面の効果だけでなく、長期的に管理できるか、将来相続人が引き継げるかまで確認することが重要です。
建て替えや活用方法を検討する
建て替えや有効活用は、今ある土地や建物を活かして、管理負担や収益性を見直す方法です。
たとえば、老朽化した建物を建て替えて賃貸住宅にする、空いている土地を駐車場として活用する、古い建物をリフォームして貸し出す、といった方法があります。
売却せずに資産を残しながら、収益化や利用価値の向上を目指せる点が特徴です。
建て替えや有効活用の例は、次の通りです。
| 現在の状態 | 活用方法の例 | 期待できること |
|---|---|---|
| 古い住宅がある | 建て替えて賃貸住宅にする | 家賃収入を見込める |
| 空いている土地がある | 駐車場や貸地として活用する | 初期費用を抑えて収益化しやすい場合がある |
| 老朽化した建物がある | 解体して別用途に転用する | 管理負担や安全面の不安を減らせる |
| 使っていない建物がある | リフォームして貸し出す | 既存建物を活かせる可能性がある |
ただし、建て替えや有効活用には、建築費、解体費、設計費、借入金の返済などの資金が必要になる場合があります。
また、土地や建物がある地域で本当に需要があるかを見極めなければ、建物を建てても入居者や利用者が見つからないことがあります。
土地活用を検討するときは、「何を建てられるか」だけではなく、「誰が使うのか」「収支に無理がないか」「将来の相続人が管理できるのか」まで考えることが大切です。
家族信託や共有関係の整理を検討する
家族信託や共有関係の整理は、不動産の権利関係や管理方法を整理するための方法です。
不動産が共有名義になっている場合、売却や建て替え、活用を進めるには共有者同士の話し合いが必要になります。
意見がまとまらないと、不動産を売却・活用したくても手続きを進められない状態になってしまいます。
また、高齢の親が不動産を所有している場合、将来認知症などで判断能力が低下すると、売却や賃貸借契約、建て替えなどの手続きが難しくなることがあるのです。
このような場合に備えて、家族信託などを活用し、あらかじめ管理する人を決めておく方法があります。
信託や共有整理で検討される主な対応は、次の通りです。
| 方法 | 内容 | 期待できること |
|---|---|---|
| 家族信託 | 信託契約により、受託者となる家族に財産の管理や処分を任せる仕組み | 将来の管理や処分を進めやすくする |
| 共有持分の整理 | 共有者間で持分を買い取る、持分を売却するなどして整理する | 意思決定をしやすくする |
| 相続登記 | 相続した不動産について、被相続人から相続人へ所有権移転登記を行う | 所有者を明確にする |
| 遺産分割方針の整理 | 誰がどの資産を引き継ぐかを決める | 将来の紛争や手続きの停滞を防ぎやすくする |
信託や共有整理は、単に不動産を売る・買うという話ではなく、「誰が管理するのか」「誰が引き継ぐのか」「どのように処分できるようにしておくのか」を決める対策です。
特に相続が関わる不動産は、時間が経つほど関係者が増え、権利関係が複雑になりやすい傾向があります。
将来のトラブルを防ぐためにも、共有名義や登記名義の状況を早めに確認し、必要に応じて専門家と一緒に整理しておくことが大切です。
資産組換えが失敗する原因

資産組換えは、うまく進めれば税負担や管理負担を軽くしたり、相続しやすい形に整えたりできる方法です。
しかし、判断を誤ると、かえって費用が増えたり、売りにくい不動産を抱えたり、相続人同士のトラブルにつながったりすることがあります。
資産組換えで特に注意したい失敗の原因は、主に次の通りです。
- 税負担だけで判断してしまう
- 不動産の価値を見誤る
- 相続人の視点を見逃してしまう
ここからは、資産組換えでつまずきやすいポイントを詳しく見ていきましょう。
税負担だけで判断してしまう
資産組換えでよくある失敗が、税負担の軽減だけを見て判断してしまうことです。
たとえば、「相続税対策になる」「税金が軽くなる可能性がある」と聞いて不動産を購入しても、その後の管理費、修繕費、固定資産税、借入金の返済などが重くなれば、かえって家計や資産全体の負担が増えてしまうことがあります。
また、税制上の特例は、利用できる条件が細かく決められていることが多く、必ず適用できるとは限りません。
特例が適用できると思って進めたものの、要件を満たさず想定より税負担が重くなるケースも考えられます。
税金だけで判断した場合に起こりやすい問題は、次の通りです。
| 判断の仕方 | 起こりやすい問題 |
|---|---|
| 節税効果だけを重視する | 管理費や修繕費で負担が増えることがある |
| 特例が使える前提で進める | 要件を満たさず、想定より税金がかかることがある |
| 借入れをして不動産を購入する | 返済負担が重くなり、資金繰りが悪化することがある |
| 相続税だけを見る | 相続後の管理や売却のしやすさを見落とすことがある |
資産組換えでは、税金の軽減だけでなく、手元に残る資金、将来の収入、管理のしやすさ、相続人が引き継げるかどうかまで含めて考える必要があります。
節税は大切な考え方です。
しかし、それだけを目的にすると、結果的に「持ちにくい資産」になってしまうことがあります。
税務は税理士、不動産の売却や活用は不動産会社、登記や権利関係は司法書士に確認しながら、総合的に判断することが重要です。
不動産の価値を見誤る
不動産の価値を正しく把握しないまま資産組換えを進めることも、失敗の原因になります。
不動産の価値は、立地、周辺環境、土地の形、道路との関係、建物の状態、築年数、需要の有無などによって変わります。
同じ地域にある不動産でも、売りやすい物件と売りにくい物件があるのです。
たとえば、「このくらいの価格で売れるだろう」と思っていた不動産がなかなか売れなかったり、収益物件として購入したものの空室が続いたりすると、資産組換えの計画全体に影響が出ることがあります。
不動産の価値を見誤ると、次の表のような問題が起こりやすくなります。
| 見誤りの例 | 起こりやすい問題 |
|---|---|
| 売却価格を高く見込みすぎる | 思った金額で売れず、資金計画がずれる |
| 需要の少ない地域で収益物件を購入する | 空室が続き、収入が安定しない |
| 建物の老朽化を軽く考える | 修繕費や解体費が想定以上にかかる |
| 土地の条件を確認しない | 建て替えや活用に制限がある場合がある |
| 周辺相場だけで判断する | 個別の物件事情を見落とすことがある |
不動産は、現金や預貯金と違い、すぐに希望価格で売れるとは限りません。
また、収益物件に買い替える場合も、表面利回りだけで判断すると、実際の手取りが少なくなることがあります。
資産組換えを進める前には、売却価格の目安、賃貸需要、修繕の必要性、将来の売りやすさなどを確認しておくことが大切です。
不動産会社や、登記・税務に関わる専門家の意見を参考にしながら、現実的な計画を立てましょう。
相続人の視点を見逃してしまう
資産組換えでは、現在の所有者だけでなく、将来、資産を引き継ぐ相続人の視点も大切です。
所有者にとってはよいと思える組換えでも、相続人にとっては管理しにくい、分けにくい、売却しにくい資産になってしまうことがあります。
たとえば、収益物件を購入したものの、将来相続人が賃貸経営を望んでいない場合、管理や入居者対応が負担になることがあります。
また、不動産を共有名義のままにしておくと、相続後に売却や活用を進める際、相続人全員の同意が必要になり、話し合いが難しくなることもあるのです。
相続人の視点を見逃すと、次のような問題につながることがあります。
| 見落としやすい点 | 起こりやすい問題 |
|---|---|
| 誰が不動産を引き継ぐか決まっていない | 相続時に話し合いがまとまりにくい |
| 相続人が複数いる | 不動産を公平に分けにくい |
| 共有名義にすることを考えている | 売却や活用の判断が進みにくくなる |
| 相続人が遠方に住んでいる | 管理や手続きの負担が大きくなる |
| 相続人が賃貸経営を望んでいない | 収益物件を引き継いだ後の負担になる |
資産組換えは、現在の税負担や収益性だけを整えるものではありません。
将来、ご家族が資産をどのように受け取り、管理し、必要に応じて売却できるかまで考えることが大切です。
相続人が複数いる場合は、できるだけ分けやすい形にしておく、納税資金を準備しておく、安易な共有状態を避ける、管理する人を決めておくなどの工夫が必要になります。
資産組換えで失敗しないためには、「税金」「不動産の価値」「相続人の事情」を切り離して考えないことが重要です。
早い段階で現状を整理し、必要に応じて不動産会社、税理士、司法書士などに相談しながら進めましょう。
目的に合った資産組換え方法の選び方

自分に合った資産組換え方法は、持っている資産の内容だけでなく、何を優先したいかによって変わります。
たとえば、相続税や遺産分割への備えを優先したい方もいれば、毎月の収入を増やしたい方、将来の管理負担やトラブルを減らしたい方もいます。
同じ不動産を持っていても、目的が違えば、売却を検討するのか、活用するのか、買い替えを検討するのか、権利関係を整理するのかは変わるのです。
自分に合った資産組換え方法を選ぶ主な基準は、次の通りです。
- 相続対策を優先して選ぶ
- 収益性や管理負担を踏まえて選ぶ
- 将来の管理負担や相続トラブルを避ける観点で選ぶ
ここからは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
相続対策を優先して選ぶ
相続対策を優先する場合は、「相続税の負担」と「相続人同士で分けやすいか」をあわせて考えることが大切です。
不動産は、現金のように簡単に分けることができません。
相続人が複数いる場合、誰が不動産を引き継ぐのか、売却して分けるのか、共有にするのかを決める必要があります。
共有にすると一見、公平に見えることもあります。
しかし、将来売却や活用をする際に意見がまとまらず、手続きが進みにくくなる場合があるのです。
相続対策を目的に資産組換えを行う場合は、次の表にあるような方向性が考えられます。
| 目的 | 組換えの考え方・注意点 |
|---|---|
| 相続税の負担に備えたい | 不動産の相続税評価額や納税資金を確認し、必要に応じて一部を現金化する |
| 相続人同士で公平に分けたい | 分けにくい不動産を売却し、現金や分けやすい資産に替える |
| 不動産を残したい | 誰が引き継ぐのか、管理費や税金を誰が負担するのかを決めておく |
| 共有を避けたい | 生前に権利関係や承継方法を整理しておく |
相続対策では、税負担を抑えることだけを目的にすると、かえって分けにくい資産が残ることがあります。
反対に、分けやすさだけを重視して売却すると、税金面で不利になることもあります。
そのため、「相続税評価や納税資金の確認」と「分割しやすくすること」の両方を見ながら、家族構成や相続人の意向に合った方法を選ぶことが重要です。
収益性や管理負担を踏まえて選ぶ
収益性を重視する場合は、資産がどれだけ安定して収入を生むかを確認する必要があります。
たとえば、使っていない土地や空き家をそのまま持っていても、固定資産税や管理費がかかるだけで収入がないことがあります。
このような場合、賃貸住宅、店舗、事務所、駐車場などとして活用したり、収益物件へ買い替えたりすることで、資産から収入を得られる可能性があるのです。
ただし、収益性を考えるときは、表面上の家賃収入だけで判断しないことが大切です。
空室、修繕費、管理費、借入金の返済、将来の売却しやすさなども含めて確認する必要があります。
収益性を重視する場合は、次のような点を確認しましょう。
| 確認したいこと | 内容 |
|---|---|
| 需要があるか | 土地や建物がある地域で借り手や利用者が見込めるか |
| 収支が合うか | 家賃収入から費用を差し引いて利益が残るか |
| 管理できるか | 自分で管理するのか、管理会社に任せるのか |
| 修繕費に備えられるか | 建物の老朽化や設備交換に対応できるか |
| 相続後も続けられるか | 相続人が賃貸経営を引き継げるか |
収益性を重視した資産組換えは、毎月の収入を得られる可能性がある一方で、管理や運営の負担も伴います。
特に不動産の場合、立地や需要を見誤ると、思ったような収入が得られないこともあります。
そのため、収益性を優先する場合は、「どれくらい収益が見込めるか」だけでなく、「長く安定して保有できるか」「家族が引き継いでも困らないか」まで考えて選びましょう。
将来の管理負担や相続トラブルを避ける観点で選ぶ
リスク回避を重視する場合は、将来の管理負担や相続トラブルを減らすことを目的に資産組換えを考えます。
たとえば、老朽化した空き家、使う予定のない土地、共有名義の不動産、名義変更が終わっていない不動産などは、放置すると後々の負担が大きくなることがあります。
建物の修繕費や解体費が発生したり、近隣とのトラブルにつながったり、相続人同士で処分方法を決められなくなったりする可能性があるのです。
リスクを減らすための資産組換えには、次のような方法があります。
| リスクの内容 | 組換え・整理の方法 |
|---|---|
| 空き家の管理が負担になっている | 売却、賃貸活用、解体などを検討する |
| 不動産が売りにくい状態にある | 測量、境界確認、建物整理などを行う |
| 共有名義で意思決定が難しい | 持分整理や売却、共有関係の解消を検討する |
| 将来の認知症対策をしたい | 家族信託などを活用し、管理・処分の方法を決めておく |
| 相続人に負担を残したくない | 生前に現金化や承継方法の整理を行う |
リスク回避を重視する場合、必ずしも収益を最大化する必要はありません。
むしろ、「管理しやすいか」「売却しやすいか」「相続人が困らないか」を重視することが大切です。
特に不動産は、時間が経つほど建物が古くなり、権利関係も複雑になりやすい資産です。
今は問題がなくても、将来使う予定がない、誰が引き継ぐか決まっていない、共有者が多いといった状態であれば、早めに登記名義や権利関係の整理を検討することが大切です。
自分に合った資産組換えを選ぶには、相続対策、収益性、リスク回避のどれを優先するのかを明確にすることが大切です。
そのうえで、不動産・税務・相続の観点から、無理のない方法を選ぶようにしましょう。
資産組換えを検討する際は、ワンストップで相談できる先を選ぼう!

資産組換えでは、不動産の売買だけでなく、税務、相続、登記名義の整理まで考える必要があります。
売却価格だけで決めると税金や相続人への分け方で困ることがあり、節税だけを重視すると管理しにくい不動産が残る場合もあるのです。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、相続登記や不動産の登記名義の整理についてご相談を承っています。
不動産売却や税務については、必要に応じて不動産会社・税理士などと連携しながら進めることが可能です。
相続登記や不動産の名義整理をきっかけに、今後の資産の扱いで迷っている方は、お気軽にご相談ください。
相続した土地をすぐに売却するために必要なことって?メリットや注意点も詳しく解説!
2026.06.04
相続した土地をすぐに売却したいと思っても、実際には「相続登記」「相続人同士の話し合い」「税金」「境界の確認」など、先に整えておくべきことがあります。
特に、土地は預貯金のように簡単に分けられるものではありません。
手続きを急ぐあまり確認不足のまま売却を進めてしまうと、相続人同士のトラブルや税金面での損、買主との契約トラブルにつながるおそれがあるのです。
この記事では、相続した土地をすぐ売却するために必要な準備や、売却するメリット、注意点について解説します。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続登記をはじめ、相続した土地の売却前に必要となる名義変更や権利関係の確認をサポートしています。
売却価格や税金、境界などについては、必要に応じて不動産会社・税理士・土地家屋調査士などと連携しながら進めることが大切です。
相続登記や売却前の名義変更で不安がある方は、お気軽にご相談ください。
記事監修者
司法書士 川上直也
当センターの受付を担当しております。
司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。
ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
相続した土地はすぐ売却できる?

相続した土地は売却できます。
ただし、次のように「相続したからすぐ売れる」というわけではありません。
- 相続登記が済んでいないと売却できない
- 相続人全員の合意がないと売却できない
- 土地の状態によっては売却前の確認が必要になる
ここからは、相続した土地を売却する上で気をつけたい、それぞれの条件について詳しく見ていきましょう。
相続登記が済んでいないと売却できない
相続登記とは、亡くなった方の名義になっている土地を相続人の名義に変更する手続きです。
相続した土地を売却するには、原則として相続登記を済ませておく必要があります。
登記簿上の名義が亡くなった方のままだと、買主に対して「この土地を売る権利がある人である」と示すことができません。
そのため、売買契約や所有権移転の手続きを進めることが難しくなります。
また、相続登記は義務化されており、相続によって不動産を取得したことを知った日から、3年以内に手続きを行う必要があります。
第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
引用元:不動産登記法 | 第76条の2
正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になる可能性もあります。
第164条(過料)
第百六十四条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
引用元:不動産登記法 | 第164条
土地の売却を急いでいる場合でも、相続登記を省略して売却することは基本的にできません。
まずは必要な戸籍や書類を集め、司法書士などの専門家に相談しながら、相続登記を進めることが大切です。
相続人全員の合意がないと売却できない
相続人が複数いる場合、土地全体を売却するには、原則として相続人全員の合意が必要です。
第251条(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
引用元:民法 | 第251条
亡くなった方の土地は、遺産分割が終わるまでは相続人全員で共有している状態になります。
そのため、一部の相続人だけが「売りたい」と考えていても、他の相続人が反対している場合は、土地全体を自由に売却することはできません。
売却を進める前には、次の内容を相続人同士で決めておく必要があります。
- 誰が土地を相続するのか
- 土地を売却するのか、残すのか
- 売却代金をどのように分けるのか
- 売却に必要な手続きや費用を誰が負担するのか
話し合いで決まった内容は、遺産分割協議書として書面に残しておくことが大切です。
口約束のまま進めると、あとから「聞いていない」「その条件では納得できない」といったトラブルにつながることがあります。
相続人が多い場合や、連絡が取りにくい相続人がいる場合は、手続きに時間がかかることもあります。
早く売却したいときほど、相続人の確認と合意形成を早めに進めましょう。
土地の状態によっては売却前の確認が必要になる
相続登記や相続人の合意が済んでいても、土地の状態によってはすぐに売却できないことがあります。
たとえば、境界がはっきりしていない土地、抵当権が残っている土地、古い建物が残っている土地などは、買主にとって不安材料になりやすいです。
そのため、売り出す前に調査や整理が必要になる場合があります。
売却前に確認したい主なポイントは、次の通りです。
| 確認する項目 | 注意したい内容 |
|---|---|
| 境界 | 隣地との境目が不明確だと、売却後にトラブルになる可能性がある |
| 接道 | 建築基準法上の道路に一定以上接していない土地は、建物の建築や再建築が難しい場合がある |
| 抵当権 | 借入れの担保になっている場合は、決済時までに抹消手続きが必要になることがある |
| 共有持分 | 土地全体を売却する場合は、他の共有者の同意が必要になる |
| 古家・空き家 | 解体するのか、そのまま売るのかを検討する必要がある |
| 越境 | 塀や樹木、配管などが隣地にはみ出していると、買主との交渉に影響する |
| 借地権・地役権 | 他人の権利が関係している場合、売却条件の確認が必要 |
こうした問題がある土地は、売却自体が不可能というわけではありません。
ただし、そのまま手続きを進めると、売却条件の調整が必要になったり、契約前後のトラブルにつながったりすることがあります。
特に空き家付きの土地を売却する場合は、建物を残すのか、解体して更地にするのかによって売却方法が変わります。
また、一定の条件を満たす場合には税金面の特例を使える可能性もあるため、売却前に税理士などに確認しておくと安心です。
相続した土地の売却を検討している場合は、まず登記事項証明書などで名義や権利関係を確認し、必要に応じて司法書士や不動産会社、税理士などに相談しながら準備を進めましょう。
相続した土地をすぐ売却するために必要な手続き

相続した土地を売却するには、不動産会社への相談だけでなく、相続登記や権利関係の整理も必要になります。
相続登記は司法書士、税金は税理士、相続人同士で争いがある場合は弁護士など、内容に応じて相談先を分けることが大切です。
相続した土地をすぐ売却するための主な手続きは、次の通りです。
- 売却前の確認事項を整理する
- 相続登記を完了させる
- 必要書類をそろえる
- 相続登記と並行して売却準備を進める
- 売却にかかる税金や費用を確認する
- 売買契約前に権利関係や必要書類を確認する
- 決済日に所有権移転登記を行う
ここからは、相続した土地を売却するために必要な手続きについて詳しく見ていきましょう。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、相続登記や必要書類の整理を中心に、相続した土地の売却前に必要な手続きをサポートしています。
税金や売却条件については、必要に応じて税理士や不動産会社などと連携しながら進めることができます。
相続登記や売却前の名義変更で何から進めるべきか迷う場合は、お気軽にご相談ください。
1.売却前の確認事項を整理する
土地を売却する前に、まずは「その土地を本当に売れる状態にできるか」を確認しましょう。
売却前に特に確認したい点は、次の通りです。
- 相続登記が完了しているか
- 相続人全員の同意が取れているか
- 相続税の申告が必要か
- 空き家付きの土地か
- 登記上の権利関係に問題がないか
以下からは、それぞれの確認項目について詳しく見ていきましょう。
相続登記が完了しているか
相続した土地を売却するには、原則として亡くなった方名義の土地について、相続人への所有権移転登記、つまり相続登記をしておく必要があります。
登記簿上の所有者が亡くなった方のままだと、買主に対して「この土地を売る権利がある人である」と示すことができません。
そのため、売買契約や所有権移転登記の手続きが進められないことがあります。
売却を急いでいる場合でも、相続登記を省略して進めることは基本的にできません。
早めに必要書類を集め、司法書士に相談しながら手続きを進めましょう。
相続人全員の同意が取れているか
相続人が複数いる場合、土地全体を売却するには、原則として相続人全員の同意が必要です。
遺産分割が終わるまでは、相続した土地は相続人全員で共有している状態になります。
そのため、一部の相続人だけが売却を希望していても、他の相続人が反対している場合は、土地全体を自由に売ることはできません。
売却前には、次の内容を話し合いましょう。
- 土地を誰が相続するのか
- 売却する場合、誰が売主になるのか
- 売却代金をどのように分けるのか
- 測量費、解体費、税金などの費用を誰が負担するのか
話し合いで決まった内容は、遺産分割協議書として書面に残すことが大切です。
口頭での合意だけでは、あとから「聞いていない」「その分け方には納得できない」といったトラブルになる可能性があります。
相続人が多い場合や、連絡が取りにくい相続人がいる場合は、合意形成に時間がかかることもあります。
すぐ売却したいときほど、早めに相続人の確認と話し合いを始めましょう。
相続税の申告が必要か
相続した財産の金額によっては、相続税の申告が必要になることがあります。
相続税がかかるかどうかは、土地だけでなく預貯金、有価証券、建物、生命保険金など、相続財産全体をもとに判断します。
相続税の申告・納税は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行うことが必要です。
第27条(相続税の申告書)
第二十七条 相続又は遺贈(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものに係る贈与を含む。以下この条において同じ。)により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は、当該被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格(第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税の課税価格(第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)に係る第十五条から第十九条まで、第十九条の三から第二十条の二まで及び第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定による相続税額があるときは、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内(その者が国税通則法第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
引用元:相続税法 | 第27条
また、相続税を納めた方が相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに相続した土地を売却する場合、譲渡所得税の負担を軽くできる特例を使える可能性があります。
特例の適用を受けるための要件
(1) 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
(2) その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
(3) その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
引用元: 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
こうした特例を使えるかどうかで、最終的な手取り額が変わることがあります。
売却価格だけを見て判断するのではなく、次の点も確認しましょう。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 相続税の申告が必要か | 相続財産全体の金額を確認する |
| 納税資金が確保できるか | 土地の売却代金を納税に充てる場合は、申告・納税期限までに現金化できるか確認する |
| 譲渡所得税・住民税がかかるか | 土地を売って利益が出る場合、税金がかかることがあるため注意する |
| 使える特例があるか | 取得費加算の特例などを使える可能性がある |
税金の判断は複雑になりやすいため、売却前に税理士に相談しておくと安心です。
空き家付きの土地か
空き家付きの土地を売却するときに確認したい点は、次の通りです。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 建物の状態 | 老朽化が進んでいる場合、買主が不安を感じることがある |
| 解体すべきか | 更地にしたほうが売りやすい場合もあるものの、解体費用がかかる |
| 固定資産税への影響 | 更地にすると固定資産税等の住宅用地特例が外れ、税負担が増えることがある |
| 残置物の有無 | 家具や荷物が残っている場合は、処分方法を決める必要がある |
| 税金の特例 | 一定の条件を満たすと、譲渡所得から控除を受けられる可能性がある |
空き家を放置すると、建物の劣化、近隣への迷惑、管理費用の増加につながることがあります。
売却を考えている場合は、建物付きで売却するのか、解体して売却するのかは、不動産会社や税理士などにも確認しながら検討しましょう。
登記上の権利関係に問題がないか
土地の権利関係に問題があると、売却に時間がかかることがあります。
売却前には、登記事項証明書や公図、測量図、固定資産税関係の書類などを確認し、問題がないか整理しましょう。
特に確認したい内容は、次の通りです。
| 確認すること | 注意点 |
|---|---|
| 所有者・共有者 | 誰の名義になっているか、共有者がいるかを確認する |
| 抵当権 | 住宅ローンなどの担保が残っている場合、決済時までに抹消手続きが必要 |
| 境界 | 隣地との境目が不明確だと、売却後のトラブルにつながりやすい |
| 接道 | 道路との接し方によって、建物の建築や再建築に影響する |
| 越境 | 塀、樹木、配管などが隣地にはみ出していないか確認する |
権利関係や土地の状態に問題がある場合でも、整理や調整によって売却に向けた準備を進められることがあります。
ただし、買主への説明や契約条件の調整が必要になるため、登記上の権利関係は司法書士に、土地の価格や売却条件は不動産会社に確認しておくことが大切です。
2.相続登記を完了させる
売却前の確認ができたら、相続登記を進めます。
買主へ所有権を移す前提として、まず相続人側の名義を整えましょう。
相続登記では、主に次の内容を確認してみてください。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 相続人の範囲 | 誰が相続人になるのかを戸籍で確認する |
| 遺言書の有無 | 遺言書がある場合は、その内容に沿って手続きを進める |
| 遺産分割協議の内容 | 相続人全員で土地の取得者を決める |
| 登記する名義人 | 売却予定の場合、誰を売主にするかも考えて決める |
相続登記を後回しにすると、売却の話が進んでから書類不足や相続人の確認漏れが見つかることがあります。
売却を急ぐ場合は、最初に進めたい手続きです。
3.必要書類をそろえる
相続した土地を売却するには、相続登記用の書類と売却用の書類をそろえる必要があります。
必要書類はケースによって異なるものの、一般的には次のような書類を準備します。
| 書類の種類 | 主な内容・注意点 |
|---|---|
| 被相続人の戸籍関係書類 | 出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本など |
| 相続人の戸籍謄本 | 相続人であることを確認するための書類 |
| 相続人の住民票 | 新たに名義人になる人の住所を確認する書類 |
| 遺言書または遺産分割協議書 | 誰が土地を取得するかを示す書類 |
| 印鑑証明書 | 遺産分割協議書や契約書で必要になることがある |
| 登記事項証明書 | 土地の権利関係を確認する書類 |
| 固定資産評価証明書 | 登録免許税の計算などに使う |
| 公図・測量図 | 土地の形や面積、境界の確認に使う |
| 固定資産税関係書類 | 税金の精算や土地情報の確認に使う |
書類は市区町村役場、法務局、税務関係の窓口など、取得先が複数に分かれます。
遠方の役所から取り寄せが必要になることもあるため、早めに準備を始めましょう。
4.相続登記と並行して売却準備を進める
売却を予定している場合は、相続登記や必要書類の準備と並行して、不動産会社に査定を依頼することもあります。
査定では、土地の広さや形、道路との接し方、周辺環境、建物の有無、境界の状態などをもとに、どのくらいの価格で売却できそうかを確認します。
相続した土地の査定では、次の点もあわせて見てもらいましょう。
| 査定時に確認したいこと | 内容 |
|---|---|
| 売却予想価格 | どのくらいの価格で売れそうかを確認する |
| 売却にかかる期間 | すぐ売却できる可能性があるか、時間がかかりそうかを確認する |
| 測量が必要か | 境界確認や測量が必要かを確認する |
| 解体が必要か | 古家がある場合、解体したほうがよいかを検討する |
| 売却方法 | 更地売却、古家付き売却、不動産会社による買取などの選択肢を比較する |
査定額や売却条件は不動産会社によって異なるため、必要に応じて複数社に確認するとよいでしょう。
複数の査定結果を比較しながら、価格だけでなく売却までの流れや必要費用も含めて検討することが大切です。
5.売却にかかる税金や費用を確認する
土地を売却するときは売却価格だけでなく、最終的に手元にいくら残るかを確認することが大切です。
土地を売って利益が出ると、譲渡所得税や住民税がかかることがあります。
また、不動産会社に支払う仲介手数料、測量費、解体費、登記費用なども差し引く必要があります。
手取り額を考えるときは、次の費用を確認しましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡所得税・住民税 | 譲渡所得が発生した場合にかかる税金 |
| 仲介手数料 | 不動産会社に売却を依頼した場合にかかる |
| 登記費用 | 相続登記や抵当権抹消などで必要になることがある |
| 測量費 | 境界確認や測量が必要な場合にかかる |
| 解体費 | 古家を取り壊して売る場合にかかる |
| 残置物処分費 | 家財や荷物を処分する場合にかかる |
また、相続税を納めた方が一定期間内に土地を売却する場合や、空き家付きの土地を売却する場合には、税金の特例を使える可能性があります。
特例を使えるかどうかで、手取り額が変わることもあります。
売却前に税理士へ相談し、税金や特例の適用可否を確認しておきましょう。
6.売買契約前に権利関係や必要書類を確認する
買主が見つかったら、売買契約を締結します。
売買契約では、引き渡し日や境界の扱い、古家や残置物の扱い、契約不適合責任の範囲などを確認します。
また、登記手続きに必要な書類も、契約前後で確認しておくことが大切です。
相続した土地の売買契約で特に確認したい項目は、次の通りです。
| 契約で確認すること | 内容 |
|---|---|
| 売買代金 | 合意した売却価格が正しく記載されているか確認する |
| 手付金 | 金額や支払い時期を確認する |
| 引き渡し日 | いつ土地を引き渡すのかを決める |
| 境界の扱い | 境界確定を行うのか、現況で引き渡すのかを確認する |
| 古家・残置物 | 建物や荷物を残すのか、撤去するのかを決める |
| 契約不適合責任の範囲 | 売却後に契約内容と異なる問題が見つかった場合の責任範囲を確認する |
| 固定資産税等の精算 | 売主と買主でどのように負担するかを決める |
相続人が複数いる場合は、契約当事者や署名押印の方法にも注意が必要です。
契約内容をよく確認し、契約内容そのものに不安がある場合は弁護士へ、登記や権利関係に不安がある場合は司法書士へ相談してから進めましょう。
7.決済日に所有権移転登記を行う
売買契約を結んだあとは、決済日に土地の引き渡しと代金の受け取りを行います。
決済日には、売買代金の授受とあわせて、買主への所有権移転登記を行います。司法書士は、登記に必要な書類がそろっているかを確認し、登記申請を進めます。
抵当権が残っている場合は、抵当権抹消登記の手続きもあわせて行いましょう。
引き渡し時に確認する主な内容は、次の通りです。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 残代金の受け取り | 売買代金の残額が支払われる |
| 所有権移転登記 | 買主へ名義を移す手続きを行う |
| 抵当権抹消 | 担保権が残っている場合は抹消する |
| 鍵や書類の引き渡し | 建物がある場合は鍵、関係書類などを渡す |
| 固定資産税等の精算 | 売主・買主間で日割り精算することがある |
| 売却代金の分配 | 相続人間で分ける場合は、遺産分割協議書に沿って分配する |
当日に必要書類が不足していると、決済が延期になることがあります。
売却をスムーズに完了させるためにも、事前に不動産会社や司法書士と必要書類を確認しましょう。
相続した土地の早期売却を検討したほうがよいケース

相続した土地は、必ずしもすぐに売らなければならないわけではありません。
しかし、持ち続けることで税金や管理費がかかり続けたり、建物の老朽化によって売りにくくなったりする場合は、早めに売却を検討したほうがよいケースもあります。
早めの売却を検討したほうがよいのは、次のようなケースです。
- 管理費・固定資産税の負担が重い場合
- 空き家の老朽化により管理負担が大きい場合
- 利用予定がない場合
- すぐに現金が必要な場合
ここからは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
管理費・固定資産税の負担が重い場合
相続した土地を使っていなくても、所有している限り固定資産税などの費用はかかります。
たとえば、以下の表のような費用です。
| 負担の種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 固定資産税 | 土地や建物を所有している限り、毎年かかる税金 |
| 管理費 | 草刈り、清掃、見回りなどにかかる費用 |
| 修繕費 | 古い建物や塀などを直すための費用 |
| 交通費・委託費 | 遠方の土地を確認したり、管理会社へ依頼したりする費用 |
特に、土地から家賃収入などが出ていない場合、毎年の固定資産税や管理費はそのまま負担になります。
「使っていないのに費用だけがかかっている」と感じる場合は、不動産会社などに相談し、売却によって負担を減らせるか確認してみましょう。
空き家の老朽化により管理負担が大きい場合
相続した土地に空き家が建っている場合は、建物の状態にも注意が必要です。
空き家は、人が住まなくなると換気や修繕がされず、劣化が進みやすくなります。
雨漏り、シロアリ、外壁の破損、庭木の繁茂・越境などが起こると、修繕費や管理の手間が増えるだけでなく、近隣トラブルにつながるおそれもあります。
老朽化した空き家がある土地では、売却時に次のような判断が必要です。
| 検討すること | 内容 |
|---|---|
| 建物付きで売るか | 解体費をかけずに売れる可能性があるが、買主が限られる場合がある |
| 解体して更地にするか | 買主が利用しやすくなる場合があるが、解体費用がかかる |
| 修繕して売るか | 建物として使える状態なら選択肢になるが、費用対効果の確認が必要 |
| 税金の特例を使えるか | 一定の条件を満たす場合、税負担を軽くできる可能性がある (譲渡所得から最高3,000万円まで控除でき、令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は最高2,000万円まで)
|
空き家の状態が悪くなるほど買主が不安を感じやすくなり、売却価格や売却期間にも影響します。
使う予定がない空き家付きの土地は、建物がさらに傷む前に売却方針を決めることが大切です。
利用予定がない場合
相続した土地を自分で使う予定がなく、貸す予定もない場合は、早めに売却を検討しましょう。
土地は、所有しているだけで固定資産税や管理の負担が発生します。
また、相続人が複数いる場合、時間が経つほど次の相続が発生し、関係者が増えかねません。
そうなると、いざ売却しようとしても、全員の同意を取るだけで時間がかかる場合があります。
利用予定がない土地では、次の点を確認しましょう。
- 将来的に自分や家族が使う可能性があるか
- 賃貸や駐車場などで活用できる可能性があるか
- 固定資産税や管理費に見合う価値があるか
- 周辺で土地の需要があるか
- 相続人全員が売却に前向きか
活用の見込みが薄い土地は、不動産会社に査定を依頼し、売却した場合の条件や費用を確認しておくと判断しやすくなります。
すぐに現金が必要な場合
相続税の納付、他の相続人への代償金の支払い、借入金の返済、遺品整理や解体費用などで現金が必要な場合も、土地の売却を検討しましょう。
土地は現金と違い、すぐに分けたり支払いに使ったりすることができません。
そのため、納税期限や支払期限が迫っている場合は、売却までにかかる期間を逆算して早めに動く必要があります。
現金化を急ぐ場合に確認したい点は、次の通りです。
| 確認すること | 内容・注意点 |
|---|---|
| いつまでに現金が必要か | 相続税の納付や支払いの期限を確認する |
| いくら必要か | 納税額、代償金、整理費用などを整理する |
| どのくらいで売れそうか | 査定額だけでなく、売却にかかる期間も確認する |
| 手取りはいくらになるか | 税金や仲介手数料、測量費、解体費などを差し引いて考える |
| 税金の特例を使えるか | 売却時期によって使える特例が変わる場合がある |
急いで売却する場合でも、価格だけで判断すると、税金や費用を差し引いたあとに思ったほど手元に残らないことがあります。
必要な現金の額と期限を整理し、不動産会社や税理士などに相談しながら、無理のない売却計画を立てましょう。
相続登記が未了の場合は、司法書士にも早めに相談することが大切です。
相続した土地の売却を急がないほうがよいケース

相続した土地は、早く売却すればよいとは限りません。
状況を整理しないまま売却を進めると、相続人同士のトラブルや税務上の不利益、買主との契約トラブルにつながるおそれがあります。
焦って売らないほうがよい代表的なケースは、次の通りです。
- 相続人の意見がまとまっていない場合
- 税務上の特例を確認する必要がある場合
- 相続登記が未了の場合
- 登記上の権利関係や境界に不明点がある場合
ここからは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
相続人の意見がまとまっていない場合
相続人の意見がまとまっていない場合は、無理に売却を進めないことをおすすめします。
相続した土地は、遺産分割が終わるまでは相続人全員で共有している状態になります。
そのため、一部の相続人だけが売却を希望していても、他の相続人が反対している場合は土地全体を自由に売却することはできません。
売却前には、少なくとも次の内容を相続人同士で話し合っておく必要があります。
| 話し合う内容 | 確認すること |
|---|---|
| 土地を誰が取得するか | 相続人のうち、誰の名義にするかを決める |
| 売却するかどうか | 土地を売るのか、残すのかを確認する |
| 売却代金の分け方 | 売却後のお金をどのように分けるかを決める |
| 費用の負担 | 測量費、解体費、登記費用、税金などを誰が負担するかを決める |
合意が不十分なまま売却を進めると、契約直前になって反対意見が出たり、売却代金の分配でもめたりすることがあります。
まずは遺産分割協議を行い、決まった内容を遺産分割協議書として書面に残しましょう。
税務上の特例を確認する必要がある場合
相続した土地を売却する場合、一定の条件を満たすと税金の負担を軽くできる特例を使えることがあります。
特例の適用を受けるための要件
(1) 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
(2) その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
(3) その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
引用元: 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
ただし、こうした特例には次の表のように期限や条件があります。
確認しないまま売却してしまうと、本来使えたはずの特例を使えず、手取り額が少なくなることがあります。
| 確認したい特例 | 注意点 |
|---|---|
| 取得費加算の特例 | 相続税を納めた方が、一定期間内に相続財産を譲渡する場合に関係する |
| 空き家の特別控除 | 相続した空き家やその敷地を売る場合に関係する |
| 小規模宅地等の特例 | 相続税の計算で土地の評価額を下げられる可能性がある |
| 配偶者の税額軽減 | 配偶者が相続する場合、相続税の負担に関係することがある |
小規模宅地等の特例は、売却時の譲渡所得税を直接軽くする制度ではないため、相続税の申告内容とあわせて確認が必要です。
また、税務上の特例は相続財産の分け方や売却時期によって使えるかどうかが変わります。
売却価格だけで判断せず、税理士に相談しながら、税務上の特例や税負担を確認してから売却を進めましょう。
相続登記が未了の場合
相続登記が終わっていない土地は、売却前に相続人名義へ所有権移転登記を行う必要があります。
第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
引用元:不動産登記法 | 第76条の2
登記簿上の名義が亡くなった方のままだと、買主に対して「この土地を売る権利がある人である」と示すことができません。
そのため、売買契約や所有権移転登記の手続きが途中で止まる可能性があります。
特に、相続人が複数いる場合は、誰が土地を取得するのかを決めたうえで、相続登記を行う必要があります。
相続人の確認や戸籍の収集に時間がかかることもあるため、売却を急ぐ場合ほど早めに動くことが大切です。
相続登記などが未整理のまま買主を探しても、最後の段階で手続きが進まなくなることがあります。
結果的に売却が遅れる原因になるため、まずは司法書士に相談し、相続登記や登記上の権利関係を確認しておきましょう。
登記上の権利関係や境界に不明点がある場合
境界や権利関係に不明点がある土地は、焦って売るよりも、先に問題点を整理しておくことが大切です。
売却後に問題が発覚すると、契約解除や損害賠償などのトラブルにつながるおそれもあります。
確認したいポイントとしては、次が挙げられます。
- 地中埋設物・土壌汚染などの可能性がある
- 古い建物がある
- 買主への事情説明が必要
以下からは、特に注意したい点について詳しく見ていきましょう。
地中埋設物・土壌汚染などの可能性がある
地中埋設物や土壌汚染などは、見た目だけではわかりにくい問題です。
たとえば、土地の中に古い基礎、廃材、井戸、浄化槽などが残っていたり、過去の利用状況によって土壌汚染の可能性があったりする場合があります。
こうした問題を確認しないまま売却すると、引き渡し後に買主から責任を問われることがあります。
特に、以前に工場や作業場として使われていた土地、古い建物が長く建っていた土地、過去の利用状況がはっきりしない土地では注意が必要です。
不安がある場合は、売却前に不動産会社や調査会社などへ相談し、必要に応じて調査を検討しましょう。
調査結果や把握している内容は、買主に正しく説明できるよう整理しておくことが大切です。
古い建物がある
相続した土地に古い建物が残っている場合は、建物の状態を確認してから売却を進めましょう。
古い建物には、雨漏り、シロアリ被害、建物の傾き、給排水設備の不具合、外壁や屋根の劣化などが隠れていることがあります。
売主が把握している不具合を伝えないまま売却すると、あとから買主とのトラブルになる可能性があります。
古い建物付きの土地を売却する場合は、次の点を確認しておくと安心です。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 建物の状態 | 雨漏り、シロアリ、傾き、設備不良などがないか確認する |
| 解体すべきか | 建物付きで売却するか、更地にして売却するかを検討する |
| 残置物の有無 | 家具や荷物が残っている場合は、処分方法を決める |
| 税金への影響 | 空き家の特例などを使える可能性があるか確認する |
| 買主への説明 | わかっている不具合は事前に伝える |
建物を残して売却するのか、解体して売却するのかによって、売却条件や税金の扱いが変わることがあります。
自己判断で急いで売却するよりも、事前に不動産会社や税理士、司法書士などへ相談し、方針を整理することが大切です。
買主への事情説明が必要
相続した土地を売却するときは、売主が把握している事情を買主にきちんと説明する必要があります。
たとえば、境界がはっきりしない、越境物がある、古い建物に不具合がある、過去に近隣トラブルがあったなど、買主の判断に影響する内容は、事前に伝えておくことが大切です。
特に相続した土地では、売主自身がその土地や建物を利用していなかったため、詳しい状況を把握できていないこともあります。
その場合は、わからないことを隠すのではなく、「確認できていること」と「不明なこと」を分けて整理しましょう。
買主への説明が必要になりやすい内容は、次の表の通りです。
| 説明が必要になりやすい内容 | 例 |
|---|---|
| 境界・越境 | 境界標がない、塀や樹木が隣地にはみ出しているなど |
| 建物の不具合 | 雨漏り、シロアリ、設備故障、建物の傾きなど |
| 権利関係 | 抵当権、共有持分、借地権、地役権、賃借権など |
| 土地の状態 | 地中埋設物、土壌汚染、過去の利用状況など |
| 近隣関係 | 通行、排水、騒音、境界に関する過去のやり取りなど |
説明不足のまま契約すると、売却後に買主から「聞いていなかった」と言われる可能性があります。
物件状況報告書や重要事項説明書に正しく反映できるよう、不動産会社と一緒に確認しましょう。
相続した土地の売却前には相続登記や権利関係を確認しよう

相続した土地を売却するときは、売却活動だけでなく、相続登記や権利関係の確認も必要です。
相続した土地を早く売却したい場合でも、手続きを急ぎすぎるとあとから税金や契約内容で不利益が出ることがあります。
大切なのは、単に早く売ることではなく、相続登記や権利関係、税金、契約内容を確認しながら、トラブルを避けて進めることです。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続した土地の売却前に必要となる相続登記や権利関係の確認をサポートしています。
また、税金や売却価格、境界に関する確認が必要な場合は、税理士・不動産会社・土地家屋調査士などと連携しながら進めることが可能です。
相続登記や売却前の権利関係の整理でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
相続登記に必要な書類まとめ!ケース別に迷わず揃える方法も徹底解説!
2026.06.04
相続登記を進める際は、戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書など、さまざまな書類をそろえる必要があります。
しかし、必要書類は遺産分割協議をした場合や遺言書がある場合など、相続の進め方によって変わるため、何を用意すればよいのか迷う方も少なくありません。
書類に不足や不備があると、法務局から追加提出や補正を求められ、手続きに時間がかかることがあります。
この記事では、相続登記の際にケースごとに必要な書類について、詳しく解説していきます。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、相続登記をはじめとする相続手続きに関するお悩みを専門士業と連携して解決していきます。
相続登記の必要書類の整理や申請手続きでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
記事監修者
司法書士 川上直也
当センターの受付を担当しております。
司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。
ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
相続登記の必要書類は、相続の進め方によって変わる!

相続登記で必要になる書類は、全員に共通する書類と、相続の進め方によって追加になる書類に分かれます。
主に必要となる書類の一覧は、次の表で確かめてみてください。
| 該当するケース | 必要になる主な書類 |
|---|---|
| どの相続登記でも基本的に必要 | ・亡くなった人の出生から死亡までの戸籍関係書類 ・亡くなった人の住民票の除票または戸籍の附票など ・相続人の戸籍謄本 ・新たに登記名義人となる方の住民票 ・固定資産評価証明書など評価額がわかる書類 ・登記申請書 |
| 遺産分割協議をした場合 | ・遺産分割協議書 ・相続人全員の印鑑証明書 |
| 法定相続分どおりに登記する場合 | ・相続人全員の住民票 |
| 遺言書がある場合 | ・公正証書遺言 ・検認済みの自筆証書遺言 ・遺言書情報証明書 |
相続登記では、「誰が相続人なのか」「誰が不動産を取得するのか」「どの理由で名義を変えるのか」を法務局に示す必要があります。
ケースによっては別途追加で必要となる書類が出てくる可能性もあります。
不安が残る場合は、司法書士に相談しましょう。
相続方法によって追加書類が変わる理由
相続方法によって追加書類が変わるのは、次の表のように法務局が確認する内容がケースごとに違うためです。
| 相続の進め方 | 法務局が確認すること | 遺産分割協議書の要否 |
|---|---|---|
| 遺産分割協議をした場合 | 相続人全員で「誰が不動産を取得するか」に合意しているか | 必要 |
| 法定相続分どおりに登記する場合 | 法律で決められた相続割合どおりに、相続人全員を共有名義人にするか | 不要 |
| 遺言書がある場合 | 遺言書の内容に基づき、不動産を取得する人が決まっているか | 不要 |
相続登記の必要書類は、単に枚数をそろえればよいものではありません。
ご自身の相続方法に合った書類をそろえることが、スムーズに相続登記を申請するための基本です。
相続登記で基本的に必要になる書類

相続登記では、遺産分割協議、法定相続分どおりの登記、遺言書による登記など、進め方によって追加書類が変わります。
ただし、どのケースでも共通して必要となることが多い書類があります。
基本的に必要となる書類として、次が挙げられます。
- 亡くなった人の戸籍関係書類
- 亡くなった人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人の戸籍謄本
- 新たに登記名義人となる方の住民票
- 固定資産評価証明書
- 登記申請書
ここからは、それぞれの書類について詳しく解説していきます。
亡くなった人の戸籍関係書類
亡くなった人の戸籍関係書類は、法定相続人を確認するために必要です。
相続登記では、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍を集めるのが基本になります。
戸籍を見て、配偶者や子ども、場合によっては親、兄弟姉妹、代襲相続人など、誰が相続人になるのかを確認することになります。
途中の戸籍が抜けていると、法務局で相続人を正しく確認できず、追加書類を求められることがあるのです。
2024年3月1日から戸籍の広域交付制度が始まり、本籍地が遠方にある場合でも、最寄りの市区町村窓口でまとめて請求しやすくなりました。
ただし、すべての戸籍が広域交付の対象になるわけではありません。
請求するときは「相続登記のため、出生から死亡までの戸籍が必要」と伝えると、窓口で話が通じやすくなります。
亡くなった人の住民票の除票または戸籍の附票
亡くなった人の住民票の除票や戸籍の附票は、登記簿上の名義人と亡くなった人が同一人物であることを確認するために必要です。
登記簿には、所有者の氏名と住所が載っています。
一方、戸籍には本籍地と氏名などが載るため、住所まではわかりません。
そのため、法務局では住民票の除票や戸籍の附票を見て、登記簿上の住所と亡くなった方の住所が一致するかを確認します。
登記簿上の住所が古い場合は、最後の住所だけでは住所のつながりを証明できないこともあるのです。
引っ越しを複数回している場合は、住所の履歴がわかる戸籍の附票を取ると確認しやすくなります。
相続人の戸籍謄本
相続人の戸籍謄本は、その人が相続人であり、相続開始時に生存していたことを確認するための書類です。
相続登記では、相続人全員の戸籍謄本が必要になる場面があります。
特に遺産分割協議をした場合は、不動産を取得しない相続人についても、協議に参加すべき相続人であることを示すために戸籍謄本などで確認します。
相続人の戸籍謄本は、亡くなった方の死亡日より後に発行されたものを用意しましょう。
死亡日以前に発行された戸籍では、相続開始時にその相続人が生存していたかを確認できないためです。
新たに登記名義人となる方の住民票
新たに登記名義人となる方の住民票は、不動産を取得する人の住所を登記簿に載せるために必要です。
相続登記では、亡くなった方から新しい所有者へ名義を変えます。
そのため、法務局は新しい所有者の氏名だけでなく、現在の住所も確認するのです。
住民票の代わりに、戸籍の附票を添付できる場合もあります。
住民票を取るときは、マイナンバーが記載されていないものを用意するのが基本です。
相続登記では個人番号を使わないため、マイナンバーの記載がない住民票を取得しましょう。
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書は、登録免許税を計算するために必要です。
登録免許税とは、相続登記を申請するときに納める税金です。
固定資産評価証明書には、土地や建物の評価額が記載されています。
申請時には、固定資産評価証明書の評価額をもとに登録免許税を計算します。
相続登記で添付する固定資産評価証明書など、評価額がわかる書類を用意しましょう。
固定資産評価証明書は、不動産がある市区町村で取得可能です。
亡くなった方の住所地ではなく、不動産所在地の役所で取得する点に注意しましょう。
固定資産税納税通知書に添付される固定資産課税明細書に評価額が記載されている場合は、その写しで対応できるケースもあります。
登記申請書
登記申請書は、法務局へ相続登記を申請するための中心となる書類です。
誰が、どの不動産について、どのような原因で所有権移転登記を申請するのかを記載します。
登記申請書には、登記の目的、登記原因とその日付、相続人の氏名と住所、課税価格、登録免許税、不動産の表示などを書きます。
記載内容に誤りがあると、法務局から修正を求められることがあるため注意が必要です。
自分で作成する場合は、法務局が公開している相続登記の申請書様式や記載例を確認しましょう。
遺産分割協議による登記、法定相続分どおりの登記、遺言書による登記で書き方が変わるため、自分のケースに合う様式をもとに作成することが大切です。
遺産分割協議をした場合の相続登記に必要な書類

相続人全員で遺産分割協議を行い、その内容に基づいて相続登記を申請する場合は、基本書類に加えて、協議の内容と相続人全員の同意を示す書類が必要です。
遺産分割協議で必要になることが多い書類は、次の通りです。
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
ここからは、各書類の役割と準備するときの注意点を見ていきましょう。
遺産分割協議書
遺産分割協議書は、相続人全員で「どの財産を誰が相続するか」を決めた内容をまとめる書類です。
相続登記では、不動産を誰が取得するのかを法務局に示すために必要になります。
協議書には、亡くなった方の氏名、相続人全員の氏名、対象となる不動産、取得する人がわかるように記載します。
土地や建物の情報は、登記簿に書かれている内容に合わせて記載するのが基本です。
所在、地番、家屋番号などを自己判断で省略すると、法務局から補正を求められることがあります。
遺産分割協議書への相続人全員の署名押印が必要
遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印で押印するのが基本です。
相続人の一部だけで作成した協議書では、法務局で相続登記の書類として認められない場合があります。
署名押印では、印鑑証明書と同じ実印を使用しましょう。
押印漏れ、印影のかすれ、住所や氏名の書き間違いがあると、書類の修正や印鑑証明書の再取得が必要になることがあります。
相続人が高齢、遠方在住、連絡が取りにくいなどの事情がある場合は、協議書の作成前に全員の連絡先と意思を確認しておきましょう。
相続人全員の印鑑証明書
相続人全員の印鑑証明書は、遺産分割協議書に押された印鑑が本人の実印であることを確認するための書類です。
協議書に押された印影だけでは、本人の実印かどうかを確認できないため、印鑑証明書を添付する必要があります。
印鑑証明書は、それぞれの相続人が住んでいる市区町村で取得します。
相続人が遠方に住んでいる場合は、取得や郵送に時間がかかることがあるため、協議がまとまったら早めに準備しておきましょう。
相続登記では、印鑑証明書に法律上の有効期限があるわけではありません。
ただし、他の相続手続きでは発行から3ヶ月以内のものを求められる場合もあるため、相続登記以外の手続きも同時に進めるなら、新しいものをそろえておくと手続きしやすくなります。
法定相続分どおりに登記する場合の相続登記に必要な書類

遺言書がなく、遺産分割協議もしない場合は、法定相続分に従って相続登記を進めます。
法定相続分に従って進める場合は、「誰が相続人か」「各相続人の住所はどこか」を確認する書類が中心です。
法定相続分どおりに登記する場合に押さえたい内容(書類および補足)は、次の通りです。
- 相続関係を証明する戸籍一式
- 相続人の住民票
- 【補足】遺産分割協議書が不要になる場合
ここからは、準備する書類や注意点を順番に見ていきましょう。
相続関係を証明する戸籍一式
法定相続分どおりに登記する場合も、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍一式が必要です。
戸籍を確認することで、配偶者、子、親、兄弟姉妹など、誰が法定相続人かを法務局に示します。
基本的には、亡くなった方の戸籍、除籍、改製原戸籍を出生から死亡までつながるように集めます。
あわせて、法定相続人全員の戸籍謄本も用意しましょう。
相続人の戸籍謄本は、亡くなった方の死亡日より後に発行されたものを用意するのが基本です。
兄弟姉妹が相続人になる場合や、代襲相続がある場合は、確認すべき戸籍の範囲が広がります。
戸籍が途中で抜けていると、相続人を正しく確認できず、法務局から追加書類を求められることがあります。
相続人の住民票
法定相続分どおりに登記する場合は、名義人になる相続人全員の住所を確認するため、相続人それぞれの住民票も必要です。
住民票の代わりに、戸籍の附票を添付できる場合もあります。
法定相続分による登記では、相続人全員が持分を持つ共有名義になります。
そのため、不動産を実際に使う人だけでなく、名義人になる全員分の住所確認書類が必要です。
住民票を取得するときは、他のケースと同様にマイナンバーが記載されていないものを用意しましょう。
相続人が遠方に住んでいる場合は、郵送請求なども含めて早めに準備しておくと安心です。
【補足】遺産分割協議書が不要になる場合
法定相続分どおりに登記する場合は、相続人全員が法律で決められた割合のまま名義人になります。
そのため、相続人同士で「誰がどの財産を取得するか」を決めたことを示す遺産分割協議書は原則不要です。
また、遺産分割協議書に添付する相続人全員の印鑑証明書も、法定相続分どおりの登記では不要になるのが一般的です。
手続きの中心は、相続関係を証明する戸籍一式と、名義人になる相続人の住所確認書類です。
ただし、法定相続分どおりに登記すると、不動産が相続人全員の共有になります。
売却などの処分には共有者全員の合意が必要になる場面が多いため、将来の管理や処分まで考えて進めましょう。
遺言書がある場合の相続登記に必要な書類

遺言書がある場合は、遺言書の種類によって確認する書類が変わります。
特に、公正証書遺言か、自筆証書遺言かで、家庭裁判所の検認が必要かどうかが変わるため注意が必要です。
遺言書がある場合に必要となる書類は、次の通りです。
- 公正証書遺言
- 自筆証書遺言
- 遺言により不動産を取得する方の住民票
ここからはそれぞれの書類について、詳しく解説していきます。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。
公証人が関わって作成されるため、形式の不備が起きにくく、相続登記でも手続きを進めやすい遺言書といえます。
公正証書遺言がある場合は、家庭裁判所の検認は不要です。
相続登記では、公正証書遺言の正本または謄本を用意し、遺言で不動産を取得する人の戸籍や住民票などを用意しましょう。
遺言書に不動産の記載がある場合でも、登記簿上の土地や建物と内容が合っているか確認が必要です。
地番、家屋番号、所在地などがずれていると、法務局で追加確認が必要になることがあります。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が自筆で作成する遺言書です。
自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、原則として相続登記の前に家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
検認とは、遺言書の状態を家庭裁判所で確認する手続きのことであり、遺言書の有効・無効を判断する手続きではありません。
そのため、検認を受けていない自筆証書遺言では、相続登記を進められないのが一般的です。
一方、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管されていた遺言書は、家庭裁判所の検認が不要です。
なお、秘密証書遺言を見つけた場合も家庭裁判所での検認が必要となります。
法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管されていた場合は、遺言書情報証明書を取得して相続登記に使用します。
自筆証書遺言は、保管場所や保管方法によって手続きが変わります。
自宅などで保管されていた封印のある自筆証書遺言や秘密証書遺言を見つけた場合は、自己判断で開封せず、家庭裁判所で必要な手続きを確認しましょう。
封印のある遺言書を家庭裁判所以外で開封すると、5万円以下の過料が科される可能性があります。
第1004条(遺言書の検認)
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
第1005条(過料)
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。
引用元:民法 | 第1004条・第1005条
遺言により不動産を取得する方の住民票
遺言書で不動産を取得する人は、新しい登記名義人になります。
そのため、相続登記では、その人の住所を確認するために住民票が必要です。
住民票の代わりに、戸籍の附票を添付できる場合もあります。
住民票は、遺言で不動産を取得する人の住所地の市区町村で取得します。
登記ではマイナンバーを使わないため、住民票を取るときはマイナンバーが記載されていないものを用意するのが基本です。
遺言で不動産を取得する人が法定相続人かどうか、また遺言の内容が「相続させる」趣旨か「遺贈」かによって、追加で戸籍関係書類が必要になることがあります。
遺言書があるからといって住民票だけで足りるとは限らないため、取得する人の立場もあわせて確認しておくと安心です。
相続登記の必要書類を取得する場所一覧表

相続登記の書類は、取得先を「本籍地」「住所地」「不動産所在地」「法務局」に分けて考えると整理しやすくなります。
どの書類をどこで取得するのかを事前に整理しておくと、役所へ何度も出向く手間を減らせます。
主な書類の取得先は、次の通りです。
| 書類 | 主な取得先 | ポイント |
|---|---|---|
| 亡くなった人の戸籍・除籍・改製原戸籍 | 原則として本籍地の市区町村 | ・出生から死亡までのつながりを確認するために集める ・戸籍の広域交付により本籍地以外の市区町村窓口で請求できる場合がある(郵送・代理人請求は不可) |
| 亡くなった人の住民票の除票 | 最後の住所地の市区町村 | 登記簿上の住所と亡くなった方の最後の住所が一致するか、または住所のつながりを確認するために使用 |
| 戸籍の附票 | 本籍地の市区町村 | ・確認できる範囲で住所の移転履歴を確認したいときに使用 ・住民票の除票だけで住所がつながらない場合に役立つ |
| 相続人の戸籍謄本 | 原則として各相続人の本籍地の市区町村 | ・相続人であることを確認するための書類。亡くなった方の死亡日より後に発行されたものを用意する ・広域交付を利用して取得できる場合もある |
| 新たに登記名義人となる方の住民票 | その人の住所地の市区町村 | ・新しい登記名義人の住所を確認するために使う ・マイナンバーの記載がないものを取るのが基本 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 各相続人の住所地の市区町村 | ・遺産分割協議書を添付する場合に必要 ・協議書に押された実印と照合する |
| 固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市区町村 | ・登録免許税を計算するために使う ・申請日時点の最新年度のものを取得する |
| 登記申請書 | 法務局の様式や記載例をもとに作成 | 遺産分割協議、法定相続分、遺言書ありなど、相続方法に合う様式を確認する |
| 公正証書遺言 | 手元の正本・謄本、または作成した公証役場など | ・公正証書遺言は家庭裁判所の検認が不要 ・正本または謄本を確認する |
| 遺言書情報証明書 | 遺言書を保管している法務局 | 法務局の保管制度を利用している自筆証書遺言では、遺言書情報証明書を使う場合がある |
| 法定相続情報一覧図の写し | 法務局 | ・戸籍一式の代わりに提出できる場面がある ・ただし、手続きの内容や一覧図の記載内容によっては、追加で戸籍関係書類の提出を求められることも ・金融機関や他の相続手続きでも役立つことがある |
書類を集めるときは、亡くなった方の「本籍地」「最後の住所地」、相続人や新しい名義人の「住所地」、不動産の「所在地」を分けて整理しましょう。
特に、固定資産評価証明書は不動産がある市区町村で取得するため、亡くなった方の住所地とは違うことがあります。
また、相続登記では同じ戸籍でも「誰の戸籍か」「いつ発行されたものか」が重要です。
相続人の戸籍謄本は、亡くなった方の死亡日より後に発行されたものを用意しましょう。
相続登記の書類を自分でそろえる前に確認すべきこと

相続登記は自分で申請することもできますが、誰にとっても簡単な手続きではありません。
自分で進めるかどうかを判断するときは、法律や手続きの内容を理解できるかだけでなく、書類収集や法務局への対応を無理なく行えるかも確認しましょう。
事前に確認したいポイントは、次の通りです。
- 相続人が少なく関係が単純か
- 戸籍をすべて集められるか
- 平日に役所や法務局へ行けるか
- 書類の修正に対応できるか
ここからは、それぞれのポイントについて見ていきましょう。
なお、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、相続登記に必要な戸籍の確認や書類整理について、専門士業と連携しながらサポートしています。
「どこまで戸籍を集めればよいかわからない」「書類に不足がないか不安」という場合も、状況に応じて必要な手続きを確認できます。
相続登記の書類収集でお困りの方は、早めに静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへご相談ください。
相続人が少なく関係が単純か
相続人が配偶者と子どもだけなど、相続関係がわかりやすい場合は、自分で相続登記を進めやすいことがあります。
相続人の人数が少ないほど、戸籍の確認、書類の取得、署名押印のやり取りも比較的整理しやすくなるためです。
一方で、次のケースに当てはまると確認すべき戸籍の範囲が広がります。
- 兄弟姉妹が相続人になる
- 代襲相続がある
- 前婚の子どもがいる
相続人が1人でも漏れると、遺産分割協議書を作り直すことになりかねません。
相続人の人数だけで判断せず、家族関係が戸籍でたどりやすいか、相続人全員と連絡が取れるかも確認しましょう。
戸籍をすべて集められるか
相続登記では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、除籍、改製原戸籍を集めるのが基本です。
最新の戸籍だけでは足りないことが多く、結婚、転籍、戸籍の改製があると、複数の市区町村役場に請求する場合があります。
2024年3月1日から戸籍の広域交付制度が始まり、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍を請求しやすくなりました。
ただし、兄弟姉妹など傍系親族の戸籍や一部の古い戸籍など、広域交付の対象外になるものもあります。
自分で進める場合は、「どの戸籍が足りないのか」「どこの役所に請求するのか」を確認できるかが重要です。
戸籍を確認しても次に取得すべき書類がわからない場合は、早めに司法書士へ相談すると、手続きをスムーズに進めやすくなります。
平日に役所や法務局へ行けるか
相続登記では、戸籍、住民票、固定資産評価証明書などを役所で取得し、登記申請書を法務局へ提出または郵送します。
郵送で請求できる書類もありますが、不備があると再請求が必要になり、時間がかかってしまうことも。
市区町村役場や法務局の窓口の受付時間は、平日の日中が中心です。
法務局で登記手続きの案内を受ける場合も、予約が必要になることがあります。
仕事や家庭の都合で平日に動きにくい方は、書類取得や確認に想定以上の時間がかかることがあります。
自分で申請するなら、平日に何回対応できるか、郵送でどこまで進められるか、申請後に法務局から連絡があったときに対応できるかを先に見積もっておきましょう。
書類の修正に対応できるか
相続登記の申請後、法務局から書類の修正や追加提出を案内されることがあります。
たとえば、戸籍が足りない、住所のつながりが確認できない、登記申請書の記載に誤りがある、押印が不鮮明といった場合です。
修正を求められた場合は、内容を確認し、必要な書類を取り直したり、申請書を書き直したりします。
期限内に対応できないと、申請がスムーズに進まなくなるおそれがあります。
自分で相続登記を行う場合は、申請書を出して終わりではなく、その後の法務局からの連絡にも対応する前提で準備しましょう。
書類の意味や補正内容を判断するのが難しい場合は、相続登記に対応している司法書士に依頼すると安心です。
相続登記の必要書類の収集を司法書士に依頼したほうがよいケース

相続登記は自分で申請することもできますが、相続関係や不動産の状況によっては、書類の収集や確認に手間がかかる手続きです。
司法書士への依頼を検討したほうがよいケースは、次の通りです。
- 相続人が多い場合
- 兄弟姉妹や代襲相続が関係する場合
- 不動産が複数ある場合
- 書類を集める時間がない場合
ここからは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
相続人が多い場合
相続人が多い場合は、戸籍の収集、相続人全員への連絡、遺産分割協議書への署名押印、印鑑証明書の取り寄せなど、必要な作業が増えます。
また遺産分割協議は、相続人全員で行うことが必要です。
一人でも漏れていると、協議書を作り直さなければならない場合があります。
相続人が遠方に住んでいる場合や、連絡を取りにくい相続人がいる場合は、さらに時間がかかりやすくなります。
相続人が多いときは、必要書類を整理する段階から司法書士に相談すると、手続きの抜け漏れを防ぎやすくなります。
兄弟姉妹や代襲相続が関係する場合
亡くなった方に子どもがいない場合などは、兄弟姉妹が相続人になることがあります。
また、本来相続人になるはずだった人が先に亡くなっている場合は、その子どもなどが代わりに相続人になる代襲相続が関係することもあるのです。
兄弟姉妹や代襲相続が関係すると、確認する戸籍の範囲が広がります。
家族関係が複雑で、確認に時間がかかることが予想される場合は、司法書士に相談することで、戸籍の確認や必要書類の整理を含めて、相続登記を進めやすくなります。
不動産が複数ある場合
相続する不動産が複数ある場合は、それぞれの土地や建物について登記内容を確認し、固定資産評価証明書を取得する必要があります。
不動産が同じ市区町村内にまとまっていれば比較的整理は容易です。
しかし、複数の市区町村にある場合は、評価証明書の取得先や管轄する法務局が分かれることがあります。
また不動産が多い分、申請書の作成や添付書類の整理も複雑です。
自分だけで手続きをするのは困難なため、こうした場合も司法書士に依頼したほうが良いといえます。
書類を集める時間がない場合
相続登記では、戸籍、住民票、固定資産評価証明書、印鑑証明書、遺産分割協議書など、複数の書類を用意する必要があります。
市区町村役場や法務局の窓口は平日の日中が中心のため、仕事や家庭の都合で動ける時間が少ない方には負担が重くなりがちです。
郵送で取得できる書類もありますが、請求内容に不備があると取り直しが必要です。
申請後に法務局から修正や追加書類を案内されることもあります。
司法書士へ依頼すれば、必要書類の確認や登記申請のサポートを受けられるため、忙しい方でも相続登記を進めやすくなります。
相続登記の必要書類で迷ったら、早めに司法書士に相談して確実に進めよう

相続登記をするには、必要な書類をそろえるだけではなく、他の相続人と連絡を取り合ったり、遺産分割協議をしたりする必要があります。
相続人が多い場合や、不動産が複数ある場合は、必要書類の整理だけでも負担が重くなりがちです。
相続登記が必要になった段階で司法書士などの専門家に相談しておくことをおすすめします。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、司法書士や弁護士と連携し、相続登記など相続に関するお悩み解決のお手伝いをしています。
相続登記に必要な書類の整理から、登記申請のサポートまで対応しております。
不動産を含む相続全般でお困りの方も、お気軽にご相談ください。
相続財産の調査は誰に頼むべき?選び方や準備などを徹底解説!
2026.05.11
相続では、まず財産を全部調べることが大事です。
財産には、預貯金や不動産だけでなく、現金、株、保険金、貸付金、各種の権利も入ります。
一方、借金や未払いのお金も確認しなければなりません。
調べないまま話を始めると、財産の漏れや借金の発覚で、家族どうしがもめやすくなります。
落ち着いて進めるには、先に相続人を確かめ、その後でプラスの財産とマイナスの財産を順番に整理していくことが必要です。
この記事では、相続財産の調査は誰に頼むべきか、依頼先ごとの違いや選び方、事前に準備しておきたいことを解説します。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続財産の調査や相続登記に関するご相談を承っており、必要に応じて税理士・弁護士などの他士業と連携しています。
相続財産の調査でお悩みの方は、まずはご相談ください。
記事監修者
司法書士 川上直也
当センターの受付を担当しております。
司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。
ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
相続財産の調査は誰に頼むべき?
あわせて読みたい:誰に相談すべきか迷う場合は相続の相談は誰にする?悩み別の窓口の選び方、司法書士に頼める内容は司法書士に相続相談できる内容とは?もご覧ください。

相続財産の調査を誰に頼むべきかは、財産の内容や手続きの状況によって異なります。
たとえば、財産の種類が少なく家族で情報共有ができている場合は、自分で進められることもあります。
一方で、「不動産がある」「相続税がかかりそう」「相続人間で紛争が生じている」といった場合は、専門家に相談したほうが安心です。
また、相続の手続きでは、内容によって司法書士、税理士、弁護士など複数の専門家が関わることがあります。
登記は司法書士、税金は税理士、もめごとは弁護士というように、それぞれ役割が異なるためです。
相続財産の内容に応じて、必要な手続きを整理し、適切な専門家と連携できる相談先を選ぶことが重要です。
まずは、どのような場合に誰へ相談しやすいのか、以下の表で全体像を整理してみましょう。
相続財産の調査について相談先や進め方の選択肢は、次の通りです。
- 自分(誰にも頼まない)
- 司法書士
- 税理士
- 弁護士
- 行政書士
以下からは、相続財産の調査を誰に頼むべきかについて詳しく解説します。
自分(誰にも頼まない)
相続財産の調査は、必ずしも最初から専門家に依頼しなければならないわけではありません。
相続財産が預貯金と自宅程度で、家族の間でも財産の情報がある程度共有できているなら、自分で確認を進める方法もあります。
自分で進める場合は、まず手元の資料を集めることが大切です。
通帳やキャッシュカード、不動産の固定資産税の書類、保険証券、借入れに関する書類などを確認し、財産と負債の両方を整理していきます。
不動産については、固定資産税関係書類や登記事項証明書、名寄帳などを確認して見落としがないかを確かめます。
ただし、自分で調査する方法では限界もあります。
財産の数が多い場合や、複数の金融機関を利用していた場合、不動産が別の地域にもある場合は、思った以上に手間がかかります。
さらに、必要書類に不備があると、その後の手続きが進まなくなることも。
そのため、ご自身で調査を始める場合でも、早い段階で司法書士に相談し、必要に応じて手続きの進め方を確認しておくとよいでしょう。
司法書士
司法書士は、不動産を含む相続において、相続登記や相続関係書類の作成や収集を中心に対応する専門家です。
相続財産の中に土地や建物がある場合は、名義変更まで見据えて進める必要があるため、司法書士への相談が向いています。
司法書士に相談することで、不動産の調査や戸籍収集、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成支援、相続登記申請まで一連の流れを整理しやすくなります。
戸籍の収集や相続関係の整理、遺産分割協議書の作成サポートなど、不動産の名義変更に必要な準備も含めて相談しやすいのが特徴です。
特に、「実家の名義を変更したい」「不動産がいくつあるのかはっきりしない」「相続登記までまとめて進めたい」という場合は、司法書士へ相談するメリットが大きいです。
一方で、司法書士は、相続税の申告代理や、相続人間の紛争について代理人として交渉・訴訟対応を行うことはできません。
相続税の申告が必要そうな場合は税理士、話し合いがまとまらない場合は弁護士との連携が必要になります。
不動産を含む相続では、まず司法書士に相談し、必要に応じて税理士や弁護士と連携しながら進める方法が実務上わかりやすいでしょう。
税理士
税理士は、相続税申告や財産評価が問題となる場合に相談すべき専門家です。
相続財産の総額が大きい場合や、不動産・株式など評価が難しい財産が含まれている場合は、早めに税理士へ相談したほうが安心です。
相続では、財産を調べるだけでなく、「その財産をどのくらいの金額として見るのか」も重要になります。
預貯金のようにわかりやすいものだけでなく、不動産や有価証券などは評価の考え方が複雑になることがあるのです。
税理士は、こうした財産の評価を踏まえて、相続税の申告が必要かどうか、申告が必要ならどのように進めるかを整理してくれます。
また、「相続税がかかるかわからない」「期限までに何を準備すればよいかわからない」という場合も、税理士に相談することで見通しを立てやすくなります。
相続税申告の要否が判然としない場合は、早めに税理士へ確認することが重要です。
ただし、税理士は不動産の名義変更や相続人同士の争いの解決を担当する立場ではありません。
税金が中心の相談かどうかを見極めたうえで依頼することが大切です。
弁護士
弁護士は、相続人間で紛争が生じている場合や、交渉・調停・訴訟対応が必要な場合に相談すべき専門家です。
「話し合いが進まない」「相手が財産の情報を出してくれない」「隠し財産があるのではないかと不信感がある」といったケースでは、弁護士への相談が適しています。
相続財産の調査は、単に資料を集めれば済むとは限りません。
相続人同士の関係が悪いと、必要な情報が共有されず、調査そのものが進まないことがあります。
こうした場合は、書類の整理よりも先に、法律の観点から状況を整える必要があります。
弁護士に依頼するメリットは、相続人同士の交渉や、必要に応じた調停・訴訟対応まで見据えて任せられることです。
相続人の間に入って話し合いを進めたり、必要に応じて調停などの手続きにつないだりできるため、当事者同士では解決が難しい場面で力を発揮します。
一方で、争いがない相続では、最初から弁護士に依頼しなくてもよいケースもあります。
費用とのバランスを考えながら、「このまま話し合いで進められるか」が判断のポイントです。
相続人間の対立がある場合は、早期に弁護士へ相談し、法的対応の要否を確認することが重要です。
行政書士
行政書士は、相続関係書類や財産目録の作成補助など、書類作成を中心に依頼したい場合に相談先となる専門家です。
争いがなく、戸籍の収集や財産目録の作成、書類の準備を中心に進めたい場合に向いています。
相続の手続きでは、戸籍を集めて相続人を確認したり、財産の一覧をまとめたり、遺産分割協議書を作成したりと、書類の準備に多くの手間がかかります。
行政書士は、こうした書類面のサポートを受けやすいのが特徴です。
「何を集めればよいかわからない」「まずは必要書類を整えたい」「手続きの土台をつくりたい」という場合には、行政書士への相談が役立ちます。
書類が整理されることで、その後に司法書士や税理士へ引き継ぐ際もスムーズになりやすくなります。
ただし、行政書士は登記申請や税務申告、相続人同士の争いへの対応はできません。
あくまで書類整理を中心に依頼したい場合に向いているため、相続の内容によっては他の専門家との連携を前提に考えておきましょう。
相続財産調査を専門家に依頼するときのチェックポイント
財産調査のあとの流れは相続手続きの流れ、費用の目安は遺産整理の費用の記事で詳しく解説しています。

相続財産の調査を専門家に頼むときは、知名度や立地だけで選ぶのではなく、相続案件への対応範囲や実務経験を確認することが重要です。
依頼先が合っていないと、必要な手続きまで任せられなかったり、あとから別の専門家に頼み直すことになったりして、時間も費用も余計にかかってしまうことがあります。
特に相続は、財産の調査だけで終わるとは限りません。
調査の結果、不動産の名義変更が必要になることもあれば、相続税の申告や相続人同士の話し合いが必要になることもあります。
だからこそ、最初の相談先を選ぶときには、「現時点で必要な手続き」と「今後発生し得る手続き」の両方を見ておくことが重要です。
まずは、依頼前に確認しておきたいポイントを整理してみましょう。
| チェック項目 | 確認したいこと | 見るべきポイント |
|---|---|---|
| 対応できる範囲 | どこまで任せられるか | 調査だけなのか、登記・税申告・交渉対応まで見据えられるか |
| 料金のわかりやすさ | 費用がどこまで含まれるか | 見積もりの内訳が明確か、追加費用の説明があるか |
| 相続の経験 | 相続案件に慣れているか | 相続特有の流れや必要書類を理解しているか |
| 他の専門家との連携 | 必要に応じてつないでもらえるか | 司法書士・税理士・弁護士などと連携できるか |
| 説明の丁寧さ | 初めてでも理解しやすいか | 専門用語ばかりでなく、流れや必要書類をわかりやすく説明してくれるか |
相続では、一人の専門家だけで完結しないことも少なくありません。
そのため、今の悩みに対応できることはもちろん、必要に応じて次の専門家へスムーズにつないでもらえるかも大切な判断材料になります。
専門家に依頼する時のチェックポイントは、次の通りです。
- 対応業務範囲がはっきりしているか
- 料金体系がわかりやすいか
- 相続案件の実績があるか
- 他士業との連携体制があるか
- 説明が具体的か
以下からは、専門家に依頼するときのチェックポイントについて詳しく解説します。
対応業務範囲がはっきりしているか
専門家に依頼する前に、まず確認したいのが「どこまで対応してもらえるのか」です。
相続財産の調査といっても、実際にはその後に不動産の名義変更、相続税の申告、相続人同士の話し合いなどが必要になることがあります。
たとえば、不動産の名義変更まで進めたいなら司法書士、相続税の申告まで考えるなら税理士、相続人同士のもめごとがあるなら弁護士、といったように専門家ごとに役割は異なります。
書類の収集や整理を中心にお願いしたい場合は、行政書士が向いていることもあるのです。
ここをあいまいなまま依頼してしまうと、「調査はしてもらえたけれど、その先は別の専門家が必要だった」ということになりやすくなります。
相談時には、「今回のケースで、どこまで対応できますか」「対応できない部分は、どの専門家につなぐ形になりますか」と確認しておくと安心です。
料金体系がわかりやすいか
費用のわかりやすさも、依頼先を選ぶうえで大切なポイントです。
相続の手続きでは、専門家への報酬だけでなく、戸籍や証明書の取得費用などがかかることがあります。
さらに、調査の途中で追加の対応が必要になると、費用が増えることもあります。
そのため、最初の相談の段階で、何にいくらかかるのかをできるだけ具体的に確認しておくことが大切です。
見積もりをもらうときは、調査費用や書類作成費用、手続きの代行費用などが分かれているかを見ると、内容を把握しやすくなります。
また、「どんな場合に追加費用がかかるのか」もあわせて確認しておくと安心です。
最初は安く見えても、あとから費用が積み重なると、結果的に負担が大きくなることがあります。
費用額だけでなく、業務範囲や追加費用の有無を含めて確認したうえで依頼先を選ぶことが重要です。
相続案件の実績があるか
相続は、ほかの手続きとは少し違う知識や経験が必要になる分野です。
戸籍の集め方や財産の整理の仕方、不動産や税金が絡むときの進め方など、相続に慣れているかどうかで対応のスムーズさが変わります。
そのため、専門家を選ぶときは、「相続案件の取扱実績がどの程度あるか」を確認しておくと安心です。
単に士業の資格を持っているだけでなく、相続案件の進め方をよく理解しているかどうかが重要です。
特に、不動産がある、相続人が多い、財産の種類が多いといったケースでは、経験の差が出やすくなります。
自分の事案に近い相続案件の取扱経験があるかを確認しておくと、依頼後のミスマッチを防ぎやすくなります。
他士業との連携体制があるか
相続財産の調査では、一人の専門家だけでは対応しきれないことがあります。
たとえば、「不動産の確認はできても税金の申告は別」「書類作成はできても相続人同士の交渉は別」というように、手続きが進む中で必要な専門家が変わることがあります。
そのため、依頼先を選ぶときは、他の専門家と連携できる体制があるかも確認しておきたいところです。
最初の相談先が窓口となって、必要に応じて司法書士、税理士、弁護士などにつないでくれる体制があると、相談する側の負担を減らしやすくなります。
特に、「自分のケースでは誰に頼めばいいのかわからない」という方ほど、最初から役割分担を整理してもらえる相談先が向いています。
状況に応じてふさわしい専門家につなげてもらえるかどうかは、スムーズに進めるためのポイントです。
なお、私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続に関わる士業と連携しながら、状況に応じた窓口整理を行っています。
複数の手続きが関係する相続についても、まずは司法書士が全体像を整理し、必要に応じて他士業との連携をご案内します。
説明が具体的か
相続の手続きは、初めて経験する方がほとんどです。
そのため、専門家の説明がわかりやすいかどうかも、依頼先を選ぶうえで重要です。
相談先を選ぶ際は、専門用語だけで説明するのではなく、「まず何を集めるのか」「次に何をするのか」「どんな書類が必要なのか」を順番にわかりやすく説明してくれる専門家を選びましょう。
反対に、説明があいまいだったり、質問してもはっきり答えてもらえなかったりすると、依頼後に不安が残りやすいです。
また、手続きの流れだけでなく、「どの段階で財産の一覧がまとまるのか」「不足書類があればどう進めるのか」といったところまで具体的に話してもらえると、今後の見通しを立てやすくなります。
相続手続きは長期化しやすいため、説明が具体的で、今後の見通しを示してくれるかどうかも重要な判断材料になります。
相続財産の調査は、ただ専門家に頼めばよいわけではありません。
相続の内容に応じて適切な専門家を選び、必要な場合には他士業と連携できる司法書士へ相談することが、手続を円滑に進めるうえで重要です。
相続財産調査を依頼する前に準備するもの一覧

相続財産の調査をスムーズに進めるには、専門家に相談する前の準備が大切です。
資料や情報がそろっていないまま依頼すると、「どこを調べればいいのか」から確認することになり、時間も手間もかかりやすくなります。
特に相続では、預貯金や不動産だけでなく、保険、証券、借入れなど、確認すべきものが幅広くあります。
最初に手がかりを整理しておくことで、依頼先も状況を把握しやすくなり、必要な専門家への橋渡しもスムーズになるのです。
まずは、依頼前にそろえておきたい内容を一覧で確認しておきましょう。
| 分類 | 準備する内容 | 具体的にそろえたいもの | 先に準備しておく理由 | 不足すると起こりやすいこと |
|---|---|---|---|---|
| 故人の基礎情報 | 調査の手がかりになる情報 | 住所履歴、勤務先、旧姓、利用していた金融機関、加入していた保険会社、不動産の所在地 | どこに照会すればよいか整理しやすくなる | 口座や不動産、保険の見落としが起きやすい |
| 手元資料 | 財産を探すための現物資料 | 通帳、キャッシュカード、保険証券、証券会社からの郵便物、固定資産税の書類、登記識別情報通知書、契約書、スマートフォン内の金融関連情報 | 調査先を絞り込みやすくなる | 調査の開始が遅れ、確認漏れも増えやすい |
| 相続人情報 | 手続きを進める人の確認資料 | 被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍) | 誰が請求や相談を進めるか整理しやすくなる | 照会や手続きが途中で止まりやすい |
| 資金の流れ | 財産の手がかりになる記録 | 大きな入出金の記録、送金履歴、引き落とし先、贈与に関するメモや資料 | まだ見つかっていない財産や負債に気づきやすくなる | 財産の全体像をつかみにくくなる |
相続財産の調査を誰に頼むか迷った時は、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターまで!

相続の調査は見た目より難しく、財産の内容や家族の状況によって、誰に頼るべきか迷いやすくなります。
実際は、司法書士・税理士・弁護士など内容ごとに頼る相手が変わるため、最初から一人で進めようとすると手間が増えやすいです。
早い段階で司法書士に相談し、必要な手続きの全体像を整理することで、重複した対応や手戻りを防ぎやすくなります。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続に関するご不安やお悩みを整理しながら、必要に応じて専門家と連携できる相談窓口としてサポートしています。
相続に関する判断に迷う方は、お気軽にお問い合わせください。
相続放棄した家は最終的にどうなる?不利益を受けない方法から注意点まで徹底解説!
2026.05.11
「親が亡くなったら家も相続対象になるけれど、空き家になるから相続放棄をしよう」と考えている方もいるでしょう。
いざ相続放棄をしようと思っても、「家の管理はどうなるのか」「どのような手続きが必要か」など気になることは山積みです。
この記事では、相続放棄した家が最終的にどうなるのか、相続放棄の注意点について解説します。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、弁護士や税理士などの専門士業と連携しながら、相続に関するお悩み解決をお手伝いしています。
家を含む相続放棄の手続きや、その後の対応でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
記事監修者
司法書士 川上直也
当センターの受付を担当しております。
司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。
ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
相続放棄した家は最終的にどうなる?

相続放棄した場合、家の行方は主に次の2つに分かれます。
- 他の相続人が引き継ぐ
- 相続人がいない場合は国に帰属する
ここからは、ケースごとにどうなるのか詳しく見ていきましょう。
他の相続人が引き継ぐ
相続放棄をしても、同じまたは次の相続順位の人がいれば、その相続人が家を引き継ぐことになります。
たとえば、親が亡くなった場合、自身は法定相続人の第1順位となります。
自身(あなた)が相続放棄をする場合、同順位の他の相続人に相続権が移ります。
同順位の相続人がいなくなった場合は、次順位の親族が相続人となるのです。
法定相続人の順位を表にまとめると次の通りです。
| 順位 | 主な対象者 | 補足 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 夫・妻(常に相続人) | 他の順位の相続人と常に共同で相続する |
| 第1順位 | 子・孫(直系卑属) | 子が亡くなっている場合は孫が相続(代襲相続) |
| 第2順位 | 父母・祖父母(直系尊属) | 第1順位がいない場合に相続 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪が相続(1代限り) |
自分が相続放棄したあとに誰が家を引き継ぐことになるのか、あらかじめ知っておきましょう。
他の相続人が事情を把握していない場合、手続きが遅れたり、相続人間で認識の相違が生じたりするおそれがあります。
相続人がいない場合は国に帰属する
相続放棄などにより最終的に相続人がいなくなった場合は、相続財産清算人による手続きを経て、残余財産が国庫に帰属します。
ただし、相続放棄をしただけで直ちに家が国庫に帰属するわけではなく、相続人がいないことを前提に、相続財産清算人の選任など所定の手続きが必要になります。
相続放棄の手続きの後、他に相続人がおらず、残った家が国に帰属するまでの流れは次の通りです。
| 手順 | 手続き等の内容 |
|---|---|
| ① 相続財産清算人の選任 | 利害関係人(債権者、特定分与を希望する特別縁故者、親族など)の申立てにより、家庭裁判所が相続財産清算人を選任する |
| ② 財産の調査・管理 | 家を含めた相続財産の内容を調査し、適切に管理する |
| ③ 債権者・受遺者への公告 | 官報に公告を出す(これにより、借金や未払いの費用などを把握する) |
| ④ 債務の支払い・財産の換金 | 申し出があった債権について、財産を使って支払いを行う |
| ⑤ 特別縁故者への分与(ある場合) | 被相続人と特別な関係があった人(内縁の配偶者など)がいる場合、家庭裁判所の判断で相続財産の分与がされることもある |
| ⑥ 残った財産が国庫へ帰属 | すべての支払いを終えて残った財産が国庫へ帰属する |
相続放棄やその後の不動産対応は、手続きの判断を誤ると不利益につながるおそれがあるため、早い段階で司法書士や、必要に応じて弁護士へ相談することが重要です。
相続放棄した家の注意点

相続放棄をしても、家に関する一切の責任や義務がなくなるとは限りません。
法律上、相続放棄の時に相続財産を現に占有している人には、次の相続人や相続財産清算人へ引渡しを終えるまで保存義務があります。
第940条(相続の放棄をした者による管理)
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索|民法第940条
「現に占有している」とは、「事実上、支配や管理をしている状態」を指します。
たとえば、次のことをしていた場合が挙げられます。
- 居住用や、別荘・倉庫として利用している
- 鍵を持って定期的に清掃や管理をしている
- 第三者に依頼して、家の保存や管理をしている
相続放棄をしても、その時点で家を現に管理している場合は、次に引き継ぐ相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで、家の状態を悪化させないよう保存する必要があります。
一方で、放棄時に家を現に占有していない場合は、同じ前提とならないことがあるため、個別事情を踏まえた法的判断が必要です。
管理者としてみなされている場合、次の注意点があります。
- 保存義務が残る場合がある
- 禁止事項がある
ここからは、それぞれの注意点について解説していきます。
保存義務が残る場合がある
相続放棄をした後も、放棄時に家を現に占有していた場合には、次の相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで保存行為が必要になることがあります。
こうした対応が必要な理由は次の通りです。
- 引き渡すまで保存義務が残るから
- 放置すると損害賠償責任を問われる可能性があるから
それぞれの理由について、以下から詳しく見ていきましょう。
引き渡すまで保存義務が残るから
相続放棄をしても、次の相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで、家を保存する義務があります。
ここでいう保存とは、不動産の価値や状態を損なわないための必要最小限の措置のことです。
たとえば、戸締まりをする、雨漏りや破損を放置しないなどの対応が中心になります。
放置すると損害賠償責任を問われる可能性があるから
管理(保存)義務には周囲や他人に損害を与えるような、危険な状態にしないことも含まれています。
仮に危険な状態を放置して周囲の第三者に被害が出た場合は、責任を問われる可能性があります。
目に見えて危険な箇所がある場合は、必要に応じて補修や立入防止などの保存行為を検討しましょう。
禁止事項がある
相続放棄をした家については、勝手に処分してはいけません。
相続放棄をした以上、家を自分の判断で自由に扱える立場ではないためです。
一方で、周囲や第三者への損害を出さないための最低限の対応が必要になる場面もあります。
相続放棄後に問題となりやすい行為と、保存行為として許容される範囲は次の通りです。
- 売却や自由な解体はできない
- 危険回避のための保存行為だけは許される
ここから、一つずつ詳しく内容を解説していきます。
売却や自由な解体はできない
相続放棄をしたあとに、家を自分の判断で売ったり、取り壊したりすることはできません。
処分行為に当たる内容によっては、単純承認とみなされる可能性があります。
その結果、相続放棄が認められず、相続人として財産や負債を承継するリスクが生じます。
プラスの財産もマイナスの財産も相続するため、借金などが遺されていると不利益を受けてしまう可能性があるのです。
危険回避のための保存行為だけは許される
周囲や第三者に損害を与えるおそれがある場合には、最低限の安全確保のための対応が必要です。
たとえば、破損した屋根の一部や、崩れてきそうな壁などの応急的かつ必要最小限の補修であれば、保存行為にあたります。
反対に、危険な状態を放置して近隣住民や第三者に損害を与えた場合は、責任を問われる可能性があります。
もっとも、保存行為に当たるか判断が難しい場合もあるため、対応前に司法書士へ相談するのが安全です。
相続放棄した家を空き家のまま放置するとどうなる?

相続放棄をしても、そのまま空き家として放置するとさまざまな問題が起こります。
放置した結果、予想されるトラブルは次の通りです。
- 老朽化による倒壊や事故が起きる
- 行政から助言・指導、勧告、命令等を受ける可能性がある
- 固定資産税の取扱いについて確認が必要になる
ここからは、予想されるトラブルについて詳しく見ていきましょう。
老朽化による倒壊や事故が起きる
そのまま放置すると、建物の一部が落下したり、台風や地震をきっかけに倒壊したりするおそれがあります。
建物の一部の落下や倒壊によって、人や物に損害を与えた場合、賠償責任が発生する可能性があります。
それだけでなく、不法侵入や不法投棄、犯罪利用の温床になるおそれもあるのです。
この場合、保存義務者が事件に巻き込まれてしまう可能性も考えられます。
周囲だけでなく、自身にとっての不利益やトラブルにつながるため注意が必要です。
行政から助言・指導、勧告、命令等を受ける可能性がある
相続放棄をしていても、空き家の管理者とみなされた場合、行政対応の対象になることがあります。
たとえば、建物の傷みが激しい、周囲に危険を及ぼす可能性がある、衛生面に問題があるといった場合には、行政から適切な管理をするよう助言や指導をされます。
助言・指導の後、必要に応じて勧告、命令、代執行などへ進む可能性があります。
さらに、改善命令に従わない場合などは過料が科されたり、行政代執行が行われた場合は解体費用を請求されたりすることもあるため、注意が必要です。
固定資産税の取扱いについて確認が必要になる
相続放棄をした人は、原則として相続人として固定資産税の納税義務を負いません。
しかし、実際の課税や通知の取扱いは自治体で確認が必要です。
固定資産税は不動産(家)の所有者に課される税金です。
ただし、固定資産税の納税義務者の判定は一律ではなく、登記や課税台帳上の取扱い、相続放棄の有無なども踏まえて自治体に確認する必要があります。
相続放棄をした場合でも、事情によって扱いが分かれるため、早めに自治体や専門家へ確認しておきましょう。
相続放棄をした方は、固定資産税の納税義務者として一律に扱われるわけではありません。
固定資産税の手続きは、相続放棄の有無や自治体への届出状況で確認事項が分かれるため、受理通知書を準備したうえで自治体窓口へ早めに確認しておきましょう。
特定空家等について勧告を受けると、住宅用地特例の対象から外れ、税負担が増える可能性があります。
相続放棄をした後は、必要に応じて次の相続人への引継ぎや、相続財産清算人選任申立てを検討しましょう。
相続放棄後の家について整理しておくべき手続き

相続放棄した家に関するトラブルを回避するためには、放棄以外の手続きも必要になります。
必要な手続きは以下の通りです。
- 家庭裁判所で相続放棄の申述を行い、受理を受ける
- 「相続財産清算人」の申立てをする
それぞれの手続きを順に見ていきましょう。
家庭裁判所で相続放棄の申述を行い、受理を受ける
相続放棄をするには、各相続人が家庭裁判所で相続放棄の申述を行い、受理される必要があります。
また、相続放棄には期限があり、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
自分以外の相続人の状況確認や、家を含めた財産の整理、書類の準備など、確認すべき事項や準備すべき書類は少なくありません。
相続放棄には期限もあるため、早い段階で司法書士や弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。
「相続財産清算人」の申立てをする
自分以外に相続人がいて、引き継ぐ意思がある場合は、その相続人へ権利が移ります。
一方、自分以外の相続人がいない、または全員が放棄する場合は、別の管理手続きが必要です。
相続放棄の手続きとあわせて「相続財産清算人」の申立てを進めましょう。
手続きを経て、「相続財産清算人」に家の管理を引き継ぐことで、トラブルを回避することができます。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、遺産相続に関するお悩み解決のお手伝いをしています。
相続放棄の申述書類の準備や、不動産を含む相続関係の整理について、サポートいたします。
必要に応じて、相続財産清算人選任申立てに関する手続きの案内も可能です。
何も整理できていない状態からでも構いませんので、まずはお気軽にご相談ください。
早めの相談で相続放棄した家の不安は軽くできる!

相続放棄をしても、放棄時に家を現に占有している場合などは、その後も一定の保存義務が残ることがあります。
専門知識がないと対応に行き詰まりやすく、放置すれば家の状態によって周囲へ迷惑がかかるかもしれません。
そのため、相続放棄後の保存義務や今後の手続きについて、早めに司法書士へ相談し、必要な対応を整理しておくことが重要です。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続放棄全般に関するお悩み解決のお手伝いをしています。
まだ相談する段階ではないと思われる場合でも、早めに状況を確認しておくことで、後の手続きを進めやすくなります。
ご相談はメールまたはお電話から受け付けております。
相続登記をしないまま相続人が死亡した不動産はどうなる?解決策やデメリットを徹底解説!
2026.05.11
名義変更をしないまま相続が重なると、関係する人が増えて手続きが一気にややこしくなります。
誰が何を決めるか整理に時間がかかり、放置すると話し合いも進まず、売る・貸すといった判断も止まりがちです。
期限もあるため後回しにするほど負担が増え、戸籍集めや関係整理も広がるので早めの対応が欠かせません。
この記事では、相続登記をしないまま相続人が亡くなった不動産がどうなるのか、起こりやすい問題、放置するデメリット、そして解決に向けた進め方を、整理して解説します。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続登記が未了のまま次の相続が発生した不動産についても、相続関係の整理や相続登記に関するご相談を承っております。
記事監修者
司法書士 川上直也
当センターの受付を担当しております。
司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。
ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
相続登記をしないまま相続人が死亡した場合はどうなる?

前の相続で相続登記をしないまま、相続人の一人が亡くなると、相続関係がさらに複雑になり、手続きの負担も大きくなります。
主な問題点は、次の通りです。
- 権利関係が複雑になる
- 遺産分割協議が成立しにくくなる
- 不動産の売却や活用が進めにくくなる
ここからは、それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
権利関係が複雑になる
相続登記をしないまま次の相続が起きると、最初の相続人だけでなく、その後に亡くなった人の相続人まで関係者になります。
その結果、遺産分割協議に関与すべき相続人が増え、誰がどの相続関係にあるのかを整理するだけでも負担になります。
特に負担が大きくなりやすいのは、次のようなケースです。
- 1回目の相続人と2回目以降の相続人が、まとめて関係者になる
- すでに亡くなっている人の相続分までさかのぼって確認する必要がある
- 戸籍の収集範囲が広がり、古い戸籍まで取り寄せることがある
こうした状態になると、通常の相続よりも確認事項が増え、必要書類も多くなります。
戸籍を集めるだけでも時間がかかり、手続きを始める前の段階で止まってしまうことも少なくありません。
そのため、できるだけ早い段階で戸籍を収集し、誰が相続人になるのかを確定させることが重要です。
遺産分割協議が成立しにくくなる
不動産について相続登記を行うには、誰が不動産を引き継ぐのかを相続人同士で決める必要があります。
ところが、相続登記をしないまま次の相続が発生すると、遺産分割協議に参加すべき相続人が増えるため、合意形成が難しくなります。
意見がまとまりにくくなる主な理由は、次の通りです。
- 相続人同士に面識がなく、連絡や調整がしにくい
- 相続分や進め方について考え方が分かれやすい
- 一部の相続人と連絡が取れず、話し合いが進まない
相続人が一人でも欠けたままでは、遺産分割協議は成立しません。
相続人の中に所在不明者、未成年者、成年後見制度等の利用を検討すべき方がいる場合には、家庭裁判所で別途手続きが必要になることがあります。
その結果、遺産分割協議書の作成までたどり着けず、相続登記がさらに後ろ倒しになることがあるのです。
先送りが長引くほど、また新たな相続が重なり、ますます整理が難しくなる点に注意が必要です。
不動産の売却や活用が進めにくくなる
相続登記をしないままでは、不動産の名義が亡くなった方のまま残るため、売却や活用の場面で支障が出やすくなります。
起こりがちな問題は次の通りです。
- 名義が故人のままで、売却の話を進めにくい
- 担保に入れたり、賃貸に出したりする判断がしにくい
- 使う予定がなくても、管理や税金の負担が続く
相続開始後の不動産は、遺産分割が成立するまで、原則として共同相続人の共有状態となります。
しかし、相続人が多かったり、意見がまとまらなかったりすると、売ることも貸すこともできず、そのまま放置されやすくなります。
一方で、不動産を使っていなくても、管理の手間や固定資産税などの負担はなくなりません。
つまり、名義変更をしないことで不動産を動かせないまま、負担だけが続く状態になりやすいのです。
早めに相続関係を整理しておけば、売却するのか、残すのか、活用するのかを判断しやすくなります。
相続登記を先送りにせず、早めに手続きへ着手することが、不動産の処分や活用を円滑に進めるうえで重要です。
相続登記をしないまま次の相続が発生した場合のデメリット

相続登記をしないまま不動産を放置すると、手続きが面倒になるだけではありません。
現在は相続登記が義務化されているため、放置による不利益が生じやすくなっています。
主なデメリットは、次の通りです。
- 過料の対象になる可能性がある
- 所有者が判明しにくい不動産になる
ここからは、それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
過料の対象になる可能性がある
現在は、不動産を相続したことを知ったまま相続登記をしないでいると、過料の対象になる可能性があります。
以前のように「忙しいから後でよい」と考えて先送りしやすい状況ではなくなっている点に注意が必要です。
特に押さえておきたいポイントは、次の通りです。
- 不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記の申請が必要となる
- 正当な理由がないまま放置すると、過料の対象になることがある
- 過去に発生した相続についても、未登記のままであれば義務化の対象となるため、早めの対応が必要になる
また、遺産分割で不動産を取得した場合も、その日から3年以内に登記をする義務があるため、別途期限管理が必要になります。
つまり、「とりあえず相続人で話はついているから大丈夫」とは限らず、きちんと登記まで済ませておくことが大切です。
相続登記をしないまま次の相続が発生すると、関係者が増えて書類集めや話し合いに時間がかかり、期限内に進めることがさらに難しくなります。
放置してしまった不動産ほど、早めに状況を整理して動き出すことが重要です。
所有者が判明しにくい不動産になる
相続登記をしないままにすると、登記簿上の名義が亡くなった方のまま残ります。
そうなると、登記簿を確認しても、現時点の所有関係が直ちには把握しにくい状態になります。
こうした状態が続いたときに起こりやすい問題は、次の通りです。
- 連絡を取りたい相手がすぐにわからない
- 売却や活用の話が進めにくくなる
- 管理が行き届かず、周囲に迷惑をかけるおそれがある
- 将来、権利関係の整理に多くの時間と手間がかかる
不動産は、名義が古いままでも自然になくなるわけではありません。
使っていない土地や空き家であっても、管理の責任や費用の問題は残ります。
それにもかかわらず、所有者がわかりにくいままだと、必要な対応をスムーズに進めにくくなります。
さらに、放置が長引くと、行政上の手続きや管理の場面でも対応が複雑になることがあるのです。
相続登記は、単なる名義変更ではなく、不動産の所有関係を公示し、権利関係を明確にするための重要な手続きです。
不動産を次の世代に余計な負担を残さないためにも、早めに名義を整えておくことが大切になります。
相続登記をしないまま次の相続が発生した不動産で、手続きを進める際のポイント

相続関係を整理しないまま手続きを進めると、後から書類の作成や登記申請をやり直すことになるおそれがあります。
そうした不利益をできるだけ避けるには、順番に整理して進めることが大切です。
基本的な進め方は、次の通りです。
- 相続関係を確定させる
- 不動産の現状を把握する
- 遺産分割の合意内容を整理する
ここからは、それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
なお、不動産の名義変更とは別に、相続税の確認も早めに進めておくことが大切です。
相続した財産の合計額が基礎控除を超える場合は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に、相続税の申告と納税が必要になります。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、不動産の状況整理から相続人調査、名義変更に関わる専門家連携まで、相続発生後の動きを一括してサポートします。
相続関係を確定させる
まず着手すべきなのは、誰が相続人に当たるのかを戸籍によって正確に確認することです。
相続登記をしないまま時間がたっている不動産では、整理が必要な範囲が広がることがあります。
最初の相続だけでなく、その後に起きた相続まで確認しなければならないためです。
相続関係を確定させるときに確認したい主なポイントは、次の通りです。
- 戸籍を集めて、相続人を確定する
- 誰がいつ亡くなったのかを整理し、相続の流れを確認する
- 代襲相続があるかどうかを確認する
- 相続放棄をした人がいないかを確認する
相続人に漏れがあるまま話し合いや登記を進めると、あとから手続きをやり直すことになりかねません。
相続が重なっている場合は、関係者が増えていることも多いため、最初に全体像をはっきりさせることが大切です。
また、集めた戸籍をもとに法定相続情報一覧図や相続関係説明図を作成しておくと、誰がどの相続に関わるのかが見えやすくなります。
手続き全体をスムーズに進めるうえでも、土台になる作業です。
不動産の現状を把握する
相続人を確認したら、次は不動産そのものの状況を整理します。
登記名義が誰になっているのか、ほかに権利が付いていないか、どの不動産が対象なのかがあいまいなままだと、手続きの方向性が定まりません。
不動産の現状を把握する段階で確認したい主な項目は、次の通りです。
- 登記事項証明書で現在の名義を確認する
- 不動産の所在地や地番、家屋番号を確認する
- 固定資産評価額を把握する
- 抵当権などの権利関係が残っていないか確認する
- 共有持分があるかどうかを確認する
相続登記をしないまま長期間が経過した不動産では、相続人側が「何を相続するのか」を正確に把握できていないこともあります。
土地と建物で名義が違っていたり、共有になっていたりすることもあるため、登記事項証明書や評価証明書などの資料を確認し、事実関係を正確に把握したうえで進めることが重要です。
また、不動産を使っていない場合でも、税金や管理の問題は残ります。
現状をきちんと確認しておくことで、名義変更だけでなく、その後にどうするかも考えやすくなります。
遺産分割の合意内容を整理する
最後に、相続人の間で「誰がその不動産を引き継ぐのか」を整理します。
この点があいまいなままだと、遺産分割協議書の作成や相続登記申請に支障が生じます。
遺産分割で整理したいポイントは、次の通りです。
- 各相続人が何を取得するのかをはっきりさせる
- 代償金の有無も含めて調整する
- 合意内容を書面にまとめる
相続人間で認識が一致しているつもりでも、内容があいまいだと、あとから認識のずれが出ることがあります。
特に、不動産を一部の相続人が引き継ぎ、ほかの相続人に金銭を支払う場合などは、条件をはっきりさせておくことが大切です。
また、相続人の中に未成年者や判断能力に配慮が必要な方がいる場合は、通常どおりに進められないこともあります。
そうしたケースでは、必要な手続きが別に生じることがあるため、早い段階で確認しておくと安心です。
遺産分割の内容が整理できたら、遺産分割協議書にまとめ、相続登記申請に必要な状態へ整えていきます。
相続登記をしないまま相続が重なった不動産は、権利関係が複雑になりやすい傾向があります。
そのため、あわてて進めるのではなく、一つずつ順番に整えていくことが大切です。
相続登記をしないまま相続が重なって不安なときは、放置せず早めに相談しよう

相続登記をしないまま次の相続が発生すると、確認すべき相続関係や必要書類が増え、手続きは複雑化します。
相続人の確認や話し合い、名義変更を順に整理する必要があり、時間がたつほど関係者も増えてさらにややこしくなります。
放置すると判断も進まず期限面でも不安が残るため、不動産だけでなく相続全体を見て進めることが重要です。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続不動産の整理から名義変更に向けた準備、必要に応じた専門家との連携まで、全体を見ながらご相談をお受けしています。
何から着手すべきか判断に迷う場合でも、早めに司法書士へ相談し、必要な手続きの順序を整理しておくことで、後の負担を軽減しやすくなります。
まずはお気軽にご相談ください。
個人事業主の相続ってどうなる?事業継続の方法や廃業の見極めなど網羅解説!
2026.05.11
個人事業主が亡くなると、事業に関連する財産や負債も相続の対象となります。
個人事業は事業主個人と強く結びついているため、相続が発生すると相続人の生活にも影響が出やすいという特徴があります。
まずは事業を続けるのか、廃業するのかを早い段階で決めることが大切です。
そのうえで預金・売掛金・不動産などの財産と、借入金などの負債を整理し、必要な名義変更や契約の見直しを進めていきます。
この記事では、故人が個人事業主だった場合の特有の財産の扱いや、相続人にどのような意思決定や手続きが必要になるのかを解説します。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、必要に応じて税理士などの他士業とも連携しながら、個人事業主の相続に関するご相談を承っております。
個人事業主の相続についてお困りの方は、まずはお気軽にご相談ください。
記事監修者
司法書士 川上直也
当センターの受付を担当しております。
司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。
ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
個人事業主の相続の特徴

個人事業主の場合、会社のように「事業」と「個人の財産」が分かれていません。
亡くなった方が事業で使っていた預金や設備、在庫や売掛金はもちろん、借入や未払いも含めて、基本的には相続の対象として整理する必要があります。
個人事業主の相続には、主に次のような特徴があります。
- 事業用資産も相続財産に含まれる
- 借入・未払いなどの債務も相続の対象になる
- 事業用の財産や契約が被相続人個人名義になっていることが多い
ここからは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
事業用資産も相続財産に含まれる
事業で使っていた設備や車、機械、工具、在庫、売掛金なども、亡くなった方の財産として相続の対象になります。
自宅とは別に考えられがちですが、個人事業主の場合は事業用の資産も含めて相続財産として把握しなければなりません。
事業用資産は多岐にわたるため、見落としが起こりやすい点にも注意が必要です。
不動産や備品、商品、道具、取引先から入金予定の売掛金など、種類がばらばらのため、できるだけ早く整理しておきましょう。
借入・未払いなどの債務も相続の対象になる
相続対象になるのは、財産だけではありません。
個人事業に関する借入金・未払い金などの債務もあわせて確認する必要があります。
たとえば、金融機関からの借入や仕入先への買掛金、リース料の残額、外注費や家賃の未払いなどがある場合、相続人の負担に影響します。
事業資産が多く見えても、実際には負債のほうが多いケースもあるため、まずは全体像をつかむことが欠かせません。
負債を十分に把握しないまま相続の手続きを進めると、後になって想定外の支払いが見つかるおそれがあります。
事業を継続する・しないに関係なく、通帳や借入書類、請求書、契約書などをできるだけ早めに整理して、内容を確認しておくことが大切です。
事業用の財産や契約が被相続人個人名義になっていることが多い
個人事業主の場合、銀行口座や各種契約、許認可などの名義が事業主個人になっているケースも多いです。
そのため、事業主が亡くなると、名義変更や契約の承継手続きが必要となり、相続後の事業継続に支障をきたすことがあります。
たとえば、個人名義のままになりやすいものには、次のようなものがあります。
- 事業用の入出金に使用していた預金口座
- 店舗や事務所の賃貸借契約
- リース契約
- 電話やインターネット回線
- クレジット決済や各種決済サービス
- 会計ソフトや業務システムの契約
相続人が「そのまま事業を引き継ぎたい」と考えていても、すべてをそのまま継続して使えるとは限りません。
名義変更や契約の再締結に時間がかかると、売上の入金や支払いに支障が出たり、必要な設備やサービスを利用できなくなったりするおそれがあります。
そのため、相続後は、どの契約や口座が本人名義になっているのかを整理したうえで、引き継ぎに必要な手続きを一つずつ確認していくことが求められます。
個人事業主の相続発生後に事業継続を判断する際のポイント

個人事業主が亡くなった場合、相続人は事業を続けるか、廃業するかを早めに考える必要があります。
この判断を後回しにすると、資金繰りや契約の見直し、相続手続きなどが進めにくくなり、事業そのものに支障が出るおそれがあります。
事業を継続するかどうかを考えるときは、主に次の3つの点を確認することが大切です。
- 収益性を確認する
- 後継候補の有無を確認する
- 負債の状況を確認する
ここからは、それぞれのポイントを順に見ていきましょう。
収益性を確認する
まず確認したいのは、今後も事業として成り立つ見込みがあるかどうかです。
個人事業を引き継ぐ場合、相続手続きだけでなく名義変更や契約の整理、税務の手続きなど、さまざまな負担が発生します。
手続き負担や運営負担を踏まえても、事業を承継する実益があるかを慎重に検討する必要があるのです。
たとえば、亡くなった方の人脈や技術によって成り立っていた事業の場合、相続人や親族が引き継いでも同じように利益を出すのが難しいことがあります。
一方で、固定客が多い店舗、安定した取引先がある仕事、継続収入が見込みやすい事業などは、引き継ぎやすいといえます。
収益の見通しを考えるときは、売上だけでなく、事業継続に必要な費用や人手も含めて無理なく続けられるかを見ることが大切です。
後継候補の有無を確認する
事業を続けるためには、実際に引き継ぐ人がいるかどうかも重要なポイントです。
家族や親族の中に事業を継ぎたいという方がいても、その人が事業の内容を理解しているか、実際に運営していけるかまで確認する必要があります。
取引先とのやりとりや入出金の管理、契約の見直し、必要書類の提出など、実務面で対応しなければならないことが多いためです。
そのため、後継候補がいない場合や、後継候補がいても事業承継が現実的でない場合には、廃業を前提に相続手続きを進めるほうが適切なこともあります。
事業を無理に残そうとするより、財産や契約関係を整理して区切りをつけた方が、相続人の負担を抑えられるケースもあります。
負債の状況を確認する
借入金や未払い金がどの程度あるのかは、事業を継続するか廃業するかを見極めるうえで無視できないポイントです。
たとえ事業用の財産があったとしても、その額を上回る負債がある場合、相続人に大きな負担が残ってしまうおそれがあるでしょう。
たとえば、金融機関からの借入に加え、仕入先への未払い、リース料、外注費、家賃などの支払いが重なっていると、事業を引き継いでも返済や資金繰りに追われる可能性があります。
そのため、このようなケースでは、事業を承継するかどうかだけでなく、相続そのものをどのように進めるべきかという視点からも検討しなければなりません。
負債が資産を上回る可能性がある場合には、相続放棄や限定承認を含めて早期に方針を検討する必要があります。
なお、いずれも原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に検討・申述する必要があります。
個人事業を承継する場合に確認すべき手続き

事業を引き継ぐと決めたら、できるだけ早く必要な手続きを進めることが大切です。
個人事業は、銀行口座や契約、許認可などが亡くなった方の個人名義になっていることが多くあります。
そのため、相続が始まってもそのままでは事業を続けられるわけではありません。
特に優先して確認したい手続きは、次の通りです。
- 銀行口座・契約の名義変更
- 税務署への開業届の提出
- 許認可の再取得・引き継ぎ
ここからは、各手続きについて詳しく解説していきます。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続登記や遺産整理に関するご相談を承っており、必要に応じて税理士などの他士業とも連携しています。
個人事業主の相続でお困りの方は、必要書類や状況が整理できていない段階でも、お問い合わせください。
銀行口座・契約の名義変更
まず優先して確認したいのが、銀行口座と各種契約です。
個人事業主の口座は本人名義のため、金融機関が死亡の事実を把握すると口座は凍結され、自由に使えなくなります。
事業の売上の入金や仕入れ先への支払いに使っていた口座が止まると、事業の継続にすぐ影響が出てしまいます。
そのため、事業を引き継ぐ場合は、新たな事業用口座の準備や取引先への通知、入出金口座の切替えを早めに進める必要があります。
各手続きが遅れると、売上の受け取りや支払いに混乱が生じやすくなります。
あわせて見直したいのが、事業に関わる契約です。
たとえば、次のようなものが挙げられます。
- 店舗や事務所の賃貸借契約
- リース契約
- 電気・ガス・水道
- 電話やインターネット回線
- 決済サービス
- 会計ソフトなどの業務契約
事業にかかわる契約は、名義変更で足りるものもあれば、契約の再締結が必要なものもあります。
どの契約を引き継ぐのか、どれを終了するのかを一覧にして、優先順位をつけて整理することが大切です。
税務署への開業届の提出
個人事業は法人ではないため、亡くなった方の事業をそのまま同じ名義で引き継ぐことはできません。
後継者が事業を続ける場合は、自分が新たな事業主として手続きを行う必要があります。
このとき、後継者側の開業に関する届出だけでなく、亡くなった方に関する廃業届や準確定申告などの税務手続きも必要になります。
被相続人に関する手続きと、後継者に関する手続きは別であるため、注意しましょう。
また、次に当てはまる場合は、追加で提出が必要となる書類があります。
- 青色申告を使いたい場合
- 従業員への給与支払いがある場合
- 消費税に関する届出が必要な場合
必要な届出を忘れると、税務上の取扱いに影響が出る可能性もあるため注意が必要です。
許認可の再取得・引き継ぎ
業種によっては、事業を続けるために許認可の確認が必要です。
たとえば、飲食業あ建設業、宿泊業などでは、許可や届出の有無を確認しておかなければなりません。
注意したいのは、許認可の扱いが業種ごとに異なることです。
届出によって引き継げるものもあれば、あらためて申請し直さなければならないものもあります。
また、一定期間内に手続きをしないと営業を続けられなくなる場合もあるでしょう。
そのため、「すでに許可があるから問題ない」と考えるのではなく、そのまま引き継げるのか、それとも再取得が必要なのかを事前に確認しておく必要があります。
個人事業を廃業する場合に確認すべき手続き

事業を引き継がず、廃業する場合は、事業に関わる財産と負債を一つずつ整理していく必要があります。
何から手をつければよいかわからず放置すると、回収できたはずのお金を受け取れなかったり、相続人の負担が長引いたりするおそれがあります。
廃業をする場合、次のことを優先して確認しましょう。
- 在庫や設備の処分・換価
- 売掛金回収
- 借入・未払いの清算
ここからは、それぞれについて詳しく解説していきます。
在庫や設備の処分・換価
廃業する場合は、残っている商品や材料、機械、備品、車両などを整理し、必要に応じて売却や処分を進めます。
事業で使っていたものであっても相続財産に含まれます。
そのため、相続人が使わないものであっても放置せず内容を確認しましょう。
特に在庫や設備は、放置しておくと価値が下がってしまうものもあります。
換価可能なものは早期に売却を検討し、処分費用が見込まれるものは見積りを踏まえて対応方針を決めると、遺産整理を進めやすくなります。
現金化できたお金は、負債の支払いや相続に必要な費用に充てやすくなるのです。
また、家族がそのまま使うつもりのものがある場合でも、勝手に処分したり、持ち帰ったりすると相続人間のトラブルや遺産分割に影響するおそれがあります。
相続人間の紛争や手続上の不備を防ぐためにも、処分前に司法書士などへ相談のうえ進めることをおすすめします。
売掛金回収
売掛金とは、すでに仕事や販売は終わっているものの、まだ受け取っていない売上のことです。
廃業をする場合でも、売掛金は大切な相続財産の一部です。
そのため、どこから、いくら受け取ることができるのか確かめて、回収を進める必要があります。
まずは、請求書や契約書、納品書、通帳の記録などを確認し、未回収の売掛金を整理しましょう。
- 請求書
- 契約書
- 納品書
- 通帳の入出金記録
資料が不足していると、請求が困難になることもあります。
時間が経ちすぎると相手方との連絡が取りづらくなることもあるため、早めに行動を起こしましょう。
借入・未払いの清算
財産を整理するだけでなく、残っている借入金・未払いについても確認しなければなりません。
たとえば、金融機関からの借入、仕入先への未払い、外注費、家賃、リース料などが残っている場合があります。
こうした費用は「どこに」「いくら」「何の支払いがあるのか」の内容を整理しながら清算を進めましょう。
未払いを放置すると、利息や遅延損害金が発生したり、相続人の負担になったりするおそれがあります。
ただし、負債が大きい場合は注意が必要です。
借入や未払いの額によっては、相続放棄や限定承認を検討したほうがよいケースがあります。
相続の方針を決める前に不用意に財産を処分したり、支払いを進めたりすると、相続を承認したものとみなされ(単純承認)、相続放棄ができなくなるリスクがあるため注意が必要です。
そのため、負債が重いと感じたら早い段階で専門家へ相談することも検討しましょう。
個人事業主の相続は早い段階で手続きの全体像を整理しよう

個人事業主の相続では、財産・負債・契約関係を整理する必要があります。
十分に整理せずに進めると、手続きが複雑になり、相続人の負担が増えるおそれがあります。
特に、事業を続けるか廃業するかを決めないままだと、手続きの優先順位が定まらず、時間がかかります。
まずは全体を見て、「すぐやること」と「決めてからやること」に分けて整理しましょう。
相続人だけで財産調査や手続きを進めることが難しい場合は、早めに司法書士へ相談することをおすすめします。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、司法書士・税理士・弁護士がチームで連携し、幅広い相続のお悩みの解決をお手伝いしています。
相続の状況をすべて把握できていなくても構いません。
まずはお気軽にお問い合わせください。
公正証書遺言があるのにもめる理由って何?対策方法まで徹底解説!
2026.04.08
公正証書遺言は、公証人が作成する遺言書です。
方式不備で無効になりにくく、原本も公証役場で保管されるため、安心材料になりやすいです。
手続き面でも、自筆証書遺言とは違って家庭裁判所の検認が不要なため、相続をスムーズに進めやすくなります(なお、自筆証書遺言や秘密証書遺言は家庭裁判所で検認を受けなければならず、封印があるものを勝手に開封すると5万円以下の過料に処せられる可能性があります)。
ただ、公正証書遺言を作っていても、家族のもめごとが必ずなくなるわけではありません。
財産の分け方に偏りがあったり、内容がわかりにくかったりすると、相続問題に発展することがあります。
この記事では、公正証書遺言があってももめる理由や対策について解説します。
静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、士業専門家と連携し、遺言書作成支援や遺産相続の相談を受け付けております。
遺言書の作成や相続問題でお困りの方はお気軽にご相談ください。
記事監修者
司法書士 川上直也
当センターの受付を担当しております。
司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。
ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
公正証書遺言があるのにもめる理由

公正証書遺言は、公証人が作成するため、方式不備で無効になりにくい遺言です。
しかし、公正証書遺言があっても相続人間の争いまでなくせるわけではありません。
分け方への不満や、内容のわかりにくさ、作成時の状況への疑いがあると、相続が始まったあとにもめることがあります。
主な理由は、次の通りです。
- 内容そのものに問題があるため
- 有効性(作成時の判断能力)が疑われるため
- 作成経緯に不信感があるため
それぞれ詳しく見ていきましょう。
内容そのものに問題があるため
公正証書遺言は、正しい手順で作られていても、書かれている内容まで相続人全員の理解が得られるとは限りません。
分け方に偏りがあったり、書き方があいまいだったりすると、相続人同士の受け取り方が分かれてもめやすくなります。
特に注意したい点は、次の通りです。
- 遺留分を侵害しているため
- 解釈が割れる不明確な内容のため
以下から、それぞれ詳しく見ていきましょう。
遺留分を侵害しているため
相続では、一定の相続人に最低限の取り分が認められています。
公正証書遺言であっても、遺留分を侵害している場合は、金銭請求(遺留分侵害額請求)が行われる可能性があります。
よくあるのは、1人に多くの財産を集中させたために、他の相続人が納得できない場面です。
遺言書があるためそのまま進むと思っていても、実際にはお金の話し合いが必要になり、相続人間の対立が深まることがあります。
偏りが大きい内容になっていないかは、作成前に丁寧に確認したい部分です。
解釈が割れる不明確な内容のため
遺言書の文章がはっきりしていないと、相続人ごとに意味の取り方が変わります。
すると、何を誰に渡すのかがすぐに決まらず、不要な協議が生じやすくなります。
たとえば、次のような例が挙げられます。
| 記載例 | 不明確になるポイント |
|---|---|
| 自宅 | 土地と建物のどこまでを指すのかが不明確 |
| 銀行名のみ | 口座が特定できず、どの預金を指すのか不明確 |
書き方があいまいだと、不動産の名義変更や預金の手続きが止まりやすくなります。
家族の感情だけでなく、実際の手続きまで進まなくなるため、財産はできるだけ具体的に書いておくことが重要です。
有効性(作成時の判断能力)が疑われるため
公正証書遺言でも、作った時に本人がしっかり判断できていたのかを疑われることがあります。
高齢で物忘れが増えていた場合や、体調が不安定だった場合には、あとから本当に本人の意思だったのかと争いになることがあるのです。
公証人が関わっていることは一定の安心材料になるといえます。
ただし、その場で受け答えができていても、あとで医療記録や生活の様子から疑問を持たれると、家族の間で対立が起きることがあります。
とくに、認知症が心配されていた時期や、入退院を繰り返していた時期に作った遺言では、周囲が不安を持ちやすくなるのです。
本人の判断に問題がなかったことを説明しやすい証拠を残しておくと、後のもめごとを抑えやすくなります。
作成経緯に不信感があるため
遺言の内容だけでなく、どうやって作ったのかが不透明だと、不信感が生まれます。
とくに、特定の相続人が準備を主導していた場合には、本人の本音ではなく、誰かが誘導したのではないかと疑われることがあります。
公正証書遺言は信頼性の高い方法です。
しかし、作成の場面を見ていない相続人からすると、不安が残ることがあります。
家族間の仲がもともと良くない場合には、小さな疑念であっても対立が深まりやすくなります。
そのため、誰がどこまで関わったのか、本人が納得して決めた流れだったのかがわかるようにしておくことが大切です。
内容だけでなく、作成までの進め方にも気を配ると、家族間の相続争いを防ぐ対策にもなります。
公正証書遺言があってももめることが多い場面

公正証書遺言があっても、家族の状況しだいでは相続争いが長引きやすくなります。
特にもめやすい場面は、次の通りです。
- 相続人同士の関係がもともと悪い場合
- 財産額が大きい場合
- 特定の相続人へ極端に偏った配分がある場合
こうした事情が重なると、遺言書があるにもかかわらず話し合いが進みにくくなります。
どのような場面でもめやすいのかを、順に見ていきましょう。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、遺言書作成支援や遺産整理サポートを行っております。
公正証書遺言の作成や相続手続きに関してお困りの方は、お気軽にご相談ください。
相続人同士の関係がもともと悪い場合
もともと家族仲が良くないと、遺言の内容がきっかけになって対立が表面化しやすくなります。
長く疎遠だった兄弟姉妹や、昔から気持ちの行き違いがあった家族では、少しの不満でも大きなもめごとにつながるケースがあるのです。
たとえば、遺言の内容そのものに大きな問題がなくても、誰かが親をうまく誘導したのではないか、自分だけ不利にされたのではないか、と疑念が深まることがあります。
信頼関係が弱いと、冷静に話し合う前に感情が先に立ってしまいます。
そのため、家族仲に不安がある場合は、公正証書遺言を作るだけで安心せず、あとで誤解が生まれないように考えておくことが大切です。
財産額が大きい場合
相続する財産が大きいほど、1人あたりの取り分も大きくなるため、主張がぶつかりやすくなります。
少しの配分差でも金額にすると大きくなり、納得を得られにくくなるためです。
また、財産が多い家庭では、預金だけでなく不動産や事業に関わる資産などが含まれることもあります。
すると、何を誰が受け取るのかだけでなく、財産の評価の考え方や過去のお金の動きにまで話が及びます。
話し合う内容が増えるほど、相続人の考えもまとまりにくくなります。
財産額が大きい場合ほど、遺言の内容をわかりやすく整理しておくことが欠かせません。
特定の相続人へ極端に偏った配分がある場合
1人の相続人に大きく偏った分け方になっていると、他の相続人は強い不公平感を抱きやすくなります。
とくに、なぜ偏った分け方にしたのかが不透明だと、不満はさらに増してしまうのです。
たとえば、特定の子だけに多くの財産を残す内容だと、他の家族はなぜ自分は少ないのかと感じやすくなります。
親の介護をしていた、同居して支えていた、といった事情があったとしても、背景が見えなければ納得はしにくいものです。
また、遺言に書かれていない財産があると、まだ他にもあるのではないか、本当に全部示されているのかと疑われることもあります。
偏った配分がある場合は、内容だけでなく、家族がどう受け止めるかまで考えておくことが大切です。
公正証書遺言でもめないようにするコツ

公正証書遺言を作るときは、ただ形式通りに作るだけでは足りません。
あとから家族がもめないようにするには、内容の書き方や残し方まで配慮することが大切です。
意識しておきたい点は、次の通りです。
- 遺言の内容をはっきりさせる
- 付言事項(家族へのメッセージ)で理由を明示する
- 作成時の判断能力を客観的に示す
順に整えていくと、相続が始まったあとの行き違いを減らしやすくなります。
遺言の内容をはっきりさせる
遺言書の内容が具体的でわかりやすいほど、相続人同士で解釈が分かれにくくなります。
あいまいな書き方が残っていると、誰が何を受け取るのかで話が止まり、余計な対立につながります。
特に意識したい点は、次の通りです。
- 財産を具体的に特定する
- 遺留分を意識した配分にする
以下から、それぞれ詳しく見ていきましょう。
財産を具体的に特定する
遺言書では、誰に何を渡すのかをできるだけ具体的に書くことが大切です。
たとえば、次の表のような書き方をすると余計に混乱を招きかねません。
| 不十分な記載例 | 不明確な場合の影響 | 明確に書くなら |
|---|---|---|
| 自宅を長男に渡す | どこまでが対象か判断できず、手続きや解釈で迷いが生じる | 不動産の表示(所在、地番、家屋番号等)を登記事項証明書の通りに正確に記載する |
| ○○銀行の預金 | どの預金を対象とするかで意見が分かれ、話し合いがまとまりにくい | 支店名・口座番号など具体的な口座を明記する |
まずは財産を整理し、漏れなく確認したうえで、遺言書に具体的に書き出しておくことが大切です。
遺留分を意識した配分にする
公正証書遺言を作るときは、分け方に大きな偏りが出ないかも見ておきたいところです。
1人に大きく偏った内容にすると、他の相続人が不満を持ち、金銭の請求に発展することがあります。
偏りがある内容にするなら、どこまでなら無理がないかを先に整理しておくことが大切です。
家族の事情を踏まえながら、もめにくい分け方を目指しましょう。
付言事項(家族へのメッセージ)で理由を明示する
遺言書には、財産の分け方だけでなく、理由や家族への思いを書き添えることが可能です。
法的な効力はなくても、なぜその分け方にしたのかが伝わると、相続人の理解を得られやすくなります。
書くときは、責めるような表現ではなく、感謝や配慮が伝わる言い回しにすることが大切です。
相続人が内容や趣旨を理解しやすい表現にしておきましょう。
作成時の判断能力を客観的に示す
公正証書遺言でも、作った当時に本人がしっかり判断できていたのかを疑われることがあります。
高齢であったり、体調に不安があったりする場合は、あとから争いにならないよう、本人の状態を説明できるようにしておくことが大切です。
たとえば、次のような資料を保管しておくと、もめてしまった時の説明材料になります。
- 医師の診断書
- 作成前後の様子がわかる資料
公証人が関わっている点は安心材料ですが、それだけに頼りきりにしないことも大切です。
公正証書遺言でもめる可能性がある場合の対処法

すでに家族のあいだで意見の食い違いや不信感が見えているなら、遺言を作る前から進め方を決めておくことが大切です。
特に意識したい対処法は、次の通りです。
- 生前に説明する機会を持つ
- 遺言執行者を決めておく
- 生前贈与を踏まえて配分を調整する
ここからは、各対処法を詳しく見ていきましょう。
生前に説明する機会を持つ
遺言の内容を一部の家族しか知らない状態だと、相続のときに不信感が募りやすくなります。
急に知らなかった内容を見せられると、なぜそうなったのか分からず、納得が得られなくなるためです。
とくに、不動産の分け方や、特定の家族に多く残す内容がある場合は、できる範囲で生前に考えを伝えておくと安心です。
遺言書だけでは伝わりにくい思いも、口頭で伝えることで受け止め方も変わってきます。
家族だけで話し合うのが難しい場合は、司法書士や弁護士などの専門家に同席してもらい、整理しながら話し合う機会を設ける方法もあります。
遺言執行者を決めておく
遺言を残すなら、相続のときに手続きを進める人も決めておきたいところです。
遺言執行者がはっきりしていないと、相続人間で意見が衝突したときに、誰が進めるのか決まらず話し合いが停滞してしまいます。
家族間の対立が予想できる場合、相続人の1人が中心になると、ほかの家族が不公平だと感じることがあります。
そうした場合は、司法書士や弁護士などの専門家を遺言執行者に指定しておくことも検討するとよいでしょう。
手続きを任せる人が決まっていれば、遺言の内容に沿って進めやすくなり、相続人間で意見が整わない場面でも、遺言内容の実現に向けて円滑に手続きを進められます。
生前贈与を踏まえて配分を調整する
過去に一部の家族へ資金援助や贈与をしているなら、援助や贈与をした点も踏まえて遺言の内容を考えることが大切です。
遺言書に書かれる取り分だけを見ると公平に見えても、生前にもらっていた分まで考えると、受け止め方が変わることがあります。
たとえば、住宅購入の援助や事業資金の支えなどが特定の家族に偏っていた場合、ほかの家族はすでに差がついていると感じやすくなります。
遺言でもさらに偏った内容を提示されると、不満が募ることが予想されます。
そのため、過去のお金の動きも含めて全体を見渡しながら、分け方を調整していくことが大切です。
公正証書遺言の不安を残さないために現状を整理しよう!

公正証書遺言は、公証人が関わって作るため、形式の不備で無効になりにくく、手続きを進めやすい遺言です。
ただ、公正証書遺言があるからといって、家族のもめごとを必ず防げるわけではありません。
たとえば、次のような事情があると、もめごとに発展する可能性があります。
- 分け方に偏りがある
- 内容が分かりにくい
- 作成時の本人の判断能力に疑問を持たれている
- 作成までの流れに不信感を持たれている
もめごとを防ぐには、次の点を意識して遺言書を作成・見直しましょう。
- 誰に何を残すのか具体的に明示する
- 分け方に無理がないかを確認する
- 分け方の理由も文章として残す
静鉄不動産と専門士業が連携する相続サポートセンターでは、不動産相続に精通した担当者が窓口となり、司法書士・税理士・弁護士などの専門家と協力しながら、相続全体をわかりやすく整理します。
公正証書遺言の確認はもちろん、不動産を含む資産の整理や、相続後の手続きの流れまで見据え、必要な手続きや確認事項を一つひとつ整理しながらご案内いたします。
遺言書や相続に関してご不安のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
不動産しかない相続での遺留分はどう考えるべき?計算や注意点、請求の進め方まで徹底解説!
2026.04.08
不動産しかない相続では、遺留分の扱いに悩むケースが少なくありません。
現金のようにそのまま分けられないため、誰がどのように負担するのかが問題になりやすいからです。
遺留分の計算方法や請求の進め方を理解していないと、相続人同士のトラブルに発展する可能性もあります。
また、不動産の評価方法や支払条件によって、最終的な負担額が変わる点にも注意が必要です。
この記事では、不動産のみの相続における遺留分の考え方から、計算方法や注意点、請求の進め方まで解説します。
私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、相続の状況整理や不動産に関する手続きの進め方についてご相談を承っております。
まずは、現在の状況や必要な手続きを整理するところから確認していきましょう。
記事監修者
司法書士 川上直也
当センターの受付を担当しております。
司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。
ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
不動産しかない相続における遺留分の計算方法

相続財産が家や土地だけでも、遺留分は金額で整理します。
不動産をそのまま分ける話と、遺留分の金額を出す話は別なので、まずは計算の順番を落ち着いて押さえることが大切です。
相続開始時の価値を基に全体の取り分を求め、各相続人の割合と掛け合わせる流れは、次の通りです。
- 遺留分算定の基礎となる財産額を確定する
- 各相続人の法定相続分を確定する
- 法定相続分に遺留分割合を掛ける
不動産の評価と生前贈与の扱いは計算の母体になるため注意が必要です。
ここからは、各段階について詳しく見ていきましょう。
1:遺留分算定の基礎となる財産額を確定する
最初にするのは、遺留分の計算の土台になる財産総額を決めることです。
不動産しかない場合は、家や土地がいくらになるかが出発点になります。
ここが決まらないままでは、遺留分がいくらになるのかも決まりません。
実際には、亡くなった時点での不動産の価値を基に考えます。
ただし、固定資産税評価額や路線価をそのまま当てはめればよいわけではありません。
税金の計算で使う金額と、実際に売買される金額は同じとは限らないためです。
そのため、遺留分の算定においては、実務上、相続開始時における時価(客観的な交換価値)に基づき評価を行います。
また、家や土地の金額だけを確認して終わりではありません。
住宅ローンなどの債務が残っているなら、その分もあわせて確認しましょう。
不動産の評価額だけで判断してしまうと、実際の計算とずれてしまうためです。
さらに、生前贈与がある場合は、内容や時期によって計算に入るものと入らないものがあります。
不動産しかない相続ほど、こうした前提整理が必要です。
【注意】計算対象に含めない財産
不動産しかない相続では、「家や土地の価値だけを見て計算すればよい」と考えがちです。
しかし実際には、過去の贈与や支出の内容によっては、遺留分の計算に影響することがあります。
とはいえ、すべての贈与やお金の動きが計算対象になるわけではありません。
あらかじめ「含めるもの」と「含めないもの」を整理しておくことで、不要な混乱を避けることができます。
基礎財産に含まれないことが多い例は、次の通りです。
- 相続人に対する、相続開始前10年間になされた贈与
- 扶養の範囲の支出
- 特別受益に当たらない軽微な移転
ここから、個別に詳しく確認していきましょう。
相続人に対する、相続開始前10年間になされた贈与
相続人への贈与は、すべてが遺留分の計算に入るわけではありません。
まず見ておきたいのは、誰に対する贈与かという点です。
相続人への贈与は、原則として相続開始前10年以内で、しかも婚姻、養子縁組、生計の土台になるようなまとまった援助として受けたものが計算の対象になります。
そのため、かなり前の贈与まで一律にさかのぼって算入されるわけではなく、過去の援助がすべて計算対象になるとは限りません。
不動産しかない相続では、住宅取得資金の援助などが問題になりやすいです。
一方で、時期が古いものや、遺留分の計算に入る種類に当たらないものは、対象外になることもあります。
過去の援助を話題にする際は、古いか新しいかだけでなく、相手が相続人か、どのような目的の贈与だったかまで整理して見ていくことが大切です。
第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。
当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。
)」とする。
引用元:民法 | 民法第1044条
扶養の範囲の支出
親が子の生活費や学費を負担していた場合でも、そのすべてが遺留分の計算に影響するわけではありません。
通常の生活費や一般的な学費は、扶養の範囲として扱われ、遺留分の算定には含まれないことが多いです。
不動産しかない相続では、現金のやり取りが少ない分、こうした支出が争点になりやすい傾向があります。
ただし、金額が高額であったり、長期間にわたっていたりする場合には、単なる扶養とはいえないケースもあるため注意が必要です。
名目だけで判断せず、実態に基づいて検討することが大切です。
特別受益に当たらない軽微な移転
家族間での祝い金や小遣いなど、日常的な金銭のやり取りは珍しくありません。
こうした軽微な金銭の移転まで、すべて遺留分の計算に含めるわけではありません。
社会通念上、通常の範囲といえるものであれば、特別受益には当たらず、遺留分の算定から外れることが一般的です。
不動産しかない相続では、現金の話が少ないため、こうした細かなやり取りが問題視されることがありますが、すべてを遡って検討する必要はありません。
まずは、その金額や性質が「相続の前渡し」といえる規模なのかを見極めることが重要です。
2:各相続人の法定相続分を確定する
次に、相続人ごとの法定相続分を確認しましょう。
ここでは、実際に家や土地を誰が取るかではなく、法律上どの割合になるのかだけを見ることになります。
不動産しかない相続では、実際に居住していた人が不動産を取得する話と、法律上の取り分が混同されやすいため、いったん切り分けて考えることが大切です。
まず確認したいのは、誰が遺留分を持つ立場なのかです。
兄弟姉妹には遺留分がないため、相続人ではあっても遺留分の請求ができるとは限りません。
配偶者や子、場合によっては親が対象になります。
相続人の組み合わせによって割合は変わるので、最初に家族関係を整理しておくと、その後の計算が進めやすくなります。
3:法定相続分に遺留分割合を掛ける
財産総額と法定相続分がわかったら、最後に遺留分の割合を掛けて、各人の遺留分を金額で見ていきましょう。
ここで初めて、「最低限どのくらいの取り分になるのか」が具体的に見えてきます。
考え方は、まず相続全体に対する遺留分の割合を出し、そのうえで各人の法定相続分に応じて分ける流れです。
たとえば、配偶者と子が相続人なら、全体の遺留分を分け合う形になります。
不動産しかない相続でも、計算の流れ自体は同じです。
ただし、ここで出た金額がそのまま請求額になるとは限りません。
すでに受け取っている財産があるか、相続で別に取得するものがあるか、負担する債務があるかによって、最終的な金額は変わります。
不動産しかない相続では、評価額だけでなく、誰が何を受け取り、何を負担するのかまで見て、最後に請求額を整理することが大切です。
不動産のみでも遺留分支払いは現金のみ!注意しておきたいポイント

不動産しかない相続では、「家や土地をそのまま渡せば済む」と考えられがちです。
しかし、遺留分は原則として金銭で清算する(金銭債権となる)ことになります。
家や土地そのものの取得とは別に、遺留分ではまず金銭でいくら支払うのかを整理することになります。
特に押さえたい点は、次の通りです。
- 不動産そのものを渡す義務はない
- 支払資金がない場合は売却することになる
- 誰が払うか間違えないようにする
以下から、順番に詳しく見ていきましょう。
不動産そのものを渡す義務はない
遺留分を請求されたとしても、請求された側が家や土地の持分をそのまま渡さなければならないわけではありません。
基本は、お金で清算する形です。
つまり、請求する側にとって大事なのは「不動産をもらうこと」ではなく、「支払うべき金額をはっきりさせること」です。
請求を受けた側も、「不動産しかないから対応できない」と考えるのではなく、「お金をどう準備するか」を考えなくてはなりません。
当事者同士で合意ができれば、不動産の一部を渡す形で解決することもあります。
しかし、このような解決ができるのは、話し合いで合意できたときに限られます。
最初から現物を渡す義務があるわけではありません。
支払資金がない場合は売却することになる
遺留分はお金で支払うため、手元に現金がなければ資金を用意しなければなりません。
不動産しかない相続では、家や土地を売って支払資金を作ることが現実的な方法になる場面があります。
特に、預貯金がほとんどない場合は、売却を視野に入れて考える必要が出てきます。
ただし、すぐに売るしかないと決まるわけではありません。
受遺者が金銭を直ちに準備できない場合には、裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることができます。
また、事情によっては支払時期を調整しながら進めることもあります。
自宅が含まれているなら、生活への影響も大きいため、売却するかどうかは慎重に考える必要があります。
遺言に「不動産を1人に渡す」と書かれていても遺留分は請求できる
遺言で「家は長男に相続させる」「土地は配偶者に相続させる」と書かれていても、遺留分までなくなるわけではありません。
最低限の取り分を持つ相続人であれば、内容によっては遺留分を請求できます。
不動産を1人に集める遺言があっても、そのまま絶対に通るとは限らないということです。
ただし、請求には期限があります。
遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年、または相続開始から10年で行使できなくなります。
話し合いでまとまらないときは、請求する意思をきちんと相手に伝えることが大切です。
不動産しかない相続では、評価額や支払い方法でもめやすいため、早めに動いておくほうが安心です。
誰が払うか間違えないようにする
遺留分の支払いは、相続人なら誰でも払うという話ではありません。
実際には、遺言や贈与で利益を受けた人が負担する形になります。
相手を取り違えると、話し合いも請求も遠回りになりやすいため、最初に整理しておきたいところです。
負担の順番は、次の通りです。
- 遺贈を受けた者が先に負担する
- 生前贈与を受けた者が後順位で負担する
- 複数人が受け取っている場合は価額割合で負担する
以下から、詳しく見ていきましょう。
遺贈を受けた者が先に負担する
遺言で利益を受けた人がいるなら、贈与を受けた者より先に負担するのが原則です。
不動産しかない相続では、「家を長男に相続させる」「土地を配偶者に相続させる」といった形が多いため、不動産を受け取った人がまず支払う立場になることがよくあります。
そのため、遺留分の話になったときは、「いま名義を持っているのは誰か」だけでなく、「遺言で利益を受けたのは誰か」を確認することが大切です。
請求する側も、まず誰に請求すべきかを整理しておくことが大切です。
生前贈与を受けた者が後順位で負担する
遺言で財産を受け取った人だけでは足りないときに、生前贈与を受けた人の負担が問題になります。
つまり、順番としては、まず遺言で受け取った人を見て、その次に生前贈与を受けた人へ進む形です。
ただし、生前贈与なら何でも対象になるわけではありません。
遺留分の計算に入る贈与かどうかを見たうえで考える必要があります。
昔の小さな援助まで当然に負担対象になるとは限らないため、そうした点は切り分けて整理することが大切です。
複数人が受け取っている場合は価額割合で負担する
財産を受け取った人が1人ではない場合、誰がどれだけ負担するかを分けて考える必要があります。
不動産しかない相続では、「自宅は配偶者」「別の土地は長男」というように、複数の人が別々に受け取ることも珍しくありません。
複数の人が別々に受け取る場合は、受け取った財産の価値に応じて負担額を分けることになります。
ここで難しくなるのが、不動産の評価額です。
どの不動産をいくらで見るかが決まらないと、誰がどれだけ負担するかも決まりません。
負担の話と評価額の話は別々ではなく、同時に整理していく必要があります。
協議がまとまらないときほど、まず不動産の評価方法をそろえることが大切です。
不動産しかない遺留分相続における請求までの進め方

不動産しかない相続で遺留分を請求する場面では、感情だけで進めると話がこじれやすくなります。
大切なのは、順番を決めて整理しながら進めることです。
進め方の全体像は、次の通りです。
- 財産目録を確定させる
- 遺留分侵害額を計算する
- 内容証明で請求意思を示す
それぞれの進め方を、以下から詳しく見ていきましょう。
なお、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、財産目録の整理や遺留分に関する手続きの進め方についてご相談を承っております。
迷いがある場合は、無料相談をご利用ください。
財産目録を確定させる
まず行いたいのは、相続財産の内容をきちんと見える形にすることです。
不動産しかない相続では、家や土地の内容と評価額がはっきりしていないと、遺留分の計算も話し合いも進みません。
確認したいのは、不動産の所在地や地番、建物の内容、持分の有無、担保が付いているかどうかといった基本事項です。
あわせて、住宅ローンなどの残りがあるなら、そうした金額も整理しておく必要があります。
不動産の価値だけを見て進めると、あとから話がずれる原因になります。
財産目録は、単なる一覧表ではありません。
あとで争いになりそうな点を早めに洗い出すための土台です。
不動産しかない相続ほど、最初の整理が甘いと、その後の話し合いが長引きやすくなります。
遺留分侵害額を計算する
財産の内容が固まったら、次は遺留分侵害額を計算しましょう。
ここで注意したいのは、最低限の取り分を出すだけでは足りないという点です。
実際にいくら請求するのかを考えるには、相手方がどれだけ財産を受け取り、請求する側がどれだけ受け取っているのかまで見なければなりません。
不動産しかない相続では、遺言で1人が家や土地をまとめて受け取り、他の相続人がほとんど取得しない形になりやすいです。
そうした場合、請求する側の取り分が少なくなり、請求額が大きくなることがあります。
反対に、請求を受ける側は、自分がどの財産を受け取り、どこまで負担する立場なのかを整理しておくことが大切です。
金額を曖昧なまま話し合いに入ると、感覚のずれだけが大きくなります。
不動産の評価額、各人の取得分、負債の有無までそろえてから計算することで、話し合いの土台が整います。
内容証明で請求意思を示す
請求額の整理ができたら、次は請求する意思を相手にはっきり伝えましょう。
ここで大切なのは、ただ口頭で伝えるだけで終わらせないことです。
不動産しかない相続では、評価額や支払い方法で争いになりやすいため、いつ、誰に、どのような内容で請求したのかを残しておく必要があります。
そこで使われることが多いのが内容証明です。
内容証明を送っておくと、請求した事実を後から確認しやすくなります。
話し合いがまとまらず、あとで調停や裁判に進んだ場合でも、最初にどのような請求をしたのかを示しやすくなります。
また、遺留分の請求は、いつまでもできるわけではありません。
不動産しかない相続では、「評価がまだ決まらないから」と先送りにしがちです。
しかし、動き出しが遅れると不利になりやすいです。
まずは財産を整理し、請求額を固め、期限を意識しながら意思表示まで進めることが大切になります。
不動産しかない相続で遺留分が問題になる場合は早めに整理しよう!

不動産しかない相続で遺留分が問題になると、家や土地をどう分けるかだけでは済みません。
まず財産の全体像を確認し、次に相続人ごとの取り分を整理し、そのうえで遺留分の金額を見ていく流れになります。
順番を飛ばしてしまうと、協議の途中で前提がずれやすくなります。
また、今の遺留分は、不動産そのものを返してもらう話ではなく、お金で清算するのが基本です。
そのため、不動産しかない場合は「いくらになるのか」だけでなく、「そのお金をどう用意するのか」まで考えなければなりません。
すぐに現金を準備できないケースでは、売却を考える場面もあります。
また、支払い時期を調整しながら進めることもあります。
さらに注意したいのは、遺言があっても遺留分の話が終わるとは限らないことです。
請求できる立場にある人が期限内に動けば、遺留分を求める話は残ります。
一方で、気になりながら対応を先送りすると、後に請求や協議を進めにくくなることがあります。
不動産しかない相続では、評価額の見方、誰が負担するのか、共有のままにしてよいのかなど、つまずきやすい点がいくつもあるのです。
このような理由から、一人で判断を急がず、まず前提を整理することが大切です。
静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、不動産の把握や評価、相続手続きの進め方に加え、遺留分に関するご相談も承っています。
お悩みの方は、まずは無料相談をご利用ください。
