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空き家を相続放棄するには?期限や手続き後の注意点を解説

2026.07.30

空き家だけを相続放棄することはできません。

相続放棄とは、預貯金や不動産などの財産だけでなく、借金などの負債も含め、亡くなった方の権利や義務を原則としてすべて引き継がないための手続きです。

原則として、自分が相続人になったと知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きを行います。

相続放棄の時点で空き家を現に占有している場合は、放棄後も保存義務が残ることがあるため、財産や借金、親族への影響も確認しましょう。

この記事では、空き家を相続放棄する期限や手続き、放棄後の注意点について解説します。

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記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

空き家の相続放棄の手続きは3か月以内のみ可能!例外はなし?

相続放棄の期限は、亡くなった日から一律に3か月と決められているわけではありません。

原則として、自分が相続人になったことを知ったときから3か月以内に手続きを行います。

たとえば、亡くなった方の子ども全員が相続放棄すると、親や祖父母などの直系尊属が相続人となり、直系尊属がいない場合や全員が相続放棄した場合には、兄弟姉妹が相続人となることがあります。

そうした場合は、自分が相続人になったことを知ったときから期限を数えるのが一般的です。

相続放棄は、空き家だけを手放す手続きではありません。

預貯金や土地などの財産だけでなく、借金や未払い金などの負担も含め、亡くなった方の権利や義務を原則としてすべて引き継がないための手続きです。

手続きは、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。

相続放棄には、相続放棄申述書や戸籍謄本、亡くなった方の住民票除票などが必要です。

ただし、必要書類は相続人の立場によって異なります。

そのほか、相続放棄について押さえておきたいポイントは、次の通りです。

  • 判断が間に合わないときは期間伸長を申し立てる
  • 一度受理されると原則として撤回できない

以下からは、それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。

判断が間に合わないときは期間伸長を申し立てる

相続財産を調べても、3か月以内に相続放棄をするかどうか決められない場合は、期限が過ぎる前に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てることができます。

財産調査に時間がかかるケースは、次の通りです。

  • 預貯金や借入金の全体像が分からない
  • 空き家の価値や売却できるかどうかを確認している
  • 住宅ローンや担保権の有無を調べている
  • 未払いの税金や保証債務がないか確認している
  • 相続人が多く、財産に関する資料が集まらない

期間伸長は、期限を過ぎてから申し出る制度ではありません。

「3か月以内に調査が終わらない可能性がある」と分かった段階で、早めに準備することが大切です。

申立てを行えば必ず希望する期間まで延長されるわけではなく、財産の内容や調査の状況などを踏まえて家庭裁判所が判断します。

そのため、空き家の登記や査定額、固定資産税、借入金などを早い段階から確認し、相続放棄・単純承認・限定承認のどれを選ぶか考えましょう。

限定承認とは、相続によって得た財産の範囲内で、被相続人の債務を負担する方法です。

借金の総額が分からないものの、価値のある空き家や残したい財産がある場合に選ばれることがあります。

ただし、共同相続人が複数いる場合は原則として全員で行う必要があり、手続きや税務処理も複雑です。

亡くなった方に相続財産がまったくないと信じ、そのように信じたことに相当な理由があった場合などには、例外的に、相続財産の存在を認識した時などから3か月以内の申述が受理される可能性があります。

ただし、期限後の申述が認められるかどうかは個別の事情によって異なります。

単なる確認不足や手続きの放置でも認められるとは限らないため、請求書や督促状が届いた場合は、速やかに専門家や家庭裁判所へ相談することが重要です。

一度受理されると原則として撤回できない

相続放棄は、家庭裁判所へ申述し、受理される必要があります。

ただし、受理されたからといって、申述前後の財産処分などを理由に、債権者から相続放棄の効力を争われる可能性が完全になくなるわけではありません。

一度受理されると、原則として自由に撤回することはできません。

相続放棄をした後に、多額の預貯金や売却できる土地が見つかったとしても、「経済的に不利だった」という理由だけで元に戻すことは困難です。

また、相続放棄では、一部の財産だけを選んで手放すこともできません。

たとえば、「管理が難しい空き家は放棄し、預貯金だけは受け取る」といった選択はできないため注意が必要です。

詐欺や強迫など、法律上の取消事由がある場合には別の対応が必要です。

しかし、単なる判断の変更による撤回とは異なります。

相続放棄を申し立てる前に確認したい財産や負担は、次の通りです。

  • 空き家や土地の査定額
  • 預貯金や株式などの金融資産
  • 自動車や貴金属などの財産
  • 生命保険の契約内容や死亡保険金の受取人
  • 借入金や住宅ローン
  • 未払いの税金や医療費
  • 連帯保証や保証債務
  • 空き家の解体費や今後の維持管理費

空き家の管理負担だけを見て判断するのではなく、プラスの財産とマイナスの財産を含めた相続財産全体を確認したうえで、相続放棄をするか慎重に決めることが大切です。

空き家を相続放棄する場合の注意点

空き家の相続放棄での主な注意点は、次の通りです。

  • 放棄時に空き家を管理していると保存義務が残る場合がある
  • 空き家放置は近隣トラブル・損害賠償につながる
  • 遺産を処分すると相続放棄できなくなるおそれがある
  • 保存義務から離れるには「引き渡し」が必要
  • 空き家以外の財産、親族への影響を考慮する必要がある

以下からは、それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続人調査・財産調査・税金・不動産の売却や管理まで、専門士業と連携してサポートします。

「空き家を放棄するべきか」「相続して処分するべきか」など、状況に応じた方向性をご提案しますので、ぜひ一度ご相談ください。

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放棄時に空き家を管理していると保存義務が残る場合がある

相続放棄の時点で空き家を現に占有している方には、保存義務が残る場合があります。

相続放棄後に保存義務を負うのは、原則として、相続放棄をした時点で空き家を現に占有していた方です。

空き家が相続財産に含まれているというだけで、相続放棄をしたすべての人に保存義務が生じるわけではありません。

保存義務は、ほかの相続人や相続財産清算人に空き家を引き渡すまで続きます。

<===

(相続の放棄をした者による管理)

第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

引用元:民法第940条

===>

民法第940条の「現に占有している」とは、単に相続財産に空き家が含まれているというだけではありません。

実際に住んでいる、自分の家財を置いて継続的に使用しているなど、空き家を事実上支配している状態が該当する可能性があります。

ただし、鍵を持っていることや出入りしていることだけで、直ちに「現に占有している」と判断されるわけではありません。

占有していると判断される可能性の目安は、ケース別に示すと次の表の通りです。

状況補足・注意点
亡くなった親と同じ家に住んでいた相続放棄の時点でも住み続けていた場合や、自分の家財を置いて継続的に使用していた場合は、現に占有していると判断される可能性がある
空き家の鍵を持ち、自由に出入りしていた・鍵を持っていることだけで、直ちに占有していると判断されるわけではない
・実際の出入りの頻度や使用状況、管理の実態などを踏まえて判断される
定期的に掃除・換気・郵便物の確認をしていた継続的に出入りして空き家を管理していた事情は、占有の有無を判断する際の要素になる可能性がある(ただし、掃除や換気をしていたことだけで占有に当たるとは限らない)
遠方に住み、長年出入りも管理もしていなかった・鍵や自分の家財を持たず、実際に使用・管理していなかった場合は現に占有しているとは判断されない可能性がある(ただし、結論は個別の事情によって異なる)

鍵を返却しただけで、必ず保存義務がなくなるとは限りません。

自分の家財が残っているか、自由に出入りできる状態だったか、修繕費や管理費を負担していたかなど、複数の事情から判断されます。

相続放棄を検討している場合は、空き家をどのように使用・管理してきたかを時系列でまとめて、専門家に伝えることが大切です。

空き家放置は近隣トラブル・損害賠償につながる

空き家を管理せずに放置すると、屋根材や外壁の落下、塀の倒壊、庭木の越境、害虫や悪臭の発生、不法侵入など、周辺にさまざまな影響を及ぼすおそれがあります。

建物や塀などが倒れて通行人や隣家に被害を与えた場合は、空き家を管理していた人の対応や過失の有無によって、損害賠償責任が問題になることもあります。

また、相続放棄後であっても、空き家を現に占有している場合は、行政から管理者として対応を求められる可能性もあるのです。

建物が著しく危険な状態にある場合には、自治体から指導や勧告、命令などを受けることもあります。

ただし、相続放棄をした方が空き家を占有しておらず、保存義務も負わない場合まで、当然に解体費や管理費を負担するわけではありません。

誰が所有者や管理者に当たるかは、相続状況や空き家の管理実態を踏まえて確認する必要があります。

相続放棄を検討している段階でも、実際に空き家を管理しているのであれば、施錠や危険箇所の確認など、周辺への被害を防ぐための最低限の対応は必要です。

遺産を処分すると相続放棄できなくなるおそれがある

相続放棄を検討している間に相続財産を処分すると、相続を承認したとみなされ、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。

注意したい行為は、次の通りです。

  • 空き家や土地を売却する
  • 空き家を解体する
  • 家財や貴金属を売却する
  • 亡くなった方の預金を自分の生活費に使う
  • 高額な遺品を親族で分ける
  • 相続財産を自分の所有物として処分する

家庭裁判所に相続放棄の申述が受理された後でも、相続放棄以前に財産を処分していたことが分かった場合は、債権者などから相続放棄の効力を争われる可能性があります。

一方で、財産の価値や安全を保つための対応は、保存行為として認められる場合があります。

たとえば、雨漏りの応急処置や施錠の確認、倒れそうな物の移動などです。

ただし、保存行為と処分行為の境界ははっきりしているわけではありません。

工事の規模や目的、費用によって判断が変わります。

空き家の解体、大規模な修繕、遺品整理、預金の払戻しなどを行う前に、専門家へ確認することが重要です。

保存義務から離れるには「引き渡し」が必要

相続放棄をした時点で空き家を現に占有している場合、相続放棄が認められただけでは保存義務が終わらないことがあります。

保存義務から離れるには、空き家をほかの相続人または相続財産清算人へ引き渡す必要があります。

ほかの相続人が空き家を引き継ぐ場合にまとめて渡したいものは、次の通りです。

  • 空き家の鍵
  • 登記や固定資産税に関する書類
  • 修繕や管理の履歴
  • 建物の破損や雨漏りなどの状況
  • 郵便物や近隣対応に関する情報

いつ、誰に、何を引き渡したかを書面やメールなどで記録しておくと、後日のトラブルを防ぎやすくなります。

すべての相続人が相続放棄をして相続人がいなくなった場合は、利害関係人などが家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる方法があります。

相続財産清算人の役割は、残された財産の管理や債務の支払い、財産の清算などです。

ただし、相続財産清算人は自動的に選任されるわけではありません。

申立てには、手数料や郵便料がかかります。

事案によっては、清算人の報酬や管理費に充てる予納金も必要です。

そのため、相続放棄をすれば費用や管理負担が必ずなくなるとは限りません。

空き家の占有状況やほかの相続人の有無を確認し、引き渡しまでの方法を考えておくことが大切です。

空き家以外の財産、親族への影響を考慮する必要がある

相続放棄では、空き家だけを選んで手放すことはできません。

相続放棄をすると、亡くなった方の権利と義務を原則としてすべて引き継ぎません。

対象には、預貯金や土地などの資産だけでなく、借金や未払い税金などの負債も含まれます。

相続放棄をする前に確認したい主な項目は、次の通りです。

  • 空き家と土地の査定額
  • 預貯金や有価証券
  • 自動車や貴金属などの財産
  • 借入金や住宅ローン
  • 未払いの税金や医療費
  • 連帯保証や保証債務
  • 空き家の固定資産税や管理費
  • 修繕費や解体費
  • 売却した場合に残る金額

古い空き家でも、場所や広さ、道路への出入りのしやすさによっては売れることがあります。

相続放棄を決める前に、家や土地の値段と、今後かかるお金を比べましょう。

配偶者は原則として常に相続人となり、子が全員放棄すると親や祖父母、次に兄弟姉妹へ移り、亡くなった兄弟姉妹の子である甥・姪が継ぐ場合もあります。

相続放棄が認められたら、空き家や借金の内容を次の相続人へ早めに伝え、後の請求や親族同士の争いを防ぎましょう。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、専門家と連携して調査、査定、売却、管理、税金、登記を支援しています。

空き家を相続放棄するべきか、相続したうえで売却するべきか迷っている方は、お問い合わせフォームからご相談ください。

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空き家を相続放棄すべきケース・急がないほうがよいケース

空き家を相続放棄するかどうかは、建物の状態だけで決めるものではありません。

預貯金や借金を含めた財産全体の収支、空き家の売却可能性、管理にかかる費用、ほかの相続人への影響などを確認したうえで判断する必要があります。

相続放棄すべきケース・急がずに査定や親族間の話し合いを進めたほうがよいケースは、それぞれ次の表の通りです。

何を見るか相続放棄すべきケース相続放棄を急がないほうがよいケース
財産全体借金や未払い金が資産を明らかに上回り、空き家を売却しても返済しきれない預貯金や有価証券などを含めると、資産が負債を上回る可能性がある
空き家が売れそうか建物と土地の需要が乏しく、売却費用を差し引くと手元にお金が残りにくい建物が古くても土地としての需要があり、現状のまま売却できる可能性がある
維持費・処分費固定資産税、草刈り、修繕、測量、解体などの費用が、売却見込額に比べて大きい売却までの維持費を負担でき、売却後に一定の金額が残る見込みがある
管理できる人がいるか遠方に住んでおり、家族にも管理を頼めず、管理会社へ委託する費用も負担しにくい家族や管理会社へ、一時的な見回りや草刈り、近隣対応を任せられる
家族の使い道親族が住む、貸す、事業に使うなどの予定がなく、費用負担についても合意できない親族の居住や賃貸など、具体的な活用予定がある
親族への影響ほかの相続人も財産状況を確認したうえで、相続放棄を検討しているほかの相続人が取得や売却を希望し、引き継ぐ準備が整っている

このように借金や管理費が重く、売却や活用も難しいなら、相続放棄を考える余地があります。

ただし、預貯金を含む財産全体、土地の売値、今後の費用、親族への影響を期限内に調べてから判断してください。

空き家の負担を減らす方法には、相続放棄のほか、空き家を相続したうえで行う売却、親族への譲渡、賃貸や、一定の要件を満たす土地を国庫へ帰属させる制度があります。

解体して更地にしても土地は手放せず、解体費に加えて税金が上がる場合があるため、更地化だけで決めないようにしましょう。

空き家を相続放棄する以外で負担を減らす方法

空き家の負担を減らす方法は、相続放棄だけではありません。

空き家を相続したうえで、物件の状態や立地、親族の意向などに応じて、売却や賃貸などを選ぶこともできます。

なお、相続放棄が受理された方は、原則として空き家の所有者ではなくなります。

相続放棄をした方は、初めから相続人でなかったものとみなされるためです。

そのため、相続放棄をした後に、空き家を売却したり、贈与したり、貸し出したりすることはできません。

空き家の負担を減らす主な方法は、次の通りです。

  • 寄付
  • 贈与・売却
  • 賃貸
  • 相続土地国庫帰属制度で国に引き渡す

以下からは、それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

寄付

空き家や土地を、自治体、公益法人、地域団体、隣地の所有者などへ寄付できる場合があります。

ただし、寄付は一方的に行えるものではなく、相手方の承諾が必要です。

寄付を申し出ても、必ず受け入れてもらえるとは限りません。

受入れの判断で確認される点は、次の通りです。

  • 建物や土地に利用価値があるか
  • 抵当権など第三者の権利が付いていないか
  • 隣地との境界が明確になっているか
  • 道路に接しているか
  • 建物の老朽化が進んでいないか
  • 修繕費や解体費がどの程度かかるか
  • 将来の維持管理に負担が生じないか

特に、老朽化した空き家が残っている場合は、受け取る側に管理費や解体費がかかるため、寄付を断られることもあります。

寄付は、費用をかけずに簡単に手放せる方法ではありません。

まずは自治体や関係団体へ、建物付きのまま受け入れてもらえるか、解体が必要か、登記費用などを誰が負担するかを確認しましょう。

贈与・売却

空き家を親族や近隣住民、事業者などへ贈与したり、売却したりする方法があります。

建物が古く、そのままでは住みにくい場合でも、土地として需要があれば売却できる可能性があります。

また、買い手が修繕や解体を行うことを前提として、現状のまま売却できるケースもあるのです。

贈与や売却を行うときに確認したい点は、次の通りです。

  • 土地や建物の査定額
  • 建物を残したまま売れるか
  • 解体後に売る場合の費用と査定額
  • 接道状況や再建築の可否
  • 土地の境界
  • 家財や残置物の処分費用
  • 抵当権などの権利関係

相続した空き家を売ったり贈ったりするには、まず相続人を確かめましょう。

相続人が複数いる場合は、遺産分けを話し合うことが必要です。

その後、受け継ぐ方の名義で相続登記をしましょう。

共有名義の空き家をすべて売る場合は、原則として全員の同意が必要です。

空き家バンクでも相手が見つかるとは限らないため、不動産会社の査定や仲介と比べて決めましょう。

賃貸

空き家の状態や立地が良く、必要な修繕を行えば使用できる場合は、住宅や店舗として貸し出す方法があります。

賃貸にすると家賃収入を得られる可能性があります。

しかし、所有権はそのまま残るため、管理を続けなくてはなりません。

そのため、空き家に関するすべての負担から離れられるわけではないのです。

賃貸後も必要になる対応は、次の通りです。

  • 固定資産税の支払い
  • 建物や設備の修繕
  • 入居者の募集
  • 賃貸借契約の管理
  • 入居者や近隣住民からの問い合わせ対応
  • 退去後の原状回復
  • 空室期間中の維持管理

貸す前に、雨漏り、地震への強さ、水道や電気、害虫、残された荷物を調べ、修理代と家賃収入を比べましょう。

修理代の回収に長くかかるなら、売却のほうが負担を減らせる場合があります。

なお、農地付きの空き家を貸し出す場合や民泊として活用する場合は、農地法などの別の手続きや届出、消防設備の確認なども欠かせません。

相続土地国庫帰属制度で国に引き渡す

相続、または相続人への遺贈によって取得した土地は、一定の条件を満たせば、相続土地国庫帰属制度によって国へ引き渡せる場合があります。

ただし、相続土地国庫帰属制度の対象は土地のみです。

<===

 A 建物がある土地

 建物は、一般に管理コストが土地以上に高額であること、また、老朽化すると、管理に要する費用や労力が更に増加するだけでなく、最終的には建替えや取壊しが必要になるため、承認申請を行うことができません。

(以下略)

引用元:法務省|相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件

===>

空き家などの建物が残っている土地は、そのままでは申請できません。

建物を解体した場合でも、申請できない土地や、審査の結果として承認されない可能性がある土地は、次の通りです。

  • 抵当権など第三者の権利が付いている土地
  • 境界や所有権について争いがある土地
  • 土壌汚染や埋設物がある土地
  • 管理に費用がかかる崖地
  • 他人が通路などとして使用している土地
  • 通常の管理や処分が難しい土地

建物を壊しても、土地を必ず国へ引き渡せるとは限らず、解体後に対象外となる場合もあります。

申請には審査手数料がかかり、承認後は土地の種類や広さに応じた負担金も納めることになります。

国への引き渡しを考えるなら、解体前に登記簿、公図、境界資料、現地写真をそろえ、土地を管轄する法務局へ相談しましょう。

空き家の相続放棄で後悔しないよう、事前に専門家へ相談しよう!

相続放棄を考えるなら、期限、財産全体、空き家の価値と管理状況、次の相続人への影響を確認し、売却、寄付、賃貸とも比べましょう。

放棄前に空き家を解体したり家財を処分したりすると、単純承認したものとみなされるおそれがあるのです。

相続放棄の時点で空き家を現に占有していた方は、ほかの相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで保存義務を負います。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、空き家相続に関する調査、登記、遺産分割、査定、売却、管理をサポートしています。

相続放棄をするべきか、空き家を相続したうえで売却や活用を進めるべきか迷っている場合でも、財産を処分する前に、お問い合わせフォームからのご相談をお気軽にご利用ください。

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相続放棄は司法書士に依頼すべき?メリットや費用、流れを徹底解説

2026.07.30

相続放棄は、亡くなった方の財産も借金も受け継がないようにするために、家庭裁判所に申述する手続きです。

原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、財産や借金を調べ、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれを選ぶか判断します。

3か月以内に財産や借金を調べても判断できない場合は、期間が過ぎる前に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てましょう。

この記事では、相続放棄について、司法書士に依頼すべきか、依頼する場合のメリットや費用、流れを解説します。

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司法書士 川上直也

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相続放棄は司法書士に依頼するべき?

相続放棄は、本人が家庭裁判所へ申し立てることもできるため、必ず司法書士に依頼しなければならないわけではありません。

ただし、手続きには相続放棄申述書の作成や戸籍謄本などの収集が必要です。

必要書類は、配偶者、子、親、兄弟姉妹など、亡くなった方との関係によって異なります。

書類に不備があると、家庭裁判所から補正や追加提出を求められることがあります。

相続放棄には原則として3か月以内という期限があるため、書類の準備に不安がある方や期限が迫っている方は、早めに司法書士へ相談するとよいでしょう。

司法書士には、家庭裁判所へ提出する書類の作成や、相続放棄に必要な戸籍の収集を依頼できます。

一方、相続人同士で対立している場合や、債権者との交渉が必要な場合、相続放棄の有効性が争われる可能性がある場合は、弁護士への相談が適しています。

相続放棄の書類作成や戸籍収集を依頼したい場合は司法書士、相続人や債権者との争いがある場合は弁護士に相談するのが基本です。

相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は自分で手続きすることもできます。

しかし、戸籍の収集や申述書の作成、家庭裁判所への提出準備など、慣れていない方には負担がかかる手続きです。

特に、相続放棄には原則として3か月以内という期限があるため、書類の不足や記載ミスで時間を失わないように進めることが大切になります。

相続放棄を司法書士に依頼する主なメリットは、次の通りです。

  • 必要書類の収集・確認を任せられる
  • 申述書の作成を任せられる
  • 書類不備による手続きの遅れを防ぎやすい
  • 複数人の相続放棄も整理しやすい

ここからは、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

相続財産の中に家や土地がある場合は、相続放棄をする前に、不動産の価値や管理にかかる負担を確認しておくことが大切です。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、静岡県中部・東部の不動産ネットワークと専門士業の連携により、不動産を含む相続をサポートします。

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必要書類の収集・確認を任せられる

相続放棄では、相続放棄申述書だけでなく、亡くなった方の戸籍謄本や住民票除票、申述する方の戸籍謄本など、複数の書類が必要です。

また、必要な戸籍の範囲は、亡くなった方との関係によって変わります。

たとえば、配偶者や子が相続放棄する場合と、兄弟姉妹が相続放棄する場合では、集める戸籍の量が異なることがあります。

亡くなった方との関係によって変わる必要書類は、次の通りです。

申述人追加で必要になる主な書類
配偶者・被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
・申述人本人の戸籍謄本
・被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
・申述人本人の戸籍謄本
代襲相続人である孫・ひ孫など・被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
・本来の相続人である子などの死亡の記載がある戸籍謄本
父母・祖父母などの直系尊属・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・被相続人の子やその代襲相続人が死亡している場合は、その死亡の記載がある戸籍謄本
兄弟姉妹・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍謄本
・被相続人の子やその代襲相続人が死亡している場合は、その死亡の記載がある戸籍謄本
代襲相続人である甥・姪・兄弟姉妹の場合に必要な戸籍
・本来の相続人である兄弟姉妹の死亡の記載がある戸籍謄本

戸籍は本籍地の市区町村へ請求できるほか、一定の条件を満たせば、最寄りの市区町村窓口で複数の本籍地の戸籍をまとめて取得できる広域交付制度も利用可能です。

ただし、代理人による請求や郵送請求、一部の戸籍は広域交付の対象外であるため、本籍地の市区町村から個別に取り寄せる場合もあります。

書類の不足は、家庭裁判所から追加提出を求められ、手続きが長引く原因です。

司法書士に依頼すれば、誰の戸籍がどこまで必要かを確認したうえで、必要書類の収集や確認を進めてもらえます。

自分で戸籍をたどるのが難しい方や、仕事や家庭の事情で役所とのやり取りに時間をかけにくい方にとって、メリットになります。

申述書の作成を任せられる

相続放棄をするには、家庭裁判所に提出する相続放棄申述書の作成が必要です。

申述書には、亡くなった方の情報、申述する方の情報、相続放棄をする理由、相続財産の内容などを記載します。

書式自体は公開されているため、誰でも確認可能です。

しかし、実際に書こうとすると「どのように理由を書けばよいのか」「財産や負債がはっきりしない場合はどう書くのか」などで迷うことがあります。

戸籍や事情説明の内容と申述書の記載が合っていないと、家庭裁判所から確認や補正を求められる可能性もあります。

司法書士は、家庭裁判所に提出する書類の作成を業務として行える専門家です。

相続放棄申述書の作成を依頼すれば、事情に合った形で書類を整えやすくなり、書き方に悩む負担を減らせます。

特に、借金を後から知った場合や、相続財産の内容がはっきりしない場合などは、申述書だけでなく、補足資料の整理が必要です。

こうした場合も、司法書士に相談することで、どのような資料を準備すべきか確認しながら進められます。

書類不備による手続きの遅れを防ぎやすい

相続放棄には、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内という期限があります。

そのため、書類の不備や不足によって手続きが遅れることは、できるだけ避けたいところです。

たとえば、戸籍が足りない、申述書の記載に不明点がある、相続人の関係が確認できないといった場合、家庭裁判所から追加書類の提出や確認を求められることがあります。

もちろん、後から書類を補うことができる場合もありますが、期限が迫っている状況では、対応に余裕がなくなってしまいます。

司法書士に依頼すれば、提出前に必要書類や記載内容を確認してもらえるため、不備による手続きの遅れを防ぎやすいです。

期限まであまり時間がない場合でも、先に何を優先すべきかを整理しながら進められる点は安心材料になります。

相続放棄を検討している段階で「まだ借金の有無がわからない」「必要書類がそろっていない」と悩んでいる場合でも、早めに相談することで、期限内に取るべき行動を明確にしやすくなります。

複数人の相続放棄も整理しやすい

相続人が複数いる場合、相続放棄の手続きはさらに複雑になりやすくなります。

兄弟姉妹や親族がそれぞれ相続放棄をする場合、各相続人ごとに申述書が必要になり、戸籍もそれぞれの立場に応じて確認しなければなりません。

また、相続放棄をすると、相続放棄した人は初めから相続人ではなかったものとして扱われます。

その結果、次の順位の相続人に相続権が移ることがあります。

たとえば、子ども全員が相続放棄すると親へ、親も相続放棄すると兄弟姉妹へと、相続に関わる人が広がるケースも少なくありません。

そのため、複数人で相続放棄を検討している場合は、「誰が相続人になるのか」「誰が相続放棄をするのか」「次に連絡すべき親族はいるのか」を整理しておくことが重要です。

司法書士に依頼すれば、戸籍をもとに相続人の関係を確認し、必要な書類や手続きの順番を整理しやすくなります。

遠方に住む相続人がいる場合や、兄弟姉妹・甥姪まで関係する場合でも、全体の流れを確認しながら進められるため、親族間の混乱を抑えやすくなります。

相続放棄を司法書士に依頼した場合の費用

相続放棄を司法書士に依頼した場合の費用は、一般的に1人あたり数万円程度が目安です。

相続放棄を司法書士に依頼した場合の費用は、主に「家庭裁判所に納める費用」「戸籍などの取得費用」「司法書士への報酬」に分かれます。

費用の考え方は、次の通りです。

費用の種類内容・補足
家庭裁判所に納める費用・相続放棄の申述に必要な収入印紙代
・裁判所との連絡に使う郵便切手代
戸籍などの取得費用・戸籍謄本、除籍謄本、住民票除票などを取得するための費用
・遠方の自治体から取り寄せる場合は郵送費
司法書士への報酬・相続放棄申述書の作成依頼費用
・必要書類の確認依頼費用
・戸籍収集のサポート依頼費用
など

ただし、事務所ごとの料金設定や、戸籍収集、申述書の作成、必要書類の確認など、依頼する業務の範囲によって費用は異なります。

また、司法書士への報酬とは別に、申述人1人につき800円分の収入印紙代、郵便切手代、戸籍などの取得費用がかかります。

依頼前に見積もりを取り、費用の総額と業務範囲を確認しておきましょう。

司法書士に相続放棄を依頼した場合の流れ

司法書士に相続放棄を依頼した場合でも、手続きの中心になるのは家庭裁判所への申述です。

司法書士は、必要書類の確認や戸籍収集、申述書の作成などを通じて、手続きがスムーズに進むようサポートします。

司法書士に相続放棄を依頼した場合の一般的な流れは、次の通りです。

  1. 司法書士に事情を伝えて手続きの方向性を整理する
  2. 必要な戸籍や住民票を集める
  3. 相続放棄申述書を作成する
  4. 家庭裁判所へ提出する
  5. 照会書に回答する
  6. 相続放棄申述受理通知書を受け取る

ここからは、それぞれの手順について詳しく見ていきましょう。

1.司法書士に事情を伝えて手続きの方向性を整理する

まずは、亡くなった方の財産や借金、不動産の有無、相続人の関係、相続の開始を知った日などを司法書士に伝えましょう。

相続放棄には、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内という期限があります。

最初の相談では、主に次の内容を確認します。

  • 相続の開始を知った日
  • 財産や負債の状況
  • 相続財産を使用・処分していないか
  • ほかの相続人の有無
  • 相続放棄を検討する理由

これらの情報をもとに、相続放棄の手続きを進めるか、まず財産調査を行うか、熟慮期間の伸長を申し立てるかを整理します。

なお、相続人同士で争いがある場合や、相続放棄できるかどうかについて複雑な法的判断が必要な場合は、弁護士への相談が必要になることがあります。

2.必要な戸籍や住民票を集める

次に、相続放棄の申述に必要な戸籍や住民票除票などを集めましょう。

主な書類は、亡くなった方の住民票除票または戸籍附票、申述する方の戸籍謄本などです。

ただし、必要な書類は、申述する方が亡くなった方とどのような関係にあるかによって変わります。

配偶者や子が相続放棄する場合と、親や兄弟姉妹が相続放棄する場合では、集める戸籍の範囲が異なるため注意が必要です。

特に兄弟姉妹や甥姪が相続放棄する場合は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍や、先に相続人となるはずだった方の死亡がわかる戸籍など、必要書類が多くなることがあります。

司法書士に依頼すれば、相続人の立場に応じて必要書類を確認し、戸籍収集を進めてもらえます。

自分で役所に何度も問い合わせる負担を減らせるため、戸籍の集め方がわからない方にとって安心です。

3.相続放棄申述書を作成する

必要書類がある程度そろったら、家庭裁判所に提出する相続放棄申述書を作成しましょう。

申述書には、亡くなった方の情報、申述する方の情報、相続放棄をする理由、相続財産の内容などを記載します。

書式自体は公開されていますが、実際には「借金をいつ知ったのか」「財産を処分していないか」「相続放棄をする理由をどのように書くか」など、慎重に確認しなければなりません。

特に、相続開始から時間が経っている場合や、金融機関・債権者からの通知で初めて借金を知った場合は、事情を説明できる資料が必要になることもあります。

申述書の内容と戸籍、通知書、事情説明に食い違いがあると、家庭裁判所から確認を求められる可能性も。

司法書士に依頼すれば、事情を整理したうえで申述書を作成してもらえるため、書き方に迷う負担を減らせます。

4.家庭裁判所へ提出する

相続放棄申述書と添付書類がそろったら、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出しましょう。

提出時には、収入印紙や連絡用の郵便切手も必要です。

郵便切手の金額や種類は家庭裁判所によって異なるため、提出先の家庭裁判所に確認して準備します。

提出方法は、窓口へ持参する方法のほか、郵送で行える場合もあります。

司法書士に依頼している場合は、必要書類の確認や提出方法について案内を受けながら進めることが可能です。

ただし、期限が迫っている場合は、いつ家庭裁判所へ提出できるかが重要になります。

期限が迫っているにもかかわらず戸籍がすべてそろっていない場合は、先に申述書を提出して後から不足書類を追加できるか、提出先の家庭裁判所や専門家へ確認しましょう。

5.照会書に回答する

申述書を提出した後、家庭裁判所から照会書が届くことがあります。

照会書(回答書)とは、相続放棄の意思や、相続財産を処分していないかなどを確認するための書類です。

照会書に添付されている回答書には、相続放棄をする理由、亡くなった方の財産や借金を知った時期、財産を使ったり処分したりしていないかなどを記入します。

亡くなった方の預貯金を自分のために使ったり、不動産を売却したりするなど、相続財産を処分すると、単純承認をしたものと扱われるおそれがあります。

相続財産から亡くなった方の借金や費用を支払う場合も、支払いの目的や内容によって判断が異なるため、自己判断で行わず専門家へ確認しましょう。

そのため、照会書への回答は、事実に沿って慎重に行うことが大切です。

司法書士に依頼している場合は、照会書の内容を確認しながら、事実関係をどのように回答書へ記載するか相談できます。

返送期限が設けられていることもあるため、照会書が届いたら早めに対応しましょう。

6.相続放棄申述受理通知書を受け取る

家庭裁判所が相続放棄の申述を受理すると、相続放棄申述受理通知書が届きます。

相続放棄申述受理通知書が届けば、家庭裁判所での相続放棄の申述手続きは完了です。

ただし、申述が受理されたことは、相続放棄の有効性をあらゆる関係者との間で最終的に確定する判決ではありません。

相続財産を処分していた場合などには、後から債権者との間で相続放棄の効力が争われる可能性があります。

相続放棄が受理されると、原則として亡くなった方の財産や借金を引き継ぎません。

ただし、相続放棄をした時点で家や家財などの相続財産を現に占有していた場合は、相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存する義務を負います。

<===

(相続の放棄をした者による管理)

第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

引用元:民法第940条

===>

債権者や金融機関などから、相続放棄をしたことを証明する書類の提出を求められる場合があります。

書類の提出を求められた際は、必要に応じて家庭裁判所へ相続放棄申述受理証明書を申請します。

通知書と証明書は役割が異なるため、どちらの書類が必要なのかを提出先に確認しておくと安心です。

司法書士に相続放棄を依頼するときのよくある質問

司法書士に相続放棄を依頼するときの主な疑問として、次が挙げられます。

  • 相続放棄は司法書士と弁護士のどちらに相談すべき?
  • 相続放棄の手続きが完了するまでにかかる期間はどのくらい?
  • 3か月を過ぎていても相続放棄の依頼はできる?

ここからは、こうしたよくある質問に回答していきます。

相続放棄は司法書士と弁護士のどちらに相談すべき?

相続放棄の申述書作成や戸籍収集を依頼したい場合は、司法書士が相談先になります。

相続放棄では、家庭裁判所へ提出する申述書の作成や、亡くなった方との関係を確認するための戸籍収集が必要です。

司法書士は、裁判所へ提出する書類の作成を業務として行えるため、相続放棄の書類準備を進めたい場合に相談しやすい専門家です。

司法書士への相談が向いているケースとして、次が挙げられます。

  • 相続放棄申述書の作成を任せたい
  • 戸籍や住民票除票などの必要書類を集めるのが難しい
  • 相続人の関係を整理したい
  • 期限内に手続きを進められるか不安がある
  • 相続放棄後の不動産や登記に関する手続きも確認したい

一方で、相続人同士で争いがある場合や、債権者との交渉が必要な場合は、弁護士への相談を検討しましょう。

司法書士は書類作成や手続き面のサポートを行えますが、相手方との交渉や紛争対応は弁護士の領域になるためです。

つまり、書類作成や戸籍収集を中心に進めたい場合は司法書士、相続人や債権者との争いがある場合は弁護士も含めて相談する、という考え方が基本です。

相続放棄の手続きが完了するまでにかかる期間はどのくらい?

相続放棄の手続きにかかる期間は、必要書類の集まり具合や、家庭裁判所の確認内容によって変わります。

一般的には、戸籍や住民票除票などを集め、相続放棄申述書を作成して家庭裁判所へ提出する流れです。

その後、家庭裁判所から照会書が届く場合があり、回答内容に問題がなければ、相続放棄申述受理通知書が届いて手続きが完了します。

流れとして、次の表を参考にしてみてください。

手続きの段階内容
書類の準備戸籍、住民票除票、申述書などを準備する
家庭裁判所への提出亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出する
照会書への回答家庭裁判所から質問書が届いた場合、相続放棄の意思や事情を回答する
受理通知書の受け取り家庭裁判所に受理されると、相続放棄申述受理通知書が届く

早ければ数週間程度で進むこともありますが、戸籍の収集に時間がかかる場合や、家庭裁判所から追加確認を求められる場合は、さらに時間がかかることがあります。

特に、兄弟姉妹や甥姪が相続放棄をする場合は、必要な戸籍の範囲が広くなりやすいため、準備に時間がかかることがあります。

期限が近い場合は、戸籍がすべてそろうのを待つのではなく、どのように進めるべきか早めに司法書士へ相談することが大切です。

3か月を過ぎていても相続放棄の依頼はできる?

相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に行う必要があります。

そのため、3か月を過ぎている場合は、通常より慎重な対応が必要です。

ただし、事情によっては、3か月を過ぎた後でも相続放棄が認められる場合があります。

たとえば、亡くなった方に相続財産がまったくないと信じ、そう信じたことに相当な理由があった場合などには、例外的に、相続財産の存在を認識した時などから3か月以内の申述が受理される可能性があります。

借金を後から知っただけで必ず認められるわけではないため、経緯を専門家へ伝えることが重要です。

こうした場合は、「いつ相続が始まったことを知ったのか」「いつ借金や負債の存在を知ったのか」「それまで財産を使ったり処分したりしていないか」などを整理しておきましょう。

通知書や督促状など、負債を知った時期がわかる資料が必要になることもあります。

また、まだ3か月以内であるものの、財産や借金の調査が終わらず判断できない場合は、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てる方法もあります。

3か月を過ぎている場合や期限が迫っている場合は、自己判断で諦めず、できるだけ早く司法書士または弁護士へ相談しましょう。

申述書などの裁判所提出書類を整えたい場合は司法書士、債権者との交渉や訴訟が見込まれる場合は弁護士が主な相談先になります。

相続放棄は手続きだけでなく、不動産・税金・家族への影響まで見てどうするか判断しよう!

相続放棄をすると、借金だけでなく、不動産や預貯金も受け取れません。

判断前に、財産の価値や税金、管理の負担、家族への影響を確認する必要があります。

次の順位の親族が相続人になる場合もあるため、事前に家族へ伝えておくことが大切です。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、専門士業と連携し、相続放棄の申述書作成や戸籍収集、相続人関係の確認、不動産の名義変更に関する相談をサポートしています。

税金の問題が関わる場合は税理士、親族間の争いがある場合は弁護士、不動産の評価や売却・管理で悩む場合は不動産の専門家と連携しながら進めることも可能です。

相続放棄には期限があります。

借金があるかわからない段階や、不動産を相続すべきか迷っている段階でも、早めに現状を整理することで、取るべき手続きや相談先が見えやすくなります。

相続放棄をするべきか判断できない場合は、手続きだけでなく、不動産・税金・家族への影響まで含めて、早めに専門家へ相談しましょう。

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相続は司法書士と税理士のどっちに依頼すればいい?違いを徹底解説!

2026.07.30

不動産の相続登記は司法書士、相続税の申告や税額確認は税理士に相談することになります。

不動産と税金の両方が関わる場合は、両者への相談が必要です。

特に相続登記は2024年4月1日から義務化され、不動産を相続によって取得したことを知った日から3年以内に申請しなかった場合、正当な理由がなければ、10万円以下の過料を科される可能性があります。

この記事では、相続で司法書士と税理士のどちらに依頼すればよいのか、それぞれの役割の違いや、両方に相談したほうがよいケースについて解説します。

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記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

相続は司法書士と税理士、どっちに相談すればいいの?

相続では、不動産の名義変更、相続税の申告、遺産分割協議書の作成など、さまざまな手続きが関係します。

そのため、「司法書士と税理士のどちらに相談すればよいのか」と迷う方は少なくありません。

結論からいうと、次のように必要な手続きに応じた相手に相談するのが基本です。

  • 不動産の名義変更は司法書士
  • 相続税の申告は税理士
  • 不動産も税金もあるなら連携できる窓口

不動産と税金の両方が関係する相続では、司法書士と税理士が連携できる窓口に相談すると、手続きを進めやすくなります。

以下からは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

不動産の名義変更は司法書士

土地や建物を相続した場合は、不動産の名義を亡くなった方から相続人へ変更する「相続登記」が必要です。

実家、土地、賃貸物件などを相続する場合は、まず司法書士への相談を検討しましょう。

相続登記は、法務局で行う登記手続きです。

司法書士は、登記申請の代理や、法務局に提出する書類の作成を行える専門家です。

ただし、相続人同士で意見が対立している場合に、どちらか一方の代理人として交渉することは、基本的に弁護士の役割になります。

争いがない相続登記や書類作成であれば司法書士、相続人同士の対立がある場合は弁護士への相談も検討しましょう。

相続登記では、戸籍謄本の収集、相続人の確認、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成支援、法務局への申請など、慣れていない方には負担となりやすい作業が発生します。

また、不動産を売却する場合も、先に相続登記を済ませておく必要があります。

亡くなった方の名義のままでは、原則として相続人が不動産を売却できないためです。

司法書士への相談が向いているケースは次の通りです。

  • 相続した実家や土地の名義を変更したい
  • 相続登記に必要な書類をそろえたい
  • 相続人が誰になるのかを整理したい
  • 遺産分割協議書を登記に使える形で整えたい
  • 相続した不動産を売却する前に名義変更を済ませたい

不動産の名義変更が相続手続きの中心になる場合は、司法書士に相談することで、必要書類の準備から登記申請まで進めやすくなります。

相続税の申告は税理士

相続や遺贈によって取得した財産などの価額から、債務や葬式費用などを差し引いて計算した課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合は、原則として相続税の申告が必要です。

納める税金がある場合は、期限までに納税もしなければなりません。

つまり、相続財産の総額が相続税の基礎控除額を超える場合の相談先は、税理士です。

税理士は、税務相談、税務書類の作成、税務署への申告代理を行う専門家です。

相続税の申告では、預貯金や有価証券だけでなく、土地や建物などの不動産も評価する必要があります。

特に不動産は、評価方法や特例の使い方によって税額が変わることがあるため、専門的な判断が必要です。

相続税がかかるかどうかは、遺産の総額や法定相続人の人数によって変わります。

相続税の基礎控除額は、以下の式で計算されます。

===

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

===

正味の遺産額が基礎控除額を超える場合は、原則として申告が必要です。

ただし、相続税の基礎控除額を計算する際は、相続放棄をした人を放棄がなかったものとして法定相続人の数に含めます。

また、養子は法定相続人の数に含められる人数に制限があるため注意が必要です。

相続税がかかるか判断しにくい場合は、早めに税理士へ確認しましょう。

また、亡くなった方に所得があった場合は、相続税とは別に準確定申告が必要になることもあります。

準確定申告は、亡くなった方に事業所得や不動産所得などがあり、亡くなった年分の確定申告が必要な場合に、相続人などが行う手続きです。

相続税申告とは別に、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告・納税する必要があります。

<===

所得税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について計算し、その所得金額に対する税額を算出して翌年の2月16日から3月15日までの間に申告と納税をすることになっています。

しかし、年の中途で死亡した人の場合は、相続人(包括受遺者を含みます。以下「相続人等」といいます。)が、1月1日から死亡した日までに確定した所得金額および税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をしなければなりません。これを準確定申告といいます。

引用元:国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)

===>

こうした税務手続きは司法書士では対応できないため、税金の不安がある場合は税理士に確認しましょう。

税理士への相談が向いているケースは次の通りです。

  • 相続税がかかるかどうか知りたい
  • 相続税の申告が必要か判断したい
  • 土地や建物の相続税評価額を確認したい
  • 小規模宅地等の特例など、控除や特例を使えるか知りたい
  • 相続税申告や準確定申告を任せたい
  • 相続税の申告期限に間に合うか不安がある

相続税がかかるかどうか判断しにくい場合も、早めに税理士へ相談しておくと安心です。

相続税の申告・納税期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。

<===

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行うことになっています。

引用元:国税庁「No.4205 相続税の申告と納税

===>

申告期限が近づいてから慌てるよりも、財産の内容を整理しながら、必要な手続きを確認しておくことが大切になります。

不動産も税金もあるなら連携できる窓口

不動産を相続し、さらに相続税がかかる可能性もある場合は、司法書士と税理士の両方が関係します。

たとえば、相続した実家を売却する場合は、まず司法書士が相続登記を進めます。

一方で、不動産を含む課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合は、原則として相続税の申告が必要になるため、税理士への相談を検討しましょう。

同じ不動産を扱う場合でも、司法書士と税理士では担当する手続きが異なります。

不動産の相談内容ごとに、どっちの相談先が向いているかは、次の表で確かめてみてください。

相談内容主な相談先
不動産の名義変更をしたい司法書士
相続登記を進めたい司法書士
相続登記に必要な書類を整えたい司法書士
相続税がかかるか確認したい税理士
相続税申告を依頼したい税理士
土地や建物の相続税評価を確認したい税理士
不動産の名義変更と税金の両方を相談したい司法書士・税理士が連携できる窓口
相続した不動産の売却まで考えている不動産会社と士業が連携できる窓口

相続では、登記、税金、遺産分割、不動産売却が別々に見えて、実際にはつながっていることが多くあります。

たとえば、誰が不動産を取得するかが決まらないと登記が進まず、遺産分割の内容によって相続税の計算にも影響する場合があります。

また、相続税の申告期限までに遺産分割がまとまらない場合でも、申告期限そのものが延びるわけではありません。

この場合は、未分割の財産を各相続人が民法に規定する相続分などに従って取得したものとして計算し、期限内に申告・納税する必要があります。

さらに、未分割のままでは小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使えない申告になる場合があるため、早めに税理士へ相談しておくことが大切です。

申告期限までに遺産分割が終わっていない財産には、当初の申告で小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用できません。

ただし、申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、相続税の申告期限から3年以内に分割が成立した場合は、分割が行われた日の翌日から4か月以内に更正の請求をすることで、特例の適用を受けられることがあります。

不動産の名義をどうするか、誰がどの財産を取得するか、相続税をどのように申告するかを、同時に整理する必要があります。

不動産も税金も関係する相続では、司法書士と税理士が連携できる窓口に相談するのがおすすめです。

手続きを別々に依頼するよりも、必要な対応を整理しやすく、書類の準備やスケジュールのずれも防ぎやすくなります。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、提携司法書士・提携税理士と協力し、不動産の名義変更、相続税の確認、不動産評価、遺産分割に関する手続き、不動産売却まで一貫してサポートしています。

どこに相談すべきか分からない段階でも、状況を整理するところから相談可能です。

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相続における司法書士と税理士の違い

司法書士と税理士の違いは、「不動産の名義変更や法的書類を扱う専門家」か「相続税の申告や税金の判断を扱う専門家」かで考えると分かりやすくなります。

相続では、不動産の名義変更、相続税の確認、戸籍の収集、遺産分割協議書の作成など、さまざまな手続きが発生します。

ただし、司法書士と税理士では対応できる業務が異なるため、相談内容に合わせて依頼先を選ぶことが大切です。

司法書士と税理士の違いは、次の表で確かめてみてください。

項目司法書士税理士
何をしてくれる人か相続登記や相続手続きに必要な法的書類を整える相続税の申告や税金の判断を行う
よくある相談内容不動産の名義変更をしたい相続税がかかるか知りたい
頼める主な手続き相続登記、戸籍収集、相続関係の整理、遺産分割協議書の作成支援相続税申告、財産評価、特例・控除の適用判断、準確定申告
不動産についてできること相続した土地や建物の名義変更を進める土地や建物を相続税の計算上いくらで見るか判断する
税金についてできること相続税の申告や税務相談はできない相続税の申告、納税額の計算、節税の相談ができる
家庭裁判所に出す書類相続放棄、限定承認、遺言書の検認などの申立書類の作成を依頼できる家庭裁判所に出す書類作成は業務範囲外(専門外)
調査でできること登記や名義変更に必要な相続人調査、戸籍収集を行う相続税申告に必要な相続人確認、財産調査を行う
相談したほうがよい人不動産を相続した人、名義変更をしたい人、相続関係を整理したい人遺産が多い人、相続税が不安な人、土地評価や控除を確認したい人
気をつけること税金の申告や節税判断は税理士の領域になる不動産の相続登記は司法書士の領域になる

相続した不動産の名義変更は司法書士に、相続税の計算や申告は税理士に相談しましょう。

不動産と税金の両方が関わる場合は、両者が連携する窓口が便利です。

必要書類や期限をまとめて整理しやすく、売却や活用も一緒に考えられます。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、提携司法書士・提携税理士と協力し、不動産の名義変更、相続税の確認、不動産評価、遺産分割、不動産売却まで状況に応じてサポートしています。

司法書士と税理士のどちらに相談すべきか分からない段階でも、まずは相続の全体像を整理するところからご相談ください。

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相続において司法書士と税理士のどっちも必要になるケース

相続では、司法書士か税理士のどちらか一方だけではなく、両方の専門家に相談したほうがよいケースがあります。

不動産がある相続では、名義変更を行う司法書士の手続きと、相続税を確認する税理士の手続きが同時に関係しやすいです。

どちらか一方だけで進めると、登記や税金の判断にズレが出たり、あとから手続きのやり直しが必要になったりすることもあります。

両方の専門家が必要になりやすい場面は、次の通りです。

  • 不動産があり、相続税もかかりそうな場合
  • 遺産分割の内容で登記と税金が変わる場合
  • 相続した不動産を売却して納税する場合

以下からは、各ケースについて詳しく見ていきましょう。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続登記、相続税申告、不動産売却が同時に関わる相続でも、提携司法書士・提携税理士と連携して、手続きと不動産の扱いを一体で進めます。

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不動産があり、相続税もかかりそうな場合

実家、土地、賃貸物件などの不動産を相続する場合は、司法書士と税理士の両方が必要になることがあります。

不動産を相続した場合は、亡くなった方の名義から相続人の名義へ変更する相続登記が必要です。

相続登記の手続きは、司法書士の専門分野です。

相続登記では、戸籍の収集、相続人の確認、遺産分割協議書の作成支援、法務局への登記申請などを進めることになります。

一方で、不動産は相続税の計算にも関係します。

土地や建物の評価額によって相続税がかかるかどうかが変わるため、税理士による確認が必要です。

特に、土地の評価や小規模宅地等の特例の適用可否などは、税額に影響することがあります。

つまり、同じ不動産であっても、名義変更は司法書士、税金の確認は税理士が担当します。

詳しい内容ごとに適した相談先は、次の表をご覧ください。

内容相談先
相続した不動産の名義を変更したい司法書士
相続登記に必要な書類を整えたい司法書士
不動産を含めて相続税がかかるか知りたい税理士
土地や建物の評価額を確認したい税理士
特例や控除を使えるか知りたい税理士

不動産があり、相続税もかかりそうな場合は、司法書士と税理士が連携して、相続登記と税務申告を並行して進めることが大切です。

遺産分割の内容で登記と税金が変わる場合

遺産分割の内容によって、登記の内容も相続税の計算も変わる場合があります。

たとえば、土地を兄弟で共有するのか、長男が土地を取得して次男が預貯金を取得するのかによって、不動産の登記内容は変わります。

また、誰がどの財産を取得するかによって、相続税の負担や使える特例が変わることもあるのです。

こうした場合、先に遺産分割の話し合いだけを進めてしまうと、あとから「税金の負担が想定より大きかった」「登記しにくい分け方になっていた」と気づくことがあります。

結果として、協議内容の見直しや追加書類の作成が必要になるケースもあります。

遺産分割で確認したいポイントは、次の通りです。

  • 誰が不動産を取得するのか
  • 不動産を単独所有にするのか、共有にするのか
  • 預貯金や有価証券とのバランスは適切か
  • 相続税の負担に差が出ないか
  • 小規模宅地等の特例などを使える可能性があるか
  • 登記に使える遺産分割協議書になっているか

司法書士は、登記に必要な書類や、相続人間で合意した内容に基づく遺産分割協議書の作成を行います。

一方で、税理士は分割内容によって相続税がどう変わるかを確認します。

そのため、遺産分割の内容で登記と税金の両方が変わる場合は、司法書士と税理士の両方に相談しながら進めると安心です。

相続人同士の話し合いを進める前に、登記と税金の両面から確認しておくことで、手戻りを防ぎやすくなります。

相続した不動産を売却して納税する場合

相続税を納めるために、相続した不動産を売却するケースもあります。

この場合は、司法書士、税理士、不動産会社の連携が重要です。

不動産を売却するには、まず相続登記を行い、亡くなった方の名義から相続人の名義へ変更する必要があります。

亡くなった方名義の不動産は、原則として、相続人が買主へ所有権移転登記をする前に相続登記を行う必要があります。

名義変更に関わることは、司法書士が担当します。

一方で、相続税の納税額を確認したり、不動産を売却した場合の税金を確認したりするのは税理士の役割です。

相続した不動産を売却して譲渡益が生じた場合は、所得税・住民税がかかる可能性があります。

そのため、売却価格だけでなく、税金を差し引いた後にどれくらい資金が残るのかを確認しておくことが大切です。

相続した不動産を売却して納税する場合の流れは、次の通りです。

  • 相続財産を整理する
  • 相続税がかかるか確認する
  • 納税資金が足りるか確認する
  • 相続登記を行う
  • 不動産の査定を依頼する
  • 売却した場合の税金や手残り額を確認する
  • 売却活動を進める
  • 売却代金から納税資金を確保する

相続した不動産を売却して納税する流れでは、司法書士、税理士、不動産会社がそれぞれ別の役割を担います。

パートごとの担当は、次の表の通りです。

手続きの内容主な担当
相続登記を行う司法書士
登記に必要な書類を整える司法書士
相続税の納税額を確認する税理士
売却後の税金を確認する税理士
不動産の査定や売却活動を行う不動産会社
登記・税金・売却の流れを整理する士業と不動産会社が連携できる窓口

相続した不動産を売って納税する場合は、登記・売却・税金の確認を順番に進めることが重要です。

相続税は原則として、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付することになります。

売却が期限に間に合わない場合に備え、早めに税理士や不動産会社へ相談し、納税資金の確保方法を決めておきましょう。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、提携司法書士・提携税理士と協力し、不動産の名義変更、相続税の確認、不動産評価、遺産分割、不動産売却まで状況に応じてサポートしています。

司法書士と税理士の両方が必要か分からない場合でも、まずは相続の内容を整理し、必要な専門家につなぐところからご相談いただけます。

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相続の相談先は司法書士か税理士かだけではない!弁護士に相談したほうがよいケース

相続の相談先は、司法書士と税理士だけとは限りません。

不動産の名義変更は司法書士、相続税の申告は税理士に相談するのが基本です。

しかし、相続人同士で争いがある場合や、財産の使い込みが疑われる場合は、弁護士への相談が必要になることがあります。

司法書士や税理士は、それぞれ登記や税務の専門家です。

一方で、相続人同士の交渉、調停・訴訟への対応、財産の使い込みに関する請求など、法律上の争いに対応する場合は弁護士の領域になります。

弁護士への相談を優先したほうがよい主なケースは、次の通りです。

  • 相続人同士で話し合いがまとまらないケース
  • 財産の使い込み・隠し財産が疑われるケース
  • 調停・訴訟になりそうなケース

以下からは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

相続人同士で話し合いがまとまらないケース

遺産分割協議で相続人同士の意見が合わない場合は、弁護士への相談を検討しましょう。

相続では、誰がどの財産を取得するかを相続人全員で話し合う必要があります。

しかし、実家を誰が引き継ぐのか、預貯金をどのように分けるのか、特定の相続人だけが多く財産を取得してよいのかなどで、意見が対立するケースも少なくありません。

話し合いがまとまらない場合、司法書士や税理士だけでは解決が難しいことがあります。

司法書士は登記や書類作成、税理士は税金の計算や申告が主な業務であり、相続人の代理人として相手と交渉する役割は基本的に弁護士が担います。

弁護士に相談したほうがよい場面は、次の通りです。

  • 相続人同士で感情的な対立がある
  • 遺産分割協議が何度も止まっている
  • 一部の相続人が話し合いに応じない
  • 特定の相続人だけが強く主張している
  • 自分の立場を法的に整理して交渉したい

相続人同士の関係が悪化している場合、無理に当事者だけで話し合いを続けると、さらにトラブルが大きくなるおそれがあります。

早めに弁護士へ相談することで、今後の進め方や主張できる内容を整理しやすくなります。

財産の使い込み・隠し財産が疑われるケース

亡くなった方の預貯金が不自然に引き出されている、通帳や証券が見当たらない、一部の相続人だけが財産の内容を把握しているといった場合も、弁護士への相談が向いています。

相続では、財産の内容がはっきりしないまま遺産分割を進めると、本来分けるべき財産が反映されない可能性があります。

特に、財産の使い込みや隠し財産が疑われる場合は、単なる手続きではなく、法的な確認や請求が必要です。

法的な確認や請求が必要になるケースは、次の通りです。

  • 亡くなる前後に大きな預金の引き出しがある
  • 一部の相続人が通帳や印鑑を管理していた
  • 財産の内容を聞いても開示してもらえない
  • 不動産や預貯金の存在を隠している疑いがある
  • 生前贈与や使い込みについて相続人同士で争いがある

税理士は相続税申告に必要な財産の確認を行います。

しかし、財産の使い込みをめぐって相手方と争う場合や、返還を求める場合は、弁護士の関与が必要です。

また、司法書士は登記や裁判所に提出する書類作成を相談できる場合があります。

しかし、相続人同士の争いの代理交渉や訴訟対応は弁護士の領域です。

財産の内容に不信感がある場合は、感情的に問い詰める前に、どのような資料を確認すべきか、どのような手順で進めるべきかを弁護士に相談すると安心です。

調停・訴訟になりそうなケース

遺産分割の話し合いがまとまらず、家庭裁判所での調停や審判に進む可能性がある場合や、遺言の有効性などをめぐって訴訟になる可能性がある場合は、弁護士への相談を優先しましょう。

相続人同士の話し合いで合意できない場合、家庭裁判所の遺産分割調停を利用することがあります。

調停でもまとまらない場合は、審判に進み、裁判所が判断する流れになります。

調停や訴訟が関係する場面では、単に書類を作るだけでなく、自分の主張をどのように整理するか、どの証拠を出すか、相手方の主張にどう対応するかが重要です。

こうした対応は、弁護士に相談するのが基本になります。

弁護士に相談したほうがよい場面は、次の通りです。

  • 遺産分割調停を申し立てたい
  • 相手方から調停を申し立てられた
  • 調停で何を主張すべきか分からない
  • 相続人同士の対立が強く、直接話したくない
  • 遺言の有効性や遺留分をめぐって争いがある
  • 使い込みや隠し財産について法的に請求したい

争いが残ったままでは、不動産の名義変更や相続税申告にも影響が出ることがあります。

誰がどの財産を取得するかが決まらなければ、相続登記の内容も確定しにくく、税務上の判断にも影響するためです。

そのため、調停や訴訟になりそうな場合は、まず弁護士に争点を整理してもらい、その後に必要に応じて司法書士や税理士へつなぐ流れが進めやすくなります。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、提携司法書士・提携税理士と協力しながら、不動産の名義変更、相続税の確認、不動産評価、遺産分割、不動産売却まで状況に応じてサポートしています。

相続人同士の争いがある場合や、弁護士への相談が必要と考えられる場合も、状況を整理したうえで適切な専門家につなぐことが可能です。

司法書士か税理士、どっちか迷ったら相続全体を見て進められるワンストップ型に相談しよう

相続では、不動産の名義変更は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人同士の争いは弁護士に相談することになります。

複数の問題が重なる場合は、専門家が連携する窓口へ相談すると便利です。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携し、相続登記や税務申告、遺産分割に関する相談、不動産の売却・管理までサポートしています。

相談先に迷う段階でも、財産や相続人、不動産、税金の状況を伝えれば、次に行う手続きを確認できます。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

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田舎の土地は相続すべき?メリット・デメリットや手放す方法を徹底解説

2026.07.30

田舎の土地を相続するかどうかは、慎重に判断したい問題です。

土地は財産である一方、使う予定がない場合でも固定資産税や管理の手間がかかり続けるため、相続後に負担を感じるケースもあります。

また、田舎の土地は買い手が見つかりにくい、活用方法が限られる、共有名義になると処分しにくいなど、都市部の不動産とは異なる注意点があります。

そのため、相続する前に「自分たちで管理できるか」「売却や活用の見込みはあるか」「他の相続財産とのバランスはどうか」を整理しておくことが大切です。

本記事では、田舎の土地を相続するメリット・デメリット、相続すべきか判断するポイント、土地を手放す方法について解説します。

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記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

田舎の土地を相続するメリット

田舎の土地は、必ずしも負担だけになるとは限りません。

条件が合えば、費用を抑えて土地を取得できたり、売却や賃貸によって活用できたりする可能性があります。

田舎の土地を相続する主なメリットは、次の通りです。

  • 購入費をかけずに土地を取得できる
  • 売却できれば現金化できる
  • 貸せる土地なら収入につながる
  • 家族にとって大切な土地を残せる

以下からは、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

購入費をかけずに土地を取得できる

相続なら土地の購入費はかからず、不動産取得税も原則としてかかりません。

登録免許税は必要ですが、売買より初期費用を抑えやすい点が利点です。

相続によって土地の所有権を取得した方は、原則として、その土地を相続によって取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。

正当な理由なく登記しない場合、10万円以下の過料を科されるおそれがあります。

<===

 相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務になりました。

 正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

 遺産分割(相続人間の話合い)で不動産を取得した場合も、別途、遺産分割から3年以内に、遺産分割の内容に応じた登記をする必要があります。

引用元:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A

===>

売却できれば現金化できる

相続した田舎の土地は、買い手が見つかれば売って現金にでき、相続人で分けやすくなります。

「道路に面した土地」や「住宅、農業、事業に使いやすい土地」は売れる場合が多いです。

場所、周辺環境、道路との接し方、土地の種類、建物の有無で売れやすさが変わります。

農地は農地法に基づく許可や届出などの手続きが必要になる場合があるため、売れる土地か、必要な手続きは何かを先に確認しましょう。

貸せる土地なら収入につながる

土地は、駐車場や資材置き場、農地、倉庫用地として貸せれば、賃料収入を得られる場合があります。

ただし、借り手がいるか、必要な手続きに問題がないか、管理の負担に合う収入かを先に確かめましょう。

契約前には、期間、管理方法、費用の分け方、土地を返してもらう条件を明確にしてください。

家族にとって大切な土地を残せる

実家や先祖代々の土地は、思い出や将来の利用を考えて残す方法もあります。

ただし、税金、草刈り、建物の手入れにかかる費用も確認してください。

共有地全体の売却や、共有物の形状・効用を大きく変える変更には、原則として共有者全員の同意が必要です。

一方、草刈りなどの保存行為は各共有者が単独で行うことができ、共有物の管理に関する事項は、原則として共有持分の価格の過半数で決定します。

家族にとって大切な土地として受け継ぐ場合でも、誰が引き継いで管理し、費用を負担するのかを家族で事前に決めておきましょう。

田舎の土地を相続するデメリット

田舎の土地を相続する主なデメリットは、次の通りです。

  • 固定資産税や管理費などの維持費がかかる
  • 草刈り・見回りなどの管理負担が発生する
  • 古い建物は倒壊・修繕のリスクがある
  • 家族の意見が割れると管理・手続きが進みにくい
  • 買い手が見つからず売却・処分に困ることがある

ここからは、相続後に問題になりやすいことについて詳しく見ていきましょう。

固定資産税や管理費などの維持費がかかる

土地を所有している限り、利用していない土地であっても、原則として固定資産税がかかります。

税額が大きくない土地でも、毎年支払いが続くため、長期間持ち続けると家計の負担になりがちです。

また、土地に住宅が建っている場合は、一定の要件を満たすことで固定資産税の負担が軽くなることがあります。

しかし、空き家の管理状態が悪化し、市区町村から「特定空家等」または「管理不全空家等」として勧告を受けると、土地が住宅用地に対する固定資産税等の軽減措置の対象外となる場合があります。

<===

<特定空家等(※1)に対する措置>

市区町村長から勧告を受けた特定空家の敷地について、住宅用地特例の適用対象から除外

(略)

<管理不全空家等(※2)に対する措置>

市区町村長から勧告を受けた管理不全空家の敷地についても、住宅用地特例の適用対象から除外

引用元:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置

===>

さらに税金以外で、草刈り代、建物の修繕費、火災保険料、現地までの交通費などがかかる場合もあります。

田舎の土地を相続する際は、「固定資産税だけなら払える」と考えるのではなく、管理にかかる費用も含めて判断することが大切です。

草刈り・見回りなどの管理負担が発生する

使わない田舎の土地でも、雑草、はみ出した木、害虫、不法投棄を防ぐ管理が欠かせません。

遠方なら見回りが負担となり、自分で草刈りや清掃ができなければ業者代もかかります。

相続前に、見回る担当者、管理方法、費用を払う方を決めておきましょう。

古い建物は倒壊・修繕のリスクがある

古い家や倉庫、塀がある土地は、建物も管理しなければなりません。

放置すると、屋根や壁が落ちたり、塀が倒れたりする危険があります。

人や周りの物に被害が出れば、所有者が責任を負うこともあります。

相続前に建物の状態を調べ、修理費と解体費を見積もってから判断しましょう。

家族の意見が割れると管理・手続きが進みにくい

田舎の土地は現金のように分けにくく、売るか残すかで相続人の意見が割れやすいです。

共有名義にすると、売却や方針変更に合意が要り、手続きも複雑になります。

近くに住む方だけが草刈りや見回りを担うと、費用や手間の差から不満が生まれます。

売却代金で分けるか、誰が土地を受け継ぐかを決め、管理費や解体費の負担も早めに話し合いましょう。

買い手が見つからず売却・処分に困ることがある

田舎の土地は、駅や道路から遠い、建物を建てにくい、境界が不明、古い建物や木が残るなどの理由で、売れにくいことがあります。

農地では特別な手続きが必要な場合があり、売れなければ税金や管理費の支払いが続くことになります。

相続するかどうかを判断する段階では、売却できる可能性を確認し、相続放棄を検討し、相続後は、売却・寄付・相続土地国庫帰属制度などの方法を検討しましょう。

田舎の土地を相続する際に確認すべきこと一覧

田舎の土地を相続するかどうかは、「なんとなく残したい」「使わないから放棄したい」といった感覚だけでは決められません。

相続放棄を検討する場合や相続後に売却・保有・相続土地国庫帰属制度の利用を検討する場合など、どの方法を考える場合でも、まずは土地の状況を整理することが大切です。

田舎の土地を相続する際に確認すべきことは、次の表の通りです。

確認すること何を見るか確認しないと起こりやすいこと
所在地・土地がどこにあるか
・自宅からどれくらい離れているか
遠方で管理に通えず、草刈りや現地確認が負担になる
名義登記上の名義人が誰になっているか亡くなった方や以前の所有者の名義のままだと、相続人が増えて手続きが複雑になる
境界・隣地との境目がはっきりしているか
・測量図や境界関係の資料があるか
境界が曖昧だと、売却や手放す手続きの際に隣地所有者との話し合いが起こり、手続きが止まりやすくなる
接道・土地が道路に接しているか
・車が入れるか
・建物を建てられる条件を満たしているか
・建物を建てにくくなる
・買い手が見つかりにくくなる
建物の有無古い家、倉庫、空き家、塀などが残っているか・解体費
・修繕費
・老朽化による近隣トラブル
・管理責任問題
固定資産税と管理費・固定資産税
・草刈り代
・交通費
・火災保険料
・修繕費
など
・使っていない土地でも毎年費用がかかり、長く持ち続けるほど負担になる
他の相続財産・預貯金
・借金
・株式
・保険
・ほかの不動産
など
・土地だけを見て相続放棄を判断すると、受け取れる財産まで手放すことになる

田舎の土地を相続するかは、使い道、売れる見込み、管理のしやすさ、維持費、家族の意見で判断しましょう。

登記が終わっていない土地や、境界が不明な土地、古い建物が残る土地は、後から手続きや費用が増えるおそれがあります。

まず土地の名義と状態を調べ、専門家にも相談しながら家族で方針を決めましょう。

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田舎の土地を相続するか迷ったときの見極めポイント

田舎の土地を相続するか迷ったときは、「土地に価値があるか」だけで判断しないことが大切です。

土地を使う予定があるか、売却や賃貸ができそうか、管理を続けられるか、家族で意見をそろえられるかを確認する必要があります。

田舎の土地を相続するかどうかを見極めるポイントは、次の通りです。

判断すること確認する内容相続を前向きに考えやすい場合売却・放棄・手放す方法を考えたほうがよい場合
自分や家族が使う予定があるか住む、建物を建てる、畑にする、駐車場にするなど、現実的な使い道があるか自分や家族が使う予定があり、管理する人や費用を負担する人も決まっている場合誰も使う予定がなく、将来の利用予定もない場合
買い手や借り手が見つかる土地か売却や賃貸の需要があるか(不動産会社など専門業者に確かめる)売れる見込みや貸せる見込みがあり、現金化や収入が期待できる場合売れにくい、貸しにくい、価格を下げても買い手が見つかりにくい場合
管理に通える距離か草刈り、見回り、修繕、近隣対応に行ける距離か自分や家族が通える距離にあり、定期的に管理できる場合遠方で管理に通えず、管理を委託する費用も負担になる場合
金融資産で維持費をまかなえるか固定資産税、草刈り代、交通費、修繕費などを支払えるか数年単位で持ち続けても、家計への負担が大きくない場合預貯金が少なく、固定資産税や管理費によって家計が圧迫される場合
家族で意見をそろえられるか売る、残す、貸す、誰が管理するかを話し合えるか名義人、管理する方、費用負担の考え方がまとまっている場合売りたい方、残したい方、関わりたくない方で意見が割れている場合

使い道と管理する方が決まっている土地は、相続を考えやすいです。

使う予定や売却、賃貸の見込みがなければ、税金や管理の負担が続き、共有名義では話し合いが進まないおそれがあります。

預貯金や借金も調べ、相続放棄では土地以外も受け取れない点を踏まえて、相続、売却、賃貸、手放す方法を家族で決めましょう。

田舎の土地を相続しない方法・相続後に手放す方法

田舎の土地を相続しない方法や、相続後に手放す主な方法は、次の通りです。

  • 相続放棄
  • 仲介売却
  • 買取
  • 寄付
  • 隣地所有者への譲渡
  • 空き家バンク
  • 相続土地国庫帰属制度

ここからは、それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

相続放棄

相続放棄は、家庭裁判所で手続きを行い、土地や預貯金などの権利と、借金などの義務を原則として一切引き継がない制度です。

土地だけを選んで放棄することはできず、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。

相続放棄の注意点は次の通りです。

  • 原則として、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所で手続きを行う必要がある
  • 土地だけを選んで放棄することはできない
  • 相続放棄によって、次順位の親族が新たに相続人となることがある
  • 相続放棄をした時点で土地や建物を現に占有していた場合は、相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存する義務を負う

放棄後は次の順位の親族が相続人になる場合があります。

また、放棄の時点で土地や建物を現に占有していた方は、相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで保存義務を負うため、財産全体と管理状況を早めに確認しましょう。

仲介売却

仲介売却は、不動産会社に買い手を探してもらい、相続した土地を現金に換える方法です。

道路に面し、住宅などに使いやすく、地域に需要があれば、市場価格に近い金額で売れる場合があります。

ただし、立地、土地の種類、境界、建物の有無で売れやすさが変わり、農地では手続きも要るため、地域に詳しい不動産会社へ相談しましょう。

買取

買取は、不動産会社などに土地を直接売る方法で、早く現金化しやすいです。

管理を早く終えたい場合にも向きますが、仲介より安くなることがあります。

複数社に査定を頼み、価格、引き渡し時期、残置物の撤去や測量・解体の要否を比べましょう。

寄付

寄付とは、自治体や法人、団体などに土地を無償で譲る方法です。

公共施設や道路、公園、地域活動などに活用できる土地であれば、受け入れてもらえる可能性があります。

ただし、寄付は「無償なら必ず受け取ってもらえる」というものではありません。

受け取る側にとっても、土地を管理する費用や責任が発生するため、利用価値が低い土地や管理が難しい土地は、断られることがあります。

寄付を検討する場合は、土地の所在地、面積、境界、接道、建物の有無、権利関係などを整理したうえで、受け入れ先に相談する必要があります。

特に自治体への寄付は、一定の基準を満たさなければ受け入れられないことが多いため、早い段階で確認しておきましょう。

隣地所有者への譲渡

隣の土地の持ち主に売るか、無償で譲る方法もあります。

一般の買い手が見つからなくても、敷地の拡張、駐車場、家庭菜園、進入路に役立つなら交渉が進む場合があります。

売買か贈与か、価格、境界、測量、登記費用を決め、農地であるなら必要な手続きも確認しましょう。

空き家バンク

空き家バンクとは、自治体などが運営する空き家や空き地の情報提供制度です。

相続した土地や建物を登録することで、移住希望者や地域で不動産を探している人に見てもらえる可能性があります。

特に、古い家が残っていても住居として使える場合や、移住・二拠点生活・地域活動などの需要がある地域では、空き家バンクがきっかけで買い手や借り手が見つかることがあります。

ただし、空き家バンクに登録したからといって、必ず売却や賃貸が成立するわけではありません。

建物の状態が悪い、場所が不便、価格が相場に合っていないなどの場合は、問い合わせが少ないこともあります。

空き家バンクを利用する場合は、登録条件、必要書類、自治体のサポート範囲、不動産会社の関与の有無を確認しておきましょう。

相続土地国庫帰属制度

相続土地国庫帰属制度とは、相続または相続人への遺贈によって取得した土地を、一定の条件のもとで国へ引き渡す制度です。

ただし、どのような土地でも国に引き取ってもらえるわけではありません。

建物がある土地、担保権や使用・収益を目的とする権利が設定されている土地、境界や所有権の範囲に争いがある土地などは、相続土地国庫帰属制度の承認申請ができません。

また、一定の勾配や高さがあり、通常の管理に過分な費用・労力を要する崖がある土地や、除去に過分な費用・労力を要する埋設物がある土地などは、審査の結果、国庫への帰属が承認されない場合があります。

申請時には審査手数料がかかり、国への帰属が承認された場合は、土地の管理にかかる費用として負担金を納める必要があります。

そのため、「費用をかけずに土地を手放せる制度」ではない点に注意が必要です。

田舎の土地の相続は、土地だけで決めず相続全体で考えよう!

田舎の土地を相続するか手放すかは、価格だけでは決められません。

相続人、ほかの財産や借金、税金や管理費、建物の状態、家族の意見、売却や賃貸の見込みをまとめて確認する必要があります。

土地だけで決めると、管理できない、話し合いがまとまらない、ほかの財産まで受け取れないといった問題が起こるため、財産全体を調べたうえで家族で話し合いましょう。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、田舎の土地を含む相続について、専門士業と連携し、不動産の状況整理や相続登記、売却・活用に関する相談をサポートしています。

土地の用途がまだ決まっていない段階でも、相続全体を整理すると、自分たちに合った対応ができるようになります。

田舎の土地を相続すべきか迷っている方は、相続前の備えや相続後の手続きを後回しにせず、早めに専門家へ相談しながら進めましょう。

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父から母へ家の名義変更をする方法とは?注意点や相談先を解説!

2026.07.10

父から母へ家の名義変更をしたいが、必要な書類や手続きがわからないと悩む家庭も少なくありません。

父が存命中に母へ名義を移したいケースもあれば、父が亡くなった後に相続登記によって母名義への変更を検討するケースもあります。

この記事では、父から母へ家の名義変更をする主な方法や注意点、相談先の選び方について、詳しく解説します。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、不動産相続について司法書士や税理士などの専門家と連携し、手続きで迷いやすいポイントの整理をお手伝いいたします。

家の名義変更について、お困りの方はお気軽にご相談ください。

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記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

父が存命かどうかで、母への家の名義変更の考え方は変わる!

父から母へ家の名義を変更する際は、まず「父が存命かどうか」を確認しましょう。

父がすでに亡くなっている場合は、基本的に「相続」による名義変更として進めます。

ただし、父が亡くなったからといって、家の名義が自動的に母へ変わるわけではありません。

配偶者である母は相続人になりますが、子どもも相続人になります。

また、子どもがいない場合でも、父の父母や祖父母などの直系尊属がいる場合は直系尊属が、直系尊属もいない場合には父の兄弟姉妹が相続人になることがあります。

そのため、家族が「母に家を引き継いでもらいたい」と考えていても、遺言書がない場合は、原則として相続人全員で遺産分割協議を行い、合意内容を遺産分割協議書にまとめる必要があります。

一方で、父が存命のうちに母へ家の名義を変更する場合は、「贈与」や「売買」といった方法を検討することになります。

相続とは扱いが異なるため、必要書類や税金、手続きの流れも変わります。

整理すると、主な違いは次の通りです。

父の状況主な名義変更の方法注意点
父が亡くなっている相続相続人の確認や遺産分割協議、相続登記が必要になる
父が存命贈与または売買贈与税・不動産取得税・登録免許税などの負担を確認する必要がある

父から母へ家の名義を変えるときは、まず父の状況を確認し、「相続」「贈与」「売買」のどれにあたるのかを整理しましょう。

そのうえで、登記や税金、今後の住まい方まで含めて検討することが大切です。

父から母へ家の名義変更をする方法

同じ「名義変更」でも、どの方法をとるかによって、必要な書類や手続き、かかる税金が異なります。

父から母へ家の名義を変更するための主な選択肢は、次の通りです。

  • 相続
  • 贈与
  • 売買

ここからは、それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

相続

父が亡くなった後に母が家を引き継ぐ場合は、「相続」による名義変更を行います。

父が亡くなると、家の名義が自動的に母へ変わるわけではありません。

母が家を相続する場合でも、管轄の法務局へ相続登記を申請し、不動産の名義を父から母へ変更する必要があります。

相続による名義変更は、一般的に次の流れで進めます。

  1. 遺言書があるか確認する
  2. 相続人を確認する
  3. 遺言書がない場合は、相続人全員で、家を誰が取得するか協議する
  4. 協議内容に基づいて遺産分割協議書を作成する
  5. 戸籍謄本などの必要書類を集める
  6. 法務局へ相続登記を申請する

遺言書がある場合は、基本的にその内容に沿って手続きを進めます。

法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していない自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認が必要です。

封印のある遺言書を家庭裁判所以外で開封した場合などは、5万円以下の過料が科される可能性があるため注意しましょう。

一方で、公正証書遺言や、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言は、検認不要です。

遺言書がない場合は、母や子どもなどの相続人全員で話し合い、誰が家を引き継ぐのかを決めます。

たとえば「母に家を引き継いでもらいたい」と家族で考えている場合でも、子どもが相続人であれば、母だけで自由に名義変更できるとは限りません。

相続人全員の合意が必要になります。

相続によって不動産を取得した場合は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。

また、遺産分割で不動産を取得した場合は、遺産分割の日から3年以内の登記も必要です。

税金面では、相続による名義変更では登録免許税がかかります。

相続登記の登録免許税は、原則として固定資産税評価額の0.4%です。

ただし、一定の土地の相続登記については、登録免許税が非課税になる場合もあります。

また、相続税はすべてのケースで発生するわけではなく、遺産総額が基礎控除額を超える場合に課税対象となります。

相続の場合は、贈与や売買と比べて税負担を抑えられることもありますが、相続人の確認や遺産分割協議が必要になるため、登記は司法書士、税金は税理士へ相談しながら進めると安心です。

贈与

父が存命のうちに、母へ無償で家を譲る方法が「贈与」です。

贈与による名義変更では、贈与契約や所有権移転登記が必要になります。

ただし、贈与では贈与税、不動産取得税、登録免許税などが関係するため、税負担を確認したうえで判断する必要があります。

婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する場合は、一定の要件を満たせば、贈与税の配偶者控除を利用できる可能性があります。

この制度を使うと、通常の基礎控除110万円に加えて、最高2,000万円まで控除を受けられる場合があります。

なお、配偶者控除は、同じ配偶者からの贈与については一度しか適用できません。

ただし、主に次のような要件があります。

  • 婚姻期間が20年以上であること
  • 贈与される家が、母の居住用不動産であること
  • 贈与を受けた翌年3月15日までに、母が実際に住んでいること
  • その後も住み続ける見込みがあること
  • 必要書類を添付して、贈与税の申告を行うこと

こうした特例が使える場合でも、自動的に適用されるわけではありません。

贈与税の申告が必要になるため、申告期限や必要書類については、事前に税理士へ確認しておくと安心です。

また、贈与では贈与税だけでなく、不動産取得税や登録免許税もかかります。

贈与を原因とする所有権移転登記の登録免許税は、相続を原因とする場合より高くなります。

そのため、「夫婦間だから税金はかからないだろう」と考えて進めると、想定外の負担が発生することがあります。

父が存命のうちに名義を変えたい場合は、贈与税の特例が使えるか、ほかの税金がどのくらいかかるかを確認したうえで判断しましょう。

売買

売買の場合は、親族間であっても通常の不動産取引と同じように、売買契約書を作成し、代金を支払い、所有権移転登記を行います。

母が代金を支払って家を取得するため、贈与とは扱いが異なります。

売買で特に注意したいのは、売買価格の決め方です。

親族間だからといって、実際の価値よりも極端に安い金額で売買すると、時価との差額が贈与とみなされる可能性があります。

こうした場合、売買として進めたつもりでも、母に贈与税がかかることがあります。

父から母へ家を売買する場合は、次の点を確認しておきましょう。

確認すること内容
売買価格周辺相場や査定額を踏まえて、極端に安すぎない価格にする
契約書親族間でも売買契約書を作成する
代金の支払い銀行振込など、支払いの記録が残る方法にする
税金母側の不動産取得税や登録免許税、父側の譲渡所得税(所得税・住民税)を確認する
住宅ローンローンが残っている場合は、金融機関への確認が必要になる

また、父に売却益が出る場合は、父側に譲渡所得税(所得税・住民税)がかかる可能性があります。

母側にも、不動産取得税や登録免許税が関係するのです。

住宅ローンが残っている家の場合は、ローン契約や担保の扱いについて、金融機関への確認が必要になることがあります。

売買は、贈与税を避ける目的で選ばれることもある方法です。

しかし、価格設定や税金の判断を誤ると、かえって負担が増える可能性があります。

親族間売買を検討する場合は、不動産会社や司法書士、税理士などに相談しながら進めると安心です。

父から母へ名義変更する場合のメリット・デメリット

父から母へ家の名義を変更すると、母の住まいを確保しやすくなります。

ただし、税金や維持費、将来の相続まで考えておく必要があります。

主なメリット・デメリットは、次の通りです。

項目メリットデメリット
母の生活面母が住み慣れた家に住み続けやすくなり、住まいの不安を減らせる名義変更後は、固定資産税や修繕費などの負担が母に移る可能性がある
相続手続き父が亡くなった後、母が家を引き継ぐ形を明確にできる子どもなど他の相続人がいる場合、合意を得ないまま進めるとトラブルになるおそれがある
財産管理家の所有者が母になるため、管理や売却の判断をしやすくなる母が高齢の場合、管理・売却・修繕の判断が負担になることがある
税金相続による名義変更では、生前贈与より登録免許税や不動産取得税などの負担を抑えられる場合がある生前贈与で名義変更すると、贈与税や不動産取得税などがかかる可能性がある
将来の備え母の住まいを確保し、生活基盤を守りやすくなる母が亡くなったときに、その家について再度相続手続きが必要になる
家族間の整理誰が家を所有するのかを明確にでき、後々の相続トラブルの防止につながる家の評価額や他の財産とのバランスによって、相続人の間で不公平感が出ることがある

父から母への名義変更は、「母に家を渡せば終わり」と考えるのではなく、母の生活、税金、他の相続人との関係、次の相続まで含めて検討しましょう。

不動産は金額が大きく、家族間の感情にも関わりやすいため、名義変更を進める前に司法書士や税理士などの専門家へ相談しておくと安心です。

父から母へ名義変更する際の注意点

父から母へ家の名義を変更する場合、家族内の手続きであっても、相続人の同意や税金、不動産の評価額、名義変更後の管理方法まで確認しておく必要があります。

特に注意したい点は、次の通りです。

  • 相続の場合は、必要に応じて相続人全員の合意を得る
  • 発生する税金を事前に確認する
  • 不動産の評価額を把握する
  • 名義変更後の管理方法を検討する

ここからは、それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。

相続の場合は、必要に応じて相続人全員の合意を得る

父が亡くなった後、相続によって母へ家の名義を変更する場合、母だけの判断で手続きを進められるとは限りません。

遺言書がない場合は、母や子どもなど、相続人全員で「誰が家を引き継ぐのか」を話し合う必要があります。

相続人同士の話し合いを「遺産分割協議」といいます。

家を母が取得する内容で合意した場合は、その内容を遺産分割協議書にまとめます。

遺産分割協議書には、通常、相続人全員の署名と実印での押印が必要になります。

そのため、子どもなど他の相続人がいる場合に、母だけで名義変更を進めることはできません。

母の住まいを守るための名義変更であっても、他の相続人から「聞いていない」「自分の取り分に納得できない」といわれると、後からトラブルになるおそれがあります。

まずは相続人全員で状況を共有し、合意を得たうえで手続きを進めましょう。

発生する税金を事前に確認する

父から母へ家の名義を変更する場合、どの方法で名義を移すかによって、発生する税金が変わります。

主な違いは、次の通りです。

名義変更の方法主に関係する税金注意点
相続・登録免許税
・相続税
・遺産総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告・納税が必要になる
・配偶者の税額軽減を使える可能性もある
贈与・贈与税
・不動産取得税
・登録免許税
・夫婦間の贈与でも、要件を満たさないと贈与税の負担が大きくなる可能性がある
売買・不動産取得税
・登録免許税
・譲渡所得税(所得税・住民税)
・売買価格が低すぎると、差額が贈与とみなされる可能性がある

名義変更後に「こんなに税金がかかるとは思わなかった」とならないよう、手続きを始める前に税金の見込みを確認しておきましょう。

不動産の評価額を把握する

家や土地は、現金のように簡単に分けられる財産ではありません。

そのため、父から母へ名義変更する前に、不動産の評価額を把握しておくことが重要です。

不動産の評価額には、主に次のようなものがあります。

評価額の種類主な使われ方
固定資産税評価額登録免許税の計算や固定資産税の確認に使われる
相続税評価額相続税や贈与税の計算で用いられることがある
時価・査定価格売買価格の妥当性を確認するときに参考にする

たとえば、相続で母が家を取得する場合、家の評価額が高いと、他の相続人との間で「母だけが多く財産を受け取っているのではないか」と受け取られることがあります。

そのような場合は、預貯金など他の財産とのバランスも含めて話し合う必要があります。

また、売買で名義を移す場合は、価格が適正かどうかも重要です。

親族間だからといって安くしすぎると、税務上は贈与とみなされる可能性があります。

評価額は、固定資産税課税明細書や評価証明書、不動産会社の査定などで確認できます。

名義変更の前に、おおよその価値を把握しておきましょう。

そうすることで、相続人同士の不公平感を防ぎやすくなるほか、売買価格の設定を誤って贈与税などの思わぬ負担が生じるリスクも抑えられます。

名義変更後の管理方法を検討する

父から母へ名義変更をしても、家に関する問題がすべて解決するわけではありません。

名義変更後は、母が所有者として固定資産税の支払いや建物の修繕、将来の売却などを考える必要があります。

特に確認しておきたい点は、次の通りです。

確認すること内容
母が住み続けるか今後も母がその家で生活するのかを確認する
税金や修繕費の負担固定資産税、火災保険料、修繕費を誰が負担するか決めておく
将来売却する可能性母が施設へ入る場合や空き家になる場合に備えて、売却方針を考えておく
家族のサポート体制子どもが管理や手続きを手伝えるかを話し合っておく
次の相続母が亡くなった後、その家を誰が引き継ぐのかも検討しておく

母が高齢の場合、建物の修繕や売却、空き家になった場合の管理を一人で判断するのは負担になることがあります。

また、母名義にした家は、将来母が亡くなったときに、あらためて相続財産になります。

そのため、名義変更は母が安心して暮らせるか、管理費用を誰が負担するか、将来売るのか残すのかまで考えておくことが大切です。

不動産の名義変更には、登記・税金・相続人間の調整が関係します。

判断に迷う場合は、司法書士や税理士、不動産会社などに早めに相談し、家族に合った進め方を確認しておきましょう。

父から母へ家の名義変更をするときの相談先

父から母へ家の名義を変更する場合は、登記・税金・相続人同士の話し合い・不動産の活用など、複数の分野を確認する必要があります。

そのため、相談内容に合わせて適切な専門家に相談することが大切です。

主な相談先は、次の通りです。

  • 司法書士
  • 税理士
  • 弁護士
  • 不動産会社

ここからは、それぞれの専門家がどのような場面で役立つのかを見ていきましょう。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、司法書士や税理士、弁護士といった専門家と連携して、相続に関するお悩み解決をいたします。

家の名義変更だけでなく、相続後の不動産の扱いまでまとめて確認したい方はご相談ください。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

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司法書士

司法書士は、不動産の名義変更に関する登記手続きを相談できる専門家です。

父が亡くなった後に母が家を相続する場合は、相続登記が必要です。

また、父が存命のうちに贈与や売買で名義を変更する場合も、所有権移転登記を行います。

こうした登記申請書の作成や必要書類の確認、法務局への申請手続きについて相談できるのが司法書士です。

特に、相続登記では戸籍謄本や遺産分割協議書など、そろえる書類が多くなりがちです。

「何から準備すればよいかわからない」「自分で法務局に申請するのが不安」という場合は、司法書士に相談すると手続きを進めやすくなります。

税理士

父から母へ家の名義を変更する場合、方法によってかかる税金が変わります。

相続であれば相続税、贈与であれば贈与税、売買であれば父側の譲渡所得税(所得税・住民税)などを確認する必要があります。

また、母側に不動産取得税や登録免許税が関係することも。

たとえば、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する場合、贈与税の配偶者控除を使える可能性があります。

ただし、要件や申告期限を満たさなければ適用できません。

「相続・贈与・売買のどれが税金面でよいのか」「相続税の申告が必要か」「贈与税の特例を使えるか」などを確認したい場合は、税理士に相談しましょう。

弁護士

弁護士は、相続人同士で意見が合わない場合や、法的な争いが起きそうな場合に相談する専門家です。

父が亡くなった後、母へ家を相続させたいと考えていても、子どもなど他の相続人が納得しないケースがあります。

遺産分割協議がまとまらない、遺言書の内容に不満がある、遺留分をめぐって争いがあるといった場合は、弁護士に相談することで、法律に沿って対応しやすくなります。

また、すでにトラブルになっている場合だけでなく、将来的な争いを防ぐために相談することもおすすめです。

家族間で感情的な対立が起きそうな場合は、早めに弁護士へ相談しましょう。

不動産会社

不動産会社は、名義変更後の家を「どう使うか」について相談できる相手です。

母がそのまま住み続ける場合でも、将来的に売却する、貸す、管理する、空き家になる可能性がある場合は、不動産会社のサポートが役立ちます。

地域の不動産事情に詳しい会社であれば、家の査定額や売却しやすい時期、賃貸に出す場合の見通しなどの相談も可能です。

不動産相続を扱う会社であれば、司法書士・税理士・弁護士などと連携しながら、名義変更だけでなく、相続後の不動産の管理・売却・活用までまとめて相談しやすくなります。

父から母への家の名義変更に関するよくある質問

父から母へ家の名義を変更する際には、「相続と贈与のどちらがよいのか」「自分で手続きできるのか」「母名義と子ども名義のどちらにすべきか」など、判断に迷いやすい点があります。

よくある質問は、次の通りです。

  • 父から母へ名義変更するなら、相続と贈与のどちらがよいですか?
  • 父から母への名義変更は自分でできますか?
  • 相続した実家の名義は母と子どものどちらにすべきですか?

ここからは、それぞれの質問について詳しく解説します。

父から母へ名義変更するなら、相続と贈与のどちらがよいですか?

父がすでに亡くなっている場合は、基本的に相続による名義変更を進めます。

一方、父が存命の場合は、贈与によって母へ名義を移す方法も検討可能です。

税金面だけで見ると、一般的には相続のほうが負担を抑えやすいケースがあります。

相続の場合、登録免許税の税率が贈与より低く、一般的な相続による不動産取得であれば、不動産取得税も原則としてかかりません。

また、相続税には基礎控除があり、配偶者には税額軽減の制度もあります。

一方で、贈与の場合は、贈与税・不動産取得税・登録免許税などがかかることが考えられます。

ただし、婚姻期間が20年以上の夫婦で、母が住むための家を贈与する場合には、贈与税の配偶者控除を使える可能性があるのです。

この制度を利用できれば、贈与税の負担を抑えられる場合があります。

ただし、「相続が必ず有利」「贈与が必ず不利」とは言い切れません。

判断に迷う場合は、相続・贈与・売買それぞれの税金や手続きの違いを確認したうえで、司法書士や税理士に相談すると安心です。

父から母への名義変更は自分でできますか?

父から母への名義変更は、自分で手続きすることも可能です。

相続による名義変更であれば、戸籍謄本や遺産分割協議書などの必要書類をそろえ、登記申請書を作成して法務局へ提出します。

贈与や売買による名義変更の場合も、契約書や登記に必要な書類を準備すれば、本人が申請することはできます。

ただし、実際には手続きが複雑になるケースも少なくありません。

特に、次のような場合は専門家へ相談したほうが安心です。

  • 相続人が複数いる
  • 遺言書がある
  • 遺産分割協議が必要になる
  • 不動産が複数ある
  • 住宅ローンが残っている
  • 父の判断能力に不安がある
  • 贈与税や相続税がかかる可能性がある

書類に不備があると、法務局で補正を求められ、手続きに時間がかかることがあります。

また、登記はできても、税金の申告や家族間の合意が不十分だと、後から問題になる可能性も。

費用を抑えるために自分で進める方法もあります。

不安がある場合は、登記は司法書士、税金は税理士に相談しながら進めましょう。

相続した実家の名義は母と子どものどちらにすべきですか?

相続した実家を誰の名義にするかは、母の暮らし方や、将来その家をどう扱うかによって変わります。

母が今後もその家に住み続けるのであれば、母名義にすることで住まいを安定させやすくなるのです。

一方で、将来的に子どもが管理・売却する予定が明確であれば、子ども名義にすることも選択肢になります。

主な考え方は、次の通りです。

名義の候補向いているケース注意点
母名義母が今後も住み続ける場合、母の生活を優先したい場合母が亡くなったときに再度相続手続きが必要になる
子ども名義子どもが将来管理・売却する予定がある場合母の居住を守るための取り決めが必要になる
共有名義家族で公平に持分を分けたい場合売却や管理の判断に全員の同意が必要になり、後々複雑になることがある

母が住み続けることを優先しつつ、家の所有権は子どもが取得する方法として、「配偶者居住権」を活用する選択肢もあります。

この場合、母は家の所有者にはなりません。

しかし、一定の範囲でその家に住み続ける権利を持つことができます。

母の生活を守りながら、将来的な管理や売却を子ども側で検討しやすくなるケースもあるのです。

ただし、配偶者居住権を設定すると、家の処分や相続税評価にも影響する可能性があります。

家族だけで判断が難しい場合は、司法書士・税理士・不動産会社などに相談しましょう。

父から母への名義変更は、相続と不動産をまとめて相談できる窓口で進めると安心!

父から母への名義変更では、父が存命なら贈与や売買、亡くなっているなら相続登記や税金の確認が必要です。

母の住まい、家族間の不公平、将来の管理・売却まで考える必要があるため、早めに専門家へ相談すると進め方を選びやすくなります。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、提携している専門士業とともに、依頼主にとって納得のいく問題解決を目指します。

相続前か相続後かにかかわらず、お悩みのある方はお気軽にご相談ください。

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子なし夫婦の相続はどうなる?相続人の範囲や生前対策を解説

2026.07.10

子どもがいない夫婦の場合、「自分が亡くなったら、財産は配偶者にすべて渡る」と考えている方も多いのではないでしょうか。

しかし実際には、亡くなった方の父母・祖父母などの直系尊属や兄弟姉妹、場合によっては甥・姪が相続人になることがあります。

そのため、遺言書などの準備をしていないと、残された配偶者が親族と遺産分割の話し合いをしなければならないケースがあります。

特に自宅や土地などの不動産がある場合は、分け方や名義変更、売却の判断などで悩むことも少なくありません。

この記事では、子どもがいない夫婦の相続で誰が相続人になるのか、生前にできる対策について解説します。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、子どもがいないご夫婦の相続で起こりやすい「誰に財産が渡るのか」「配偶者が自宅に住み続けられるのか」といった不安に寄り添いながら、不動産の承継や生前対策を一緒に整理します。

静岡エリアの不動産事情に詳しい静鉄不動産と、司法書士・税理士・弁護士などの専門家が連携し、ご家庭の状況に合わせた進め方をご提案します。

子なし夫婦の相続や不動産の承継について不安がある方は、お気軽にお問い合わせください。

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記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

子なし夫婦の相続では配偶者だけが相続するとは限らない!知っておきたいこと

子どもがいない夫婦の相続では、まず「誰が相続人になるのか」を正しく把握しておくことが大切です。

配偶者は常に相続人になるものの、子どもがいない場合は、亡くなった方の親や兄弟姉妹なども相続人に含まれることがあります。

子なし夫婦の相続で知っておきたいポイントは、次の通りです。

  • 配偶者は常に相続人になる
  • 子どもがいない場合は父母・祖父母などの直系尊属や兄弟姉妹が関わることがある
  • 兄弟姉妹が亡くなっていると甥・姪が代襲相続人になることがある
  • 法定相続分どおりに分けなければならないとは限らない

以下からは、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

配偶者は常に相続人になる

法律上の夫婦であれば、原則として残された配偶者は常に相続人になります。

<===

第890条(配偶者の相続権)

第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

引用元:民法 | 第890条

===>

つまり、夫が亡くなった場合は妻が、妻が亡くなった場合は夫が、原則として相続人に含まれます。

ただし、ここでいう配偶者とは、婚姻届を出している法律上の配偶者を指します。

内縁関係や事実婚の場合は、原則として法定相続人にはなりません。

そのため、事実婚のパートナーに財産を残したい場合は、遺言書などの生前対策が特に重要になります。

子どもがいない場合は父母・祖父母などの直系尊属や兄弟姉妹が関わることがある

子どもがいない場合でも、配偶者がすべての財産を自動的に相続できるとは限りません。

亡くなった方の父母などの直系尊属が存命であれば、配偶者と直系尊属が相続人になる場合があります。

<===

第889条

第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。

一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。

二 被相続人の兄弟姉妹

引用元:民法 | 第889条

===>

たとえば、夫が亡くなり、夫婦に子どもがいない場合、夫の父母が存命であれば、妻と夫の父母が相続人になります。

こうした場合の法定相続分は、次の表の通りです。

相続人の組み合わせ配偶者の法定相続分親の法定相続分
配偶者と親3分の23分の1

親がすでに亡くなっている場合は、祖父母など、親等の近い直系尊属が相続人になることがあります。

また、親や祖父母などがいない場合には、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になります。

配偶者と親族が一緒に相続人になると、遺産の分け方について話し合いが必要です。

関係が良好でも、不動産のように分けにくい財産があると、話し合いが長引くことがあります。

兄弟姉妹が亡くなっていると甥・姪が代襲相続人になることがある

亡くなった方に子どもがおらず、親や祖父母もいない場合は、兄弟姉妹が相続人になります。

さらに、その兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹の子どもである甥・姪が相続人になることがあります。

<===

第889条

第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。

一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。

二 被相続人の兄弟姉妹

引用元:民法 | 第889条

===>

このように、本来相続人になるはずだった人が先に亡くなっている場合に、一定の範囲の子どもが代わりに相続することを「代襲相続」といいます。

甥・姪とは普段あまり連絡を取っていないケースも珍しくありません。

その場合、相続が発生してから連絡先を探したり、遺産分割協議の同意を得たりする必要があり、残された配偶者の負担がかかることがあります。

特に自宅や土地などの不動産がある場合、遺産分割によって特定の人の名義にするには、原則として相続人全員での話し合いが必要になります。

共有名義になった後に売却する場合も、共有者全員の同意が必要になるのが一般的です。

生前のうちに、誰が相続人になり得るのかを確認しておくことが大切です。

法定相続分どおりに分けなければならないとは限らない

法定相続分とは、民法で定められた相続割合です。

ただし、必ず割合どおりに分けなければならないわけではありません。

相続人全員が遺産分割協議で合意すれば、法定相続分とは異なる分け方をすることも可能です。

たとえば、残された配偶者が自宅を相続し、他の相続人には預貯金を分けるといった方法です。

一方で、相続人同士の話し合いがまとまらない場合は、法定相続分を目安に分け方を考えることになります。

不動産は現金のように簡単に分けられないため、共有名義のままになってしまうと、売却・賃貸・修繕するときに、内容に応じて共有者全員または一定割合の共有者の同意が必要になることがあります。

子なし夫婦で不動産を所有している場合は、残された配偶者が安心して住み続けられるように、遺言書の作成や生前の話し合いなど、早めの対策を検討しておくと安心です。

子なし夫婦の相続人パターン

子なし夫婦の相続では、亡くなった方の家族構成によって、誰が相続人になるかが変わります。

主な相続人のパターンは、次の通りです。

  • 配偶者と親
  • 配偶者と兄弟姉妹
  • 配偶者と甥・姪
  • 配偶者のみ

以下からは、それぞれのパターンについて詳しく見ていきましょう。

配偶者と親

亡くなった方に子どもがおらず、父母などの直系尊属が存命の場合は、配偶者と直系尊属が相続人になります。

たとえば、夫が亡くなり夫婦に子どもがいない場合、夫の父母が存命であれば、妻と夫の父母が相続人です。

親との関係が良好であっても、相続財産の分け方については話し合いが必要です。

特に自宅や土地などの不動産がある場合、「誰が住み続けるのか」「売却するのか」「名義をどうするのか」といった点で判断が必要になります。

残された配偶者が安心して生活を続けられるよう、生前のうちに財産の内容や希望する分け方を整理しておくと安心です。

配偶者と兄弟姉妹

亡くなった方に子どもがおらず、父母や祖父母などの直系尊属もいない場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹は別の家庭を持っていたり、遠方に住んでいたりすることも多く、遺産分割の話し合いに時間がかかることがあります。

また、不動産が相続財産に含まれる場合は、現金のように簡単に分けられないため、意見が分かれやすい点にも注意が必要です。

たとえば、配偶者が自宅に住み続けたいと考えていても、兄弟姉妹が法定相続分に応じた金銭の取得を希望することがあります。

こうした事態を避けるためにも、遺言書の作成など、生前対策を検討しておくことが大切です。

配偶者と甥・姪

亡くなった方に子どもがおらず、父母や祖父母、兄弟姉妹もすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹の子どもである甥・姪が相続人になることがあります。

本来相続人になるはずだった兄弟姉妹が先に亡くなっているため、その子どもが代わりに相続人になる仕組みです。

甥・姪が相続人になるケースでは、配偶者にとって普段あまり関わりのない親族と手続きを進めなければなりません。

特に不動産の名義変更や売却を行う場合、相続人全員の協力が必要になることがあります。

<===

(イ) 遺産分割協議書

遺産分割協議書には、相続人全員が印鑑証明書と同じ印(実印)を押し、その印鑑証明書(注①)を各1通添付します。

引用元: 法務省「登記申請手続のご案内

===>

戸籍調査や相続人の確認、財産調査なども必要になるため、早い段階で司法書士などの専門家に相談すると手続きが進めやすくなります。

配偶者のみ

亡くなった方に子どもがおらず、父母や祖父母、兄弟姉妹、甥・姪もいない場合は配偶者のみが相続人になり、相続財産をすべて受け継ぐことになります。

ただし、「他に相続人はいない」と思っていても、戸籍を確認してみると相続人にあたる親族が見つかるケースもあります。

相続人の有無は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をたどって確認することが必要です。

自己判断で手続きを進めてしまうと、後から別の相続人が判明し、遺産分割や不動産の名義変更をやり直さなければならない可能性があります。

配偶者のみが相続すると思われる場合でも、まずは専門家に相談しましょう。

子なし夫婦で法定相続分が変わるケース

子なし夫婦の相続では、誰が相続人になるかによって配偶者の取り分が変わります。

主なケースは、次の通りです。

  • 配偶者と親が相続人になる場合
  • 配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合
  • 配偶者のみが相続人になる場合

表でも違いを確かめてみてください。

相続人の組み合わせ配偶者の法定相続分その他の相続人の法定相続分
配偶者と親3分の2親が3分の1
配偶者と兄弟姉妹4分の3兄弟姉妹が4分の1
配偶者のみすべてなし

以下からは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

配偶者と親が相続人になる場合

亡くなった方に子どもがおらず、父母などの親が存命の場合は、配偶者と親が相続人になります。

この場合の法定相続分は、配偶者が3分の2、親が3分の1です。

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第900条(法定相続分)

第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。

二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。

引用元:民法 | 第900条

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父母が2人とも存命の場合は、親の取り分である3分の1を2人で分けるため、それぞれ6分の1ずつになります。

父母のうち1人だけが存命の場合は、その親が3分の1を相続します。

なお、法定相続分はあくまで法律上の目安です。

相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で分けることもできます。

ただし、自宅や土地などの不動産がある場合は、簡単に分けられません。

残された配偶者が自宅に住み続けたい場合でも、親の取り分をどのように調整するかが問題になることがあります。

配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合

亡くなった方に子どもがおらず、父母や祖父母などもいない場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人になります。

この場合の法定相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。

<===

第900条(法定相続分)

第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

(略)

三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。

引用元:民法 | 第900条

===>

兄弟姉妹が複数いる場合は、原則として兄弟姉妹全員の取り分である4分の1を人数に応じて分けます。

ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1の相続分になります。

たとえば、父母の双方を同じくする兄弟姉妹が2人いる場合は、次の表のようにそれぞれ8分の1ずつが法定相続分の目安になります。

相続人法定相続分
配偶者4分の3
兄弟姉妹2人それぞれ8分の1

配偶者と兄弟姉妹が相続人になるケースでは、普段あまり交流のない親族と遺産分割の話し合いが必要になることもあります。

特に不動産を相続する場合、売却するのか、配偶者が住み続けるのか、代償金を支払うのかなど、早めに整理しておくことが大切です。

配偶者に不動産を残したい場合は、遺言書を作成しておくことで、相続発生後の負担を軽くできる可能性があるのです。

配偶者のみが相続人になる場合

亡くなった方に子どもがおらず、父母や祖父母、兄弟姉妹、甥・姪などもいない場合は、配偶者のみが相続人になります。

この場合、配偶者が原則としてすべての相続財産を受け継ぎます。

ただし、配偶者だけが相続人だと思っていても、手続きが不要になるわけではありません。

不動産を相続する場合は相続登記、預貯金がある場合は金融機関での手続きが必要です。

また、相続財産が相続税の基礎控除を超える場合は、相続税の申告・納税が必要になります。

自己判断で進めず、司法書士や税理士などの専門家に確認しながら進めると安心です。

子なし夫婦の相続で起こり得るトラブル

子どもがいない夫婦の相続では、配偶者以外の親族が相続人になることがあります。

そのため、残された配偶者が「自宅に住み続けたい」と考えていても、他の相続人との話し合いが必要になる場合があります。

特に不動産は、現金のように簡単に分けられません。

子なし夫婦の相続では、自宅や土地、預貯金、借金など、財産の種類によって揉めやすいポイントが異なります。

主な財産ごとの注意点と、放置した場合に起こりやすい問題は次の表の通りです。

財産の種類揉めやすい理由放置すると起こりやすいこと
自宅残された配偶者は住み続けたい一方で、他の相続人からは「相続財産」として見られるため・配偶者が住み続けにくくなる
・売却の話し合いがまとまらない
土地価値が分かりにくく、現金のように簡単に分けられないため共有名義のままになり、売却や活用が進まなくなる
収益物件家賃収入だけでなく、管理・修繕・敷金返還などの負担もあるため管理する人が決まらず、空室の増加や収益悪化につながる
預貯金分けやすそうに見えても、金融機関での相続手続きや、遺産分割協議が必要になることがあるため口座が凍結され、生活費や手続き費用を用意しにくくなる
借金・未払金財産だけでなく、借金や未払金も相続の対象になるため相続後に想定外の支払いが発生する

不動産が共有名義になると、売却や大きな変更には共有者全員の同意が必要になる場合があります。

賃貸や修繕についても、内容によって必要な同意の範囲が変わるため、共有者同士で調整が必要になりやすい点に注意しましょう。

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第251条(共有物の変更)

第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

引用元:民法 | 第251条

===>

相続人の人数が増えたり、親族関係が疎遠だったりすると、話し合いが進みにくくなることもあります。

子なし夫婦の相続では、「配偶者が困らないようにすること」と「不動産をどう扱うか」を早めに整理しておくことが大切です。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、司法書士・税理士・弁護士などと連携し、相続人調査、遺言書作成のサポート、不動産の名義変更、相続税に関するご相談、不動産の管理・売却まで、状況に応じてサポートしています。

子なし夫婦の相続で、配偶者以外の親族との話し合いや不動産の扱いに不安がある方は、お気軽にお問い合わせください。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

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子なし夫婦が配偶者を守るために進めたい相続対策

子どもがいない夫婦の相続では、亡くなった方の親、兄弟姉妹、甥・姪が相続人になる可能性があるため、残された配偶者だけで手続きを進められないことがあります。

自宅や土地などの不動産がある場合は、配偶者が住み続けられるよう、生前のうちに対策を考えておくことが大切です。

子なし夫婦が配偶者を守るために進めたい相続対策は、次の通りです。

  • 遺言書を作成する
  • 生前贈与で一部の財産をあらかじめ移しておく
  • 家族信託を活用して財産管理を任せる
  • 生命保険を活用して配偶者に現金を残す
  • 不動産を現金化する

以下からは、それぞれの対策について詳しく見ていきましょう。

遺言書を作成する

子なし夫婦の相続対策で、まず検討したいのが遺言書の作成です。

遺言書を作成しておけば、「誰に、どの財産を、どのように残したいか」を生前に示すことが可能です。

たとえば、「自宅は配偶者に相続させる」と遺言書に書いておけば、残された配偶者が住み慣れた家に住み続けやすくなります。

遺言書について、以下の表で概要を確かめてみてください。

遺言書の種類特徴注意点
自筆証書遺言自分で作成でき、費用を抑えやすい書き方に不備があると無効になるおそれがある
公正証書遺言公証人が作成に関わるため、形式面の不備が起こりにくい証人や費用が必要になる

一方、遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を受け継ぐのかを話し合うことが必要です。

特に不動産を配偶者に残したい場合は、遺言書の書き方に不備があると名義変更が進まないおそれがあります。

司法書士などの専門家に相談しながら、相続手続きで使いやすい遺言書を作成しておくと安心です。

なお、亡くなった方の親が相続人になる場合は遺留分に配慮が必要です。

一方で、相続人が配偶者と兄弟姉妹だけの場合、兄弟姉妹には遺留分がありません。

そのため、配偶者に財産を残したい子なし夫婦にとって、遺言書は重要な対策になります。

生前贈与で一部の財産をあらかじめ移しておく

生前贈与とは、亡くなる前に財産を渡しておく方法です。

相続が発生する前に、預貯金や不動産の一部を配偶者へ移しておくことで、相続時に話し合いが必要になる財産を減らせる可能性があります。

たとえば、自宅を配偶者に生前贈与しておけば、将来の相続時に「誰が自宅を取得するのか」でもめるリスクを抑えやすくなります。

また、婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、居住用不動産やその購入資金の贈与について一定の要件を満たすことで、基礎控除とは別に最高2,000万円まで控除できる贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)を利用できる場合があります。

ただし、制度を利用するには条件があり、同じ配偶者からは原則として一度しか使えません。

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婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、贈与税の申告をすることにより基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。

特例の適用を受けるための要件

(1) 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと。

(2) 配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること。

(3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。

引用元:国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

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生前贈与は、相続対策として有効な一方で、贈与税や不動産取得税、登録免許税などの費用がかかることがあります。

不動産を贈与する場合は、税金や登記手続きも含めて、事前に専門家へ確認することが大切です。

家族信託を活用して財産管理を任せる

家族信託とは、財産を持つ人が委託者となり、信頼できる家族などを受託者として、財産の管理や処分を任せる仕組みです。

将来、認知症などで判断能力が低下した場合でも、あらかじめ決めた家族などが財産の管理や処分を行いやすくなります。

たとえば、不動産を家族信託に入れておくと、本人が判断できなくなった後でも、受託者が管理や売却を進められる場合があります。

そのため、「自宅をどう管理するか」「収益物件の家賃や修繕をどうするか」といった問題に備えることができるのです。

また、家族信託では、財産を管理する方や、信託契約の内容によっては、本人の死亡後に財産を取得する人を定めておける場合があります。

子どもがいない夫婦の場合、配偶者の生活を守りながら、その後の財産の行き先まで考えたいケースにも活用しやすい方法です。

ただし、家族信託は契約内容の設計が重要です。

不動産を信託する場合は登記手続きも関係するため、司法書士や弁護士などに相談しながら進めることをおすすめします。

生命保険を活用して配偶者に現金を残す

生命保険を活用すると、相続発生後に配偶者へまとまった現金を残しやすくなります。

生命保険金は受取人が指定されている場合、原則として受取人固有の財産として扱われるため、遺産分割協議の対象にはならないとされています。

そのため、配偶者を受取人に指定しておけば、葬儀費用や当面の生活費、相続手続きに必要な費用として使いやすくなるのがメリットです。

預貯金口座が凍結されてすぐに引き出せない場合でも、保険金があれば残された配偶者の生活資金を確保しやすくなります。

また、不動産を配偶者が相続する場合、他の相続人との調整のために現金が必要になることがあります。

ただし、契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって、相続税や贈与税などの扱いはさまざまです。

保険を相続対策として使う場合は、契約内容を確認しましょう。

不動産を現金化する

自宅や土地、収益物件などの不動産は、相続時にトラブルになりやすい財産です。

現金のように簡単に分けられず、共有名義になると売却や活用に相続人全員の協力が必要になることがあります。

そのため、使っていない土地や管理が難しい不動産がある場合は、生前に売却して現金化しておくことも一つの方法です。

現金にしておけば、配偶者の生活資金として使いやすく、相続時の分け方も整理しやすくなります。

特に、空き家、遠方の土地、老朽化した収益物件などは、相続後に管理の負担が増えることがあります。

残された配偶者が困らないよう、元気なうちに「残す不動産」と「整理する不動産」を分けて考えておくことが大切です。

不動産を売却する場合は、売却価格だけでなく、税金、引っ越し費用、住み替え先、将来の生活資金も含めて検討しましょう。

相続対策として不動産を現金化する場合は、不動産会社だけでなく、税理士や司法書士などとも連携しながら進めると安心です。

子なし夫婦の相続を考えるなら、ワンストップで相談できる窓口が安心

子どもがいない夫婦の相続では、親族が相続人になり、配偶者だけで決められない場合があります。

特に家や土地は分けにくいため、住む・売る・管理するなどの判断でトラブルになりやすい傾向があります。

不動産の名義変更や戸籍集め、税金の確認も必要になるため、法律・税金・不動産をまとめて相談できる窓口があると進めやすいです。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、静岡の不動産事情を踏まえながら、専門士業と連携し、生前対策や相続発生後の手続き、不動産の管理・運用・売却に関するご相談を幅広く承っています。

相続や不動産の承継に不安がある方は、お気軽にお問い合わせください。

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妻の相続で知っておきたい基礎知識!相続分・不動産・相続税対策まで徹底解説

2026.07.10

夫が亡くなった後の相続では、財産の受け取り方や自宅の扱い、税金、手続きの順番まで考える必要があります。

特に不動産がある場合は、住み続けるのか売るのかも決めなければなりません。

相続人の確認や名義変更など手続きも多いため、早めに全体を整理しておくことが大切です。

この記事では、妻が相続するときの基本的な相続分、不動産を相続する際の注意点、相続税の考え方、生前にできる対策まで、初めて相続に向き合う方にもわかりやすく解説します。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、司法書士・税理士・弁護士などの専門家と連携しながら、相続登記を含む不動産の名義変更、遺産分割協議の進め方の整理、相続税申告に関するご相談、生前対策などをサポートしています。

「何から始めればよいかわからない」という段階でも、状況を整理しながら進めることが可能です。

まずはお気軽にお問い合わせください。

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記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

妻の相続分はどのくらい?

妻の相続分は、夫に子ども・直系尊属・兄弟姉妹など、ほかの相続人がいるかどうかによって変わります。

法律上の妻は、夫の相続において常に相続人になります(ただし、内縁関係や事実婚の相手は、民法上の相続人には含まれません)。

しかし、子ども、直系尊属、兄弟姉妹がいる場合には、それぞれの相続分も考えなくてはなりません。

また、以下から紹介する割合は「法定相続分」と呼ばれる、民法で定められた相続割合です。

遺言書がある場合や、相続人全員で話し合って分け方を決める場合は、必ずしもこの割合どおりになるとは限りません。

相続分の基本パターンは、次の通りです。

  • 子どもがいる場合は、妻が2分の1を相続する
  • 子どももおらず直系尊属(親や祖父母など)がいる場合は、妻が3分の2を相続する
  • 子どもも直系尊属(親や祖父母など)もおらず兄弟姉妹がいる場合は、妻が4分の3を相続する
  • ほかに相続人がいない場合は妻が原則としてすべて相続する

以下からは、ケースごとの相続分と注意点について詳しく見ていきましょう。

子どもがいる場合は、妻が2分の1を相続する

夫に子どもがいる場合、以下の表のように妻の法定相続分は2分の1です。

残りの2分の1を、子ども全員で分けます。

相続人法定相続分
2分の1
子ども全員2分の1

たとえば、妻と子ども2人が相続人になる場合は、妻が2分の1、子どもはそれぞれ4分の1ずつ相続するのが基本です。

子どもが3人いる場合は、子ども側の2分の1を3人で分けるため、それぞれ6分の1ずつになります。

なお、子どもがすでに亡くなっている場合でも、その子どもの直系卑属である孫などがいると、代わりに相続人になることがあります。

そのため、相続人を確認するときは、家族の記憶だけで判断せず、戸籍をもとに正確に確認することが大切です。

子どももおらず直系尊属(親や祖父母など)がいる場合は、妻が3分の2を相続する

子どもがいない場合でも、夫の直系尊属(親や祖父母など)が存命であれば、妻だけが相続するわけではありません。

子どもがおらず直系尊属(親や祖父母など)がいる場合、以下の表のように妻の法定相続分は3分の2、直系尊属の法定相続分は3分の1です。

相続人法定相続分
3分の2
夫の父母などの直系尊属3分の1

夫の父母が2人とも存命であれば、親側の3分の1を2人で分けるため、父が6分の1、母が6分の1ずつとなります。

父母がいない場合は、祖父母など親等の近い直系尊属が相続人になることがあります。

「子どもがいないから妻がすべて相続できる」と思われる方もいますが、夫の親がいる場合は親も相続人になります。

<===

<第2順位>

死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)

父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。

第2順位の人は、第1順位の人がいないときに相続人になります。

引用元:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分

===>

遺産分割の話し合いや不動産の名義変更を進める前に、まず誰が相続人になるのかを確認しておきましょう。

子どもも直系尊属(親や祖父母など)もおらず兄弟姉妹がいる場合は、妻が4分の3を相続する

夫に子どもがおらず、親や祖父母もいない場合で、夫の兄弟姉妹がいるときは、以下の表のように妻の法定相続分は4分の3です。

残りの4分の1を、夫の兄弟姉妹で分けます。

相続人法定相続分
4分の3
夫の兄弟姉妹全員4分の1

子どもも親もおらず兄弟姉妹がいるケースでは、相続人の確認が複雑になりやすい点に注意が必要です。

夫の兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、兄弟姉妹の子ども、つまり夫の甥・姪が相続人になることがあります。

ただし、兄弟姉妹側の代襲相続は原則として甥・姪までで、甥・姪の子がさらに代襲相続することはありません。

<===

<第3順位>

死亡した人の兄弟姉妹

その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子どもが相続人となります。

第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。

引用元:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分

===>

妻としては「夫婦に子どもがいないので、自分だけが相続人になる」と考えていても、実際には夫の兄弟姉妹や甥・姪との話し合いが必要になることがあります。

不動産を相続する場合も、遺産分割によって名義変更を行うには相続人全員の合意が必要になることがあるため、早めに戸籍を集めて確認することが重要です。

ほかに相続人がいない場合は妻が原則としてすべて相続する

夫に子どもがおらず、親や祖父母もおらず、兄弟姉妹や甥・姪もいない場合は、妻がすべての財産を相続します。

ほかに相続人がいない場合、次の表のように妻の法定相続分は100%です。

相続人法定相続分
すべて

ただし、実際の手続きでは「ほかに相続人がいない」ことを戸籍で確認する必要があります。

特に不動産の名義変更を行う場合は、夫の出生から死亡までの戸籍などを集め、相続人を確定させることが一般的です。

相続人の確認が不十分なまま進めると、後から別の相続人が判明し、遺産分割や不動産の手続きがやり直しになるおそれがあります。

妻が単独で相続するケースでも、まずは戸籍をもとに相続関係を整理してから進めると安心です。

妻が相続するときに必要な手続き

夫が亡くなった後、妻が相続手続きを進めるときは、思いついたものから個別に対応するのではなく、順番に整理して進めることが大切です。

特に不動産がある場合は、相続人の確認や遺産分割の内容がはっきりしないと、名義変更の手続きに進めないことがあります。

妻が相続するときの主な手続きは、次の通りです。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 相続人と相続財産を調査する
  3. 遺産分割協議を行う
  4. 預貯金や不動産の名義変更を行う
  5. 必要に応じて相続税を申告する

以下からは、妻が相続を進めるときの流れについて詳しく見ていきましょう。

1.遺言書の有無を確認する

相続が始まったら、まず夫が遺言書を残していないかを確認します。

遺言書がある場合、財産の分け方や誰に何を渡すかが指定されていることがあるためです。

遺言書には、主に公証役場で作成する「公正証書遺言」と、自分で書く「自筆証書遺言」があります。

公正証書遺言は、公証役場の遺言検索システムを利用して、作成の有無を確認できる場合があります。

また、自筆証書遺言については、法務局の保管制度を利用している場合、法務局で確認できることがあります。

一方、自宅などで自筆証書遺言が見つかった場合は、法務局で保管されている自筆証書遺言を除き、家庭裁判所で検認の手続きが必要です。

封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いのもと開封する必要があります。

家庭裁判所以外で開封すると、5万円以下の過料に処される可能性があるため注意が必要です。

遺言書の有無によって、その後の遺産分割協議や名義変更の進め方が変わります。

相続手続きを始める前に、まず遺言書があるかどうかを確認しましょう。

2.相続人と相続財産を調査する

遺言書の確認ができたら、次に「誰が相続人になるのか」と「どのような財産があるのか」を調べます。

相続人を確認するには、夫の出生から死亡までの戸籍を集めるのが基本です。

妻や子どもだけでなく、子どもがいない場合は夫の親、親もいない場合は夫の兄弟姉妹や甥・姪が代襲相続人として相続人になることがあります。

財産の調査では、預貯金や不動産、有価証券、生命保険などのプラスの財産だけでなく、住宅ローン、借入金、未払金、保証債務の有無などのマイナスの財産も確認します。

生命保険金は、受取人の指定内容によって遺産分割の対象になるか、受取人固有の財産として扱われるかが変わる場合があるため、保険証券や受取人の情報もあわせて確認しておきましょう。

受取人が指定された死亡保険金は、通常、受取人固有の財産として遺産分割の対象外になる一方、相続税の計算ではみなし相続財産として扱われることがあります。

主に確認すべき財産は、次の通りです。

種類主な確認内容
預貯金・銀行口座
・残高証明書
・通帳の履歴
など
不動産・自宅
・土地
・賃貸物件
・登記事項証明書
・固定資産税の書類
など
有価証券・株式
・投資信託
・証券会社の取引報告書
など
保険・生命保険金
・医療保険
・受取人の指定内容
など
負債・住宅ローン
・借入金
・クレジットカード債務
・未払税金
など

特に不動産がある場合は、誰が取得するのか、売却するのか、共有にするのかによって、その後の手続きや税金への影響が変わります。

相続財産を正確に把握してから、分け方を検討することが大切です。

また、借金が多い場合には、相続放棄や限定承認を検討した方がよいケースもあります。

相続放棄は原則として「自己のために相続が始まったことを知った時から3か月以内」に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述する必要があります。

借金の有無がはっきりしない場合は、財産調査を急ぐとともに、期限内に判断できないときは「期間伸長の申立て」も検討しましょう。

3.遺産分割協議を行う

遺言書がない場合や、遺言書に書かれていない財産がある場合は、相続人全員で遺産の分け方を話し合います。

遺産の分け方を話し合うことを「遺産分割協議」といいます。

遺産分割協議は、相続人全員の参加が必要です。

妻だけで決めることはできず、子どもや夫の親、夫の兄弟姉妹など、相続人になる人全員で合意する必要があります。

話し合いで決めるものの例は、次の通りです。

  • 自宅を妻が相続して住み続けるのか
  • 不動産を売却して現金で分けるのか
  • 預貯金をどのように分けるのか
  • 借入金や未払金について、相続人間でどのように負担するか

協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成しましょう。

遺産分割協議書は、不動産の相続登記や預貯金の払い戻しなどで必要になる重要な書類です。

話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用することもあります。

不動産が関わる相続では、感情面だけでなく、住まい・売却・税金・将来の管理まで考える必要があるため、早めに専門家へ相談すると整理しやすくなります。

4.預貯金や不動産の名義変更を行う

遺産の分け方が決まったら、財産ごとに名義変更や払い戻しの手続きを進めましょう。

預貯金については、金融機関に相続の手続きを申し出て、必要書類を提出することになります。

一般的な必要書類は、戸籍、相続人の本人確認書類、印鑑証明書、遺言書または遺産分割協議書などです。

必要書類は金融機関によって異なるため、各金融機関に確認しながら進めましょう。

不動産については、夫名義の自宅や土地を相続する場合、相続登記を行うことになります。

相続登記とは、不動産の名義を亡くなった夫から、相続した妻などへ変更する手続きです。

不動産の相続登記は義務化されており、相続によって不動産を取得したことを知った日から、原則として3年以内に申請する必要があります。

正当な理由なく手続きをしない場合、10万円以下の過料の対象になることがあります。

預貯金や不動産などの相続手続きで主に必要になる書類は、次の通りです。

手続き主な必要書類
・預貯金の払い戻し
・名義変更
・戸籍
・印鑑証明書
・遺産分割協議書
・金融機関所定の書類
など
不動産の相続登記・戸籍
・住民票
・固定資産評価証明書
・遺産分割協議書
・登記申請書
など
有価証券の名義変更・戸籍
・相続関係書類
・証券会社所定の書類
など

戸籍を何度も提出する負担を減らしたい場合は、法定相続情報一覧図を利用する方法もあります。

相続人が多い場合や、複数の金融機関・不動産の手続きがある場合には、手続きを効率化しやすくなります。

5.必要に応じて相続税を申告する

相続財産から債務や葬式費用などを差し引いた課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合は、原則として相続税の申告・納税が必要になる可能性があります。

より正確には、相続税の申告が必要かどうかは原則として、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを適用する前の課税価格の合計額が基礎控除額を超えるかで確認します。

基礎控除額は、次の計算式で求めることが可能です。

===

3,000万円+600万円×法定相続人の数

===

たとえば、法定相続人が妻と子ども2人の合計3人であれば、基礎控除額は4,800万円です。

相続財産から借金や葬式費用などを差し引いた金額が、基礎控除額を超える場合には、相続税の申告・納税が必要になる可能性があります。

相続税の申告期限は、夫が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

相続税の申告が必要な場合は、財産評価や特例の確認に時間がかかることがあるため、早めに準備を始めることが大切です。

特に妻が相続する場合は、配偶者の税額軽減を使えることがあります。

ただし、配偶者の税額軽減制度を使うことで相続税がかからなくなる場合でも、申告が必要になるケースがあります。

不動産がある相続では、土地や建物の評価額によって相続税の有無が変わる点に注意が必要です。

自宅を妻が相続する場合でも、「税金がかからなさそう」と自己判断せず、必要に応じて税理士などの専門家に確認すると安心です。

妻に相続税はかかる?

妻が相続する場合、相続税が必ずかかるわけではありません。

配偶者には税負担を抑える制度があるため、妻が多くの財産を相続しても、相続税がかからないケースがあります。

ただし、「妻だから相続税はかからない」と単純に判断するのは注意が必要です。

相続税が0円になる場合でも申告が必要なことがあり、さらに将来、妻が亡くなったときの「二次相続」まで考えると、家族全体の税負担が増えることもあります。

妻の相続税に関する注意事項は、次の通りです。

  • 配偶者の税額軽減により相続税がかからないケースがある
  • 相続税がかからなくても申告が必要な場合がある
  • 妻に多く相続させると二次相続で税負担が増えることがある

以下からは、妻の相続税で押さえておきたいポイントを詳しく見ていきましょう。

配偶者の税額軽減により相続税がかからないケースがある

妻が夫の財産を相続する場合、「配偶者の税額軽減」という制度を使えることがあります。

配偶者の税額軽減は、配偶者が取得した財産について、一定額まで相続税の負担を軽くできる制度です。

次の表は、配偶者の税額軽減によって配偶者に相続税がかからない範囲をまとめたものです。

相続税がかからない基準補足
1億6,000万円妻が取得した正味の遺産額が1億6,000万円まで
法定相続分相当額妻の法定相続分にあたる金額まで

ただし、配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割や遺贈などにより実際に取得した財産をもとに計算します。

申告期限までに分割されていない財産は、原則として軽減の対象にならないため注意が必要です。

たとえば、妻が相続する財産が1億6,000万円以下であれば、配偶者の税額軽減制度によって妻の相続税がかからない可能性があります。

また、1億6,000万円を超えていても、妻の法定相続分の範囲内であれば、相続税がかからない場合があります。

不動産がある相続では、自宅の土地について「小規模宅地等の特例」を使えるかどうかも重要です。

一定の要件を満たすと、自宅の土地の評価額を下げられることがあり、相続税の負担に影響します。

特に、妻が夫名義の自宅を相続して住み続ける場合は、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使える可能性があります。

ただし、適用には細かな条件があるため、不動産の評価や税金については税理士などの専門家に確認しながら進めると安心です。

相続税がかからなくても申告が必要な場合がある

相続税の計算をした結果、妻の相続税が0円になる場合でも、申告が必要になることがあります。

特に、配偶者の税額軽減を使って相続税が0円になる場合は、相続税の申告書を提出する必要があります。

制度を使った結果として税額がなくなるのであって、何もしなくても自動的に非課税になるわけではありません。

また、自宅の土地などについて小規模宅地等の特例を使う場合も、原則として申告が必要です。

特例を使えば税額が下がったり、結果として相続税がかからなくなったりすることがあります。

しかし、申告書や必要書類を期限内に提出しなければ、特例を受けられないことがあります。

主な注意点は、次の表の通りです。

ケース申告が必要かどうか
(特例を適用しない課税価格の合計額が)基礎控除の範囲内に収まる原則として不要
配偶者の税額軽減で税額が0円になる必要
小規模宅地等の特例で税額が0円になる必要
相続税が発生する必要(納税も忘れずに)

相続税の申告期限は、夫が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

不動産の評価、遺産分割協議、必要書類の準備には時間がかかることがあります。

「妻が相続するから大丈夫」「税金はかからなそう」と自己判断せず、早めに財産内容を整理し、申告が必要かどうかを確認しておきましょう。

妻に多く相続させると二次相続で税負担が増えることがある

夫が亡くなったときの相続を「一次相続」、その後に妻が亡くなったときの相続を「二次相続」といいます。

一次相続では、配偶者の税額軽減を使うことで、妻に多くの財産を相続させても税負担を抑えられる場合があります。

しかし、妻に財産を集中させすぎると、二次相続で子どもたちの相続税が重くなることがあるのです。

二次相続で税負担が増えやすい理由は、主に次の表の通りです。

理由補足
配偶者の税額軽減が使えないから妻の相続では、子どもに配偶者の税額軽減は使えない
法定相続人の数が減るから夫の相続時より相続人が少なくなり、基礎控除額が小さくなることがある
妻自身の財産も加わるから一次相続で受け取った財産に、妻がもともと持っていた財産が合算される
不動産の分け方が難しくなるから自宅や土地が残ると、売却・共有・代償金の問題が起こることがある

たとえば、一次相続で「とりあえず妻にすべて相続させる」と、その時点では税負担を抑えられるかもしれません。

しかし、妻が亡くなったときに、妻の財産が大きくなっていれば、子ども世代の相続税が増える可能性があります。

妻の生活資金や住まいを守ることは、もちろん大切です。

しかし、同時に、二次相続で子どもにどのような負担が生じるかも考えておかなければなりません。

不動産がある場合は、一次相続の段階で「妻が住み続けるのか」「将来売却するのか」「子どもにどのように引き継ぐのか」まで整理しておくと、後の相続トラブルや税負担を抑えやすくなります。

相続税対策は、一度目の相続だけで判断せず、家族全体の将来を見据えて検討することが大切です。

妻を守るために生前からできる相続対策

妻が安心して生活を続けられるようにするには、相続が起きてから対応するのではなく、夫が元気なうちに準備しておくことが大切です。

特に自宅や土地などの不動産がある場合は、「誰が住み続けるのか」「誰の名義にするのか」「将来売却する可能性はあるのか」まで考えておく必要があります。

何も決めないまま相続が始まると、妻が自宅に住み続けたいと思っていても、ほかの相続人との話し合いが必要になり、手続きが長引くことがあります。

生前から検討したい対策は、次の通りです。

  • 遺言書を作成する
  • 財産一覧を整理する
  • 自宅を誰が相続するか決めておく
  • 必要に応じて家族信託や生前贈与を活用する

以下からは、妻の生活を守るためにできる相続対策を詳しく見ていきましょう。

遺言書を作成する

遺言書を作成しておくと、「自宅は妻に相続させる」「預貯金の一部は妻の生活費として残す」など、夫の意思を明確に残すことができます。

遺言書がない場合、遺産は相続人全員で話し合って分けることになります。

子どもがいる場合は妻と子ども、子どもがいない場合は夫の親や兄弟姉妹が相続人になることもあるのです。

そのため、妻が自宅に住み続けたいと思っていても、必ずしも妻だけで決められるわけではありません。

遺言書には、主に次のような種類があります。

種類特徴
自筆証書遺言自分で作成できるが、書き方の不備に注意が必要
公正証書遺言公証人が関与して作成するため、形式面の不備が起こりにくい
法務局で保管する自筆証書遺言紛失や改ざんを防ぎやすく、相続開始後の確認もしやすい

妻の生活を守る目的で遺言書を作る場合は、単に「妻に多く残す」と書くだけではなく、自宅、預貯金、賃貸不動産、借入金などを整理したうえで、具体的に記載することが大切です。

また、妻が自宅に住み続けられるようにする方法として、「配偶者居住権」を考えることもあります。

配偶者居住権を使うと、妻が自宅に住み続ける権利を確保しながら、預貯金などほかの財産も受け取りやすくなる場合があります。

遺言書は、作成方法を誤ると相続時に使えない可能性がある点に注意が必要です。

妻の住まいや生活資金に関わる内容は、司法書士や弁護士などの専門家に確認しながら作成すると安心です。

財産一覧を整理する

生前に財産一覧を作っておくと、相続が起きた後に妻が財産を探し回る負担を減らせます。

相続手続きでは、預貯金や不動産だけでなく、借入金や未払金なども確認しなければなりません。

どこに何があるかわからない状態だと、相続人の確認や遺産分割協議、相続税の申告、不動産の名義変更まで時間がかかってしまいます。

整理しておきたい主な内容は、次の通りです。

種類整理しておきたい内容
預貯金・金融機関名
・支店名
・口座の種類
・通帳
・キャッシュカードの保管場所
不動産・自宅
・土地
・賃貸物件
・登記情報
・固定資産税の書類
有価証券・株式
・投資信託
・証券会社名
・取引報告書
保険・生命保険
・医療保険
・受取人
・証券番号
負債・住宅ローン
・借入金
・クレジットカード債務
・未払金
その他・車
・貴金属
・家財
・毎月の引き落とし
・契約中のサービス

財産一覧は、必ずしも最初から完璧に作る必要はありません。

まずは「どの金融機関と取引があるか」「不動産の書類はどこにあるか」「借入金があるか」など、妻が相続時に困りやすい情報から整理しておきましょう。

特に不動産は、固定資産税の納税通知書や登記事項証明書などがあると、相続後の確認がしやすくなります。

自宅以外に土地や空き家、共有不動産がある場合は、家族が把握していないこともあるため、早めに一覧化しておくことが大切です。

自宅を誰が相続するか決めておく

妻を守る相続対策では、自宅をどうするかがポイントになります。

自宅は生活の基盤であると同時に、相続財産の中でも金額が大きくなりやすい財産だからです。

妻が自宅に住み続けたい場合に話し合っておきたいことは、次の通りです。

  • 妻が自宅の所有権を取得するのか
  • 妻が住み続ける権利を確保するのか
  • 将来的に売却する可能性があるのか
  • 子どもなど、ほかの相続人に代償金を支払う必要があるのか
  • 空き家になった場合に、誰が管理するのか

自宅を相続人同士の共有にすると、売却や建て替え、賃貸活用などを行う際に全員の同意が必要になることがあります。

その結果、話し合いがまとまらず、不動産を動かせない状態になることもあります。

また、不動産を相続した場合は、相続登記の手続きも必要です。

相続登記は義務化されているため、相続によって不動産を取得したことを知った日から、原則として3年以内に申請しなければなりません。

自宅を妻に残すのか、将来的に売却するのか、子どもに引き継ぐのかは、家族構成や財産状況によって適した方法が異なります。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、司法書士などの専門家と連携しながら、相続登記を含む不動産の名義変更、売却、管理、活用までまとめて相談できます。

自宅を残すか売却するか迷っている段階でも、早めに方向性を整理しておくことが大切です。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

相続の疑問、専門家がまとめてお答えします

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必要に応じて家族信託や生前贈与を活用する

妻の生活を守る対策方法として、次の表のように家族信託や生前贈与を活用するケースもあります。

対策方法検討するケース
家族信託認知症などに備えて財産管理の方法を決めておきたい場合
生前贈与生前に妻へ財産を移し、将来の相続に備えたい場合
夫婦間で居住用不動産を贈与したときの配偶者控除婚姻期間が長く、自宅を妻へ贈与したい場合

ただし、いずれも制度の内容を理解したうえで使わないと、かえって手続きや税金の負担が増えることがあります。

家族信託とは、財産を持っている方が委託者となり、信頼できる家族などを受託者として、財産の管理や処分を任せる仕組みです。

たとえば、夫が認知症などで判断能力が低下すると、預金の引き出しや不動産の売却が難しくなることがあります。

家族信託を活用しておくと、契約内容に沿って家族が財産管理を進められる場合があります。

生前贈与は、生前に財産を移しておく方法のひとつです。

しかし、相続開始前の一定期間内に行われた贈与は、相続税の計算に加算される場合があります。

贈与税だけでなく、将来の相続税との関係も確認しておくことが大切です。

夫婦間で自宅や自宅の購入資金を贈与する場合、一定の条件を満たすと配偶者控除を使えることがあります。

ただし、贈与税の申告や要件の確認が必要です。

また、贈与した財産が相続税の計算に加算される場合もあるため、「生前に渡せば必ず節税になる」とは限りません。

妻の生活資金、自宅の名義、二次相続で子どもにかかる税負担まで含めて考えることが大切です。

家族信託や生前贈与は、法律・税務・不動産の判断が関係します。

制度だけを見て決めるのではなく、妻が安心して暮らせるか、不動産を無理なく管理できるか、将来の相続で家族が困らないかを踏まえて、専門家に相談しながら進めましょう。

相続で妻の負担を減らすには、ワンストップで全体整理できる窓口を活用しよう!

夫が亡くなった後の相続では、相続人、財産、分け方、名義変更、税金をまとめて整理することが大切です。

特に自宅や土地がある場合は、妻が住み続けるのか、売るのか、誰の名義にするのかまで考えます。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、司法書士・税理士・弁護士などと連携し、不動産、登記、税金、遺産分割までまとめて相談できます。

「何から始めればよいかわからない」「妻が自宅に住み続けられるようにしたい」「不動産を残すべきか売却すべきか迷っている」といった段階でも、相続全体を整理することで、次に必要な手続きが見えやすくなります。

妻の相続では、目の前の手続きだけでなく、これからの暮らしや不動産の管理まで考えることが大切です。

相続に不安がある場合は、早めにワンストップで相談できる窓口を活用し、専門家と連携しながら進めてみてください。

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いとこしかいない場合の相続はどうなる?財産を受け取れるケースや確認事項を解説

2026.07.10

「身寄りのないいとこが亡くなった場合、自分が相続できるのだろうか」と疑問に思う方は少なくありません。

いとこは原則として法定相続人には含まれません。

そのため、まずは亡くなった方に配偶者・子ども・親・兄弟姉妹などの法定相続人がいるかどうかを確認することが大切です。

一方で、遺言で財産を譲る相手に指定されている場合や、養子縁組をしている場合、生命保険の受取人になっている場合、特別縁故者として認められる場合などは、いとこでも財産を受け取れる可能性があります。

この記事では、いとこしかいない場合の相続の基本や、いとこが財産を受け取れるケース、不動産がある場合を含めて確認しておきたいポイントを解説します。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、相続人の確認や不動産の名義確認、空き家の管理・売却など、複雑になりやすい相続手続きを専門家と連携しながら整理します。

いとこが関係する相続や不動産の扱いに不安がある方は、お気軽にご相談ください。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

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記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

身寄りのないいとこの財産を相続できる?

結論からいうと、「亡くなった人にいとこしかいないように見える」というだけでは、いとこが当然に財産を相続できるわけではありません。

相続では、誰が財産を受け取れるのかが法律で決められています。

法律上の相続人にあたるのは、配偶者のほか、子・直系尊属・兄弟姉妹です。

いとこは、法定相続人の範囲には含まれていません。

まず押さえておきたいポイントは、次の通りです。

  • 法定相続人になるのは配偶者・子・親・兄弟姉妹
  • 兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥や姪まで

ここからは、なぜいとこが原則として相続人にならないのかを、順番に見ていきましょう。

法定相続人になるのは配偶者・子・親・兄弟姉妹

相続人になる人には、法律上の順番があります。

亡くなった人に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人になります。

そのうえで、配偶者以外の相続人の決まり方の順番は、次の通りです。

順位相続人になる人具体例
第1順位子ども、子が亡くなっている場合の孫など
第2順位直系尊属父母、父母がいない場合の祖父母など
第3順位兄弟姉妹兄、弟、姉、妹など

たとえば、亡くなった人に子どもがいる場合、原則として親や兄弟姉妹は相続人になりません。

子どもがいない場合に親、親もいない場合に兄弟姉妹というように、順番に確認していきます。

ここで重要なのは、いとこは法定相続人の表の中に入っていないという点です。

親族であっても、法律上の相続人にあたらない場合は、原則として遺産をそのまま受け取ることはできません。

兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥や姪まで

亡くなった人に子どもや親がおらず、兄弟姉妹が相続人になるケースでも、いとこが相続人になるわけではありません。

兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、子どもである甥や姪が、兄弟姉妹に代わって相続人になることがあります。

本来相続人となるはずだった兄弟姉妹の代わりに、子ども(甥や姪)が相続人になることを代襲相続といいます。

兄弟姉妹について代襲相続が認められるのは、原則として兄弟姉妹の子である甥や姪までです。

また、甥や姪もすでに亡くなっている場合に、甥や姪の子がさらに代襲して相続人になるわけではありません。

いとこは、亡くなった人から見ると「父母の兄弟姉妹の子」にあたります。

そのため、兄弟姉妹の子である甥や姪とは立場が異なります。

つまり、亡くなった人に配偶者・子ども・直系尊属・兄弟姉妹・甥や姪がいない場合でも、いとこが自動的に相続人になるわけではありません。

いとこが財産を受け取れる可能性があるかどうかは、遺言書の有無や特別縁故者にあたるかなど、別の事情を確認する必要があります。

身寄りのないいとこの相続で遺産はどうなる?

身寄りのないいとこが亡くなり、配偶者・子ども・直系尊属・兄弟姉妹・甥や姪などの相続人が見当たらない場合でも、遺産がすぐに国のものになるわけではありません。

まずは、家庭裁判所で相続財産清算人の選任などの手続きを行い、相続人の有無や債権者・受遺者の確認を進めます。

借金や未払金がある場合は、相続財産の中から清算されます。

そのうえで財産が残った場合には、亡くなった人と特別に深い関わりがあった人へ財産を分けるかどうかが検討されます。

大まかな流れは、次の通りです。

流れ内容
1. 相続財産清算人が選ばれる家庭裁判所が、遺産を管理・清算する人を選任する
2. 財産や債務を確認する預貯金・不動産などの財産や、借金・未払金などを調査する
3. 債務を支払う借金や未払金がある場合は、遺産の中から支払う
4. 相続人がいないか確認する公告などの手続きを通じて、相続人がいないか確認する
5. 特別縁故者から申立てがあった場合、家庭裁判所が財産分与の可否を判断する被相続人と生計を同じくしていた人、療養看護に努めた人、その他特別の縁故があった人は、申立てにより財産分与を受けられる可能性がある
6. 残った財産は国庫に帰属する相続人も特別縁故者もいない場合、最終的に財産は国のものになる

このように、身寄りのないいとこの財産は、すぐに国に引き継がれるわけではありません。

まずは相続財産清算人による調査や清算が行われ、必要な支払いを済ませたうえで、残った財産の扱いが決まります。

相続財産清算人は、相続人がいるか分からない場合や相続人がいない場合に、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が選任する人です。

いとこが勝手に預金を引き出したり、不動産を処分したりすることはできません。

そのため、相続人が不明な場合は相続財産清算人の選任が必要になることがあります。

また、亡くなった人と生前に深い関わりがあった場合は、いとこであっても「特別縁故者」として財産の分与を申し立てられる可能性があります。

たとえば、長年同居して生活を支えていた、入院中や介護中に継続して世話をしていた、生活面で特別に密接な関係があったといえる場合などです。

ただし、特別縁故者として財産分与を受けるには、相続財産清算人の選任後、相続人捜索の公告期間が満了しても相続人が現れないことなどが前提になります。

単に「親族である」「いとこである」というだけでは、特別縁故者として認められるとは限りません。

財産を受け取れるかどうかは、亡くなった人との関係性や、実際にどのような支援をしていたかなどをもとに判断されます。

そのため、身寄りのないいとこの相続に関わる可能性がある場合は、相続人の有無、遺言書の有無、財産や借金の内容、生前の関わり方を早めに確認することが大切です。

法定相続人ではないいとこが財産を受け取れるケース

原則として、いとこは法定相続人ではありません。

そのため、亡くなった人にいとこしかいないように見える場合でも、いとこが当然に遺産を相続できるわけではありません。

ただし、遺言書がある場合や、養子縁組をしている場合など、一定の事情があれば、いとこが財産を受け取れる可能性があります。

相続人として受け取るケースもあれば、相続とは別の仕組みで財産を受け取るケースもあるため、それぞれの違いを整理しておくことが大切です。

いとこが財産を受け取れる可能性があるケースは、次の通りです。

  • 遺言で「いとこに財産を渡す」と書かれている場合
  • いとこが養子になっている場合
  • 特別縁故者として認められた場合
  • 生命保険金の受取人に指定されている場合
  • 生前贈与を受けていた場合

ここからは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

遺言で「いとこに財産を渡す」と書かれている場合

亡くなった人が遺言書を作成しており、その中に「いとこに財産を渡す」といった内容が書かれている場合、いとこは財産を受け取れる可能性があります。

たとえば、次のような内容が遺言書に記載されているケースです。

遺言の内容の例いとこの立場
自宅をいとこに遺贈する不動産を受け取る人
預貯金の一部をいとこに渡す預貯金を受け取る人
特定の財産をいとこに遺す遺言で指定された財産を受け取る人

このように、法定相続人ではない人でも、遺言によって財産を受け取れる場合があります。

ただし、遺言書は形式に不備があると無効になるおそれがあります。

また、配偶者・子・直系尊属など、兄弟姉妹以外の相続人がいる場合は、遺留分侵害額請求を受ける可能性があるのです。

<===

第1042条(遺留分の帰属及びその割合)

第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。

一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一

二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一

2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

引用元:民法|第1042条

===>

そのため、生前にいとこへ財産を遺したい場合は、自己判断で作成するのではなく、公正証書遺言や法務局の自筆証書遺言書保管制度の利用も含めて検討すると安心です。

すでに相続が発生している場合は、まず遺言書が残されていないかを確認しましょう。

自宅や貸金庫に保管されていることもあれば、自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は法務局、公正証書遺言を作成している場合は公証役場で確認できる場合もあります。

いとこが養子になっている場合

いとこであっても、亡くなった人と養子縁組をしていれば、法律上は「子」として扱われます。

相続では、子は第1順位の相続人です。

そのため、血縁上はいとこであっても、戸籍上で亡くなった人の養子になっている場合は、相続人として財産を受け取れる可能性があります。

たとえば、次のようにまとめられます。

関係性相続での扱い
血縁上のいとこにすぎない原則として法定相続人ではない
亡くなった人の養子になっている法律上の子として相続人になる可能性がある

養子になっているケースで重要なのは、家族の認識や口頭での話ではなく、戸籍上の記載です。

「昔から親子のように暮らしていた」という事情があっても、養子縁組が成立していなければ、法律上の子として相続人になることはできません。

相続関係を確認する際は、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍を取り寄せ、養子縁組の記載があるかを確認しましょう。

特別縁故者として認められた場合

亡くなった人に法定相続人がいない場合、いとこが「特別縁故者」として認められれば、財産の分与を受けられる可能性があります。

特別縁故者とは、亡くなった人と特別に深い関わりがあった人のことです。

単に親族であるだけではなく、生前の関係性や支援の実態が重視されます。

たとえば、次のような事情がある場合は、特別縁故者として検討される可能性があります。

事情の例内容
生計を同じくしていた長年同居し、生活をともにしていた
療養看護をしていた入院中や介護中に継続して世話をしていた
生活面を支えていた日常的な買い物、通院、金銭管理などを支援していた
特別な関係があった親族関係を超えて、深い信頼関係や支援関係があった

ただし、特別縁故者として財産を受け取るには、家庭裁判所への申立てが必要です。

自動的に財産が渡されるわけではありません。

また、申立てができる時期にも決まりがあります。

相続財産清算人による手続きが進み、相続人捜索の公告期間が満了した後、3か月以内に特別縁故者として財産分与を申し立てる必要があります。

<===

第958条の2(特別縁故者に対する相続財産の分与)

第九百五十八条の二 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

2 前項の請求は、第九百五十二条第二項の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。

引用元:民法|第958条の2

===>

特別縁故者として認められるには、亡くなった人との関係性を示す資料が重要です。

介護記録、通院の付き添い記録、生活費の負担が分かる資料、やり取りの記録などを整理しておきましょう。

生命保険金の受取人に指定されている場合

いとこが生命保険金の受取人に指定されている場合、法定相続人でなくても保険金を受け取れる可能性があります。

生命保険金は、通常の遺産とは扱いが異なります。

受取人が個別に指定されている場合、受取人が保険会社に請求して受け取る仕組みです。

たとえば、次のようなケースです。

保険金の受取人欄いとこが受け取れる可能性
受取人としていとこの氏名が指定されている受け取れる可能性がある
受取人が「相続人」となっている原則として法定相続人が対象になり、いとこは含まれない
受取人が未確認保険証券や保険会社への照会で確認が必要

注意したいのは、保険金を受け取れる場合でも、税金の扱いは別途確認が必要になる点です。

特に、相続人ではないいとこが死亡保険金を受け取る場合、被保険者・保険料負担者・受取人の関係によって、相続税・所得税・贈与税のいずれかの課税対象になる可能性があります。

なお、被相続人が保険料を負担していた死亡保険金が相続税の対象になる場合でも、相続人以外の人には死亡保険金の非課税枠は適用されません。

そのため、受け取る金額によっては相続税の確認が必要です。

保険証券や保険会社からの通知書を確認し、受取人が誰になっているかを早めに把握しましょう。

保険契約の有無が分からない場合は、契約照会制度などを利用して確認できる場合もあります。

生前贈与を受けていた場合

亡くなった人が生前にいとこへ財産を贈与しており、贈与が完了している場合、財産はいとこのものとして扱われます。

たとえば、生前に現金を振り込んでもらっていた、不動産の名義変更が済んでいた、株式やその他の財産を正式に受け取っていたといったケースです。

ただし、「もらう約束をしていた」「本人が渡すと言っていた」というだけでは、贈与が完了しているとは限りません。

実際に財産が移転していたかどうかを確認する必要があります。

確認すべき主な資料は、次の通りです。

財産の種類確認したい資料
現金・預貯金振込記録、通帳、贈与契約書など
不動産登記事項証明書、贈与契約書など
株式・有価証券取引報告書、口座記録など
高額な動産契約書、受領書、引き渡しの記録など

また、贈与には贈与税が関係することがあります。

特に高額な財産を受け取っている場合は、申告が必要になる可能性があるため注意が必要です。

生前贈与を受けていたかどうかは、相続財産の範囲や税務上の判断にも関わります。

贈与契約書や振込記録、名義変更の有無を確認し、不明点がある場合は専門家に相談しながら確認しましょう。

身寄りのないいとこが亡くなったときに確認すべきこと

身寄りのないいとこが亡くなった場合、まずは「自分が財産を受け取れる立場なのか」と「亡くなった人にどのような財産や負債があるのか」を分けて確認することが大切です。

いとこは原則として法定相続人ではないため、親族だからといってすぐに預金の解約や不動産の処分を進められるわけではありません。

遺言書の有無や法定相続人の存在、保険金の受取人などによって、手続きの進め方が変わります。

身寄りのないいとこが亡くなったときに確認すべきことは、次の通りです。

  • 遺言があるか
  • 法定相続人が本当にいないか
  • 財産と借金がどれだけあるか
  • 不動産があるか
  • 生命保険金や死亡退職金の受取人は誰か
  • 葬儀費用や未払金があるか

ここからは、見落としやすい確認ポイントを順番に見ていきましょう。

相続人が本当にいないのか、財産や不動産をどう確認すればよいのか、自分だけで判断するのが難しいケースも少なくありません。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、司法書士・税理士・弁護士などの専門家と連携し、相続人調査から不動産確認までワンストップでご相談いただけます。

静岡県内で、いとこが関係する相続や不動産の扱いに不安がある方は、お気軽にご相談ください。

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遺言があるか

まず確認したいのは、亡くなったいとこが遺言書を残しているかどうかです。

遺言書がある場合、法定相続人ではないいとこでも、遺言で指定された財産を受け取れる可能性があります。

一方で、遺言書がなければ、原則として法律で決められた相続人を確認する手続きから進めることになります。

遺言書が保管されている可能性がある場所は、次の通りです。

確認する場所確認内容
自宅金庫、机、棚、重要書類のファイルなど
貸金庫銀行の貸金庫に保管されていないか
法務局自筆証書遺言書保管制度を利用していないか
公証役場公正証書遺言が作成されていないか
専門家の事務所弁護士、司法書士、税理士などに預けていないか

自宅などで自筆証書遺言を見つけた場合は、勝手に開封したり処分したりせず、遅滞なく家庭裁判所に提出し、検認の手続きを行います。

封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いのもと開封する必要があります。

家庭裁判所以外で開封すると、5万円以下の過料が科される可能性があるため、取り扱いには注意しましょう。

一方、公正証書遺言や法務局に保管されている自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認が不要です。

遺言書の有無によって、その後の手続きが変わるため、最初に確認しておきましょう。

法定相続人が本当にいないか

身寄りがないように見えても、戸籍をたどると法定相続人が見つかることがあります。

相続人になる可能性があるのは、配偶者、子、親、兄弟姉妹などです。

兄弟姉妹が亡くなっている場合は、子である甥や姪まで確認する必要があります。

確認すべき相続人の範囲は、次の通りです。

順位確認する人
常に相続人配偶者
第1順位子、子が亡くなっている場合の孫など
第2順位父母、祖父母など
第3順位兄弟姉妹、兄弟姉妹が亡くなっている場合の甥や姪

いとこは、法定相続人の範囲に含まれていません。

そのため、「自分しか親族がいない」と思っていても、戸籍上の相続人が本当にいないかを確認する必要があります。

相続人調査では、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍を集め、家族関係をたどっていきます。

後から相続人が見つかると、手続きのやり直しやトラブルにつながることがあるため、思い込みで判断しないことが大切です。

財産と借金がどれだけあるか

相続に関わる可能性がある場合は、プラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も確認する必要があります。

財産が多いように見えても、後から借金や滞納が見つかることがあります。

反対に、預金が少なく見えても、不動産や保険、有価証券などが残っている場合もあるのです。

確認したい主な項目は、次の通りです。

種類具体例
プラスの財産・現金
・預貯金
・不動産
・株式
・投資信託
・自動車
・貴金属
マイナスの財産・借入金
・カードローン
・クレジットカードの未払い
・税金
・家賃
・医療費
・公共料金
確認資料・通帳
・キャッシュカード
・郵便物
・請求書
・契約書
・納税通知書
・証券会社や保険会社からの書類

特に注意したいのは、亡くなった人宛ての郵便物です。

金融機関、保険会社、クレジットカード会社、税務署、自治体などからの書類が、財産や負債を把握する手がかりになります。

財産より借金が多い可能性がある場合は、後に法定相続人が見つかったときの相続放棄や限定承認にも関わるため、自己判断で支払いや処分を進めないよう注意しましょう。

不動産があるか

亡くなったいとこが土地や建物を所有していたかどうかも、早めに確認しておきたいポイントです。

不動産は、預貯金のように通帳を見ればすぐ分かるものではありません。

固定資産税の通知書や登記事項証明書、名寄帳などを確認して、所有している不動産がないか調べる必要があります。

確認に使える主な資料は、次の通りです。

資料確認できる内容
固定資産税の納税通知書課税されている土地や建物の情報
名寄帳同じ市区町村内にある所有不動産の一覧
固定資産評価証明書不動産の評価額
登記事項証明書所有者、所在地、権利関係など

不動産が複数の自治体にある場合は、それぞれの自治体で確認が必要です。

いとこが法定相続人でない場合、亡くなった人名義の不動産を自分の判断で売却したり、名義変更したりすることはできません。

ただし、空き家のまま放置すると、防犯・倒壊・近隣トラブル・固定資産税などの問題が生じることがあります。

まずは、固定資産税通知書、名寄帳、登記事項証明書などで不動産の有無と名義を確認し、相続人が不明な場合は専門家に相談しましょう。

生命保険金や死亡退職金の受取人は誰か

生命保険金や死亡退職金は、受取人の指定や支給規程によって、通常の遺産分割の対象とは別に扱われることがあります。

受取人が指定されている場合、受取人が保険会社や勤務先に請求して受け取る仕組みです。

そのため、いとこが法定相続人ではなくても、受取人として指定されていれば、保険金などを受け取れる可能性があります。

確認すべきポイントは、次の通りです。

確認するもの見るべき内容
保険証券契約者、被保険者、受取人、保険会社
保険会社からの通知契約内容や請求手続きの案内
勤務先からの案内死亡退職金や弔慰金の有無、受取人
受取人欄いとこ個人が指定されているか、「相続人」とされているか

受取人としていとこの氏名が指定されている場合は、法定相続人でなくても受け取れる可能性があります。

一方、受取人が「相続人」となっている場合は、原則として法定相続人が対象になります。

受取人が「相続人」となっている場合、いとこは含まれないため、契約内容を正確に確認することが大切です。

また、保険金や死亡退職金は税金の対象になることがあります。

特に、相続人ではない人が受け取る場合は、非課税枠の扱いなどが異なることがあるため、税務面の確認も必要です。

葬儀費用や未払金があるか

亡くなった直後は、葬儀費用や医療費、介護施設の利用料、家賃、公共料金、税金などの請求が届くことがあります。

ただし、いとこが法定相続人ではない場合、どこまで支払うべきかは慎重な判断が必要です。

善意で立て替えたつもりでも、後から相続人が見つかった場合や財産より負債が多かった場合に、精算方法でトラブルになることがあります。

確認しておきたい費用や未払金は、次の通りです。

項目具体例
葬儀関係・葬儀費用
・火葬費用
・納骨費用
・お布施
医療・介護関係・入院費
・通院費
・薬代
・介護施設費
住まい関係・家賃
・管理費
・修繕費
・退去費用
生活関係・電気代
・ガス代
・水道代
・電話料金
・インターネット料金
税金関係・住民税
・固定資産税
・所得税
借入関係・カードローン
・クレジットカードの未払い
・個人からの借金

請求書や領収書、郵便物、通帳の引き落とし履歴を整理し、何を誰が支払うべきかを確認しましょう。

特に、亡くなった人の口座から勝手にお金を引き出して支払うことは避けるべきです。

相続人の有無がはっきりしない段階では、相続財産清算人の選任が必要になる場合もあります。

身寄りのないいとこの相続では、親族としてできることと、法律上できないことの線引きが分かりにくい場面があります。

不安がある場合は、相続人調査や財産調査に詳しい専門家へ相談しながら進めると安心です。

身寄りのない方が、いとこに財産を残したい場合に生前にしておくべき対策

身寄りのない人が「いとこに財産を残したい」「亡くなった後の手続きを負担なく進めてほしい」と考えている場合は、生前の準備が重要です。

いとこは原則として法定相続人ではないため、何も準備しないまま亡くなると、いとこが財産を受け取れない可能性があります。

また、判断能力が低下した後の財産管理や、亡くなった後の葬儀・遺品整理なども、事前に決めておかないと周囲が対応に困ることがあります。

身寄りのない方が、いとこに財産を残したい場合に生前にしておくべき対策は、次の通りです。

対策何をするかこんなときに役立つ確認ポイント
遺言書を作成する誰に、どの財産を渡すのかを遺言書に明記する親しいいとこや世話をしてくれた人に財産を残したいときいとこは法定相続人ではないため、財産を残したい場合は遺言書で意思を示す
公正証書遺言を検討する公証人に遺言書を作成してもらい、原本を公証役場で保管する遺言書の紛失や書き方の不備を避けたいとき費用はかかるものの、形式不備で無効になるリスクを抑えやすくなる
任意後見契約を検討する判断能力があるうちに、将来の財産管理や生活支援を任せる人を決める認知症や病気で自分で手続きできなくなる不安があるとき契約は公正証書で作成し、実際に支援が始まるには家庭裁判所の手続きが必要になる
死後事務委任契約を検討する葬儀、納骨、遺品整理、公共料金の支払い、行政手続きなどを任せる人を決める亡くなった後の実務を頼める家族が少ないとき財産を誰に渡すかを決める遺言とは別に、死後の事務を任せるための契約
財産や契約関係を整理しておく預貯金、不動産、保険、借金、契約中のサービス、連絡先などを一覧にする残された人が手続きで困らないようにしたいとき財産一覧や重要書類の保管場所を整理しておくと、相続や死後手続きが進めやすくなる

身寄りのない人の生前対策では、遺言書だけでなく、任意後見契約、死後事務委任契約、財産一覧の作成を組み合わせて考えることが重要です。

状況によって必要な準備は異なるため、早めに専門家へ相談し、自分の希望に合った方法を整えておきましょう。

身寄りのないいとこの相続は専門家に相談しながら手続きを進めよう

身寄りのないいとこの相続では、「親族だから財産を受け取れる」と思っていても、いとこは原則として法定相続人には含まれません。

そのため、まずは戸籍をもとに法定相続人の有無を確認し、遺言書の有無や生命保険の受取人、特別縁故者として申し立てられる可能性などを整理する必要があります。

また、亡くなった方が不動産を所有している場合は、誰が管理するのか、名義をどうするのか、空き家として放置されるリスクはないかなど、早めに確認しておくことが大切です。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、いとこが関わる相続で確認すべき相続人調査、遺言書の確認、特別縁故者の検討、不動産の管理・売却方針まで、司法書士・税理士・弁護士などの専門家と連携しながら整理します。

「自分はいとこの財産を受け取れるのか」「空き家をそのままにしてよいのか」「どこに相談すればよいのか」と迷っている段階でも、まずは状況を確認することから始められます。

いとこが関係する相続で不安がある方は、相続人の確認と不動産の扱いをあわせて相談できる窓口を活用し、早めに必要な手続きを整理しておきましょう。

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不動産は家族信託すべき?向く家族やできること・できないことまで徹底解説!

2026.06.04

高齢の親が持つ自宅や不動産をどのように管理し、引き継いでいくべきか、悩みを抱えている方は少なくありません。

内閣府の令和7年版高齢社会白書では、2022年時点の認知症高齢者数は443.2万人、MCI(軽度認知障害)の高齢者数は558.5万人と推計されています。

判断能力の低下に備えて、親が元気なうちから不動産の管理方法を考えておくことが大切です。

この記事では、不動産を家族信託にすべきなのか、また家族信託でできること・できないことについて詳しく解説します。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、司法書士・税理士・弁護士と連携し、家族信託に関するご相談を承っています。

家族信託を考えているけれど、何から始めればよいかわからない方も、お気軽にご相談ください。

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記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

不動産の管理・承継対策として家族信託が検討される理由

不動産の家族信託は、親名義の不動産について、将来の管理や処分の判断が難しくなる前に、誰がどのように管理するのかを決めておく方法として検討されます。

特に自宅、賃貸不動産、空き家になりそうな家がある場合は、親が元気なうちに方向性を整理しておくことが大切です。

そのため、不動産を持つ家族が家族信託を検討する背景には、次のような不安や課題があります。

  • 親名義の不動産は、判断能力の低下後は動かしにくくなる
  • 相続まで何も準備しないと、管理や承継の方針が決まらない期間が生じやすい
  • 不動産は、預貯金よりも分け方や管理方針で意見が分かれやすい

民法は、意思能力がないときの法律行為を無効としています。

第3条の2

第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

引用元:民法 | 第3条の2

そのため、親の判断能力が低下した後は、親名義の不動産を売却したり、賃貸借契約を結んだりすることが難しくなる場合があります。

また、2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。

第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

引用元:不動産登記法 | 第76条の2

相続登記や管理方針が決まらないまま時間が経つと、不動産が空き家のまま放置されるリスクも高まります。

実際に総務省統計局が2024年9月25日に公表した「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」でも、空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%で過去最高でした。

さらに、不動産は現金より家族で意見が割れやすい財産です。

民法では、共有物の変更には原則として共有者全員の同意が必要であり、管理に関する事項は各共有者の持分価格の過半数で決するとされています。

第251条(共有物の変更)

第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

第252条(共有物の管理)

第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

引用元:民法 | 第251条第252条

不動産を残すのか、売却するのか、賃貸に出すのかで意見が分かれると、共有不動産は方針を決めるだけでも負担が大きくなります。

早めに管理権限や承継方針を整理しておかないと、不動産が空き家化・共有化し、活用や処分が進みにくくなるおそれがあります。

不動産で家族信託が使われやすい場面

不動産で家族信託が検討されやすい代表的な場面は、次の通りです。

  • 親の自宅を将来売却する可能性がある場合
  • 賃貸不動産を家族が継続して管理したい場合
  • 共有にしたくない不動産がある場合
  • 空き家化を防ぎたい場合

ここからは、それぞれの場面で何が問題になりやすいのか、具体的に見ていきましょう。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、自宅・賃貸不動産・共有不動産・空き家などの状況を踏まえ、不動産の家族信託が適しているか、登記や権利関係の観点から整理しています。

ご自身のケースで家族信託を検討すべきか、相続登記や遺言など別の方法がよいのか迷う場合は、お気軽にご相談ください。

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親の自宅を将来売却する可能性がある場合

親の自宅は、今すぐ売る予定がなくても、将来は介護費用の確保、施設入所、住み替え、相続前の整理などで売却が必要になることがあります。

家族信託がこうした場面で検討されるのは、親の判断能力があるうちに「将来売却する場合、誰が判断し手続きを進めるのか」を決めておけるからです。

一方で、本人の判断能力が不十分になった後は、民法上、意思能力のない法律行為は無効になり、成年後見で本人の居住用不動産を処分する場合は家庭裁判所の許可が必要です。

第3条の2

第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

引用元:民法 | 第3条の2

第859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)

第八百五十九条の三 成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

引用元:民法 | 第859条の3

自宅を将来売却する可能性がある場合は、必要なタイミングで手続きを進められなくなるおそれがあります。

賃貸不動産を家族が継続して管理したい場合

賃貸不動産を家族が継続して管理したい場合も、家族信託が使われやすいです。

賃貸アパートや貸家は、次のような判断が継続的に発生します。

  • 賃料を受け取る
  • 修繕を決める
  • 賃料や契約条件を見直す
  • 空室対策を検討する

親の判断能力が低下すると、こうした判断が遅れて賃貸経営そのものが止まり、収入や建物管理に影響が出るおそれがあります。

こうした場面で家族信託が使われやすいのは、「賃貸不動産の管理を誰が担うか」を先に決めやすいからです。

信託契約の内容に応じて、受託者が賃料の受領や修繕、売却などの判断を担う形を設計できます。

賃貸不動産の家族信託は、管理方法だけでなく、信託登記や税務上の取扱いもあわせて確認しておくことが大切です。

共有にしたくない不動産がある場合

共有にしたくない不動産がある場合も、家族信託が検討されることがあります。

不動産を相続で共有にすると、あとから売却する、建て替える、活用方針を変えるといった判断が重くなりがちです。

法律では、共有物の変更や処分には共有者全員の同意が必要だと定められています。

第251条(共有物の変更)

第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

引用元:民法 | 第251条

兄弟姉妹の人数や関係性まで考えると、共有は一見公平に見えても、実際には管理や処分の判断が進みにくい状態になりやすいといえます。

家族信託がこうした場面で検討されるのは、「不動産を最終的に誰に承継するか」と、「その前の管理役を誰にするか」を分けて設計しやすいからです。

不動産の共有化や登記名義が整理されない状態を避けたい場合は、家族信託によって「誰が管理するのか」「最終的に誰へ引き継ぐのか」を整理しやすくなります。

空き家化を防ぎたい場合

空き家は、誰も住まなくなった時点から管理の負担が生まれやすい不動産です。

相続や転居後に家を放置すると、管理不全や資産価値の低下につながりやすくなります。

また、空き家を放置すると次のようなリスクがあります。

  • 資産価値の低下
  • 売却困難
  • 倒壊や外壁落下
  • 不法侵入・放火など

家族信託がこうした場面で検討されるのは、「親が施設に入った後、この家を賃貸に出すのか、売却するのか、解体するのか」を事前に決めやすいからです。

空き家になってから慌てて考えるのではなく、空き家になる前に管理や活用の方針を整理しておくことで、家族が対応しやすくなります。

不動産の家族信託で実現できること・できないこと

家族信託は、不動産の管理や承継について、あらかじめ家族間でルールを定めておく仕組みです。

ただし、家族間の対立や税務上の問題まで、自動的に解決できる制度ではありません。

家族信託でできることは、次の通りです。

できること 不動産でいうと
管理と承継のルールを先に決める 自宅を売却する条件、賃貸物件の管理方針、最終的な引き継ぎ先を決めやすくなる
家族内の判断役を決める 売却、賃貸、修繕、管理を誰が担うかを明確にできる
共有化や空き家化を防ぎやすくする 名義や判断が分かれて、不動産が活用できない状態を避けやすくなる
二次承継まで考える 親から子、さらに次の世代へと、不動産をどのように承継するかを設計しやすくなる

不動産を信託する場合は、信託契約だけでなく信託登記も必要になるため、書類作成だけで終わらせず、登記や運用まで見据えた設計が重要です。

一方で、家族信託でできないことは、次の通りです。

できないこと 不動産でいうと
家族の対立を自動で消す 管理役や売却代金の扱いを説明しないと、不信感が残る
税務や相続の手続きを制度1つで完結させる 相続税、贈与税、所得税などの税務、登記、遺産分割などは別途確認が必要
本人の介護や生活支援まで担う 財産管理が中心のため、介護契約や生活支援は別に考える必要がある

家族信託は「不動産の管理・処分を滞らせないための設計」には向いているものの、家族への説明、登記、税務、相続まで自動で整う制度ではありません。

実務では、契約内容、登記、税金、家族への説明をひとつの流れとして確認することが重要です。

不動産の家族信託と遺言・後見との違い

遺言・後見制度・家族信託は、どれか1つが常に優れているという関係ではありません。

大切なのは、「どのような場面で有効な制度なのか」「何を解決する制度なのか」を分けて見ることです。

遺言・後見制度・家族信託の違いは、次の表の通りです。

制度 主に機能する時期 役割の中心 不動産に関する主な使い方
家族信託 元気なうちに設計する 生前の管理と承継をつなぐ 将来の売却・賃貸・修繕を家族が進めやすい
遺言 亡くなった後 財産の分け方を決める 生前の売却や賃貸管理には使いにくい
後見 判断能力が不十分になった後 本人を守る 居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が関わる

不動産を今後どのように管理・処分するかまで考えるなら、制度名だけで比べるのではなく、家族の状況や不動産の承継先を踏まえて判断することが大切です。

不動産の家族信託を検討する前に決めておきたいこと

家族信託は、制度の知識から入るよりも、まず「不動産をどのように管理・承継したいのか」を整理することが大切です。

家族信託を考える前に家族で整理すべき論点は、次の通りです。

  • 不動産を「残す」「売却する」「活用する」のか
  • 誰を受託者にするのか
  • 他の相続人や家族へどう説明するか
  • 登記、税務、相続をどうするか

ここからは、制度を入れる前に決めておきたい内容を順番に見ていきましょう。

不動産を「残す」「売却する」「活用する」のか

最初に決めるべきなのは、対象となる不動産を最終的にどうしたいのかです。

実家として残すのか、介護費用のために売却するのか、賃貸不動産として活用するのかによって、家族信託の設計内容は変わります。

目的が曖昧なまま進めると、契約内容も曖昧になり、実際に売却や管理が必要になった場面で判断に迷いやすくなります。

特に実家や将来空き家になりそうな不動産では、「売る」「活かす」「適切に管理する」という判断を早めに決めておきましょう。

残す、売却する、賃貸に出すといった方針が固まっていない段階では、家族信託の契約内容も定まりにくくなります。

誰を受託者にするのか

家族信託では、受託者と呼ばれる管理役を誰にするかが論点になります。

受託者は、「信頼できる人」という理由だけで決めると、実際の管理で行き詰まることがあります。

不動産の所在地に近いか、賃貸管理や支払い管理を続けられるか、他の相続人から見て偏りがないか、長期で引き受けられるかまで確認しましょう。

受託者には、実際に財産管理を担える体制や意思が必要です。

管理役が曖昧な家族信託は、形だけの契約になりがちです。

他の相続人や家族へどう説明するか

家族信託は、親と一部の家族だけで進めると、後から他の相続人や家族が不信感を抱くことがあります。

制度として正しくても、「なぜその人が管理するのか」「家賃や売却代金は誰のために使うのか」が伝わっていなければ、他の家族が納得しにくくなります。

説明すべき内容は、少なくとも次の4点です。

  • なぜ家族信託を使うのか
  • 誰が管理役になるのか
  • 家賃や売却代金は誰のために使うのか
  • 最終的に誰へ不動産を承継するのか

こうした内容を事前に整理しておくと、他の家族にも目的を伝えやすくなります。

登記、税務、相続をどうするか

不動産を家族信託に入れる場合、契約書を作るだけでは足りません。

不動産は登記によって権利関係を公示するため、家族信託を設定する場合は、信託の内容を登記に反映する必要があります。

第97条(信託の登記の登記事項)

第九十七条 信託の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。

一 委託者、受託者及び受益者の氏名又は名称及び住所

二 受益者の指定に関する条件又は受益者を定める方法の定めがあるときは、その定め

三 信託管理人があるときは、その氏名又は名称及び住所

四 受益者代理人があるときは、その氏名又は名称及び住所

五 信託法(平成十八年法律第百八号)第百八十五条第三項に規定する受益証券発行信託であるときは、その旨

六 信託法第二百五十八条第一項に規定する受益者の定めのない信託であるときは、その旨

七 公益信託に関する法律(令和六年法律第三十号)第二条第一項第一号に規定する公益信託であるときは、その旨

八 信託の目的

九 信託財産の管理方法

十 信託の終了の事由

十一 その他の信託の条項

引用元:不動産登記法 | 第97条

税務面については、税理士に確認することも欠かせません。

国税庁は、受益権の設定内容によって贈与税が課税される場合があると示しています。

新たに信託の設定を行った場合などで、適正な対価を負担することなく受益権等を取得したときは、贈与税が課税されます。

また、信託を設定する時点において受益者等の存しない信託で、将来、委託者の親族等が受益者等となる信託の設定を行った場合(例えば、信託を設定した時点ではまだ生まれていない孫等を受益者等として指定した場合)などには、信託の受託者に対して、贈与税が課税されます。

引用元: 国税庁「No.4427 新たに信託の設定等を行った場合

また、所得税法では、一定の信託について、信託財産に関する収益や費用を受益者に帰属させる取扱いが定められています。

第13条(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)

第十三条 信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者の収益及び費用とみなして、この法律の規定を適用する。ただし、集団投資信託、退職年金等信託又は法人課税信託の信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用については、この限りでない。

引用元:所得税法 | 第13条

さらに、信託していない不動産や相続発生後の不動産には、相続登記義務化も関係します。

第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

引用元:不動産登記法 | 第76条の2

家族信託だけを切り離して考えるのではなく、登記、税務、相続手続きとの関係を一体で確認しましょう。

不動産の家族信託が向いているケース・別の方法を検討すべきケース

家族信託が適しているかどうかは制度名だけで判断せず、「不動産を今後どのように管理・処分するのか」「誰が受託者になるのか」「家族間で合意形成ができるのか」を踏まえて検討しましょう。

家族の状態 理由
不動産を将来も管理・処分する可能性があるケース あらかじめ決めた家族が受託者として不動産の管理・処分を行えるため、将来の手続きが止まるリスクを減らせる
特定の家族に管理を任せたいケース 実際に管理を担う家族が決まっている場合は、賃貸借契約、修繕対応、売却手続きなどを進めやすくなるため
不動産を早めに売却する方針が固まっているケース 売却手続きの準備、遺言書の作成、相続登記への備えなどを優先した方がよい場合があるため
家族内の合意形成が難しいケース 弁護士などを交えた法的整理、遺言、後見制度などを先に検討した方が安全な場合があるため

制度名だけで選ぶのではなく、不動産の管理・処分の方針と家族関係を踏まえて検討することが大切です。

不動産の家族信託は相談先選びが重要!

不動産の家族信託は、契約書を作るだけで終わるものではありません。

信託契約の内容を登記に反映する必要があり、賃貸不動産であれば管理方法や収益の扱い、将来の相続まで見据えて設計することが大切です。

また、税務上の取扱いや相続時の影響も関係するため、司法書士だけでなく、必要に応じて税理士や弁護士などと連携しながら進める必要があります。

相談先を選ぶ際は、家族信託の契約内容だけでなく、不動産登記や税務、相続後の承継まで見据えて相談できる体制があるかを確認しましょう。

家族信託を形式的に作るだけでは、実際に不動産を売却・賃貸・管理する場面で思うように活用できないことがあります。

そのため、不動産の家族信託を検討する際は、登記や税務、相続全体を踏まえて提案してくれる相談先を選ぶことが重要です。

不動産の家族信託は登記・税務・相続を含めて検討しよう

不動産の家族信託は、「契約を作るかどうか」だけで判断するものではありません。

信託登記や税務上の確認、法的リスクに加えて、売却・管理・空き家対策まで含めて検討することで、家族の状況に合った設計をしやすくなります。

家族信託だけで足りるかどうかは、不動産の状況と相続全体を踏まえて判断することが大切です。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、司法書士・税理士・弁護士が連携し、相続登記から家族信託、空き家対策までワンストップで相談できる体制を整えています。

不動産が関係する相続では、「家族信託や相続登記を誰に相談すればよいかわからない」「税務や法律面もあわせて確認したい」と悩む方も少なくありません。

不動産の家族信託が適しているのか、相続登記や遺言など別の方法を検討すべきなのか迷っている方は、早い段階でご相談ください。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

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資産組換えとは?不動産での考え方も含めて徹底解説!

2026.06.04

資産組換えとは、現在保有している土地や建物、現金などの資産について、相続や管理のしやすさを踏まえて持ち方を見直すことです。

相続した不動産を売却して現金化する、相続人間で分けやすい形にする、管理しやすい状態へ整理するなど、相続や維持費の負担に備える方法として検討されます。

相続や不動産、税金が関わる資産の見直しは、判断を誤ると後から思わぬ負担が生じることもあります。

そのため、まずは現在の資産状況を整理し、どのような選択肢があるのかを把握することが大切です。

この記事では、資産組換えの基本や、不動産を含む資産を見直す際の考え方について解説します。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、相続登記や不動産の名義整理をはじめ、相続に関するご相談を承っています。

税務や不動産売却に関する内容は、必要に応じて税理士や不動産会社などと連携しながら進めることも可能です。

相続登記や不動産の名義整理をきっかけに、資産の見直しを検討している方は、お気軽にご相談ください。

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記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

資産組換えとは

資産組換えとは、現在保有している資産の内容や名義、管理方法を見直し、相続や管理の目的に合わせて整理することです。

たとえば、使っていない土地や建物を売却して現金化する、古い不動産を売却し、必要に応じて別の不動産への買い替えを検討する、将来の相続で分けやすい形にしておく、といった方法があります。

資産組換えは、単に資産を売ったり買ったりすることではありません。

次のように相続、税金、不動産の管理、将来の家族間での分けやすさなどをふまえて、資産全体のバランスを見直す手段です。

  • 相続対策や納税資金の準備につなげる手段
  • 管理負担や収益性を見直す手段
  • 将来のリスクを減らす手段

ここからは、それぞれ順番に見ていきましょう。

相続対策や納税資金の準備につなげる手段

資産組換えは、相続時の遺産分割や納税資金の準備を見据えて、資産の持ち方を整理する方法として検討されます。

たとえば、現金は基本的に額面で評価されます。

一方、不動産は土地や建物の評価方法によって、相続税評価額が変わることがあります。

また、土地の使い方や建物の有無によって、固定資産税や相続税評価の扱いが変わる場合もある点に注意が必要です。

そのため、資産をすべて現金で持つのがよいのか、不動産として持つのがよいのか、あるいは一部を売却して納税資金を確保しておくべきなのかは、家族構成や資産の内容によって異なります。

特に不動産は、相続の場面で次の表のような問題につながることがあります。

よくある状況 起こりやすい問題
相続財産の多くが不動産である 相続人同士で公平に分けにくい
現預金が少ない 相続税や維持費の支払いに困ることがある
複数人で不動産を共有している 売却や活用の判断が進みにくい
古い建物や使っていない土地がある 管理費や固定資産税の負担だけが続く

このような場合、事前に資産の内容を整理し、売却・買い替え・賃貸活用などによって、相続時の遺産分割や納税資金の準備がしやすくなる場合があります。

ただし、税金に関する判断は専門的な知識が必要であり、資産の種類や使い方によって結果が変わります。

そのため、税務については税理士に、登記や名義整理については司法書士に確認しながら進めることが大切です。

管理負担や収益性を見直す手段

資産組換えは、収益を生んでいない不動産や管理負担の大きい資産を見直し、今後の管理や承継を考えるきっかけになります。

たとえば、空き家や使っていない土地を所有している場合、そこから収入が得られなくても、固定資産税、管理費、修繕費などの負担は続きます。

建物が古くなると、草木の管理や近隣への配慮、老朽化への対応も必要です。

総務省の調査によれば、全国の空き家は900万2千戸に達し、管理されていない住宅が増えている現状があります。

総住宅数のうち、空き家は900万2千戸と、2018年(848万9千戸)と比べ、51万3千戸の増加で過去最多となっており、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%と、2018年(13.6%)から0.2ポイント上昇し、過去最高となっている。

引用元:総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果

このような不動産は、そのまま持ち続けるのではなく、次のような組換えをすることもできます。

組換え前の資産 組換え後の例 期待できる効果
空き家 売却して現金化 管理負担を減らし、相続時に分けやすくする
使っていない土地 賃貸住宅や駐車場として活用 賃貸活用によって収入を得られる可能性がある
老朽化した収益物件 別の不動産への買い替えを検討 修繕リスクを抑え、収益性の改善を目指せる
分けにくい不動産 一部売却して現金を確保 納税資金や遺産分割に備えやすくなる

大切なのは、「持っていること」そのものが目的になっていないかを見直すことです。

不動産は資産である一方、使い方を決めないまま放置すると、費用や手間だけがかかることもあります。

今後も保有する意味があるのか、売却したほうがよいのか、別の不動産へ買い替えたほうがよいのかを整理することで、不動産の管理方針や相続時の扱いを整理しやすくなります。

ただし、収益不動産への買い替えを検討する場合も、購入後の管理や修繕、将来の承継まで確認する必要があります。

入居者募集、建物管理、修繕、将来の売却可能性なども含めて検討する必要があります。

将来のリスクを減らす手段

資産組換えは、将来起こり得るトラブルを減らすための備えにもなります。

特に不動産は、相続が発生した後に問題が表面化しやすい資産です。

たとえば、相続人が複数いる場合、不動産を共有名義にすると、売却や活用をする際に全員の同意が必要になることがあります。

時間が経つほど関係者が増え、話し合いがまとまりにくくなる場合があります。

また、空き家や利用していない土地を放置することで発生するリスクは次の通りです。

  • 建物の老朽化による倒壊や修繕負担
  • 草木の繁茂や害虫などによる近隣トラブル
  • 固定資産税や管理費、修繕費の負担が続く
  • 売却したいときに買い手が見つかりにくくなる
  • 相続人同士で処分方法を決められなくなる
  • 権利関係が複雑になり、名義変更や売却に時間がかかる

こうしたリスクを避けるには、相続が起きてから慌てて対応するのではなく、元気なうちに資産の状況を整理しておくことが重要です。

たとえば、将来使う予定のない不動産については、売却や賃貸活用、一部の現金化などを検討し、相続人が分けやすい形に整理しておく方法が考えられます。

資産組換えは、税負担だけで判断するものではありません。

ご家族が将来困らないように、資産の持ち方を整えておくための大切な選択肢です。

不動産の資産組換えとは

不動産の資産組換えとは、現在保有している土地や建物について、売却・買い替え・活用・権利関係の整理などを通じて、管理や相続がしやすい状態に見直すことです。

不動産は、現金のようにすぐ分けたり使ったりしにくい資産です。

さらに、固定資産税や管理費、修繕費がかかることもあり、使い道がないまま持ち続けると負担だけが大きくなる場合があります。

そのため、不動産の資産組換えでは、「このまま持ち続けるべきか」「売却して現金化したほうがよいか」「賃貸活用や別の不動産への買い替えを検討すべきか」「相続前に権利関係を整理したほうがよいか」といった視点で考えることが大切です。

不動産で行う代表的な資産組換えの考え方は、主に次の通りです。

  • 売却して分けやすい資産にする
  • 賃貸活用や買い替えを検討する
  • 権利関係や形を整理する

ここからは、不動産に絞って資産組換えの考え方を具体的に見ていきましょう。

売却して分けやすい資産にする

不動産を売却して現金化すると、相続人間で分けやすくなったり、納税資金を準備しやすくなったりします。

不動産を現金化すると、必要なときに使いやすくなり、相続人間で分けやすい資産にしやすくなります。

たとえば、不動産のままでは相続人同士で分けにくい場合でも、現金にしておけば遺産分割がしやすいです。

また、相続税の納税資金、施設入居費、生活費、別の投資資金などにも充てやすくなります。

特に、次のような不動産は、現金化を検討することがあります。

不動産の状態 現金化を検討する理由
使っていない空き家 管理費や修繕費だけがかかりやすい
老朽化した建物 今後、修繕費や解体費が発生する可能性がある
相続人が誰も住む予定のない実家 将来の管理者が決まらず、空き家になるおそれがある
分けにくい土地や建物 現金化することで相続人間で分けやすくなる
収益を生んでいない土地 売却代金を別の目的に使える

ただし、不動産を売却すると、売却益に対して税金がかかる場合があります。

相続した不動産を売却する場合などには、一定の条件を満たすことで税制上の特例を利用できる可能性もあります。

しかし、要件の確認が必要です。

そのため、「売れば解決する」と考えるのではなく、売却価格や税金、相続人への分け方、登記手続きへの影響をあわせて確認することが大切です。

賃貸活用や買い替えを検討する

賃貸活用や買い替えを検討することも、不動産の資産組換えの一つです。

収益不動産とは、賃貸住宅、店舗、事務所、駐車場など、賃料収入を見込める不動産のことです。

使っていない土地や低収益の不動産を、収入を生む不動産に替えることで、資産全体の効率を高められる可能性があります。

たとえば、次のような組換えが考えられます。

組換え前 組換え後の例 期待できること
使っていない土地 賃貸住宅として活用 家賃収入を見込める
空き家 売却して収益物件を購入 管理負担を減らしながら収益化を目指せる
老朽化したアパート 新しい賃貸物件へ買い替え 修繕リスクを抑えやすくなる
低収益の不動産 立地や需要に合う不動産へ持ち替え 収益性の改善を目指せる

収益不動産への持ち替えは、毎月の収入が期待できる点がメリットです。

一方で、空室、修繕、入居者対応、管理会社への委託費用なども考える必要があります。

また、相続対策として収益不動産を検討する場合でも、税金面だけで判断するのは危険です。

将来の入居需要、建物の維持管理、借入金の返済、相続人が引き継げるかどうかまで確認しておく必要があります。

収益不動産への組換えは、不動産・税務・相続の判断が重なりやすい分野です。

無理な借入れや、需要の見込みが薄い物件への買い替えは、かえってご家族の負担になることもあります。

権利関係や形を整理する

不動産の資産組換えでは、売却や買い替えだけでなく、権利関係や不動産の形を整理することも重要です。

たとえば、相続によって土地や建物が共有名義になっている場合、売却や建て替え、活用を進めるには共有者同士の話し合いが必要になります。

意見が分かれると、資産を動かしたくても動かせない状態になってしまうことがあります。

また、名義変更がされていない不動産や、境界がはっきりしていない土地、古い建物が残っている土地なども、売却や相続の場面で手続きが進みにくくなりがちです。

権利関係や形の整理には、次のような方法があります。

整理したい内容 主な対応例
共有名義を解消したい ・持分の売却
・共有者間での買い取り
・土地の分割
など
相続登記が終わっていない ・名義変更を行い、所有者を明確にする
※2024年4月1日から相続登記は義務化されているため、早めに対応することが大切
土地の境界が不明確 ・測量を行う
・隣地との確認を行う
古い建物が残っている ・解体
・リフォーム
・売却方法の見直しを検討
分けにくい不動産がある ・売却して現金化する
・土地を分ける
・別の資産へ組み替える

こうした整理をしておくことで、不動産を売りやすくしたり、相続人同士で分けやすくしたりできます。

不動産は、名義や権利関係が複雑になるほど、手続きに時間がかかりやすくなります。

特に相続が何度も重なると、関係者が増え、話し合いが難しくなることも。

そのため、不動産の資産組換えでは、「何に買い替えるか」だけでなく、「今の不動産を売れる状態・分けやすい状態に整えること」も大切な対策です。

資産組換えが必要な状態

資産組換えが必要な状態とは、今のまま資産を持ち続けることで、税金・維持費・相続トラブルなどの負担が大きくなる可能性がある状態です。

特に不動産は、持っているだけで固定資産税や管理費、修繕費がかかります。

さらに、相続が発生したときに分けにくかったり、名義や権利関係が複雑になったりすると、ご家族の間で話し合いが進みにくくなることもあります。

資産組換えを検討したい主なサインは、次の通りです。

  • 税負担が過大になっている状態
  • 収益が低いまたは出ていない状態
  • 相続や分割が難しい状態

ここからは、どのような状態が「資産組換えを検討したほうがよい状態」なのかを詳しく見ていきましょう。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、相続・不動産・税務が関わる資産の悩みに対して、現状整理の段階からご相談をお受けしています。

今の資産状況が組換えを検討すべき段階かどうか迷われている方は、まずは状況整理からご相談ください。

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税負担が過大になっている状態

固定資産税や相続税などの負担が重く、今の資産の持ち方に見合っていない場合は、資産組換えを考えるサインです。

たとえば、使っていない土地や建物であっても、所有している限り固定資産税はかかります。

建物が古くなれば、修繕費や解体費が必要になることも。

収入を生んでいない不動産に税金や維持費だけがかかり続ける状態は、資産全体で見ると負担が大きくなりやすいといえます。

また、相続の場面では、不動産の評価や資産全体のバランスによって、相続税の負担や納税資金の準備が問題になることがあります。

財産の多くが不動産に偏っていると、相続税を支払うための現金が不足する可能性もあるのです。

税負担が気になる場合は、次のような点を確認しておきましょう。

確認したいこと 見直しの考え方
固定資産税の負担が重い 使っていない不動産を売却する、活用方法を見直す
維持費や修繕費がかかっている 保有を続けるべきか、売却や解体も含めて検討する
相続税の納税資金が足りない 一部を現金化し、納税資金を準備する
資産の多くが不動産に偏っている 現金や分けやすい資産へ組み替える

税金の負担は、資産の種類や使い方によって変わります。

そのため、「とりあえず売る」「とりあえず持ち続ける」と判断するのではなく、税務や相続の専門家と一緒に確認することが大切です。

収益が低いまたは出ていない状態

保有している資産が収益を生んでいない場合も、資産組換えを検討するきっかけになります。

たとえば、空き家や遊休地を所有している場合、家賃収入などがないにもかかわらず、固定資産税、火災保険料、管理費、草木の手入れ、修繕費などがかかることがあります。

使う予定がない不動産をそのままにしておくと、毎年の負担だけが続いてしまうのです。

また、収益物件であっても、空室が多い、修繕費がかさむ、地域の賃貸需要が下がっているなどの理由で、思ったほど利益が出ていないケースもあります。

収益が低い、または出ていない資産には、次のような見直し方があります。

現在の状態 組換えの方向性
空き家のままになっている 売却して現金化する、賃貸活用を検討する
使っていない土地がある 駐車場や賃貸住宅として活用する、売却する
老朽化した賃貸物件を持っている 修繕・建て替え・売却・買い替えを比較検討する
収益より維持費が大きい 保有を続ける意味があるか見直す
将来使う予定がない 相続前に分けやすい形へ整える

資産組換えによって、収益を生まない不動産を売却して現金化したり、賃料収入を見込める不動産へ持ち替えたりすることで、資産全体の効率を改善できる可能性があります。

ただし、収益不動産に組み替える場合も、空室リスクや管理の手間、修繕費、借入金の返済などを考えなければなりません。

収益性だけでなく、将来ご家族が引き継げるかどうかも含めて検討しましょう。

相続や分割が難しい状態

相続が発生したときに、財産を分けにくい状態になっている場合も、資産組換えを早めに考えたほうがよいケースです。

特に不動産は、現金のように簡単に分けることができません。

相続人が複数いる場合、誰が住むのか、誰が管理するのか、売却するのか、共有にするのかを話し合う必要があります。

不動産を共有名義にすると、一見公平に見えることもあります。

しかし、将来売却や建て替えをする際に共有者全員の同意が必要になり、意見が合わないと手続きが進まなくなることがあるのです。

さらに、次の相続が起きると関係者が増え、権利関係が複雑になるおそれもあります。

相続や分割が難しくなりやすい状態には、次のようなものがあります。

状態 起こりやすい問題
相続財産の多くが不動産である 相続人同士で公平に分けにくい
相続人のうち一人だけが不動産を使っている 他の相続人との間で不公平感が出やすい
共有名義の不動産がある 不動産全体の売却や変更には共有者全員の同意が必要になるため、活用方法によっても合意形成が必要になる場合がある
名義変更が終わっていない不動産がある 売却や相続手続きに時間がかかる
誰も住む予定のない実家がある 空き家となり、管理負担が残りやすい

このような場合は、相続が起きる前に、不動産を売却して現金化する、相続人間で分けやすい資産へ組み替える、名義や権利関係を整理するなどの対策が考えられます。

資産組換えは、将来のご家族の負担を減らすための準備でもあります。

税金、収益性、相続時の分けやすさを総合的に見ながら、早めに現状を整理しておくことが大切です。

資産組換えの代表的な方法

資産組換えには、資産の状況や目的に応じていくつかの方法があります。

たとえば、使っていない不動産を売却して現金化する方法もあれば、収益を生む不動産へ買い替える方法、今ある土地や建物を活用し直す方法、共有名義や管理方法を整理する方法もあります。

大切なのは、「どの方法が一番よいか」を先に決めるのではなく、「何を解決したいのか」から考えることです。

納税資金を準備したいのか、収益を増やしたいのか、相続人同士で分けやすくしたいのかによって、選ぶべき方法は変わります。

資産組換えの代表的な方法は、次の通りです。

  • 売却して現金化する
  • 収益物件への買い替えを検討する
  • 建て替えや活用方法を検討する
  • 家族信託や共有関係の整理を検討する

ここからは、それぞれの方法の特徴や注意点を見ていきましょう。

売却して現金化する

売却して現金化する方法は、資産組換えの中でも比較的わかりやすい方法です。

使っていない土地や空き家、維持費がかかり続ける建物などを売却すれば、現金として使いやすい資産に変えることができます。

現金化することで、相続税の納税資金、遺産分割のための資金、生活費や介護費用、別の不動産への買い替え資金などに活用しやすくなります。

売却を検討しやすい不動産は、次の表の通りです。

売却を検討しやすい不動産 理由
誰も住む予定のない実家 空き家になると管理負担が続きやすい
使っていない土地 固定資産税だけがかかる状態になりやすい
老朽化した建物 修繕費や解体費が必要になる可能性がある
相続人で分けにくい不動産 現金化すると分割しやすくなる
収益が出ていない不動産 売却代金を別の目的に使える

ただし、不動産を売却して利益が出た場合は、税金がかかることがあります。

また、相続した空き家を売却する場合は、一定の要件を満たせば譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除を受けられる特例があります。

ただし、家屋の状態、売却時期、相続人の人数などによって適用可否や控除額が変わるため、事前の確認が必要です。

そのため、売却を進める前に、売却価格の見込み、税金、手取り額、相続人への分け方を確認しておくことが大切です。

売却は、不動産を現金化して分けやすくする方法の一つです。

しかし、税金や相続の見通しを立てずに進めると、思ったより手元に資金が残らないこともあります。

収益物件への買い替えを検討する

収益物件への買い替えは、今ある不動産を売却し、賃料収入などが見込まれる不動産を取得する方法です。

たとえば、使っていない土地や古い建物を売却し、賃貸マンション、アパート、店舗、事務所、駐車場などの収益物件への買い替えを検討するケースがあります。

収益を生まない資産を、毎月の収入が見込める資産に変えることで、資産の収益性や管理方法を見直せる可能性があります。

一方で、収益物件は「購入すれば安心」というものではありません。

空室が発生することもあれば、修繕費や管理費がかかることもあります。

借入れをして購入する場合は、返済計画も慎重に確認する必要があります。

収益物件への買い替えを検討する場合は、次のような点を確認しましょう。

確認したいこと 内容
立地 入居者や利用者の需要が見込める場所か
収支予測 家賃収入から管理費・修繕費・税金・借入金返済額などを差し引いても成り立つか
空室リスク 入居者が決まらない期間があっても対応できるか
管理体制 自分で管理するのか、管理会社に任せるのか
相続後の引き継ぎ ご家族が将来管理しやすい資産か

収益物件への買い替えは、収入を得られる可能性がある一方で、運営や管理の負担も伴います。

税金面の効果だけでなく、長期的に管理できるか、将来相続人が引き継げるかまで確認することが重要です。

建て替えや活用方法を検討する

建て替えや有効活用は、今ある土地や建物を活かして、管理負担や収益性を見直す方法です。

たとえば、老朽化した建物を建て替えて賃貸住宅にする、空いている土地を駐車場として活用する、古い建物をリフォームして貸し出す、といった方法があります。

売却せずに資産を残しながら、収益化や利用価値の向上を目指せる点が特徴です。

建て替えや有効活用の例は、次の通りです。

現在の状態 活用方法の例 期待できること
古い住宅がある 建て替えて賃貸住宅にする 家賃収入を見込める
空いている土地がある 駐車場や貸地として活用する 初期費用を抑えて収益化しやすい場合がある
老朽化した建物がある 解体して別用途に転用する 管理負担や安全面の不安を減らせる
使っていない建物がある リフォームして貸し出す 既存建物を活かせる可能性がある

ただし、建て替えや有効活用には、建築費、解体費、設計費、借入金の返済などの資金が必要になる場合があります。

また、土地や建物がある地域で本当に需要があるかを見極めなければ、建物を建てても入居者や利用者が見つからないことがあります。

土地活用を検討するときは、「何を建てられるか」だけではなく、「誰が使うのか」「収支に無理がないか」「将来の相続人が管理できるのか」まで考えることが大切です。

家族信託や共有関係の整理を検討する

家族信託や共有関係の整理は、不動産の権利関係や管理方法を整理するための方法です。

不動産が共有名義になっている場合、売却や建て替え、活用を進めるには共有者同士の話し合いが必要になります。

意見がまとまらないと、不動産を売却・活用したくても手続きを進められない状態になってしまいます。

また、高齢の親が不動産を所有している場合、将来認知症などで判断能力が低下すると、売却や賃貸借契約、建て替えなどの手続きが難しくなることがあるのです。

このような場合に備えて、家族信託などを活用し、あらかじめ管理する人を決めておく方法があります。

信託や共有整理で検討される主な対応は、次の通りです。

方法 内容 期待できること
家族信託 信託契約により、受託者となる家族に財産の管理や処分を任せる仕組み 将来の管理や処分を進めやすくする
共有持分の整理 共有者間で持分を買い取る、持分を売却するなどして整理する 意思決定をしやすくする
相続登記 相続した不動産について、被相続人から相続人へ所有権移転登記を行う 所有者を明確にする
遺産分割方針の整理 誰がどの資産を引き継ぐかを決める 将来の紛争や手続きの停滞を防ぎやすくする

信託や共有整理は、単に不動産を売る・買うという話ではなく、「誰が管理するのか」「誰が引き継ぐのか」「どのように処分できるようにしておくのか」を決める対策です。

特に相続が関わる不動産は、時間が経つほど関係者が増え、権利関係が複雑になりやすい傾向があります。

将来のトラブルを防ぐためにも、共有名義や登記名義の状況を早めに確認し、必要に応じて専門家と一緒に整理しておくことが大切です。

資産組換えが失敗する原因

資産組換えは、うまく進めれば税負担や管理負担を軽くしたり、相続しやすい形に整えたりできる方法です。

しかし、判断を誤ると、かえって費用が増えたり、売りにくい不動産を抱えたり、相続人同士のトラブルにつながったりすることがあります。

資産組換えで特に注意したい失敗の原因は、主に次の通りです。

  • 税負担だけで判断してしまう
  • 不動産の価値を見誤る
  • 相続人の視点を見逃してしまう

ここからは、資産組換えでつまずきやすいポイントを詳しく見ていきましょう。

税負担だけで判断してしまう

資産組換えでよくある失敗が、税負担の軽減だけを見て判断してしまうことです。

たとえば、「相続税対策になる」「税金が軽くなる可能性がある」と聞いて不動産を購入しても、その後の管理費、修繕費、固定資産税、借入金の返済などが重くなれば、かえって家計や資産全体の負担が増えてしまうことがあります。

また、税制上の特例は、利用できる条件が細かく決められていることが多く、必ず適用できるとは限りません。

特例が適用できると思って進めたものの、要件を満たさず想定より税負担が重くなるケースも考えられます。

税金だけで判断した場合に起こりやすい問題は、次の通りです。

判断の仕方 起こりやすい問題
節税効果だけを重視する 管理費や修繕費で負担が増えることがある
特例が使える前提で進める 要件を満たさず、想定より税金がかかることがある
借入れをして不動産を購入する 返済負担が重くなり、資金繰りが悪化することがある
相続税だけを見る 相続後の管理や売却のしやすさを見落とすことがある

資産組換えでは、税金の軽減だけでなく、手元に残る資金、将来の収入、管理のしやすさ、相続人が引き継げるかどうかまで含めて考える必要があります。

節税は大切な考え方です。

しかし、それだけを目的にすると、結果的に「持ちにくい資産」になってしまうことがあります。

税務は税理士、不動産の売却や活用は不動産会社、登記や権利関係は司法書士に確認しながら、総合的に判断することが重要です。

不動産の価値を見誤る

不動産の価値を正しく把握しないまま資産組換えを進めることも、失敗の原因になります。

不動産の価値は、立地、周辺環境、土地の形、道路との関係、建物の状態、築年数、需要の有無などによって変わります。

同じ地域にある不動産でも、売りやすい物件と売りにくい物件があるのです。

たとえば、「このくらいの価格で売れるだろう」と思っていた不動産がなかなか売れなかったり、収益物件として購入したものの空室が続いたりすると、資産組換えの計画全体に影響が出ることがあります。

不動産の価値を見誤ると、次の表のような問題が起こりやすくなります。

見誤りの例 起こりやすい問題
売却価格を高く見込みすぎる 思った金額で売れず、資金計画がずれる
需要の少ない地域で収益物件を購入する 空室が続き、収入が安定しない
建物の老朽化を軽く考える 修繕費や解体費が想定以上にかかる
土地の条件を確認しない 建て替えや活用に制限がある場合がある
周辺相場だけで判断する 個別の物件事情を見落とすことがある

不動産は、現金や預貯金と違い、すぐに希望価格で売れるとは限りません。

また、収益物件に買い替える場合も、表面利回りだけで判断すると、実際の手取りが少なくなることがあります。

資産組換えを進める前には、売却価格の目安、賃貸需要、修繕の必要性、将来の売りやすさなどを確認しておくことが大切です。

不動産会社や、登記・税務に関わる専門家の意見を参考にしながら、現実的な計画を立てましょう。

相続人の視点を見逃してしまう

資産組換えでは、現在の所有者だけでなく、将来、資産を引き継ぐ相続人の視点も大切です。

所有者にとってはよいと思える組換えでも、相続人にとっては管理しにくい、分けにくい、売却しにくい資産になってしまうことがあります。

たとえば、収益物件を購入したものの、将来相続人が賃貸経営を望んでいない場合、管理や入居者対応が負担になることがあります。

また、不動産を共有名義のままにしておくと、相続後に売却や活用を進める際、相続人全員の同意が必要になり、話し合いが難しくなることもあるのです。

相続人の視点を見逃すと、次のような問題につながることがあります。

見落としやすい点 起こりやすい問題
誰が不動産を引き継ぐか決まっていない 相続時に話し合いがまとまりにくい
相続人が複数いる 不動産を公平に分けにくい
共有名義にすることを考えている 売却や活用の判断が進みにくくなる
相続人が遠方に住んでいる 管理や手続きの負担が大きくなる
相続人が賃貸経営を望んでいない 収益物件を引き継いだ後の負担になる

資産組換えは、現在の税負担や収益性だけを整えるものではありません。

将来、ご家族が資産をどのように受け取り、管理し、必要に応じて売却できるかまで考えることが大切です。

相続人が複数いる場合は、できるだけ分けやすい形にしておく、納税資金を準備しておく、安易な共有状態を避ける、管理する人を決めておくなどの工夫が必要になります。

資産組換えで失敗しないためには、「税金」「不動産の価値」「相続人の事情」を切り離して考えないことが重要です。

早い段階で現状を整理し、必要に応じて不動産会社、税理士、司法書士などに相談しながら進めましょう。

目的に合った資産組換え方法の選び方

自分に合った資産組換え方法は、持っている資産の内容だけでなく、何を優先したいかによって変わります。

たとえば、相続税や遺産分割への備えを優先したい方もいれば、毎月の収入を増やしたい方、将来の管理負担やトラブルを減らしたい方もいます。

同じ不動産を持っていても、目的が違えば、売却を検討するのか、活用するのか、買い替えを検討するのか、権利関係を整理するのかは変わるのです。

自分に合った資産組換え方法を選ぶ主な基準は、次の通りです。

  • 相続対策を優先して選ぶ
  • 収益性や管理負担を踏まえて選ぶ
  • 将来の管理負担や相続トラブルを避ける観点で選ぶ

ここからは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

相続対策を優先して選ぶ

相続対策を優先する場合は、「相続税の負担」と「相続人同士で分けやすいか」をあわせて考えることが大切です。

不動産は、現金のように簡単に分けることができません。

相続人が複数いる場合、誰が不動産を引き継ぐのか、売却して分けるのか、共有にするのかを決める必要があります。

共有にすると一見、公平に見えることもあります。

しかし、将来売却や活用をする際に意見がまとまらず、手続きが進みにくくなる場合があるのです。

相続対策を目的に資産組換えを行う場合は、次の表にあるような方向性が考えられます。

目的 組換えの考え方・注意点
相続税の負担に備えたい 不動産の相続税評価額や納税資金を確認し、必要に応じて一部を現金化する
相続人同士で公平に分けたい 分けにくい不動産を売却し、現金や分けやすい資産に替える
不動産を残したい 誰が引き継ぐのか、管理費や税金を誰が負担するのかを決めておく
共有を避けたい 生前に権利関係や承継方法を整理しておく

相続対策では、税負担を抑えることだけを目的にすると、かえって分けにくい資産が残ることがあります。

反対に、分けやすさだけを重視して売却すると、税金面で不利になることもあります。

そのため、「相続税評価や納税資金の確認」と「分割しやすくすること」の両方を見ながら、家族構成や相続人の意向に合った方法を選ぶことが重要です。

収益性や管理負担を踏まえて選ぶ

収益性を重視する場合は、資産がどれだけ安定して収入を生むかを確認する必要があります。

たとえば、使っていない土地や空き家をそのまま持っていても、固定資産税や管理費がかかるだけで収入がないことがあります。

このような場合、賃貸住宅、店舗、事務所、駐車場などとして活用したり、収益物件へ買い替えたりすることで、資産から収入を得られる可能性があるのです。

ただし、収益性を考えるときは、表面上の家賃収入だけで判断しないことが大切です。

空室、修繕費、管理費、借入金の返済、将来の売却しやすさなども含めて確認する必要があります。

収益性を重視する場合は、次のような点を確認しましょう。

確認したいこと 内容
需要があるか 土地や建物がある地域で借り手や利用者が見込めるか
収支が合うか 家賃収入から費用を差し引いて利益が残るか
管理できるか 自分で管理するのか、管理会社に任せるのか
修繕費に備えられるか 建物の老朽化や設備交換に対応できるか
相続後も続けられるか 相続人が賃貸経営を引き継げるか

収益性を重視した資産組換えは、毎月の収入を得られる可能性がある一方で、管理や運営の負担も伴います。

特に不動産の場合、立地や需要を見誤ると、思ったような収入が得られないこともあります。

そのため、収益性を優先する場合は、「どれくらい収益が見込めるか」だけでなく、「長く安定して保有できるか」「家族が引き継いでも困らないか」まで考えて選びましょう。

将来の管理負担や相続トラブルを避ける観点で選ぶ

リスク回避を重視する場合は、将来の管理負担や相続トラブルを減らすことを目的に資産組換えを考えます。

たとえば、老朽化した空き家、使う予定のない土地、共有名義の不動産、名義変更が終わっていない不動産などは、放置すると後々の負担が大きくなることがあります。

建物の修繕費や解体費が発生したり、近隣とのトラブルにつながったり、相続人同士で処分方法を決められなくなったりする可能性があるのです。

リスクを減らすための資産組換えには、次のような方法があります。

リスクの内容 組換え・整理の方法
空き家の管理が負担になっている 売却、賃貸活用、解体などを検討する
不動産が売りにくい状態にある 測量、境界確認、建物整理などを行う
共有名義で意思決定が難しい 持分整理や売却、共有関係の解消を検討する
将来の認知症対策をしたい 家族信託などを活用し、管理・処分の方法を決めておく
相続人に負担を残したくない 生前に現金化や承継方法の整理を行う

リスク回避を重視する場合、必ずしも収益を最大化する必要はありません。

むしろ、「管理しやすいか」「売却しやすいか」「相続人が困らないか」を重視することが大切です。

特に不動産は、時間が経つほど建物が古くなり、権利関係も複雑になりやすい資産です。

今は問題がなくても、将来使う予定がない、誰が引き継ぐか決まっていない、共有者が多いといった状態であれば、早めに登記名義や権利関係の整理を検討することが大切です。

自分に合った資産組換えを選ぶには、相続対策、収益性、リスク回避のどれを優先するのかを明確にすることが大切です。

そのうえで、不動産・税務・相続の観点から、無理のない方法を選ぶようにしましょう。

資産組換えを検討する際は、ワンストップで相談できる先を選ぼう!

資産組換えでは、不動産の売買だけでなく、税務、相続、登記名義の整理まで考える必要があります。

売却価格だけで決めると税金や相続人への分け方で困ることがあり、節税だけを重視すると管理しにくい不動産が残る場合もあるのです。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、相続登記や不動産の登記名義の整理についてご相談を承っています。

不動産売却や税務については、必要に応じて不動産会社・税理士などと連携しながら進めることが可能です。

相続登記や不動産の名義整理をきっかけに、今後の資産の扱いで迷っている方は、お気軽にご相談ください。

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