お電話でのご相談がスムーズです 0120-200-009 受付時間 9:00〜18:00(日祝休)
タップしたら電話がかかりますご相談は無料です

相続放棄申述書の書き方徹底解説!「関わりたくない」という理由のときも使える!

2026.01.14

相続放棄をする場合、家庭裁判所に正式な書類「相続放棄申述書」を提出して手続きを進める必要があります。

相続放棄申述書とは、相続人が「相続財産を一切受け継ぎません」と家庭裁判所に申し出るための正式書類です。

相続放棄申述書を提出すると、家庭裁判所で相続放棄の審査が開始され、適法であれば申述が受理されます。

なお、相続放棄は法律上「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に行わなければならず、この期間内に相続放棄申述書を提出する必要があります。

第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)

第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

引用元:民法 | 第915条

この記事では、相続放棄申述書の具体的な記載項目や、「もう関わりたくない」という理由で相続放棄をする場合の書き方のポイントについて、分かりやすく解説します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

相続放棄申述書には決まった書き方がある

 

相続放棄をする成年の相続人は、家庭裁判所所定の様式「相続の放棄の申述書(成人用)」を用いて申述しなければなりません。

書式自体は一見シンプルなものの、戸籍に記載された氏名・続柄等との表記の違いによる誤記入や、チェック欄の記入漏れが起きやすい書類でもあります。

たとえば、漢字の表記や続柄の書き方など、戸籍謄本に合わせて正確に記載する必要があります。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、申述書の記載内容と添付書類の整合性を確認し、不備なく手続きが進むようサポートしています。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

相続放棄申述書の記載内容

相続放棄申述書には、主に次のような項目を記入することになります。

  • 提出先の家庭裁判所の名称
  • 申述人の記名・押印
  • 添付書類の有無
  • 申述人・法定代理人等・被相続人
  • 申述の趣旨
  • 申述の理由
  • 放棄の理由
  • 相続財産の概略
  • 代筆と委任状

それぞれの項目について、以下から詳しく説明します。

提出先の家庭裁判所の名称

申述書を提出する家庭裁判所の名称を記入します。

提出先の家庭裁判所は、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

申述人(相続放棄する人)の現在の住所地ではない点に注意してください。

たとえば、被相続人の本籍地や住民票の所在地が遠方の場合でも、亡くなった方の最後の住所地を担当する家庭裁判所に提出する必要があります。

家庭裁判所の管轄は裁判所の公式サイトで調べることができるので、事前に確認しましょう。

申述人の記名・押印

申述人(相続放棄をする人)の氏名を記入し、氏名の横に実印または認印で押印します。

氏名は戸籍謄本に記載されているとおりに正確に書きましょう。

漢字や記号の表記は戸籍の表記に合わせ、旧字体・俗字体の違いにも注意です。

なお、本人が署名押印できない場合は、後述の「代筆と委任状」の項目を参照してください。

添付書類の有無

申述書には相続放棄の申述に際して添付する書類の有無を記載する欄があります。

具体的には、「戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本(全部事項証明書)」など、必要な書類の名称があらかじめ列挙されており、添付するものにチェックを入れる方式です。また、添付する書類の合計通数を記入する欄もあります。

申述書を提出するときはチェックを入れた書類一式をしっかりそろえて添付し、漏れがないか必ず確認しましょう。

戸籍謄本や住民票除票など、どの書類を何通添付するかは相続人の立場によって異なります(詳細は後述の「必要な添付書類を用意する」で説明します)。

申述人・法定代理人等・被相続人

申述人(相続放棄する人)、法定代理人(いる場合)および被相続人(亡くなった方)の以下の情報を記載することになります。

  • それぞれの氏名
  • 生年月日
  • 住所
  • 本籍
  • 続柄

重要なのは、戸籍謄本や住民票に記載されているとおりに正確に書くことです。

たとえば被相続人の氏名・生年月日・本籍地は、被相続人の除籍謄本(死亡の記載がある戸籍)から転記します。

法定代理人がいる場合(申述人が未成年者や成年被後見人の場合など)は、その代理人の情報も記入します。

誤字や省略があると補正を求められる可能性があるため、役所の証明書類を見ながら丁寧に書き写しましょう。

申述の趣旨

申述の趣旨欄には、あらかじめ「相続の放棄をする」旨が印字されています。

申述は「相続放棄を申し述べます」という申述の内容そのものを示す部分で、申述人が特に何かを書き加える必要はありません。

用紙によっては太枠内に「相続の放棄をする」等と既に記載されています。

そのため、この欄は空欄のままで構いません(消してしまったり書き換えたりしないよう注意してください)。

申述の理由

申述の理由欄は、相続放棄をするに至った事情を整理して記載する部分です。

具体的には「自分が相続の開始があったことを知った日(=相続の開始を知った日)」を問う欄になっています。

申述書では、次の1~4の選択肢の中から当てはまるものを選ぶことになります。

選択肢 内容・記入方法
1.被相続人の死亡の時 被相続人が亡くなったその時に、相続の開始を知った場合に選びます。
2.被相続人の死亡の通知を受けた時 他の人から死亡の知らせを受けて、相続の開始を知った場合に選びます。
3.その他(具体的日時を記入) 上記以外の経緯で相続の開始を知った場合に、その日時を具体的に記入します。
4.その他(具体的事情を記入) 特別な事情がある場合に、その事情を括弧内に具体的に記入します。

選択肢の番号は申述書の書式によって表現が多少異なる場合があるものの、一般的な書式では以上のような区分です。

4の「その他」を選んだ場合は、その後に続く括弧内に具体的な事情を記入します。

申述の理由欄は後述する家庭裁判所からの照会書(質問状)の内容とも関連するため、事実関係を正直に記載しましょう。

放棄の理由

放棄の理由欄では、相続放棄をする理由としてあらかじめ用意されている選択肢1~6の中から該当するものを○で囲むことになります。

書式には典型的な放棄理由が番号付きで示されており、具体的には次の表のとおりです。

選択肢 内容・記入方法
1.被相続人から生前に贈与を受けている 被相続人から生前に十分な財産的支援や贈与を受けており、改めて遺産を受け取る必要がない場合に選びます。
2.生活が安定している 申述人自身の生活が経済的に安定しており、遺産を特に必要としていない場合に選びます。
3.遺産が少ない 被相続人の遺産額が極めて少なく、相続しても実質的なメリットがない場合に選びます。
4.遺産を分散させたくない 遺産を他の相続人に集中させたい、または遺産分割による煩わしさを避けたい等の事情がある場合に選びます。
5.債務超過のため 被相続人の遺産よりも負債(借金)の方が多く、相続するとマイナスになると判断される場合に選びます。
6.その他 上記1~5のいずれにも当てはまらない場合に選び、括弧内に簡潔に具体的な理由を記入します(例:「疎遠であったため関与したくない」など)。

上記1~5の定型理由のうち一つでも当てはまるものがあれば、それを選択するだけで構いません。

もしどれも直接は当てはまらない場合は6の「その他」を選び、理由を一言程度で簡潔に書くことになります。

詳しい事情説明は、後日の照会書で改めて質問されることもあるため、この申述書の段階では長々と書く必要はありません。

たとえば「相続人間で揉めたくないため」「故人と長年疎遠だったため」など、端的な理由で問題ありません。

相続財産の概略

相続財産の概略欄には、被相続人が死亡時に所有していた主な財産の種類とその概略を記入します。

書式には「土地」「建物」「現預金」「有価証券」などの項目が設けられている場合があります。

概略欄では、正確な評価額や詳細までは求められていません。

申述時点で把握している範囲で、「土地(〇〇市〇〇町所在、田・山林等)」「建物(〇〇市〇〇町〇番地所在、木造住宅等)」「預貯金(〇〇銀行、概額〇〇万円)」といった具合に、財産の種類と大まかな内容を記します。

もし債務(借金)があることが分かっている場合も、「債務(住宅ローン残高あり、おおよそ〇〇万円)」等と記載しましょう。

ただし把握できていない財産があっても、無理に全てを書き出す必要はありません。

申述時点で判明している情報を整理して書けば足ります。

代筆と委任状

相続放棄申述書は原則として申述人本人が自署して作成します。

しかし、やむを得ない事情で本人が書けない場合に限り、代筆が認められるケースもあります。

たとえば、申述人が高齢で手が不自由な場合や、視覚障害がある場合などです。

代筆をする場合には、家庭裁判所に対し代筆の理由を明らかにし、必要に応じて委任状などの提出が求められます。

また、申述人が認知症などで相続放棄の意味を理解できない状態にある場合は、成年後見人を家庭裁判所で選任し、その後見人が代理して申述する必要があります。

いずれの場合も、本人の意思確認と署名・押印が原則であるため、代理人や代筆者が関与する際は慎重な手続きが求められます。

本人が書類を作成・提出することが難しい場合は、事前に家庭裁判所へ相談しましょう。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、申述人本人による記入や判断が難しい場合には、成年後見制度の利用や申述方法自体の整理も含め、司法書士・弁護士と連携して家庭裁判所対応も含めた全体の流れを調整しています。

必要に応じて専門家の力を借りながら、手続きが止まらないよう進めることが大切です。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

「関わりたくない」という理由で相続放棄申述書を作る際の書き方のポイント

 

相続放棄をする理由が「とにかく遺産にもう関わりたくないから」という場合、どのように申述書の理由欄に書けば良いか悩む方もいるでしょう。

結論からいえば、理由欄には率直に「関わりたくない」と書いて問題ありません。

家庭裁判所が相続放棄申述を却下するのは期限切れ(3か月を過ぎた場合)や書類の形式不備などであり、理由の内容そのものが原因で却下されることは基本的にないからです。

以下、「関わりたくない」という事情で申述書を書く際に押さえておきたいポイントをまとめました。

  • はっきり「もう関わりたくないから」と記載してよい
  • 理由欄は限られているため、理由は短くてもよい

それぞれのポイントについて、以下から詳しく解説します。

はっきり「もう関わりたくないから」と記載してよい

相続放棄の申述書の理由欄に書いた内容が直接、相続放棄の可否に影響することはありません。

冒頭で述べたとおり、家庭裁判所が相続放棄を受理しない主なケースは、申述期間(3か月以内)を過ぎてしまった場合か、書類に重大な不備がある場合です。

理由の内容が「関わりたくないから」であっても、それ自体で不受理になることはないので、安心してください。

極端な言い方をすれば、「亡くなった親とは折り合いが悪かったので関与したくない」といった個人的事情でも構わないのです。

実際、家庭裁判所から送られてくる照会書(後述)でも、「相続放棄をする意思は変わりませんか」といった確認がある程度で、詳細な動機について厳しく問われることは多くありません。

「もう遺産には一切関わりたくないため相続放棄します」といった簡単な表現でも、要件さえ満たしていれば却下理由にはなりません。

理由欄は限られているため、理由は短くてもよい

相続放棄申述書の理由を書く欄は、用紙上の小さい範囲しかありません。

数行程度しか記入できないため、無理に長文にせず簡潔にまとめましょう。

たとえば、「長年疎遠であったため関わりたくない」「家庭の事情で相続手続きに関与できないため放棄したい」など、数行以内に収まる説明で全く問題ありません。

むしろ、欄からはみ出すような長い説明を書いてしまうと読みづらくなり、家庭裁判所から後日詳しい事情を聞かれる際に説明がぶれてしまう恐れもあります。

理由欄はあくまで形式的なものなので、簡潔さを心がけましょう。

「関わりたくない」だけではなく「~~だから、関わりたくない」と書くべき

ただ「関わりたくない」という一言だけを書くよりは、「〇〇だから関わりたくない」というように背景を一言添えることをおすすめします。

たとえば、「生前から折り合いが悪かったため関わりたくない」「長年連絡を取っておらず事情が分からないため関わりたくない」など、感情の理由に簡単な背景説明をプラスするイメージです。

このように書くことで、書面を読んだ裁判所の担当者にも状況が伝わりやすくなります。

単に「関わりたくない」の一言だけだと、なぜ関わりたくないのかが全く読み取れません。

一言理由を補足するだけで、理解度が格段に上がります。

結果的に、裁判所側で状況を把握しやすくなり、照会書で追加確認が入りにくくなる可能性があります。

相続放棄申述書の入手~提出、その後の流れ

 

相続放棄申述書を入手してから提出し、さらにその後の手続きが完了するまでの大まかな流れを説明します。

相続放棄の手続きは、主に以下のようなステップで進みます。

  • 相続放棄申述書を入手する
  • 相続放棄申述書を書く
  • 必要な添付書類を用意する
  • 相続放棄申述書を提出する【注意点あり】
  • 相続放棄の照会書を返送する
  • 相続放棄申述受理通知書を受け取る
  • 相続放棄申述受理証明書の取得

以下から、それぞれ詳しく見ていきましょう。

相続放棄申述書を入手する

相続放棄申述書の入手方法は、次の表のように2通りあります。

入手方法 内容・ポイント
家庭裁判所で直接もらう方法 ・被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所の窓口で、相続放棄の申述書用紙を無料でもらえる
・分からない点はその場で職員に質問することもできる
インターネットからダウンロードする方法 ・裁判所の公式サイトで、相続放棄申述書の書式がPDFおよびWord形式で公開されている
・自宅のプリンタでA4用紙に印刷して利用可能
・「相続放棄申述書(書式)」をダウンロードし、必要部数を印刷する

いずれの場合も、最新の書式を使いましょう。

特にダウンロードする場合は、その時点で裁判所サイトに掲載されている最新版を利用してください。

2023年時点の書式には、上で説明したようなチェック欄や記載欄が設けられています。

用紙はA4判2ページにわたるため、印刷漏れがないよう注意しましょう。

相続放棄申述書を書く

相続放棄申述書を入手したら、前述の各項目について実際に記入していくことになります。

記入は手書きで行うのが一般的ですが、パソコン等で作成したものを提出しても構わないとされています。

記入にあたっては、あらかじめ次の点を整理しておくとスムーズです。

申述書に書き込む前に整理しておくと良い事項

事前に以下の表にある情報を整理しておくことで、申述書の記載漏れや迷いを減らすことができます。

準備項目 内容・ポイント
相続開始日と熟慮期間(3か月)の起算点 ・被相続人が亡くなった日、または自分がその事実を知った日付を正確に確認すると、提出期限(○年○月○日まで)が明確になる
・期限内に判断が難しい場合は、期間伸長の申立ても検討する
相続財産の大まかな情報 ・被相続人の財産内容を把握します。特に負債の有無や不動産の有無を確認し、「相続財産の概略」欄に記載する内容を整理する
・「債務超過のため」など、放棄理由の選択にも関係するため必要
被相続人との交流状況の経緯 ・被相続人との生前の関係を簡単に振り返る(例:長年疎遠、別居して音信不通、介護に携わっていたなど)
・照会書で理由を問われた際に、的確に説明できるよう整理しておくと安心
家庭裁判所へ提出する書類一式のリスト ・申述書と一緒に提出する添付書類のチェックリストを作成する
・被相続人の除票・戸籍、申述人の戸籍など、必要書類を漏れなく確認する
・どの書類を何通用意したかをリスト化しておくと、添付書類欄の記入もスムーズ

申述書に書き込む際は、消せるボールペンは使わず、黒のインクまたはボールペンで丁寧に記入しましょう。

万一間違えた場合は、二重線を引いて訂正印を押す必要があります。

必要な添付書類を用意する

相続放棄申述書には、被相続人と相続放棄をする人(申述人)の関係性を証明するための添付書類が必要です。

具体的に何を添付するかは、申述人と被相続人との続柄(関係)によって異なります。

以下に、主なケースごとに必要となる一般的な書類の例を挙げます。

相続人の立場 必要書類 内容・取得先
共通して必要な書類(全員共通) 被相続人の住民票除票または戸籍附票 ・亡くなった方の最後の住所地を証明する書類
・市区町村役場で取得する
申述人(放棄する方)の戸籍謄本 ・相続放棄をする方が相続人であることを証明する戸籍
・現在の本籍地の市区町村役場で取得する
配偶者(被相続人の配偶者) 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本) 被相続人の死亡事実と配偶者関係を確認できる戸籍
子または孫など(第一順位の相続人) 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本 被相続人の死亡事実と親子関係を確認できる戸籍
(孫など代襲相続人の場合)被代襲者(親)の死亡の記載がある戸籍謄本 申述人の親が既に亡くなっていること(代襲相続)を証明する戸籍
父母・祖父母など(第二順位の相続人) 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本 被相続人に子がいないことを確認するため、出生から死亡までの連続した戸籍が必要
被相続人の子・代襲者で死亡している方の出生から死亡までの戸籍謄本 被相続人の子や孫が既に亡くなっていることを確認
被相続人の直系尊属(親・祖父母)で先に亡くなっている方の死亡の記載がある戸籍謄本 申述人より先に死亡している直系尊属の死亡確認のために必要
兄弟姉妹または甥・姪など(第三順位の相続人) 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本 被相続人に子がいないことを確認するための全戸籍
被相続人の子および代襲者で死亡している方の出生から死亡までの戸籍謄本 子・孫がいない(死亡している)ことの確認用
被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍謄本 被相続人の親が既に亡くなっていることを証明
(甥・姪など代襲相続人の場合)被代襲者(兄弟姉妹)の死亡の記載がある戸籍謄本 本来の相続人である兄弟姉妹が死亡していることを証明する戸籍

実際には、先に他の相続人が相続放棄している場合などには提出を省略できる書類もあります。

また、法定相続情報証明制度を利用して「法定相続情報一覧図の写し」で代替できるケースもあります。

具体的に自分の場合に何が必要か分からない場合は、家庭裁判所に問い合わせるか専門家に相談しましょう。

必要書類は、市区町村役場で取得することになります。

戸籍謄本などの取得には1通あたり数百円の手数料がかかるため、あらかじめ用意しましょう。

また、被相続人の本籍地が遠方の場合は、郵送請求や代理人による取得(委任状が必要)も検討します。

申述書に添付する戸籍類は原本を提出しますが、提出後に原本還付を受けたい場合は、写しを取って請求すれば戻してもらえることもあります。

相続放棄申述書を提出する【注意点あり】

相続放棄申述書と必要書類が整ったら、管轄の家庭裁判所に提出します。

提出方法は、家庭裁判所の窓口に持参するか郵送する方法のどちらでも構いません。

提出先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となるため、誤送付に注意してください。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、提出前に全体を確認し、手続きが滞らない形で進めています。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

提出にあたって特に注意すべき点は次のとおりです。

  • 相続放棄申述書には提出期限がある!
  • 相続放棄申述書にはお金がかかる!

ここからは、上記のポイントを一つずつ確認しましょう。

相続放棄申述書には提出期限がある!

相続放棄申述書は、相続の開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ提出しなければなりません。

この3か月の期間は「熟慮期間」とも呼ばれ、民法で厳格に定められた期限です。

たとえば、被相続人が亡くなった日(またはその死亡事実を知った日)が1月1日であれば、4月1日までに家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する必要があります。

万一、この期限を過ぎてしまうと、原則として相続放棄はできません。

ただし、例外的に「相続財産が全くないと信じていたが、後から負債が見つかった」等の正当な理由がある場合には、負債等の存在を知ってから3か月以内であれば相続放棄が受理される可能性もあります。

また、どうしても3か月では判断できない場合には、家庭裁判所に期間延長(伸長)の申立てを行うことで期間を延ばすことも可能です。

提出期限ギリギリになると、書類不備があった際に訂正が間に合わなくなるリスクもあります。

できるだけ余裕をもって提出しましょう。

期限内に裁判所へ届いていれば良いため、期限管理は裁判所に到達する日を基準に考え、余裕をもって発送しましょう。

相続放棄申述書にはお金がかかる!

相続放棄の申述には、以下表のように費用がかかります。

費用項目 金額の目安 内容・注意点
収入印紙 800円(相続人1人につき) 相続放棄申述書に貼付します。家庭裁判所の窓口または郵便局で購入可能です。
郵便切手代 数百円程度(例:84円×5枚+10円×2枚=計440円) 家庭裁判所とのやり取り(照会書の送付・返送)に使用します。必要な金額や組み合わせは裁判所ごとに異なるため、事前に確認が必要です。
添付書類の取得手数料 戸籍謄本:1通450円程度 ほか 戸籍謄本や住民票除票など、必要書類を市区町村役場で取得する際の費用です。取得した分だけ実費がかかります。

収入印紙は家庭裁判所の窓口や郵便局等で購入できます。

郵送提出の場合、申述書に貼り付けておきましょう。

不足があると照会書などが届かなくなってしまうため、指定どおりの金額を忘れずに同封してください。

切手は余った分があれば手続き完了時に返却されます。

相続放棄の照会書を返送する

相続放棄申述書を無事提出すると、後日(通常提出後1~2週間ほどで)家庭裁判所から照会書(照会事項回答書)という書面が申述人宛に郵送されてきます。

照会書は、家庭裁判所が相続放棄の意思や経緯について申述人に確認するための質問票のようなものです。

相続放棄の手続きは照会書に回答して返送し、裁判所が受理決定を下すことで完了します。

したがって、照会書に回答して返送するまでが一連の手続きと考えてください。

照会書には主に次の表のような質問が含まれています。

質問内容 意図・回答のポイント
「相続放棄をしようとする理由は何ですか?」 ・相続放棄を決意した経緯や理由を確認する質問
・申述書の「放棄の理由」欄に書いた内容を踏まえ、もう少し具体的に説明する
「相続放棄をする意思は今も変わりありませんか?」 ・本当に相続放棄して良いのかを再確認する質問
・放棄の意思が確固たるものであることを明確に伝える
「相続の開始があったことを知ったのはいつですか?」 ・相続開始を知った日付の確認を目的とした質問
・申述書の「申述の理由」欄で選択した内容と一致する日付を回答し、申述が期限内(3か月以内)に行われたことを確認する
「相続放棄をすると相続財産を一切受け取れなくなりますが理解していますか?」 ・相続放棄の法律的な効果を理解しているかを確認する質問
・放棄すると最初から相続人でなかったものとみなされ、財産も債務も一切引き継がないことへの理解を問われます。

照会書の質問内容自体は形式的なものが多く、正直に回答すれば難しいものではありません。

記入は黒のペンで行い、質問ごとの回答欄に丁寧に書きましょう。

不明点があれば家庭裁判所に電話で問い合わせても構いません。

照会書への回答は、期限内に家庭裁判所へ返送する必要があります。

同封の返信用封筒や切手の案内がある場合は、指示に従って期日までに郵送してください。

なお、照会書に回答しないまま放置すると、相続放棄が認められなかったり、申述を取り下げたものとみなされるおそれがありますので注意が必要です。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、照会書を受け取った後、お客様が落ち着いて回答できるよう内容整理のお手伝いもしています。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

相続放棄の理由を照会書に記す際の表現例

照会書でも「相続放棄をしようとした理由」について質問されることがあります。

感情的な表現や長すぎる説明は不要で、要点を整理して伝えましょう。

以下は回答例の一部です。

事情の内容 回答例 解説・使い方
生前から長期間交流がなく、財産状況を把握できなかった事情 「被相続人とは◯年以上音信不通で、遺産について全く把握できなかったため」 被相続人と疎遠であったことを理由にする場合の表現例
債務超過と推測される情報を外部から得た事情 「債務が遺産を上回る可能性が高いと聞いたため」 被相続人に借金が多いと判断した場合の簡潔な書き方
自身の生活状況から相続対応が困難であった事情 「自身も生活に余裕がなく、遺産を管理処理することが難しかったため」 自分の経済的・生活的事情で相続に対応できない場合の表現例
特定のトラブルを避けるため、法的関与を望まなかった事情 「相続人間で揉め事を避けたいと考え、法的に関与しないことにしたため」 家族間の紛争やトラブル回避を目的に相続放棄した場合の書き方

照会書はあくまで内部手続きの確認のため、適切に回答すれば概ね問題なく受理されます。

明確で簡潔な回答を心がけましょう。

相続放棄申述受理通知書を受け取る

家庭裁判所に照会書の回答を返送し、特に問題がなければ、やがて「相続放棄申述受理通知書」という書面が郵送されてきます。

相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所が正式に相続放棄を受理した(相続放棄の手続きが完了した)ことを通知する書類です。

相続放棄申述受理通知書には、〇月〇日付であなたの相続放棄申述を受理した旨が記載されています。

以後、被相続人の財産や負債について法的責任を問われることはありません。

受理通知書は大切に保管しておきましょう。

基本的には自分用の記録ですが、まれに金融機関などから相続放棄したことの証明を求められた際に提示を求められることがあります。

ただし通常は、後述の「受理証明書」を取得して提示する場面の方が多いです。

もし申述書や照会書に不備があり相続放棄が認められない場合は、家庭裁判所から「却下通知」等が届くことになります。

そのような通知が来た場合は、至急家庭裁判所や専門家に対応を相談してください。

相続放棄申述受理証明書の取得

相続放棄が受理された後、必要に応じて「相続放棄申述受理証明書」を家庭裁判所から発行してもらうことができます。

たとえば、次のような場合に求められることがあります。

使用場面 内容・目的
不動産の相続登記をする場合 他の相続人が不動産の名義変更(相続登記)を行う際、相続放棄をした人が登記手続から除外されていることを証明するため、受理証明書の提出を求められることがある
被相続人の借金を債権者から請求された場合 ・相続放棄後に金融機関や貸金業者などから返済を求められた場合、受理証明書を提示することで正式に相続放棄した事実を証明できる
・口頭で伝えることも可能ですが、書面がある方が確実
銀行や保険会社での相続手続を行う場合 他の相続人が故人の預金払戻しや保険金請求を行う際、相続放棄した人が法的に相続人から外れていることを示すため、金融機関から証明書の提出を求められることがある

相続放棄申述受理証明書を取得するには、家庭裁判所に対し「相続放棄申述受理証明申請書」を提出します。

具体的な申請手続きは、次のとおりです。

項目 内容
申請先 相続放棄を受理した家庭裁判所(=申述を行った家庭裁判所)に申請する
申請方法 ・窓口または郵送で申請可能
・申請書は家庭裁判所の窓口で入手できるほか、各地の裁判所HPからダウンロードできる場合もある
申請手数料 ・収入印紙150円分を申請書に貼付(1通あたり150円)
・複数通ほしい場合は、通数分の印紙が必要
郵送申請の場合 ・申請書・収入印紙に加えて、返信用封筒と切手を同封する
・返信先の住所氏名を記入し、所定の切手を貼っておけば、証明書が郵送で届く
窓口申請の場合 ・家庭裁判所に直接行き、申述受理通知書・本人確認書類(運転免許証など)・認印を持参する
・多くの裁判所では即日交付してもらえる場合がある

受理証明書は公的な証明文書のため、しっかり発行を受けておけば後々安心です。

特に不動産登記では必須になることが多いため、相続放棄が受理されたら早めに取得しましょう。

「もう関わりたくないから」を理由に相続放棄してOK!正しい書き方で申述書を出そう

 

「もう遺産には関わりたくない」という理由であっても、相続放棄は正当な手段として認められます。

大切なのは、期限内に必要書類を揃えて申述書を正しく記入・提出することです。

特に「関わりたくない」という気持ちが理由の場合でも、申述書の理由欄に簡潔に事情を書き添えれば問題なく受理されます。

申述書提出後は、家庭裁判所からの照会書に回答し、正式に相続放棄が成立します。

相続放棄の手続きを確実に進めるためには、早めの準備と計画が重要です。

また、放棄するか迷っている段階でも、期限が迫っている場合は一旦申述書を出しておくという選択肢もあります。

もし相続放棄の判断に迷いがあったり、書類の書き方に少しでも不安を感じたりした場合は、一人で抱え込まず専門家に相談することも大切です。

私たち静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、不動産・法律・税務それぞれの視点からお客様の状況を整理し、相続全体を見渡した上で必要な対応策を一緒に考えていきます。

静岡という地域で長年培ってきた実績と、司法書士・税理士・弁護士との連携体制により、相続放棄を含めた適切な判断を冷静に進められる環境を整えています。

相続に直面したとき、「何から手を付ければいいのか分からない」と感じたら、ぜひ当センターを窓口としてご活用ください。

状況を一つ一つ整理し、安心して手続きを進めるお手伝いをさせていただきます。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

相続の疑問、専門家がまとめてお答えします

お電話でのご相談0120-200-009月〜土 9:00〜18:00(日祝定休)
無料相談を予約する

夫の死亡後に妻へ家の名義変更をするには?手順や費用、注意点を解説

2025.12.02

夫が亡くなったあと、家の名義をそのままにしておくと、将来の売却やリフォームの際に手続きが進まなくなったり、次の相続で手間が増えたりと、さまざまな支障が生じやすくなります。

こうしたトラブルを避けるためには、早めに法務局で相続登記(名義変更)を行うことが大切です。

この記事では、夫から妻へ家の名義を変更する際の手続きや必要書類、費用、注意点についてわかりやすく解説します。

相続税は基礎控除額を超える遺産を取得した場合、相続の発生と同時に申告と納税の義務が発生します。

基礎控除を超える可能性がある時は、早めに税務面の確認も進めておきましょう。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

夫が亡くなったら、家の名義変更(夫から妻へ)が必要

夫が亡くなっても、不動産の名義は自動で妻に移る仕組みではありません。

家の持ち主が亡くなった時点で、その家は法律上の相続財産となり、名義を動かすには相続登記が欠かせません。

名義を放置すると、次の表のように売却や新しい住宅ローンの相談が進まなくなるなど、生活に支障が出るおそれがあります。

リスクの種類 放置によって生じる主な影響 補足・具体例
他の相続人とのトラブル 妻以外の相続人と共有状態となり、揉めごとの原因になる 子や親族から「現金で分けたい」「賃料を払え」と主張される可能性がある
不動産の処分・活用の制限 法的には故人の財産のままとなり、自由に使えない 売却・担保・建て替え・リフォームなどができなくなる恐れがある
手続きが複雑になる 相続人が増えることで、遺産分割や登記が困難になる 妻も亡くなった場合、妻側の親族まで関係者に含まれる
法律違反による過料 相続登記を怠ると過料(10万円以下)の対象となる 2024年4月以降の義務化により、3年以内の申請が必須(過去の相続にも適用)

さらに、次の相続が起きた時に関係者が増えて話し合いが複雑になり、家に住み続けたい妻が困ってしまう可能性もあります。

安心した暮らしを守るためにも、早めに妻名義へ移す準備を進めることが大切です。

夫の死亡後に妻へ家の名義変更をする手順

夫から妻へ名義を移す流れは、次の通りです。

  • 手順1:死亡の事実を証明する公的書類を取得する
  • 手順2:相続人を確定する
  • 手順3:遺言書の有無を確認する
  • 手順4:遺産分割協議を行う
  • 手順5:登記に必要な書類をそろえる
  • 手順6:法務局で相続登記を申請する

以下からは、こうした各手順について詳しく見ていきましょう。

手順1:死亡の事実を証明する公的書類を取得する

相続登記を行うためには、夫の死亡を公的に示す戸籍一式が必要です。

戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍を本籍地の役所で集める必要があり、出生から死亡までの記録途切れずにそろっていることが重要です。

こうして身分関係がはっきりすれば、後の協議や登記で行き違いが生じづらくなります。

なお、戸籍の途中に抜けがあると法務局から問い合わせが入る可能性があり、手続きが滞るおそれがあります。

手順2:相続人を確定する

まず、相続人を確定させるところから始めます。

法律上、相続人になれるのは配偶者(妻)と一定範囲の血族です。

一般的なケースでは妻と子どもが相続人となり、子どもがいない場合は妻と夫の親(または親が既に亡くなっている場合は夫の兄弟姉妹)が相続人になります。

誰が相続人になるかで名義変更の手続きも変わるため、戸籍で確認しましょう。

手順3:遺言書の有無を確認する

次に、夫が遺言書を残していなかったか確認しましょう。

遺言書がある場合とない場合とで、名義変更手続きの進め方が異なります。

遺言書がある場合、内容に従って誰が家を相続するか決まります。

特に公正証書遺言で「妻に自宅を相続させる」と指定されていれば、家庭裁判所の検認も不要ですぐに登記手続きに使うことが可能です。

自筆証書遺言(夫が自書した遺言)の場合は、開封せずに家庭裁判所で検認手続き(遺言の存在と内容を確認する手続き)が必要です。

自筆証書遺言を家庭裁判所の検認前に開封すると、法律上5万円以下の過料の対象となるため、必ず押さえておきましょう。

検認を経て遺言書が有効と確認されたら、遺言書(自筆遺言なら検認済証明書付き、または公正証書遺言の正本/謄本)を添付して相続登記を申請します。

遺言によって妻が自宅の相続人と指定されている場合、後述する遺産分割協議は不要です。

一方、遺言書がない場合、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が自宅不動産を相続するか決める必要があります。

一般的には「自宅は妻が相続し、預貯金等のほかの遺産は子どもが相続する」などの形で合意するケースが多いです。

話し合いがまとまったら、話し合いの内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめます。

遺産分割協議書には相続人全員の署名・実印押印・印鑑証明書が必要です。
書式に決まりはありませんが、記載に不備があると法務局で登記申請が受理されませんので注意しましょう。

遺産分割の話し合いは、相続人が妻が一人の場合(=他に相続人がいない場合)を除き必須です。

たとえ妻がその家に住み続ける予定でも、子どもなど他の相続人がいる場合は「妻が家を相続する」ことについて全員の同意(=遺産分割協議での合意)がないと、妻単独の名義に変更する登記はできません。

もし相続人の一人でも合意しない場合、協議は不成立となり、最終的には家庭裁判所での調停・審判といった法的手続きに進む可能性があります。

裁判にもつれ込むと解決まで長期間を要し、精神的・経済的負担も大きくなってしまいます。

こうした事態を避けるためにも、相続人間で早めに話し合い、円満に合意形成することが望ましいでしょう。

なお、相続人の中に未成年者がいる場合、その未成年者と他の相続人(たとえば母親である妻)との間で利益が相反するため、そのままでは有効な遺産分割協議ができません。

未成年がいる場合は、家庭裁判所で未成年者のための特別代理人の選任を受ける必要があります(専門的な手続きになるため、このケースでは司法書士や弁護士に相談してください)。

相続放棄をする人がいる場合(借金が多いなどの理由で相続を放棄する場合)、その人は初めから相続人でなかったものとみなされます。

ただし相続放棄は原則として夫の死亡を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをすることが必要です。

また、放棄した人がいる場合は先述のとおり、その人の相続放棄受理証明書を登記申請時に添付することになります。

手順4:遺産分割協議を行う

遺言書が無い場合は、すべての相続人で話し合いを進めます。

家を妻が相続する形にする場合、相続人全員の同意が必要で、協議内容を書面にまとめた遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書には所在地や家屋番号まで正しく記すことが重要です。

記載に誤りがあると法務局で受理されずやり直しとなり、時間と費用の負担が増えてしまいます。

手順5:登記に必要な書類をそろえる

遺産分割協議のあとは、法務局に提出する書類を用意します。

それぞれの書類名や取得先、目的などを以下にまとめました。

書類名 誰の書類か 取得先 目的・用途 備考
戸籍謄本(出生~死亡) 夫(被相続人) 本籍地の市区町村役場 法定相続人の確定 改製原戸籍・除籍謄本含む全期間分。転籍していれば複数の役場に請求必要。
住民票の除票 または戸籍の附票 夫(被相続人) 最後の住所地の市区町村役場(附票は本籍地) 登記簿上の住所との一致証明 附票や不在住証明と組み合わせて使う場合もあり。
相続人の戸籍謄本 妻・子など相続人全員 各人の本籍地の市区町村役場 相続人の身分確認 相続放棄者がいれば相続放棄受理証明書も必要。
相続人の住民票 妻・子など相続人全員 各人の現住所地の市区町村役場 現住所の確認・登記用 マイナンバーなしで発行依頼する。
印鑑登録証明書 妻・子など協議参加者全員 各人の住所地の市区町村役場 実印押印とセットで提出 有効期限なしだが、取得は手続き直前が望ましい。
固定資産評価証明書 対象物件に関するもの 所在地の市区町村役場(資産税課等) 登録免許税の算定 不動産1物件に1通。納税通知書の課税明細で代用可の場合あり。
登記事項証明書(登記簿謄本) 対象不動産 法務局(管轄局またはオンライン) 登記内容の確認・申請書記載用 発行手数料は1通600円。
遺産分割協議書 相続人全員 自作(様式自由) 分割内容を明文化 全員の署名・実印押印と印鑑証明書の添付が必要。
遺言書(存在する場合) 夫(被相続人) 公正証書:公証役場/自筆:家庭裁判所で検認後使用 故人の意思による分配指示 登記には正本または謄本を提出(原本は返却不可のため)。
相続関係説明図(省略可) 被相続人と相続人の関係図 相続人または司法書士が作成 登記時に添付する図解資料 添付すると戸籍の原本を返却してもらえる。
法定相続情報一覧図の写し(任意) 相続関係全体 法務局(被相続人の最終住所地管轄) 相続人関係の公的証明書として活用 登記・銀行等で使い回せる。戸籍の代替資料として便利。

どの書類も提出先(法務局など)によって要否が異なる場合があるため、事前に提出先に確認した上で準備を進めるのが確実です。

評価証明書は市区町村で取得し、登録免許税の計算で使います。

必要書類が一つでも欠けると申請が進まず、予約した相談日が無駄になってしまう場合があります。

手順6:法務局で相続登記を申請する

書類一式が揃ったら、いよいよ法務局へ登記申請です。

申請方法は、法務局の窓口へ持参するほか、郵送申請やオンライン申請を利用することもできます。

初めての方や書類に不安がある方は直接窓口に行く方法がおすすめです。

法務局の受付窓口では登記相談員(司法書士や職員)による無料相談を予約制で受け付けている場合があるため、事前に問い合わせてみると良いでしょう(平日日中のみ。予約方法は各法務局によります)。

申請先となる法務局は、不動産の所在地を管轄する法務局です。

たとえば自宅が静岡県内にある場合、静岡県内の管轄法務局に申請します(※自宅の所在地と現在お住まいの住所地が異なる場合もありますので注意してください)。

申請時には、登録免許税と呼ばれる税金の納付が必要です。

窓口申請の場合、収入印紙を購入し申請書に貼付して納めます。

法務局に申請書を提出し、不備がなければ受理されます。

申請から完了までは通常1~2週間程度です。

登記が完了すると、後日「登記識別情報通知」(権利証に代わる12桁の暗号コードの通知書)が新しい名義人(妻)宛てに交付・送付されます。

こうして正式に登記簿上の所有者名義が妻に変更され、名義変更手続きは完了です。

登記完了後は、念のため法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得しましょう。

名義人が自分(妻)に変わっていることを確認できます。

今後、不動産を売却したり相続したりする際には取得した登記事項証明書が必要になります。

夫の死亡後に妻へ家の名義変更をする際にかかる費用

夫の死亡後に妻へ家の名義変更をする際にかかる費用についてまとめました。

  • 登録免許税の目安
  • 司法書士へ依頼する場合の費用相場
  • 自分で行う場合の実費

ここからは、それぞれの費用について解説します。

登録免許税の目安

相続登記の申請時には、まず「登録免許税」という税金を納めます。

登録免許税は国に納める税金で、不動産の価値に一定税率をかけて算出します。

相続による所有権移転登記の場合、税率は固定資産税評価額の0.4%(1000分の4)です。

評価額とは、市区町村から毎年送付される固定資産税課税明細書に記載されている「価格」のことで、登記の際はこの評価額を基準に税額を計算します。

固定資産税評価額が2,000万円の家の場合、以下のようになります。

登録免許税 = 2,000万円×0.4%=8万円

登録免許税は不動産の土地・建物それぞれに課税されます。

自宅敷地(土地)と建物の両方がある場合、それぞれの評価額に対して0.4%ずつ課税される点に留意しましょう。

なお、登録免許税にはいくつか軽減・免除措置もあります。

たとえば、相続した土地の評価額が100万円以下であれば、その土地に関する相続登記の登録免許税は非課税(免税)とされています(この特例措置は令和9年〈2027年〉3月31日までの時限措置です)。

第84条(相続に係る所有権の移転登記等の免税)

第八十四条の二の三
(略)
2 個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から令和七年三月三十一日までの間に、土地について所有権の保存の登記(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第二条第十号に規定する表題部所有者の相続人が受けるものに限る。)又は相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、これらの登記に係る登録免許税法第十条第一項の課税標準たる不動産の価額が百万円以下であるときは、これらの登記については、登録免許税を課さない。

引用元: 租税特別措置法 | 第84条の2の3第2項

また、相続登記をしないまま相続人が亡くなり二次相続が発生しているケースでは、最初の相続分の登録免許税が免税になる特例もあります。

該当するケースでは法務局や専門家に確認すると良いでしょう。

登録免許税以外にかかる法定費用としては、以下のように各種証明書の発行手数料があります。

  • 戸籍謄本・除籍謄本:1通450~750円程度(書類の種類や自治体によって異なる)
  • 住民票・住民票除票:1通300円程度
  • 印鑑証明書:1通300円程度
  • 固定資産評価証明書:1通200~400円程度(自治体による)
  • 登記事項証明書(登記簿謄本):1通600円

以上は目安ですが、概ね必要書類の取得実費はトータルで数千円~1万円以内に収まることが多いです。

まとめると、妻が自分で相続登記を行う場合にかかる費用は、おおむね「登録免許税+各種証明書の発行手数料」です。

司法書士へ依頼する場合の費用相場

「自分で手続きをするのは不安」「平日の日中に役所や法務局に行くのが難しい」という場合、司法書士や一部の行政書士に手続きを依頼することもできます。

専門家に依頼すればその分報酬費用が発生しますが、手続きを安全かつスムーズに完了できるメリットがあります。

相続登記の申請代理業務を法的に行えるのは司法書士(または弁護士)です。

司法書士に依頼した場合の一般的な相場は不動産1件あたり約5~10万円前後です。

不動産の数が多かったり相続人が多数いるケースでは追加料金が発生することもあります。

行政書士は登記申請そのものは代理できないものの、戸籍収集や遺産分割協議書の作成など準備部分をサポートしてくれます。

行政書士に依頼する場合は3~7万円程度が目安です(別途、最終的な登記申請は司法書士に引き継ぐか、自分で行う必要があります)。

専門家に支払う報酬は決して安くありませんが、その分以下のようなメリットがあります。

  • 書類の不備やミスを防げる(プロのチェックにより登記申請が一度で通りやすい)
  • 煩雑な戸籍の読み取り・収集を代行してもらえる
  • 相続人への連絡・調整もサポートしてもらえる場合がある
  • 平日に何度も役所や法務局に赴く手間が省ける
  • 登記完了後も、不動産の有効活用や相続全般について相談に乗ってもらえる

実際には「安心と時間を買う」意味で専門家に任せる方も多いです。

特に、不動産が複数ある場合や相続人間の調整が必要な場合、また書類作成に自信がない場合は、司法書士への依頼を検討すると良いでしょう。

依頼する際は事前に見積もりを出してもらい、報酬額や対応内容を確認してから正式に依頼することをおすすめします。

自分で行う場合の実費

相続登記の手続きを自身で行う場合、必要となる費用は比較的少額で収まるケースがほとんどです。

具体的には、戸籍謄本の取得費(1通あたり450円程度)や固定資産評価証明書(300〜400円程度)、郵送での取り寄せにかかる送料などを含め、全体として数千円〜1万円ほどが目安となります。

費用面では抑えられる一方で、書類に不備があった場合は再提出が必要となり、法務局に何度も足を運ぶことになりかねません。

時間的な負担や手間を考えて、事前の準備と確認を丁寧に行うことが重要です。

夫の死亡後に妻へ家の名義変更する際に押さえておくべき注意点

夫の死亡後、家の名義変更を妻に変更する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 遺言書の有無で手続きが異なる
  • 他の相続人の同意・協力が必要
  • 相続放棄・限定承認も視野に入れる
  • 2024年施行の相続登記義務化・同期限に注意する
  • 妻が住み続けるための制度を知っておく

以下からは、それぞれについて詳しく解説します。

遺言書の有無で手続きが異なる

前述のとおり、遺言書がある場合とない場合で名義変更の進め方は大きく異なります。

公正証書遺言が残されていた場合は、基本的に遺言の内容どおりに名義変更が可能です。

他の相続人との協議は不要で、妻が受取人に指定されていればそのまま妻名義に登記できます。

一方、遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を成立させなければ、妻単独の名義にできません。

自筆遺言書が出てきた場合も、すぐに登記に使えるわけではなく家庭裁判所での検認が必要になる点に注意してください。

遺言書があるかどうか不明な場合は、念のため法務局の遺言書保管制度(自筆遺言書を法務局で預かってもらう制度)に預けられていないか確認したり、故人の関係する公証役場で公正証書遺言の有無を照会したりすることも検討しましょう。

他の相続人の同意・協力が必要

自宅を含む不動産は高額資産です。

法律上はたとえ配偶者であっても、自宅は故人の遺産の一部として他の相続人と共有の財産になります。

そのため、妻が単独で不動産を相続するには、子どもなど他の法定相続人全員の合意が必要です。

合意内容は遺産分割協議書にまとめ、全員が実印で署名押印する形で確認します。

協議書が整っていない限り、法務局は妻だけへの名義変更登記を受理しません。

特に不動産以外にめぼしい遺産がないような場合、他の相続人(子ども)が「自宅は母に譲る代わりに他の財産も少ない」という状況になりがちです。

その場合でも、一筆でも構わないので遺産分割協議書には子どもの取り分も明記し、必ず全員が押印しましょう。

もし相続人の中に協議に参加できない人(行方不明者など)がいる場合や、どうしても話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることになります。

そうなると解決までに時間がかかり、費用も専門家報酬等が追加で必要になります。

早期に当事者同士で円満解決できるよう、情報共有と譲歩も含めた話し合いを心がけましょう。

相続放棄・限定承認も視野に入れる

家と同時に住宅ローンや借金などが残っている場合、あるいは不動産が老朽化して維持費・固定資産税等の負担が大きい場合には、相続自体を放棄する選択肢もありえます。

相続放棄をすると初めから相続人ではなかったことになるため、その家を相続せず名義変更もしないことになります。

ただし、相続放棄すると他の財産(プラスの遺産)も一切受け取れなくなる点に注意が必要です。

また、放棄は夫の死亡を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。

他に、相続財産より負債の方が多いか不明な場合には、限定承認(負債は相続財産の範囲内で支払うことを条件に相続する手続き)という制度もあります。

限定承認は相続人全員で行う必要があるためハードルは高めです。

しかし、一部だけ相続放棄することはできないため、状況によって検討されることがあります。

こうしたケースは特殊な手続きのため、該当しそうな場合は早めに専門家(司法書士や弁護士)に相談してください。

相続放棄や限定承認をした相続人がいる場合、前述のようにその証明書を登記の際に添付する必要があります。

2024年施行の相続登記義務化・同期限に注意する

改めて強調しますが、2024年4月1日以降、相続登記は法律上の義務となりました。

夫の不動産を相続した場合、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

「取得を知った日」とは通常、被相続人が亡くなった日(または遺産分割協議でその不動産を取得すると決まった日)を指します。

正当な理由なくこの期限を過ぎると、最大で10万円の過料(罰則)が科される可能性があります。

なお、この義務は過去の相続にも遡及適用されるものです。

たとえば何年も前に夫が亡くなって家の名義変更をしていない場合でも、2024年4月1日時点で未登記であれば、その日から起算して3年以内(=2027年3月末まで)に申請しないと義務違反となります。

施行前から長期間放置していたケースでは特に注意が必要です。

「忙しくて手続きできなかった」「知らなかった」では済まされないため、まだ名義変更を済ませていない方は計画的に手続きを進めましょう。

どうしても自分では対処が難しければ、早めに司法書士など専門家に相談し、協力を仰ぐことをおすすめします。

妻が住み続けるための制度を知っておく

もし相続人間の事情で妻が自宅の所有権を相続しないケースがありうる場合(たとえば、「自宅建物は子どもが相続するが、妻がそのまま住めるようにする」等)、「配偶者居住権」という制度があります。

配偶者居住権とは、2020年の法改正で創設された権利で、亡くなった配偶者(夫)名義の家に引き続き妻が無償で住み続けられる権利です。

たとえ家そのものは子どもが相続した場合でも、妻は終身または一定期間、その家に住み続けることが可能になります。

ただし、配偶者居住権を設定するには遺言で明記するか遺産分割協議でその旨を取り決める必要があります。

また配偶者居住権を登記しておかないと第三者に対抗できません。

配偶者居住権の登記がされていないと、その家を子どもが売却してしまった場合に妻の居住権が保護されない恐れがあります。

配偶者居住権は相続人間の調整策として有効ですが、妻に確実に住まいを残すには、妻自身が所有権を相続するのが安心であることに変わりはありません。

いずれにせよ、妻が引き続き安心して住み続けられるようにするためには、法律上の手続きを適切に踏むことが大切です。

名義変更を含めた相続手続きを怠ると、時間・お金・人間関係の面で将来大きな問題を招く可能性があります。

夫から妻へ家の名義変更をする際によくある質問

名義変更の場面では、実際に多くの方が同じような疑問を持たれます。理解しやすいように、次の質問をまとめます。

  • 家の名義変更をせずに妻が住み続けられる?
  • 夫の遺言がない場合はどうすれば良い?
  • 家を共有名義にするとどんなデメリットがある?
  • 家の名義変更にはどのくらいの期間がかかる?
  • 家の名義変更は自分でできる?

以下からは、こうした疑問について詳しく見ていきましょう。

家の名義変更をせずに妻が住み続けられる?

相続登記をしていない場合でも、妻がそのまま家に住み続けること自体に問題はありません。

ただし、不動産の登記名義が夫のままでは、法律上の所有者とは認められず、将来的に不都合が生じる可能性があります。

たとえば、家を売却して老人ホームの入居資金に充てたいと考えても、名義が夫のままでは契約に進めず、売却ができないといった事態になりかねません。

家を担保に融資を受けたい場合も、同様に手続きが滞る可能性があります。

こうしたトラブルを防ぐためにも、できるだけ早めに相続登記を行い、妻の名義へ変更しておくことが重要です。

夫の遺言がない場合はどうすれば良い?

夫が遺言書を残していなかった場合は、相続人全員で話し合い、家を誰が相続するのかを決める必要があります。

話し合いの結果は「遺産分割協議書」という書面にまとめ、全員が署名し実印を押すことで法的に有効な合意となります。

遺産分割協議書がなければ、法務局での名義変更手続きは受理されません。

そのため、丁寧かつ確実に進めることが大切です。

また、協議がまとまらないまま時間が経過すると、次の相続が発生して関係者が増え、手続きがさらに複雑化するおそれもあります。

できるだけ早めに話し合いを始め、スムーズな合意形成を目指すことが安心につながります。

家を共有名義にするとどんなデメリットがある?

家を複数の相続人で共有名義にすると、売却やリフォームなどを行う際に、すべての共有者の同意が必要です。

一人でも反対したり、連絡が取れなかったりすると、手続きを進めることができず、生活に支障をきたしてしまうかもしれません。

たとえば、雨漏りなどで早急な修理が必要な場面でも、共有者全員の同意が得られなければ工事に着手できず、結果的に建物の傷みが進んでしまう恐れもあります。

こうしたリスクを避けるためにも、相続の段階で妻単独の名義に整えておくことが、将来的な安心につながります。

家の名義変更にはどのくらいの期間がかかる?

名義変更にかかる期間は、戸籍などの必要書類をそろえるのに1〜2週間、法務局での手続きに2〜3週間程度が一般的です。

全体としては、準備から登記完了までおおよそ1〜1.5か月を見込んでおくと良いでしょう。

ただし、相続人の人数が多い場合や、提出書類に不備がある場合には、手続きのやり直しが発生し、さらに時間がかかる可能性があります。

スムーズに進めるためにも、早めの準備と正確な書類確認が重要です。

家の名義変更は自分でできる?

相続登記の手続きは、ご自身で進めることも可能です。

ただし、相続人が多いケースや書類の内容が複雑な場合には、申請が受理されず、やり直しとなることもあります。

たとえば、戸籍に抜けがあったり、不動産の情報が登記簿と一致していなかったりすると、法務局から補正の連絡が入り、追加の手続きが必要になります。

こうした手間や不安を避けたい場合は、司法書士に相談するのも一つの方法です。

専門家のサポートを受けると、手続きをより確実に進めることができます。

家の名義変更(夫から妻へ)は早めに、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターまで相談を!

夫から妻への名義変更は、時間が経つほど書類が増え、関係者も増え、手続きが複雑になりやすいです。

相続登記の義務化によって三年以内の申請が必要となった今、早めに動くことが安心につながります。

名義変更を先延ばしにすると、相続人が増えてしまい、話し合いが難しくなる場合があります。

たとえば次の相続が発生すると相続人が2倍近くに増え、誰に連絡すればよいかわからず、協議が進まなくなる方もいます。

期限を過ぎれば過料の心配も出るため、早めの行動を心がけましょう。

書類の集め方や話し合いの整え方に迷った時は、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターにご相談ください。

相続登記や書類整理に慣れた士業と連携しており、状況に合わせた段取りを整理しながら、無理のない形で名義変更を進められる体制をご用意しております。

家の状態や相続人の人数に応じて、事前に確認すべき点を丁寧にご案内いたしますので、まずはお問い合わせください。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

相続の疑問、専門家がまとめてお答えします

お電話でのご相談0120-200-009月〜土 9:00〜18:00(日祝定休)
無料相談を予約する

法定相続人の範囲はどこまで?相続順位との関係と範囲が変わる要因を詳しく解説

2025.12.02

相続が発生した際に「誰が法定相続人になるのか」を正しく把握することは重要です。

しかし、家族関係が複雑だったり知識が不足していると、法定相続人の範囲や相続順位を誤解してしまうことがあります。

本記事では、法定相続人の範囲と相続順位の基本から、家族構成や法的事情によって範囲が変化するケースまで詳しく解説します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

法定相続人とは?

 

法定相続人とは、民法によって定められた「法律上相続権が認められる人」を指します。

被相続人(亡くなった方)に配偶者がいれば、配偶者は常に法定相続人です。

配偶者以外の血族については順位(後述)によって定められており、該当者がいる場合に相続権を持ちます。

たとえば、被相続人に妻と子どもがいれば妻と子どもが相続人となり、たとえ親や兄弟姉妹が存命でも相続人にはなりません。

逆に、子どもがおらず配偶者と母親がいる場合は妻と母親が相続人となり、兄弟姉妹は相続人にならないのです。

つまり、法定相続人とは法律婚の配偶者および一定範囲の血族であり、そうした人以外の人はたとえ親しい間柄でも法律上は相続人にはなり得ません。

なお、内縁の配偶者(籍の入っていない事実婚の妻・夫)は法定相続人に含まれない点に注意が必要です。

次に、法定相続人の概念と密接な相続順位について、違いを確認します。

相続順位との違い

法定相続人と相続順位は密接に関連しますが、意味合いが少し異なります。

相続順位とは、血族相続人同士の間で相続権の優先度を定めたものです。

日本の民法では、配偶者を除く血族相続人に第1順位・第2順位・第3順位が定められており、基本的に上位の順位の者だけが相続人になります。

第889条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)

第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。

一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。

二 被相続人の兄弟姉妹

引用元:民法 | 第889条

つまり、順位が高い親族がいる場合には、下位の親族は相続人とならないのが原則です。

たとえば、被相続人に子(第1順位)がいれば、親(第2順位)や兄弟姉妹(第3順位)は相続人にならず、子がいない場合に初めて親が相続人になります。

同様に、子も親もいない場合に兄弟姉妹が相続人となります。

言い換えれば、法定相続人の範囲は相続順位によって決まり、その時点の家族構成で最優先となる人々(+配偶者)が実際の相続人となるのが違いです。

法定相続人の順位はどこまで?基本的な範囲

 

日本の民法が定める法定相続人の範囲は、配偶者および血族相続人(子・直系尊属・兄弟姉妹)までです。

配偶者は常に含まれ、血族相続人については第1順位〜第3順位までが相続人となり得ます。

それより遠い親族(おじ・おば・いとこ等)は法定相続人にはなりません。

つまり、次のように決まり事があるのです。

  • 配偶者は常に法定相続人に含まれる
  • 第1順位の範囲
  • 第2順位の範囲
  • 第3順位の範囲

以下からは、それぞれについて詳しく解説します。

配偶者は常に法定相続人に含まれる

被相続人の配偶者(夫または妻)は、常に法定相続人になります。

被相続人に子や親がいるかに関わらず、配偶者は相続人から外れることはありません。

第890条(配偶者の相続権)

第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

引用元:民法 | 第890条

たとえば、被相続人に子どもがいる場合は「配偶者+子どもたち」が相続人となり、子どもがいない場合でも「配偶者+直系尊属」または「配偶者+兄弟姉妹」が相続人となります。

配偶者は常に他の相続人と同順位で相続権を持つと規定されています。

なお、ここでいう「配偶者」とは法律上有効な婚姻関係にある者を指し、内縁関係の配偶者(籍を入れていない事実上の夫婦)は法定相続人には含まれません。

内縁の妻・夫には法律上の相続権が認められないため、遺言や特別縁故者制度など別途の対策を講じない限り、財産を相続することはできない点に注意が必要です。

また、被相続人と離婚が成立している元配偶者は当然ながら相続人ではありません。

生前に婚姻していたが後に婚姻が取り消された場合(後述「善意の無効配偶者」参照)も、結果的に法律上の配偶者ではなくなるため相続権を失います。

法律上の配偶者であることが相続権の有無を左右するため、結婚関係の有無・有効性が重要です。

配偶者はどんな場合でも最優先で相続人に含まれる反面、法律婚でないパートナーにはそのままでは相続権がないという点を押さえておきましょう。

第1順位の範囲

第1順位の法定相続人は、被相続人の子です。

第887条(子及びその代襲者等の相続権)

第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。

2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

引用元:民法 | 第887条

法律でいう「子」には、実子(嫡出子)はもちろん、養子も含まれます。

また、婚姻外で生まれた子(非嫡出子)であっても、父による認知がなされていれば法律上の子として相続権を持ちます。

認知され戸籍上父の子となった婚外子は嫡出子と同じ相続権・法定相続分を有し、現在の法律では差別的な取り扱いはありません(※2013年法改正により嫡出子と非嫡出子の相続分差は撤廃されています)。

一方、認知されていない子は戸籍上親子関係がないため法定相続人にはなれず、父の遺産を相続する権利はありません。

子どもが複数いる場合、全員が基本的に均等な相続権を持ちます(法定相続分も均等になります)。

被相続人の子が既に死亡しているケースでは、被相続人から見て孫が代襲相続人となります。

たとえば、父Aが亡くなり、その子BがAの生前に亡くなっていた場合、Bの子であるC(Aから見て孫)がAの相続人となる、というケースです。

こうした制度を代襲相続といい、直系卑属の場合は原則として世代を超えて代襲が認められます(通常は孫・曾孫までの範囲です)。

第1順位の相続人(子及びその代襲者)が一人でもいれば、第2順位・第3順位の者は相続人になりません。

第2順位の範囲

第2順位の法定相続人は、被相続人の直系尊属です(民法889条1項1号)。

第889条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)

第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。

一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。

引用元:民法 | 第889条

直系尊属とは親や祖父母など、本人から真っ直ぐ遡った血族を指します。

直系尊属が複数世代いる場合は、被相続人に最も近い世代の者が相続人となります。

両親とも健在の場合は、父母が共同相続人となり相続分は原則として均等です(たとえば、父母2人のみが相続人なら各1/2ずつ)。

第2順位の者が相続人となるのは、被相続人に第1順位(子及びその代襲者)が一人もいない場合です。

つまり子どもや孫がいない場合に限り、親など直系尊属が相続人として浮上します。

先に子どもがいるケースでは、直系尊属は相続人になれない点に注意が必要です。

なお、直系尊属間では代襲相続の制度はありません。

仮に父母が被相続人より先に亡くなっていて祖父母がいる場合、祖父母が相続人になります。

祖父母も亡くなっていて曾祖父母がいる場合には、さらにその上の世代へ、とはなりません。

(直系尊属の場合、通常は親等が遠すぎると相続人にならないと解されます。これは実務上、祖父母までで曾祖父母以降が問題になるケースは極めて稀という事情もあります。)

以上が第2順位の範囲です。

「子など直系卑属がいなければ親など直系尊属が相続人になる」というシンプルな規定となっています。

第3順位の範囲

第3順位の法定相続人は、被相続人の兄弟姉妹です(民法889条1項2号)。

第889条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)

第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。

(略)

二 被相続人の兄弟姉妹

引用元:民法 | 第889条

兄弟姉妹が相続人になるのは、第1順位(子・孫)も第2順位(親・祖父母)も誰もいない場合です。

兄弟姉妹が複数いるときは全員が相続人となり、法定相続分は均等が原則です(たとえば、兄弟姉妹2人のみが相続人なら各1/2ずつ)。

ただし兄弟姉妹の場合、父母の一方のみが同じ「半血兄弟姉妹」と父母両方が同じ「全血兄弟姉妹」とで相続分に差があります。

たとえば、被相続人に全血の兄と、父のみが異なる半血の弟がいる場合、兄と弟の双方が相続人となります。

ただし、半血の弟の法定相続分は、全血の兄の相続分の2分の1となります。

このように兄弟姉妹間では血の繋がりの度合いにより法定相続分が異なる点も押さえておきましょう。

兄弟姉妹についても代襲相続の制度があります。

代襲できるのは甥・姪の世代までで、再代襲(甥姪の子に引き継ぐこと)は認められていません。

具体例として、被相続人Pに兄QがいてQがPより先に死亡していた場合、Qの子R(Pにとって甥)が代襲相続人となります。

しかしRもすでに死亡しており、その子(Pにとって甥孫)がいる場合でも、兄弟姉妹の子どもである甥・姪までしか代襲は認められないため、その甥孫には相続権が及びません。

まとめると、兄弟姉妹が相続人になるのは被相続人に子も直系尊属もいない場合であり、兄弟姉妹本人が亡くなっているときは甥・姪が1代に限り代襲相続できる、ということです。

第3順位までいずれも不存在の場合は相続人不在となります。

こうした場合は特別縁故者への財産分与や最終的に国庫へ帰属する手続へと進みます。

法定相続人の範囲が変わる要因

 

法定相続人の範囲は、家族構成や特定の法律関係によって変化する場合があります。

たとえば、養子がいる家庭では相続人の範囲が広がり、推定相続人に著しい非行があれば相続権を剥奪される制度もあります。

また、法律上の地位(婚姻や認知の有無など)によって相続人になるか否かが左右されるケースも存在します。

ここでは、以下の観点から法定相続人の範囲が変わる主な要因を整理します。

  • 家族構成によって法定相続人の範囲が変わるケース
  • 法的地位によって法定相続人の範囲が変わるケース
  • 例外的に法定相続人の範囲が変わるケース

順に見ていきましょう。

項目 変化要因 代表例
家族構成 出生・死亡・再婚・離婚・胎児・養子縁組・養子解消 子の死亡、配偶者変更、再代襲、養子取消
法的地位 認知・婚姻無効・廃除・欠格・放棄 認知の有無、廃除取消、欠格、放棄
戸籍・身分関係 戸籍訂正、隠し子、二重戸籍 事後的修正・新相続人発見
特例的救済 特別縁故者、善意の無効配偶者 法定外の承継
国際・準拠法 国際相続、外国資産 資産ごとに範囲が異なる
時間的要素 失踪宣告、同時死亡 相続発生順序による変化
実質的影響 遺言・遺留分侵害 範囲は維持、分配が変化

家族構成によって法定相続人の範囲が変わるケース

家族構成の変化、特に養子縁組や養子縁組の解消(離縁)は、法定相続人の範囲に直接影響します。

養子がいる場合、その養子は実子と同様に第1順位の相続人です。

養子だから相続分が少ないことはなく、実子と同等の相続権があります。

たとえば、父親・母親・実子1人・養子1人が相続人である場合、法定相続分は母1/2、実子1/4、養子1/4となり、実子と養子の取り分は同じです。

このように養子縁組によって相続人が増える(あるいは相続分の按分が変わる)ため、家族に養子がいるかどうかは相続人の範囲を決定する重要な要素となります。

加えて、養子には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があり、いずれの場合も養親に対する相続権を持つ点は共通です。

普通養子縁組では養子は実親との関係も存続するため、養子は実親と養親の双方から相続権を持つことになります。

特別養子縁組では養親との関係のみ存続し実親との親子関係が断絶するため、実親の遺産相続権は認められません。

その代わり、養親の遺産について相続権が発生します。

一方、養子縁組の解消(離縁)が行われると、その養子と養親との法的な親子関係が終了します。

当然ながら離縁後は相続権も消滅し、それまで法定相続人だった養子は相続人とは認められません。

ただし注意が必要なのは、被相続人が死亡した後に離縁(いわゆる「死後離縁」)した場合です。

法律上、被相続人が亡くなった時点で養子関係が有効であれば、その時点では養子は相続人です。

死後に離縁しても相続開始時に遡って関係が消滅するわけではないため、死亡時に確定した相続権自体は維持されます。

つまり、養親の死亡後に養子が離縁しても、その養親の遺産相続については権利を失いません。

一方、生前に離縁が成立していた場合は初めから相続人ではなかったことになります。

たとえば、前妻の連れ子を養子にしていたが離婚後に離縁していなかったような場合、元妻との子でも戸籍上は養子としてつながっていれば相続人になり得ます。

離婚など家族関係の変化があった際には、不要となった養子縁組は解消しましょう。
逆に、養子縁組をすることによって相続人を意図的に増やすこと(相続税対策や承継者確保の目的など)も可能です。

ただし税法上、生命保険の非課税枠などで法定相続人の数に含められる養子は一定人数までといった制約もあります。

2 これらの計算をするときの法定相続人の数に含める被相続人の養子の数は、一定数に制限されています。 この法定相続人の数に含める養子の数の制限について説明します。

(1) 被相続人に実の子供がいる場合

1人までです。

(2) 被相続人に実の子供がいない場合

2人までです。

ただし、養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、その原因となる養子の数は、上記(1)または(2)の養子の数に含めることはできません。

引用元: 国税庁「No.4170 相続人の中に養子がいるとき

いずれにせよ、養子の有無・離縁の有無といった家族構成の事情が法定相続人の範囲を動かすことになる点を押さえておきましょう。

養子縁組・養子解消

養子は法定相続人となり、実子と同じ相続順位・相続分を持ちます。

普通養子なら実親・養親両方の相続権、特別養子なら養親のみ相続権を持ちます。

養子の人数が増えればその分相続人が増え、各人の法定相続分も変動する仕組みです。

養子を解消すると法律上の親子関係が終了するため、その養子は以後法定相続人ではなくなります。

ただし被相続人の死亡後に離縁しても、相続開始時点では親子関係があったため相続権は失われません。

生前に離縁届を提出しておくことが確実です。

法的地位によって法定相続人の範囲が変わるケース

続いて、家族の法的な身分や行為によって相続人の範囲・相続権が変化する次のようなケースを見ていきましょう。

  • 認知
  • 相続廃除
  • 相続欠格
  • 相続放棄

以下から、順に詳しく解説します。

認知

非嫡出子(婚姻していない男女の間の子)に関する問題です。

婚姻関係にない男女の子は父親から認知を受けない限り法律上の親子関係がなく、父の法定相続人にはなれません。

しかし、父親が生前に役所へ認知届を提出したり、遺言で認知をしたり、あるいは子が家庭裁判所で認知の訴えを起こして認められたりすれば、その子は認知された子として戸籍に父の子として記載され、法定相続人となります。

認知された婚外子は嫡出子(法律婚の配偶者との子)と同等の相続分を持ち、法律上差別なく相続できます。

平成25年(2013年)の法改正により嫡出子と非嫡出子の相続分差が撤廃されたため、現在では認知されてさえいれば子として平等な権利があります。

民法の改正の概要

1 法定相続分を定めた民法の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた部分(900条4号ただし書前半部分)を削除し,嫡出子と嫡出でない子の相続分を同等にしました(注)。

引用元: 法務省「民法の一部が改正されました

たとえば、被相続人に妻と嫡出子1人しかいなかった場合の法定相続分は妻1/2・子1/2ですが、仮に認知された子(婚外子)がもう一人いたとすれば妻1/2・子2人で各1/4ずつと定められました。

また、死亡後認知(被相続人の死後に裁判によって認知が認められるケース)が起きた場合、その子は相続開始後に判明した新たな法定相続人となります。

ただし、遺産分割が既に終わっていた場合でも無効にはならず、認知された子は他の相続人に対して自分の取り分相当額の金銭を請求できるに留まるとされています(この点は複雑なため専門家への相談が必要です)。

いずれにせよ、認知されているか否かが子の相続権を左右するため、被相続人に認知していない子がいる場合は、相続発生後にその子が名乗り出る可能性も含め注意が必要です。

逆に、認知する側(父親)にとっては、生前に認知しておくことが後々の相続での子の権利保全につながります。

相続廃除

相続廃除とは、推定相続人(将来相続人になるはずの人)に相続させたくない重大な理由がある場合に、被相続人の意思でその者の相続権を剥奪する制度です。

廃除の対象となるのは遺留分を有する推定相続人、つまり通常は被相続人の子や直系尊属などです(兄弟姉妹には遺留分がないため廃除の実益がありません)。

第892条(推定相続人の廃除)

第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

引用元:民法 | 第892条

廃除を行うには被相続人本人が生前に家庭裁判所に請求するか、遺言にその旨を記載することが必要です。

遺言で廃除の意思表示がある場合は、遺言執行者が家庭裁判所に廃除審判を申し立てて手続きを進めます。

家庭裁判所で廃除が認められると、その推定相続人は初めから相続人ではなかったものとみなされます。

相続放棄の場合と同様の扱いで、相続廃除が確定すると戸籍にも「廃除」の旨が記載され、法律上相続権を失う仕組みです。

相続廃除が行われた場合、その者は相続人から除外されますが、廃除された人に子がいる場合には代襲相続が生じます。

たとえば、被相続人の長男を生前廃除した場合、長男自身は相続できず、長男の子(被相続人から見て孫)が代襲相続人となります。

なお、相続廃除は滅多に利用されるものではなく、家庭裁判所の判断基準も厳格です。

よほどの事情がない限り認められにくいですが、いったん認められれば法律上確実に相続人の範囲から外す効果があります。

また、被相続人は後に心境が変わった場合に備え、廃除の取消しも家庭裁判所に請求することで可能です。

第893条(遺言による推定相続人の廃除)

第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

引用元:民法 | 第893条

相続欠格

相続欠格とは、一定の非行を行った相続人について、法律上当然に相続権を失わせる制度です。

被相続人の意思に関係なく、自動的に相続人の資格を剥奪する点で廃除とは異なります。

具体的な欠格事由として典型的なものは以下です。

  • 被相続人や他の相続人を殺害したり、殺害しようとした(未遂)者
  • 被相続人が殺害されたことを知りながら告発・告訴しなかった者(ただし未成年者等除く)
  • 詐欺や脅迫によって被相続人に遺言を書かせたり取り消させたりした者
  • 被相続人の遺言を偽造・変造・破棄・隠匿した者

上記のような行為に及んだ相続人は、裁判など手続きを経るまでもなく当然に相続資格を失います。

こうした場合も、欠格となった人に子(被相続人から見て孫)がいれば代襲相続が発生します。

一方、相続欠格は法律上の制裁のため、後から本人の反省や被相続人の許しがあっても撤回できません(廃除と違い取消し制度はありません)。

欠格事由に該当するか否かは、刑事裁判の有罪判決等に基づいて客観的に判断されます。

実務的には、欠格者がいる場合にはその人を除いた上で相続人を確定する必要があります。

たとえば、被相続人に妻と子2人がいたが、そのうち1人が欠格となった場合、相続人は妻と残る子1人のみです。

欠格となった者は初めから相続人でなかったものとみなされ、相続放棄と同様の扱いです。

違いは、放棄は本人の意思で行いますが、欠格は本人の意思と無関係に法律効果が生じる点です。

相続放棄

相続放棄は、相続人が自己のために開始した相続を放棄する手続きです。

第938条(相続の放棄の方式)

第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

引用元:民法 | 第938条

放棄は各相続人が自由意思で行えるもので、家庭裁判所への申述により相続開始を知った時から3ヶ月以内に手続きを行います(いわゆる熟慮期間内)。

子全員が放棄すれば次順位の直系尊属が繰り上がって相続人になります。

このように、放棄があると結果的に法定相続人の顔ぶれが変わる点が重要です。

相続放棄と前述の欠格・廃除との違いは、放棄は相続人自身の選択によるということです。

財産より借金が多い場合の債務整理や、特定の相続人に財産を集中させるための戦略などで放棄が使われます。

放棄者は初めから相続人でなかった扱いのため、その子に代襲相続は起こりません(代襲は被相続人死亡以前の死亡・欠格・廃除のみが対象)。

したがって、たとえば、被相続人の子が放棄すると本来その子の子(孫)は代襲できず、代わりに直系尊属や兄弟姉妹に相続権が移ることになります。

相続放棄は一度手続きが完了すると撤回できず、また包括的(持分全て)にしかできません。

放棄した人は最初から相続人でなかったと扱われるため、他の相続人との遺産分割協議にも参加しません。

相続税の計算上も法定相続人の数に含めない扱いとなります。

放棄は手続きを誤ると意図しない結果を招く可能性があるため、特に複数人が放棄する場合などは専門家に相談して進めることが望ましいでしょう。

例外的に法定相続人の範囲が変わるケース

次のように、通常のケースでは相続人にならない方が例外的に財産を取得し得る場合や、国際的な状況によって法定相続人の範囲が変わるケースも存在します。

  • 特別縁故者
  • 善意の無効配偶者
  • 国際相続

以下から、それぞれ詳しく解説します。

特別縁故者

特別縁故者とは、被相続人に法定相続人が誰もいない場合に、特別な関係にあった人が家庭裁判所の判断で相続財産の全部または一部を受け取れる制度です。

被相続人の死亡後、まず相続財産清算人が選任され相続人捜索が行われます。

それでも相続人が見つからない場合、被相続人と生前特別な縁故(ゆかり)のあった者が申し立てをすることで、残った財産の分与を受けられる可能性があります。

典型例は内縁の配偶者です。

法律上は夫婦でなく相続権がない内縁の妻・夫でも、長年にわたり生計をともにし精神的・経済的に支え合っていたような場合、生前の関係の深さを立証して申し立てを行えば、家庭裁判所の裁量で財産の分与を受けられることがあります。

他にも、事実上親子同然の関係だった養子縁組していない子や長期間介護・看護をしていた親族でない介護者などが特別縁故者として認められた例がありました。

手続きとしては、相続人不存在が確定した後(官報での公告期間満了後)3ヶ月以内に特別縁故者から家庭裁判所に分与の申し立てをします。

分与が認められるかどうかは、申立人と被相続人の関係の密接さや、立証できる証拠(同居の事実、仕送り・介護の事実、手紙や写真など)の有無に左右されます。

どの程度の財産が与えられるかも裁判所の裁量による仕組みです。

仮に複数の特別縁故者が名乗り出た場合は、それぞれの関係性等を比較考量して配分が決められます。

特別縁故者への財産分与が行われても、相続ではなく「あくまで特別縁故者への給付」という扱いなので、受け取った財産には相続税ではなく所得税(一時所得)が課税される点にも注意が必要です(税務上の取り扱いが異なります)。

重要なのは、特別縁故者はあくまで「相続人がいない」という特殊状況での救済措置ということです。

たとえば、被相続人に法定相続人となる配偶者や子が一人でもいれば、特別縁故者の制度は関係ありません。

内縁の妻であっても、被相続人に法律上の妻や子がいれば特別縁故者の申し立てはできないのです。

逆に言えば、法定相続人ゼロのケースでは特別縁故者制度によって法定相続人以外の人が財産を取得できる可能性があるため、覚えておくとよいでしょう。

実務上、特別縁故者として認められるハードルは決して低くありませんが、内縁配偶者など事実上身内同然であった人を救済する重要な制度です。

該当しそうな場合は迅速に家庭裁判所への対応を検討しましょう。

善意の無効配偶者

善意の無効配偶者とは、婚姻自体は法律上無効であったものの、当事者がそれを知らず(=善意で)婚姻関係にあると信じていた場合の配偶者を指します。

たとえば、相手に前婚があって重婚状態となり婚姻が無効であったケースや、婚姻手続自体に重大な瑕疵があったケースなどが考えられます。

善意無効配偶者は戸籍上は正式な配偶者ではなく、法定相続人とはなりません。

しかし、その者に全く救済がないのも酷であるため、法律や判例上いくつかの保護が図られることがあります。

法律では、婚姻取消しの効果として「善意の当事者が婚姻によって得た財産は現存利益の範囲で返還すれば足りる」と定めています。

第748条(婚姻の取消しの効力)

第七百四十八条 (略)

2 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。

引用元:民法 | 第748条2項

善意の配偶者が婚姻中に受け取った利益(財産的給付など)を一部保持することを認める規定です。

仮に婚姻が無効・取消しとなっても、善意配偶者が受けた経済的利益は全部返還不要とされるため、結果的に相続財産の一部を手元に残せる場合があります。

次に、判例上有名なのは昭和39年の最高裁判決で、内縁の妻(法律上配偶者でない者)が被相続人名義の家屋に住んでいたケースです。

法定相続人から家屋明渡しを求められましたが、裁判所は「被相続人と内縁配偶者との間には黙示の使用貸借契約があった」と認定し、相続人による明渡請求を権利濫用として退けたというものです。

つまり、婚姻が無効であった善意の配偶者が、その事実を知らずに婚姻生活を送ってきた場合、直ちに法定相続人と同じ扱いは受けられないものの、住んでいた自宅に引き続き無償で一定期間住めるなど、生活基盤を失わないための配慮がなされることがあります。

もっとも、善意無効配偶者であっても最終的には法定相続人ではないため、財産の所有権は原則として正当な相続人に帰属します。

上記の居住権の保護も永続的なものではなく、一定期間が過ぎれば明渡しが必要になるケースが多いです。

また、被相続人に他の相続人(前婚の配偶者や子など)がいない場合でも、善意無効配偶者は特別縁故者として家庭裁判所に財産分与を求めることになります。

善意無効配偶者の立場は困難ですが、法律上は「配偶者」ではない以上、法定相続人に準じた地位は認められないのが現状です。

したがって、こうした事態に備えるためには生前に遺言を残しておくことなどが実務的な対策となります。

善意無効配偶者に関しては特殊なケースですが、相続の世界では「法律婚かどうか」が絶対的であることを改めて示す例と言えるでしょう。

国際相続

国際相続の場合、法定相続人の範囲や順位は適用される国の法律によって異なる可能性があります。

日本における法律では、「相続は、被相続人の本国法による」と規定されています。

第36条(相続)

第三十六条 相続は、被相続人の本国法による。

引用元:法の適用に関する通則法 | 第36条

つまり、被相続人がどこの国の国籍を持っていたかによって適用法が決まり、その法によって相続人の範囲や順位も決まることになります。

たとえば、被相続人が日本国籍であれば居住地や相続人の国籍に関わらず日本法が適用され、相続人の範囲も日本法(配偶者+第1〜3順位)で定められます。

反対に、被相続人が外国籍であれば日本での相続であっても原則としてその国の相続法が適用され、日本の民法による配偶者・子といった規定は直接は適用されません。

ある国では配偶者と子供以外にはほとんど相続させない仕組みになっていることもあり、逆に遠縁の親族でも相続権が認められる国もあります。

また英米法圏ではプロベート(遺産管理手続)を経て法定相続人に財産を配分する仕組みになっており、相続人の確定にも裁判所が関与します。

このように国際相続では、どの国の法律が準拠法となるかによって「法定相続人」の概念が変わる可能性があるのです。

さらに、日本と外国で二重に相続手続きを踏むケースでは、国内法上の相続人と外国法上の相続人が異なるといった問題も生じ得ます。

国際相続においては、被相続人の国籍・住所地、財産の所在を確認し、どの法が適用されるか専門家と検討することが必要です。

適用法が日本でない場合、その国の相続法に従って相続人を確定しなければなりません。

たとえば、被相続人がアメリカ人なら、その人の相続はアメリカの各州法により相続人の範囲が決まり、遺産の種類によって法の適用が分かれる場合もあります。

このように国際相続では法定相続人の範囲も一国の法律だけでは判断できないので、専門的な知識が求められます。

近年は国際結婚や海外居住者も増えているため、「日本の常識=万国共通」ではない点に注意が必要です。

国際相続が発生した場合、早めに弁護士など専門家に相談し、適用法と相続人の確定を行うことが肝要です。

法定相続人の範囲を正しく確認する方法

 

相続人の範囲は法律と個別事情によって定まります。

実際に相続手続きを進める際には、次のような「具体的に誰が相続人かを確定する作業」が必要です。

  • 戸籍をたどって法定相続人を確定する
  • 相続関係説明図を作成して範囲を可視化する
  • 不明点や複雑な関係がある場合は専門家に相談する

以下から、それぞれ詳しく解説します。

戸籍をたどって法定相続人を確定する

相続人調査の基本は被相続人の戸籍を徹底的に集めて確認することです。

日本では戸籍により親族関係が公的に記録されています。

そのため、被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)をすべて取得して内容を確認することで、誰が法律上の配偶者で、何人の子がいるか、逆に子がいなければ親が健在か、兄弟姉妹はいるか等、法定相続人となりうる人を網羅的に洗い出せます。

具体的な手順は以下の通りです。

  1. 被相続人の最後の本籍地で死亡の記載がある戸籍(除籍謄本)を取得する
  2. 婚姻・出生などの履歴を順に遡る

婚姻によって親の戸籍から抜けている場合は、結婚前や出生時の戸籍へさらにたどります。

転籍をしている場合も漏れなく収集しましょう。

戸籍調査を怠ると、後になって「実は相続人が他にもいた」という事態になりかねません。

戸籍をたどった結果、被相続人に認知した子が他にいることが判明するケースや、前妻との間に子がいたことが分かるケースもあります。

銀行預金の払戻しや不動産の名義変更(相続登記)などの相続手続きでも、金融機関や法務局に対し戸籍による相続人証明が求められます。

つまり戸籍一式を提出し「この通り相続人は○○と○○です」と証明しないと手続きが進みません。

近年では法定相続情報証明制度という戸籍一式の内容を一覧化した公的書面を発行してもらえる制度も整備されています。

いずれにせよ、相続人確定の第一歩は戸籍を漏れなく集めて読むことです。

戸籍の記載は古いものだと読みづらかったり、改製により何通も存在したりして煩雑ですが、こうした作業を丁寧に行えば相続人の見落としという重大ミスを防げます。

もし自分で集めるのが難しい場合は司法書士や弁護士に依頼することもできます。

まずは被相続人の本籍地を調べ、役所で出生から死亡まで連続した戸籍謄本類を取得することが法定相続人確定の鉄則です。

相続関係説明図を作成して範囲を可視化する

戸籍で確認できた相続人関係は、相続関係説明図(そうぞくかんけいせつめいず)という図にまとめると分かりやすくなります。

相続関係説明図とは、亡くなった人(被相続人)とその相続人の続柄や氏名・生年月日・死亡日などを一覧にした家系図形式の図表です。

被相続人を中心に、配偶者や子ども、親、兄弟姉妹などを線で繋いで記載し、一目で相続関係が分かるようにしたものになります。

相続関係説明図を作成することで、誰が相続人で誰が相続人でないか、相続順位や代襲相続の有無なども直感的に把握できます。

特に相続人が多い場合や世代が混在する場合(孫や甥姪が代襲相続人になるケース等)には、相続関係説明図を書くことがおすすめです。

実際の相続実務でも、専門家はまず戸籍を集めて相続関係図を作成し、関係者全員で共有して手続きを進めることが一般的です。

相続関係説明図は、法務局(登記所)で相続登記を申請する際に添付すると原本の戸籍謄本を返却してもらえるという実務上のメリットもあります。

また、預貯金の払戻し手続きなどでも提出を求められるケースがあるため準備しましょう。

自分で作成することも十分可能で、法務局や専門家サイトで雛形やテンプレートが公開されています。

作成にあたっては、戸籍から読み取った情報(被相続人と相続人全員の氏名・生年月日・死亡日・続柄)をマス目に書き込み、線で関係を結んでいきます。

基本的に家系図と同じ要領ですが、「誰が被相続人か」「誰が相続人か」が明確に分かるよう強調することがポイントです。

相続関係説明図そのものには法的効力はありませんが、関係者間の認識合わせや手続きの円滑化に有用です。

特に、相続人が自分を含め数名いる場合には、一度この図を作って共有することで「漏れている人はいないか」「認識違いはないか」を確認できます。

もし見知らぬ名前が出てきたら、誰なのか戸籍を再確認したり専門家に相談したりするきっかけにもなります。

総じて、相続関係説明図は法定相続人の範囲を視覚的に整理するツールとして有効です。

戸籍で確定した内容を図に起こし、関係者で共有すれば、その後の遺産分割協議や手続きもスムーズに進むでしょう。

不明点や複雑な関係がある場合は専門家に相談する

戸籍調査や相続関係説明図の作成によって相続人を確定できても、関係が複雑だったり不明点が残る場合は早めに専門家へ相談することをおすすめします。

たとえば、戸籍を集めた結果、自分でも知らなかった異母兄弟姉妹が判明した場合や、相続人の一人が行方不明・認知症で意思確認が難しい場合、さらには国際相続で海外の法律が絡む場合など、一般の方だけでは判断が難しいケースが少なくありません。

弁護士は、相続人間の争いがある時や複雑な法律問題が絡む時。

司法書士は相続登記や戸籍収集の実務手続きに強く、税理士は相続税の申告や節税策に詳しいなど、それぞれの専門分野でサポートしてくれます。

最近では、不動産会社と各士業が連携したサービスも増えており、窓口ひとつで必要な専門家チームが対応してくれる体制もあります。

私たちが運営する静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、司法書士・税理士・弁護士が連携して相続相談に対応する体制が整っています。

専門家に相談するメリットは、法律的な誤りを防げるだけでなく、煩雑な手続きを代行・サポートしてもらえる点です。

特に法定相続人の範囲を間違えると後で協議のやり直しになったり、最悪の場合訴訟に発展する恐れもあります。

そうしたトラブルを防ぐためにも、少しでも不明点があれば専門家のチェックを仰ぐことが肝心です。

家族構成が複雑・相続人同士の仲が悪い・財産が多岐にわたるなどの場合は、早めに専門家に相談しておくことで安心感も得られます。

公正証書遺言の有無の確認や相続放棄すべきかの判断なども含め、相続全般についてトータルにアドバイスしてもらいましょう。

相続は一生に何度も経験することではありません。

だからこそ、プロの知見を活用することが円満で迅速な解決への近道です。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでも初回相談から状況整理、必要書類の案内、専門家への橋渡しまで一貫してサポートいたします。

「何から手をつければ良いかわからない」「自分のケースで注意すべき点を知りたい」といった段階でもお気軽にご相談ください。

法定相続人や相続順位については、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへご相談ください

 

法定相続人の範囲や相続順位は、一見シンプルなようで個々の事情によって複雑に変化し得る分野です。

「誰が相続人か」を見極めるには法律知識と慎重な確認作業が欠かせません。

本記事で解説したように、公的な戸籍をたどることや制度・判例の理解が重要ですが、少しでも不安があれば専門家の力を借りることをおすすめします。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、司法書士・税理士・弁護士が連携し、相続全般を幅広く対応しています。

法定相続情報の整理から相続税申告、遺産分割協議のサポート、不動産の名義変更手続きまで、幅広い業務をワンパッケージでサポート。

相続人調査で行き詰まっている方、遺産分割でもめそうで不安な方、専門知識がなく何から始めてよいかわからない方も、ぜひお気軽にご相談ください。

静岡鉄道グループのネットワークと各専門家の経験を活かし、皆様の大切なご相続を安心・円満に進めるお手伝いをさせていただきます。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

相続の疑問、専門家がまとめてお答えします

お電話でのご相談0120-200-009月〜土 9:00〜18:00(日祝定休)
無料相談を予約する

土地の相続に必要な遺産分割協議書|作成方法と注意点を徹底解説

2025.12.02

土地の相続が発生したとき、相続人間で「誰がどの財産を引き継ぐか」を決める必要があります。

その際に欠かせないのが遺産分割協議書と呼ばれる書面です。

特に不動産(土地)の相続では、この協議書によって相続人全員の合意内容を明確にしないと、名義変更(相続登記)や相続税の申告手続きが円滑に進みません。

2024年4月からは不動産の相続登記が法律で義務化され、相続人が「相続により不動産を取得したことを知った日」から3年以内に相続登記を申請する必要があります。

第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

引用元:不動産登記法 | 第76条の2

本記事では、「土地の相続に必要な遺産分割協議書」をテーマに、作成方法と注意点を徹底解説します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

土地相続における遺産分割協議書の役割

土地を相続する際に重要となるのが、相続人全員で話し合いの結果をまとめる「遺産分割協議書」です。

ここでは、遺産分割協議書について次の内容を解説します。

  • そもそも遺産分割協議書とは
  • 土地の相続において遺産分割協議書が必須となる理由

以下から、それぞれ詳しく見ていきましょう。

そもそも遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、被相続人(亡くなった方)の遺産を相続人全員でどのように分割するか話し合い(=遺産分割協議)、結果を書面にしたものを指します。

法律上、各相続人の法定相続分(取り分)は定められています。

しかし、誰がどの遺産を具体的に承継するかは遺産分割協議で決めなければ確定しません。

たとえば遺言書がなければ、遺産は一旦相続人全員の共有状態になります。

そのままでは不動産を単独で処分できないため、相続人全員の合意で分割内容を決め、書面で残す必要があるのです。

遺産分割協議書は単なる合意の証拠だけでなく、金融機関での名義変更手続きや法務局での相続登記申請の際に提出を求められる重要書類です。

口頭の合意だけでも法律上は有効ですが、証拠能力が弱く、金融機関や法務局の手続きでは認められません。

実印による書面を作成することが実務上不可欠です。

土地の相続において遺産分割協議書が必須となる理由

土地や建物など不動産を相続する場合、遺産分割協議書が事実上必須となります。

理由の1つ目は、不動産の相続登記に必要だからです。

相続登記とは、被相続人名義の不動産を相続人名義に変更する登記手続きです。

共同相続人がいる場合、登記原因証明情報として遺産分割協議書の提出が求められます。

法務局は相続人全員の実印押印済みの協議書と各人の印鑑証明書が提出されて初めて、特定の相続人への所有権移転を認めます。

協議書がない場合は、法定相続分どおり全員の共有名義で登記する方法もありますが、将来の売却や管理に全員の同意が必要となるなど、取り扱いが複雑になりやすい点に注意が必要です。

2つ目の理由は、相続税申告など他の手続きでも協議書があると有利だからです。

相続税の申告期限(被相続人死亡から10ヶ月)までに遺産の分割内容が決まっていないと、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が適用できず税負担が一時的に重くなる可能性があります。

未分割のまま期限を迎えた場合でも「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出すれば、後日分割がまとまった際に特例を遡って適用できますが、あくまで救済措置です。

最初から協議書で土地の帰属を決めておけば、こうした煩雑な手続きを避けられます。

また金融機関の預金払い戻しや車の名義変更など他の相続手続でも、全員合意の証拠として遺産分割協議書の提出を求められることがあります。

土地相続における遺産分割協議書の基本構成

土地を相続する際の遺産分割協議書は、一般的に以下のような基本構成で作成することになります。

項目 記載内容・注意点・記載例
タイトル 「遺産分割協議書」「土地に関する遺産分割協議書」など
※文書の最上部に明記し、文書の趣旨を明確にする
前文(あたま書き) 例:「被相続人〇〇〇〇(昭和○年○月○日生、本籍〇〇、令和○年○月○日死亡)の相続人である〇〇〇〇、〇〇〇〇および〇〇〇〇は、被相続人の遺産について協議し、次のとおり遺産を分割する」など
※被相続人の死亡情報、協議参加者全員の氏名を記載する
遺産の一覧・範囲の確認 被相続人の財産をすべて記載、または「別紙遺産目録」に記載して参照
例:「相続人全員は、別紙遺産目録記載の財産が被相続人〇〇の遺産であることを確認した」など
※協議対象外の遺産の発生によるトラブルを防ぐために重要
作成年月日 「和暦」「西暦」のいずれでも可だが、「和暦」が一般的
相続人全員の氏名・住所 「住所」「氏名」を記載する
※相続人全員の記載がない場合は無効
対象となる土地情報 「所在地」「地番」「地目」「地積」など
※登記簿謄本(登記事項証明書)と一字一句一致させる必要あり
分割内容 「誰が・どの土地を・どの持分割合で・どのように取得するか」を具体的に記載する
<記載例>
1.被相続人〇〇(令和〇年〇月〇日死亡)の所有していた下記土地について、次のとおり分割することに相続人全員が合意した。
(1)東京都〇〇区〇丁目〇番地〇(地番:〇〇番〇)
相続人Aが単独で取得する。
(2)東京都〇〇市〇〇町〇番地〇(地番:〇〇番〇)
相続人BおよびCが各2分の1の共有で取得する。
※代償金を支払う場合はその旨も記載する
清算条項 「相続人全員は、本遺産分割協議書に定めるほか一切の債権債務関係がないことを確認し、名目の如何を問わず金員の支払いを求めない」などと記載
※後日の請求や紛争を予防する
後日判明した遺産の扱い 「協議後に新たな遺産が見つかった場合には、その分割方法については別途協議するものとする」などと記載
※将来の財産発覚リスクに備える
署名・押印 相続人全員が氏名・住所を自署し、署名の下または右横に実印を押印する
※ページが複数に及ぶ場合は契印(綴じ目にまたがる実印)も必要
作成部数の明記 「本協議書○通を作成し、そのうち○通を〇〇が保有する」などと記載
※相続人の人数分だけ原本を用意し、全員が同一の内容に署名押印する

ケースによっては細かな条項を追加することもありますが、土地相続の協議書であれば最低限上記の点を網羅していれば実務上問題なく受理されるでしょう。

土地を相続する際の遺産分割協議書の作成手順

土地の相続における遺産分割協議書作成は、次のステップで進めるとスムーズです。

  • ステップ1:相続人を確定し、相続する土地を特定する
  • ステップ2:分割方法を協議して決定する
  • ステップ3:協議内容をもとに遺産分割協議書を作成する
  • ステップ4:相続人全員が署名・押印する
  • ステップ5:遺産分割協議書を添付して相続登記を申請する

以下から、それぞれ詳しく見ていきましょう。

ステップ1:相続人を確定し、相続する土地を特定する

まずは相続人の確定と土地の特定です。

被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本を取得し、誰が法定相続人かを調査します。

相続人全員が判明したら、遺産分割協議に参加するメンバーを確定します(相続放棄者がいる場合、その人は協議から除外されます)。

一人でも法定相続人を漏らすと協議書は無効になるため、戸籍の確認は慎重に行いましょう。

必要に応じて法定相続情報証明制度を利用して相続人一覧図を作成すると、金融機関等の手続きで戸籍一式の代わりに提出でき便利です(公的証明書がない場合は戸籍謄本一式で対応)。

次に相続財産である土地を特定します。

協議書に記載する土地の情報は、法務局で発行される「不動産登記事項証明書(登記簿謄本)」から一字一句正確に写しましょう。

具体的には所在地(○○市○○)、地番、地目、地積など登記記録の表題部に記載されているとおりに書き写します。

登記上の「地番」と日常で使う住所表記(住居表示)は異なるため、注意しましょう。

誤って住居表示の住所を書いてしまうと登記申請で受理されません。

また土地と建物を両方相続する場合は、「実家の土地建物一式」など曖昧な書き方ではなく、土地○筆と建物○棟と別々に記載する必要があります。

不動産以外に預貯金等も含めて協議するなら、その財産目録も用意し、漏れがないよう一覧化しておくと安心です。

ステップ2:分割方法を協議して決定する

相続人全員が集まり(または書面やリモートで連絡を取り合い)、誰がその土地を取得するか、どのように分割するかを話し合います。

土地の分け方にはいくつかのパターンがありますが、主に「特定の相続人が単独で取得する」「複数人で共有する」「売却して換金し代金を分ける」「代償分割(1人が取得し他の相続人に金銭補填する)」といった方法が考えられます。

協議では各相続人の希望を出し合い、遺産全体として公平になる解決策を探ります。

たとえば「土地は長男が単独取得し、次男・長女には代償として預金○万円ずつ渡す」「土地は売却して3人で法定割合どおり代金を分配する」等、複数の代案を比較検討します。

話し合いの際は、不動産の評価額を把握しておくことが重要です。

固定資産評価額や不動産鑑定評価額を参考に、現在の土地の大まかな価値を相続人全員で共有しましょう。

そうしないと、「土地を取得する人だけが大きな得をして不公平だ」といった不満が後から出る恐れがあります。

また、将来の利用予定や固定資産税負担も考慮して、誰が引き継ぐのが合理的かを話し合うと合意に達しやすくなります。

たとえば「誰も住まない土地なら売却して現金化する」「実家は同居していた長男が引き継ぎ、他の人は代償金を受け取る」等です。

協議中に専門家の意見を参考にすることも有用です。

遺産分割に詳しい司法書士や弁護士に相談すれば、過去の事例に基づいたアドバイスが得られます。

特に不動産の共有は将来のトラブルの種になりやすいため、専門家は単独取得+代償金などを提案することが多いです。

共有名義にすると売却や担保設定の際に共有者全員の同意が必要となり、もし相続人の一人が亡くなるとさらにその相続人の相続人までもが権利者に加わって権利関係が複雑化します。

そのため実務では、事情に応じて単独名義に代償金を支払って調整する方法を選ぶケースも多く見られます。

こうしたメリット・デメリットも踏まえ、相続人全員が納得できる分割方法を決定しましょう。

ステップ3:協議内容をもとに遺産分割協議書を作成する

全員の合意がまとまったら、その内容を正式な遺産分割協議書に落とし込んでいきます。

ステップ1で確定した相続人・財産の情報と、ステップ2で決めた分割方法を反映し、前述の基本構成に従って文章を作成します。

協議書の作成にあたっては以下のポイントに注意してください。

注意ポイント 内容(要点)
法的に有効な形式を守る 相続人全員の実印押印・日付の記載など形式を整える
不動産の表示を正確に記載する 登記事項証明書の内容を一字一句正確に写す
内容の抜け漏れや誤りをチェックする 代償金・口座番号など重要項目の誤記を防ぐ
専門家のテンプレートを参考にする ひな型を使いつつ家庭事情に合わせて調整する

相続人全員(相続放棄者を除く)の実印押印と日付の記載は必須です。

1つでも欠けると協議書が無効になるため、形式面の確認を丁寧に行いましょう。

地番・地目・面積などは登記事項証明書を見ながら正確に転記しましょう。

誤記は紛争の原因となるため、迷った場合は書き直す方が安全です。

代償金の金額や支払方法、口座情報は特に慎重に確認します。

不動産以外の財産も含め、記載漏れがないか最終チェックを行いましょう。

法務局の記載例は参考になるものの、不動産以外の遺産には対応していません。

市販の書式集や専門家が作成したフォーマットを補助的に活用すると安心です。

以上の点に留意しつつ文案を作成できたら、相続人全員に内容を確認してもらいます。

全員が合意内容どおり正確に書かれていることを承認したら、次の署名・押印のステップに進みます。

ステップ4:相続人全員が署名・押印する

遺産分割協議書の内容を確認したら、相続人全員で署名押印を行います。

署名は各自が氏名を直筆で書き、押印は市区町村に登録している実印を使用します。

押印する箇所にはあらかじめ各相続人の住所・氏名を記載しておくとよいでしょう(同姓同名の第三者による成り済ましリスクを排除するためです)。

実印で押印した以上、後から「署名していない」「同意していない」と主張することは困難になるため、全員がしっかり内容を理解してから押印します。

押印の際の注意点として、印鑑は朱肉を使うハンコを用い、スタンプ印やゴム印は不可です。

また、印影がかすれたり二重押しになったりしないよう、真っ直ぐに捺印してください。

万一失敗した場合は、該当のページを差し替えて再度全員が署名押印し直す必要があります。

契印も忘れずに行いましょう(用紙が2ページ以上にわたる場合、綴じたページ間に実印でまたがるよう押印)。

印鑑証明書の添付もこの段階で準備します。

法務局で相続登記に協議書を提出する際、相続人全員について印鑑証明書を添付しなければなりません。

各相続人は自分の住民登録地の市区町村役場で印鑑登録証明書を発行してもらい、原本を用意します。

法務局に提出する分には印鑑証明書の発行日が協議日より何ヶ月前でも有効で(相続登記では有効期限なし)差し支えがないものの、銀行手続きでは「発行後6ヶ月以内」といった期限を設けるところが多い点も覚えておきましょう。

したがって、可能であれば協議書に押印した実印と同じ印影の印鑑証明書を事前に準備し、日付が新しいうちに手続きを進めることをおすすめします。

相続人の中に遠方に住んでいる方や海外在住の方がいる場合は、協議書原本を郵送して順番に署名押印してもらう方法がありますが、紛失に注意が必要です。

海外在住の相続人で日本の印鑑登録がない方は、在外公館(日本大使館・領事館)で発行してもらえるサイン証明書を利用します。

遺産分割協議書にその方の署名(自筆サイン)をしてもらい、現地の日本領事の認証を受けた署名証明書(形式1)を添付すれば、法務局も実印押印と同等に扱ってくれます。

このように各人の事情に応じた対応を取り、相続人全員の署名・実印押印・印鑑証明書が揃えば、協議書は完成です。

ステップ5:遺産分割協議書を添付して相続登記を申請する

署名押印を終えた遺産分割協議書は、相続登記の申請書類として用いられます。

土地の名義変更(相続登記)は、不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に対して申請します。

相続人のうち誰が申請者になるかはケースによりますが、実務上はその土地を取得する相続人または司法書士が代理申請することが多いです。

相続登記の申請に必要な書類は以下のとおりです。

  • 相続登記申請書(法務局所定の様式)
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本、改製原戸籍等(被相続人の身分関係を証明)
  • 被相続人の住民票除票(最終住所地の確認用)
  • 相続人全員の現在戸籍謄本(相続人であることの証明)
  • 相続人全員の印鑑登録証明書(遺産分割協議書に押印された実印の証明)
  • 遺産分割協議書(原本)
  • (相続人の代理人が申請する場合)委任状
  • 固定資産評価証明書(登録免許税算出のため、不動産の評価額がわかる書類)

遺産分割協議書を添付するケースでは基本的に上記書類が必要です。

遺言書がある場合や、法定相続情報一覧図を利用する場合などは上記と一部差し替えになります。

こうした書類を揃えて法務局に提出(郵送可)し、登録免許税(不動産評価額の0.4%)を納付すれば、審査の後に登記が完了します。

協議書原本は法務局に提出後に返却してもらえます(原本還付制度)。

ただし原本を提示した上で認証した写しを提出する必要があるため、複数通作成しておくと便利です。

そこで原本を複数通作成し、各自保管しましょう。以上が土地の相続登記までの一連の流れです。

相続登記を完了させることで、法的にも名実ともに土地の所有者が相続人へと移転します。

2024年以降は相続登記の申請義務が課せられていますので、協議書がまとまったら速やかに申請まで済ませることをおすすめします。

正当な理由なく申請を怠ると過料(最大10万円)のペナルティ対象にもなり得ますので注意してください。

土地相続でよくある遺産分割のパターンと記載例

遺産分割の方法には以下のようにさまざまなパターンがあります。

  • 単独相続の場合
  • 共有相続の場合
  • 代償分割を行う場合
  • 売却分割の場合
  • 複数の土地を相続する場合

それぞれメリット・デメリットがあるため、ここから詳しく見ていきましょう。

単独相続の場合

相続人のうち一人が土地を単独で相続するケースです。

たとえば「自宅の土地建物は長男が全て相続し、長女と次女は他の財産を相続する」ような場面です。

遺産分割協議書の記載例としては、対象不動産を特定した上で「○○所在の土地(地番〇〇、地目〇〇、地積〇〇㎡)は〇〇〇〇(相続人の氏名)が取得する」のように書きます。

単独相続ではその土地について他の相続人は権利を放棄する形になります。

協議書全体としては他の遺産の配分も含めて全員が合意していることが必要です。

必要に応じて清算条項を設け、不動産以外に一切の金銭請求をしない旨を確認しておくと安心です。

たとえば「相続人全員は、本協議書に定めるほか、〇〇の土地建物に関し何らの債権債務関係がないことを確認する」等と追記します。

不動産を単独取得する代わりに他の相続人へ代償金を支払う場合は、次項の代償分割の書き方を参考にしてください。

共有相続の場合

複数の相続人が土地を共有で相続するケースです。

たとえば「実家の土地建物を長男と次男がそれぞれ持分1/2ずつ共有で相続する」場合、協議書には「〇〇所在の土地(地番〇〇…)は長男(氏名)が2分の1、次男(氏名)が2分の1の割合で取得する」のように各共有者の持分割合を明記します。

持分は通常○分の○という分数で記載し、法定相続分どおりでない割合にすることも可能です(全員合意で自由に決められます)。

共有相続は一見公平に見えるものの、将来的な処分や管理に全員の合意が必要になるデメリットがあります。

不動産の共有状態が長引くと、共有者の死亡に伴いさらに権利者が増えて権利関係が複雑化する恐れもあります。

そのため、専門家の間では共有相続はできれば避けるべき方法とされています。

ただし、相続人の間で共有を強く希望する事情がある場合には、共有相続も一つの方法です。

協議書には将来トラブル防止のため「本不動産を処分(売却等)する際には共有者全員の合意が必要となることを相続人全員確認した」などと付記しておく配慮も考えられます(公的機関のひな型にはありませんが、共有するリスクを皆が認識した証になるという考え方)。

代償分割を行う場合

代償分割とは、ある相続人が土地など特定の遺産を単独取得し、その代わりに他の相続人へ金銭(代償金)を支払う方法です。

不動産を現物で分けられない場合によく用いられる手法で、「土地は長男が取得し、長男は次男に対して〇〇万円を支払う」等と取り決める仕組みです。

協議書の記載例としては、まず対象土地を誰が取得するかを書き、その後に「〇〇〇〇(取得者)は前項の不動産を取得する代償として、〇〇〇〇(他の相続人)に対し金○○円を支払う」といった条項を加えます。

支払期限や方法も具体的に定め、たとえば「令和○年○月○日限り、〇〇〇〇の指定する銀行口座に振込送金する方法により支払う」と書いておきます。

代償分割では、代償金額の妥当性が重要です。

金額は土地の評価額や他の遺産との兼ね合いで確定します。

その後のトラブルを避けるため、全員が納得できる評価に基づくことが望ましいです。

可能なら不動産業者の査定や公示価格・路線価など客観的な指標を参考にし、協議の場で「土地評価額は約○○万円なので、その分を取得する長男が他の相続人に○○万円ずつ支払う」と説明できる形にします。

協議書には代償金の授受についても清算条項でカバーし、代償金支払い以外に互いに金銭請求しない旨を明記しておくと安心です。

代償金の支払いが完了したら領収書を発行するなど記録を残し、後日の紛議を防止しましょう。

売却分割の場合

換価分割(売却分割)とも言い、土地を第三者に売却し、その売却代金を相続人で分配する方法です。

たとえば「実家の土地は相続人全員では利用しないので売却し、売却代金を長女と次女で半分ずつ分ける」ケースなどです。

協議書の書き方としては、まずその土地を一旦誰の名義にするかを決めて記載します。

売却分割の場合、手続きの流れは以下の通りです。

  1. 相続登記で一旦相続人名義にする
  2. 相続人から第三者へ売却

そのため、相続登記を相続人全員の共有名義にするか、代表者一人の単独名義にするかを選択する必要があります。

共有名義にする場合は協議書に「〇〇所在の土地は〇〇〇〇が○分の○、〇〇〇〇が○分の○を相続する」と各自持分を記載し(共有相続の場合と同様)、併せて「本不動産は換価分割のため売却し、その代金は前記持分割合により分配する」旨を書きます。

たとえば「本不動産は第三者に売却し、売却代金から費用を控除した残額を、〇〇〇〇が40%、〇〇〇〇が60%の割合で取得するものとする」等です。

代表者の単独名義にする場合は、協議書で「〇〇所在の土地は〇〇〇〇が取得する」とした上で、「〇〇〇〇は当該不動産を売却し、売却代金から必要経費を控除した残額を〇〇〇〇および〇〇〇〇に対しそれぞれ○%ずつ交付するものとする」等と記載します。

重要なのは、換価分割の旨と代金分配方法を明記することです。

こう明記しておけば、代表者名義で売却して他の相続人に代金を渡しても、それは相続による取得と見なされます。

記載を誤ると、代表者から他の相続人への支払いが贈与と見なされ、贈与税の課税対象と判断されるおそれがあります。

なお、売却分割を行う場合は実際に不動産が売れるまで相続人は現金を得られないため、時間がかかる点も踏まえて合意することが必要です。

協議書には売却手続き完了までの間、代表者が善良な管理者の注意義務をもって不動産を管理する旨などを定めておくと良いでしょう(公的なひな型はありませんが、トラブル防止策として検討できます)。

換価分割は相続税の納税資金確保や公平な分配に有効な方法ですが、文言の不備により思わぬ課税を招くこともあるため細心の注意を払って記載しましょう。

複数の土地を相続する場合

被相続人が複数の不動産(土地)を所有していた場合、まとめて協議書に記載します。

基本的な記載方法は単一の土地の場合と同じですが、物件ごとに取得者をはっきりさせる点が重要です。

たとえば「甲土地(所在地○○、地番〇〇、地積〇〇㎡)は〇〇〇〇が取得する。乙土地(所在地○○…)は〇〇〇〇が取得する」といった具合に、土地Aは誰、土地Bは誰、というように一物件一義で分けて記載します。

もし「土地AとBを長男と次男が共有で相続」などのケースであれば、各土地についてそれぞれ共有持分を記載することが必要です。

たとえば「長男が○○市の土地を、長女が△△町の土地をそれぞれ相続する」と決めたら、協議書にその通り明記しましょう。

こうした場合も不公平が生じないよう、各土地の評価額を考慮して配分します。

価値に差があるなら代償金で調整する、または預金等他の財産配分でバランスを取ることが一般的です。

注意したいのは、登記手続きの管轄です。

複数の土地の所在地が異なる法務局管轄区域にまたがる場合、相続登記の申請は原則としてそれぞれの管轄局に行う必要があります。

たとえば「東京の土地は東京法務局、北海道の土地は札幌法務局へ」という具合です。

協議書は一通で複数物件を網羅できるため、1つの協議書に全土地の分割内容をまとめて記載すれば問題ありません。

ただし実務上、管轄別に登記申請書類をセット組みする際に、協議書原本が複数必要になる場合があります。

そうした点からも、複数土地を扱う相続は専門家に相談しながら進めるのが安心です(公的機関から具体的な案内が得られない部分でもあります)。

遺産分割協議書を作成する際の注意点

土地の相続に関する遺産分割協議書を作る際に、特に注意すべきポイントとして次があります。

  • 不動産情報を正確に記載する
  • 相続人全員の合意を必ず書面に残す
  • 署名・押印・印鑑証明書の形式を整える
  • 相続人に未成年者などがいる場合は特別代理人の選任が必要になる
  • 代償金や財産評価額の誤りを防ぐ

以下からは、それぞれを詳しく確認していきましょう。

不動産情報を正確に記載する

協議書に記載する土地や建物の表示は、登記簿どおり正確に記載しなければなりません。

地番・地目・地積など一つでも誤りがあると、法務局はその協議書を登記原因証明として受理しません。

「〇〇市〇〇町○番○○」「宅地・○○㎡」等、登記事項証明書の表題部を見ながら一言一句違わず写すのが鉄則です。

住所の番地と登記上の地番を混同しないよう注意が必要です。

また、土地とその上の建物を両方相続する場合は、それぞれ別個の不動産として記載します。

「○○市△△町〇丁目〇番地所在の土地及び同所建物を取得する」といった簡略表現は認められず、土地については地番から、建物については家屋番号・種類・構造・床面積まで記載する必要があります。

法務局は登記記録と照合してチェックするため、不動産情報は正確さ最優先で記載しましょう。

さらに、不動産に関する権利関係や付随事項も確認しておきます。

たとえば対象土地に抵当権が付いている場合、相続登記後に抵当権者(銀行等)の承諾が必要になることがあります。

また、地上権や賃借権が設定されていないか、公図や測量図で境界に問題がないか等も、本来は事前に調べておくべき点です。

こうした内容は協議書本文に直接書く事項ではないものの、正確に記載するための前提調査として怠らないようにしましょう(公的情報が得られない場合は司法書士等に相談するとよいでしょう)。

相続人全員の合意を必ず書面に残す

遺産分割協議書は相続人全員が参加していることが絶対条件です。

法定相続人のうち一人でも欠けたまま作成された協議書は無効となります。

したがって、協議書には相続人全員(※相続放棄が受理された人は除く)の名前を記載し、全員が署名押印しなければなりません。

たとえば認知されていた子や前配偶者との間の子など、見落としがちな相続人がいないか戸籍を丹念に確認しましょう。

万一、協議書作成後になって新たな相続人が判明した場合、その協議書は最初から無効と扱われる可能性があります(全員の合意が揃っていないため)。

そうした場合は改めて全員で協議をやり直し、新しい協議書を作成し直すことが必要です。

また、全員の合意を「書面」で残すこと自体にも意味があります。

口約束だけでは後で「そんな話は聞いていない」「同意していない」と言われるリスクがありますが、実印の押された協議書があれば合意の証拠として強力です。

金融機関や法務局も実印と印鑑証明書で本人同意を確認する仕組みを取っています。

相続人の中に高齢者や意思能力が心配な方がいる場合も、協議書へ実印を押してもらうことで、その時点では意思能力があり同意したことの一応の裏付けになります(後に無効主張されにくくなります)。

このように、相続人全員の合意を形に残すことこそ協議書作成の意義なので、「うちは仲が良いから大丈夫」と安易に考えず必ず書面化してください。

署名・押印・印鑑証明書の形式を整える

協議書を有効に機能させるには、署名押印の形式要件を満たすことが重要です。

まず署名は各相続人が自署で氏名を書きます。

代筆やゴム印の使用は避け、本人の直筆で書いてもらいましょう。

押印は実印を使います。

認印や拇印では法務局も銀行も基本的に受け付けません。

全員の押印が揃ったら、各人について印鑑登録証明書を忘れずに用意します。

法務局提出用は発行日から何ヶ月経過していても構いませんが、一般に3ヶ月以内のものが望ましいとされています(特に銀行など他の手続で使う場合に古い証明書だと嫌がられるためです)。

協議書が複数ページになる場合の契印も重要です。

契印とは、複数枚の文書が一体であることを示すために、綴じた継ぎ目にまたがって押す印のことです。

契印は文書が一体であることを証明するための押印で、代表者のみの契印でも法律上問題ありませんが、相続人全員が実印で契印する方法が最も確実です。

ホチキス止めした用紙の継ぎ目に各人の実印を半分ずつ押す形で、割印とも言われます。

契印をし忘れると、後でページを差し替えたのではないかと疑われる恐れがあるため、全ページにまたがり漏れなく押しましょう。

また、協議書の署名欄には住所を書くのが望ましいです。

住所を書かなくても法律上直ちに無効にはならないものの、銀行等では「同姓同名の他人ではない証明」として住所記載を求めることがあります。

法務局も、登記原因証明情報として提出された協議書に住所記載がない場合、補正を求める可能性があります(本人確認の観点から)。

従って、各相続人の現住所を氏名と共に記載し、その住所と氏名が印鑑証明書の情報と一致するようにしておくとベターです。

相続人に未成年者などがいる場合は特別代理人の選任が必要になる

相続人の中に未成年者がいる場合、その法定代理人(通常は親権者)との間で遺産分割協議を行うには注意が必要です。

たとえば父が亡くなり、母と未成年の子が共同相続人になったケースを考えます。

母は子の親権者であり、かつ母自身も相続人となるため、利害関係が衝突します。

このように親権者と子で利害が衝突する行為(利益相反行為)をするには、家庭裁判所に申し立てて子のための特別代理人を選任してもらわなければなりません。

特別代理人として選ばれるのは通常、親族や弁護士等の第三者です。

家庭裁判所に申立てを行い、選任審判が下りると「特別代理人選任審判書」が交付されます。

遺産分割協議書にはその特別代理人が未成年者の代理人として署名押印し、審判書の写しを添付して手続きを進めることになります。

未成年以外にも、判断能力の不十分な成年相続人(認知症の高齢者など)がいる場合は注意が必要です。

そのような方には成年後見人を選任してもらい、後見人が代理で協議に参加します。

ただし、成年後見人自身が他の相続人でもあるときは利益相反となるため、やはり特別代理人(この場合は利益相反代理人)が必要です。

いずれにせよ、相続人全員が法律行為をする能力を備えていることが大前提です。

未成年者がいる場合は家庭裁判所での手続きを経ないと協議自体が無効となってしまいます。

該当するケースでは速やかに家庭裁判所に相談しましょう。

代償金や財産評価額の誤りを防ぐ

土地の相続では金銭による調整(代償金)が絡むことも多く、金額や評価の誤りには細心の注意が必要です。

代償分割を採用する場合、代償金の金額はどのように算定したか明確に説明できるようにしておきましょう。

適正な評価額から乖離した代償金だと、後で不満が噴出する恐れがあります。

「もっと高く売れたのに少ない金額で合意してしまった」といった後悔を防ぐためにも、事前に不動産会社等に簡易査定を依頼することも一案です。

評価額の根拠資料(たとえば固定資産評価証明書や路線価図、不動産鑑定評価書など)があれば、協議書と一緒に保管しておくと後日の参考になります。

また、金額の記載ミスにも注意しましょう。

桁を間違えたり単位を誤ったりすると大変です。

漢数字(たとえば金壱百万円)の併記や、数字の後に「也」を付ける等、日本語表記として明確にする工夫も有効です。

協議書に記載した金額と実際に支払った金額が違うという事態は絶対に避けなければなりません。

さらに、換価分割(売却分割)の場合は税務上の扱いにも配慮が必要です。

協議書に売却代金の配分方法をちゃんと書いておかないと、代表者が受け取ったお金を他の相続人に渡した際に贈与と見なされ贈与税課税リスクが生じます。

実際に「協議書に換価分割の明記がなく、贈与と認定されかけた」という事例もあります(公的機関の情報は得られないものの、専門家の間で知られています)。

税務リスクを回避するための文言も正確に盛り込みましょう。

最後に、清算条項を活用することも誤り防止につながります。

清算条項で「本協議書に定めるほか一切の債権債務を相互に有しない」ことを相続人全員が確認しておけば、後になって「やっぱり取り分が不公平だから追加でもっと払え」などと主張するのを封じられます。

代償金の支払いが完了したら領収証を発行する、共有物分割的に代金分配する場合はその受領書を作成するなど、お金の授受は記録に残すことも徹底しましょう。

公的機関から細かい指導はありませんが、当事者同士で「あの時確かに支払った(受け取った)」と証拠を残すことが大切です。

以上の注意点を踏まえ、協議書を作成すれば、内容不備による無効や想定外のトラブルをかなりの確率で防止できます。

相続人同士の信頼関係だけでなく、法律的に万全な書面にしておくことで、土地相続の手続きを安心して進められるでしょう。

土地相続の遺産分割協議書を専門家に依頼した方がいいケース

遺産分割協議書は相続人自身で作成可能ですが、次のようなケースでは専門家に依頼することを検討すべきです。

  • 相続人が多く、意見の一致が難しい場合
  • 土地が複数あり、登記管轄が分かれる場合
  • 土地の共有名義を避けたい場合

それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

相続人が多く、意見の一致が難しい場合

相続人の人数が多かったり、利害関係が複雑な場合、話し合いの調整が困難になります。

相続人が5人、6人と増えるほど全員の希望をまとめるのは大変で、感情的な対立に発展することも少なくありません。

そのような場合、弁護士等の専門家に調整役として入ってもらうのがおすすめです。

弁護士は中立的な立場で各人の主張を整理し、法律に即した妥当な解決案を提示してくれます。

必要に応じて遺産分割の調停手続き(家庭裁判所での話し合いの場)に代理人として臨んでもらうことも可能です。

また、相続人が遠方に散在していたり連絡調整が難しい場合も、専門家が窓口となってスケジュール調整や書類取りまとめを行ってくれるためスムーズです。

公的機関はこうした調整サービスは提供していないため、多数の相続人間の協議はプロの力を借りる価値が高いでしょう。

土地が複数あり、登記管轄が分かれる場合

被相続人が全国にまたがって不動産を所有していたケースなど、複数の土地を相続する場合は手続きが煩雑になります。

前述したように、不動産の所在地ごとに法務局への登記申請が必要で、申請書類の書き分けや必要書類の原本提示など専門知識が要求されます。

一般の方がそれぞれの管轄に出向いたり郵送手配したりするのは大変です。

司法書士に依頼すれば、複数管轄への申請も一括して手続きを進めてくれます。

司法書士は登記の専門家であり、必要書類を揃える段取りから申請書の作成、法務局とのやりとりまで代理してくれます。

複数の不動産がある相続では、「一部だけ自分で登記して他は放置」というわけにもいきません。

第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

引用元:不動産登記法 | 第76条の2

管轄ごとに異なる実務に戸惑ったりミスをするくらいなら、初めから専門家に任せて確実に処理してもらう方が結果的にコストパフォーマンスが良い場合も多いです。

土地の共有名義を避けたい場合

前述したように、不動産を複数人の共有にすると将来的なリスクがあります。

そこで「なるべくなら土地は共有せず、誰か単独の名義にしたい」と考える場合、その調整を専門家に任せましょう。

たとえば、相続人の間で「自分は土地はいらないが現金が欲しい」という人と「土地を引き継ぎたい」という人がいる場合、代償分割で解決できます。

弁護士や司法書士であれば、過去の判例や慣行を踏まえて適切な代償金額を算定し、当事者全員が納得できる提案をしてくれるものです。

また、不動産の共有を避けるために土地を分筆(物理的に区割り)してそれぞれ単独所有にする、といった専門的な解決法を提示できる場合もあります。

分筆には測量士の協力も必要ですが、専門家ネットワークを通じて手配も可能です。

専門家に依頼すれば、法的にリスクの少ない方法で遺産分割協議書を作成し、登記手続きまで完了させてくれます。

特に不動産については専門家のアドバイスで長期的な視点に立った判断が可能です。

公証役場で協議書を遺産分割協議公正証書として作成してもらう選択肢もあります(公証人により内容チェックされる)が、こうした作業も弁護士等に依頼してサポートしてもらうと確実です。

専門家に依頼すれば費用はかかるものの、誤りのない協議書を作成でき、手続きもスムーズに進むため安心です。

専門家のサポートを受けて、安心・スムーズに遺産分割協議書を作成しよう!

ここまで、土地の相続における遺産分割協議書の重要性や作成手順、注意点について解説してきましたが、重要なのは、必要に応じて専門家のサポートを受けることです。

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を正式な書面として残す極めて重要な法律文書であり、記載の正確性が欠かせません。

小さな誤りが後々のトラブルに発展する可能性もあるため、慎重な作成が求められます。

大切な土地を次の世代へ円満に引き継ぐためにも、適切な協議書の作成を通じて、公正で納得感のある相続を実現することが何より大切です。

将来にわたって安心できる相続のために、私たち「静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター」では、不動産・法律・税務を横断したワンストップ体制で相続をサポートしています。

静鉄不動産100年の信頼と地域密着のネットワークを活かし、相続人調査・資産評価・相続税試算・遺産分割協議書作成・登記・申告まで一貫してサポートできる点が強みです。

司法書士・税理士・弁護士と連携しているため、不動産相続だけでなく、複雑な税務や相続トラブル、遺言書の作成支援など、幅広い問題へ迅速・適切に対応可能です。

「何から始めればいいかわからない」 「相続人同士の関係が不安」 「土地が複雑で分け方がわからない」といった段階からでも安心して相談できる体制を整えています。

相続に強い担当者が寄り添い、必要な専門家と連携しながら、最適な相続方法をご提案します。

地元静岡で安心・安全・高品質な相続ワンストップサービスを求める方は、ぜひ静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターをご活用ください。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

相続の疑問、専門家がまとめてお答えします

お電話でのご相談0120-200-009月〜土 9:00〜18:00(日祝定休)
無料相談を予約する

相続手続きの流れを時系列で解説!死亡後から申告・登記まで、期限を逃さないために

2025.12.02

親族が亡くなって相続が発生すると、悲しみの中でもすぐに進めなければならない手続きが数多くあります。

葬儀の準備と並行して、役所への届出、年金や保険の停止、預貯金や不動産の名義変更など、やるべきことはさまざまです。

それぞれの手続きには期限があり、順番を誤ると後の手続きが滞ることもあります。

本記事では、死亡直後から各種申告・不動産の相続登記完了まで、時系列に沿って必要な手続きと期限を解説します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

相続手続きの全体の流れと期限一覧

相続発生から完了までの主な手続きと期限を、次の一覧表で整理しましょう。

手続き内容 期限の目安 期限の区分(法定/実務) 主な根拠法令・制度
死亡届の提出(死亡診断書の取得・火葬許可申請) 7日以内(死亡の事実を知った日から) 法定 戸籍法第86条・第89条、墓地埋葬法第5条等
年金受給停止の届出(国民年金・厚生年金) 10日以内(厚生年金)、14日以内(国民年金) 法定 国民年金法第105条、厚生年金保険法第37条等
健康保険証・介護保険証の返却(資格喪失届) 14日以内 法定 国民健康保険法第9条、介護保険法第13条等
世帯主変更届の提出 14日以内 法定 住民基本台帳法第25条
遺言書の確認・検認手続き (なるべく早く・遅滞なく) 法定 民法第1004条、第1005条、家事事件手続法
相続放棄・限定承認の申述(家庭裁判所) 3か月以内 法定 民法第915条
(※相続放棄・承認期間伸長の申立て) (3か月以内に申立て) 法定 民法第915条但書
被相続人の所得税の準確定申告 4か月以内 法定 所得税法第125条
相続税の申告・納付 10か月以内 法定 相続税法第27条
遺留分侵害額請求(必要な場合) 1年以内(権利行使期限)
※10年以内(除斥期間)
法定 民法第1048条(減殺請求権の期間)
健康保険の給付請求(高額療養費、埋葬料 等) 2年以内 法定 健康保険法第193条(時効)等
国民年金の死亡一時金請求(該当者のみ) 2年以内 法定 国民年金法第120条(時効等)
不動産の相続登記(名義変更登記) 3年以内 法定 不動産登記法第76条の2等(2024年改正)
生命保険金の受取手続き 3年以内 実務 保険法第56条(保険金請求権の時効)等
その他の名義変更手続き(預金・車両等) 特に期限なし(速やかに) 実務 ― (各機関の内部手続き)

表中の「実務」は法律上明文の期限はないものの、一般的に早めの対応が推奨されるものです。

死亡後7日以内に必要な手続き

相続開始直後(被相続人の死亡後すぐ)7日以内に行うべき緊急な手続きは、次の「死亡届提出」です。

死亡届の提出(死亡診断書の取得・火葬許可申請)

被相続人が亡くなった事実を戸籍に反映させ、公的に死亡を証明するための手続きです。

医師から交付された死亡診断書(または死体検案書)に必要事項を記入した上で、被相続人の本籍地・死亡地・または届出人の所在地の市区町村役場に死亡届を提出します。

死亡届を提出すると同時に火葬許可証の発行申請も行われ、火葬や埋葬の許可を受けます。

通常は、亡くなった方の住所地の市役所・町村役場の戸籍担当窓口で行います。

必要書類は以下の通りです。

  • 医師の死亡診断書と一体になっている死亡届用紙
  • 死亡診断書(死体検案書)原本
  • 届出人の認印(火葬許可申請時に必要)

死亡届用紙は、病院で死亡診断書と一緒に渡されるのが一般的です。

また、届出の際には火葬の日程等も確認されます。

提出期限は死亡の事実を知った日から7日以内です(国外での死亡の場合はその事実を知った日から3ヶ月以内)。

この7日間には死亡した当日も含まれます。

たとえば死亡当日が1日なら、7日後の7日までが届出期限です。

役場の休日にあたる場合は翌開庁日まで延長されます。

期限内に届出をしないと、届出義務者(同居の親族など)に対し過料(科料ではなく行政罰)が科される可能性があります。

法律に基づき、市町村長は期限を過ぎた死亡届を管轄の簡易裁判所に通知する義務があり、裁判所の判断で5万円以下の過料が科される場合があります。

第86条

第八十六条 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない。

引用元:戸籍法 | 第86条

実際に罰則が適用されるケースは多くありませんが、届出が遅れると火葬許可が下りず葬儀に支障が出たり、各種相続手続き全体が遅れたりするなどの不利益があります。

したがって期限厳守が重要です。

死亡届提出後、役所で火葬許可証が交付されます。

火葬や埋葬を行う際には役所で交付された許可証が必要となります。

なお、死亡届は葬儀社が代行提出する場合もありますが、届出義務者の署名押印が必要です。

提出した死亡届の写し(受理証明)や死亡診断書のコピーは、この後の年金停止手続きや保険金請求などで必要になることがあるため、提出前に複数コピーを取っておきましょう。

死亡後14日以内に必要な手続き

次に、死亡後できるだけ早く(おおむね2週間以内に)行うべき手続きを説明します。

  • 年金受給停止の手続き(年金受給者死亡届の提出)
  • 健康保険・介護保険の資格喪失届(保険証の返却等)
  • 世帯主の変更届

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

年金受給停止の手続き(年金受給者死亡届の提出)

被相続人が公的年金(国民年金や厚生年金など)を受給していた場合、年金の支給停止手続きを行います。

年金は受給者が亡くなると以後の支給を受ける権利が消滅するため、すみやかに年金機構へ死亡の届出を行い、年金支給を止めなければなりません。

年金の支給停止手続きをしないままでいると、死亡後も年金が振り込まれてしまい、後日過払い分を返還しなければならなくなるおそれがあります。

提出先は日本年金機構(年金事務所)または厚生年金の場合は勤務先経由です。

具体的には、厚生年金受給者の場合は死亡日から10日以内に所轄の年金事務所へ、国民年金(老齢基礎年金)受給者の場合は死亡日から14日以内に市区町村役場または年金事務所へ届け出ます。

年金機構では「年金受給者が亡くなったら速やかに届出を」としており、特に法定で明確に日数が規定されているわけではないものの、年金事務所等への案内では上記の日数が目安とされています(国民年金法施行規則で14日以内の届出が求められる旨の規定があります)。

実務上も遅くとも2週間以内には手続きを済ませるのが望ましいです。

なお、亡くなった方の基礎年金番号とマイナンバーが年金機構に登録されている場合、死亡届を市区町村に出すことで年金機構にも連携されるため、別途の死亡届提出が省略される場合があります。

しかし未登録の場合や迅速に停止確認したい場合は、自ら年金事務所に届け出たほうが確実です。

提出には年金証書(年金手帳)と、死亡を証明する書類(死亡届受理証明書や除籍謄本など)を用意しましょう。

届出様式は「年金受給権者死亡届(未支給年金・未支払給付金請求書)」で、日本年金機構のサイトからダウンロード可能です。

用に記入し、年金証書(年金証書番号の記載されたハガキ状のもの)を添えて提出。

厚生年金の場合は勤務先が手続きを行ってくれるケースもありますが、遺族が直接年金事務所に届け出ても構いません。

届出が遅れると本来受け取るべきでない年金が振り込まれてしまい、後日返金手続きが必要になる可能性があります。

たとえば偶数月15日の年金支給日より前に亡くなったのに、届出が遅れて支給停止が間に合わないと、死亡後の支給分を全額返納しなければなりません。

また、届出が遅れると未支給年金(亡くなった月までの受給権があった年金)を受け取るための手続きも遅延します。

未支給年金の請求は死亡届と同じ用紙で行うため、届出が遅れると支給処理も遅れてしまいます。

したがって、できるだけ早く手続きを行いましょう。

年金受給者が亡くなった月分までで、まだ支払われていない年金(偶数月支給の場合、死亡月までの未支給分)がある場合、配偶者など一定の遺族が未支給年金を請求できます。

未支給年金の請求期限は特に法定の期限はありませんが、早めに手続きすることで確実に受け取れます。

必要書類は年金証書、亡くなった方と請求者の戸籍関係書類(生計同一関係申立書が必要な場合あり)など多岐にわたるため、年金事務所で確認しながら進めましょう。

健康保険・介護保険の資格喪失届(保険証の返却等)

被相続人が国民健康保険に加入している、または後期高齢者医療保険や健康保険組合等の被保険者であった場合、保険資格が死亡日に失われるため、保険証の返却と資格喪失届の提出が必要です。

保険証は死亡日以降無効となるため、市区町村役場または保険者へ返還します。

亡くなった方が国民健康保険の加入者および後期高齢者医療保険の場合は市区町村役場の国民健康保険担当窓口に届け出ます。

会社員等で健康保険組合や協会けんぽの被保険者だった場合は、通常勤務先経由で健康保険証を会社に返却し、会社が保険者に資格喪失届を出します。

いずれの場合も14日以内を目安に手続きを行いましょう。

手続きには被相続人の健康保険証を使用し、窓口で死亡による資格喪失届を提出します。

死亡が確認できる書類(死亡届の写し・除票など)が求められることがあり、念のため印鑑や届出人の本人確認書類を持参しておくと安心です。

会社員の健康保険は会社へ保険証を返却することで処理されます。

国民健康保険には法定で14日以内の届出が定められており、自治体も同様に案内しています。

健康保険組合の場合は明確な期限はないものの、速やかな返却が一般的です。

資格喪失届を怠った場合の直接の罰則規定はありません。

しかし亡くなった後にその保険証を利用して医療を受けることはできないため、実務上は死亡と同時に医療機関でも無効になります。

届出が遅れても遡って資格は喪失しますが、返却が遅れると保険者から催告を受けることがあります。

また、国民健康保険の場合、死亡に伴い葬祭費の支給申請が可能ですが(後述)、保険証の返却をしていないと申請手続きが進まないこともあります。

したがって、忘れずに保険証を返却しましょう。

被相続人が介護保険の被保険者(要介護認定者など)だった場合も、介護保険被保険者証の返還と資格喪失届が必要です。

こうした書類も市区町村の介護保険担当課へ、死亡から14日以内に届け出ます。

必要書類は介護保険証と亡くなった方の氏名・生年月日・死亡日が確認できるものです。

介護保険サービスの利用料については月の途中で亡くなった場合の日割り計算や、前納していた保険料の還付手続きが生じることがあります。

返却と届出をしないと介護保険料の過誤納が発生した際の返金手続きが進まないため、早めに行いましょう。

世帯主の変更届

被相続人が生前、その住民票上の世帯主であった場合、死亡により世帯主が不在になるため、新たな世帯主を届け出る必要があります。

法律により、世帯主に変更があった場合は届け出ることが義務付けられています。

たとえば家族の中で父親が世帯主だったが亡くなった場合、残された母親等を新しい世帯主として市区町村に世帯主変更届を提出します。

届出先は世帯の所在地の市区町村役場(住民異動届の窓口)です。

届出人の本人確認書類や認印を持参し、備え付けの世帯主変更届(住民異動届の一種)に新旧世帯主名や世帯員の情報を記入して窓口に提出します。

併せて亡くなった方の住民票(除票)の発行をお願いするとよいでしょう。

基本的に死亡届を出した段階で住民票に「除票」が作成されますが、世帯主変更届は別途必要です。

世帯主の変更届は、14日以内に提出することが法令で定められています。

第25条(世帯変更届)

第二十五条 第二十二条第一項及び第二十三条の場合を除くほか、その属する世帯又はその世帯主に変更があつた者(政令で定める者を除く。)は、その変更があつた日から十四日以内に、その氏名、変更があつた事項及び変更があつた年月日を市町村長に届け出なければならない。

引用元:住民基本台帳法 | 第25条

死亡に伴う世帯主変更も該当します。

届出を怠ったり虚偽の届出をした場合、住民基本台帳法に基づき5万円以下の過料の対象となりえます。

ただし実際に過料が科されるのは極端な不履行・虚偽申告の場合です。

とはいえ、世帯主が空位のままだと住民票上不整合が生じるため、公的手続き(たとえば世帯主に支給される給付金の受領など)に支障が出る可能性があります。

また、死亡に伴う国民健康保険や介護保険の手続きを行う際にも世帯主情報が必要になることがあります。

世帯主変更届自体に直接の経済的利益はありませんが、公的記録を正しく保つために速やかに行いましょう。

なお、世帯全員が亡くなった場合や一人世帯でその人が亡くなった場合は世帯そのものが消滅するため、世帯主変更届は不要です(住民票が除票されるのみです)。

死亡後〜3か月以内に必要な手続き

ここからは、相続開始後おおむね3ヶ月以内に行うべき以下の重要な手続きについて解説します。

  • 遺言書の確認・検認手続き
  • 相続人の調査・確定
  • 相続財産の調査・財産目録の作成
  • 相続放棄・限定承認の申述

特に3ヶ月目は法律上重要な節目となります。

以下から、それぞれ詳しく見ていきましょう。

遺言書の確認・検認手続き

被相続人が遺言書を残していた場合、相続手続きは基本的に遺言の内容に従って進めます。

そのため、まず遺言書の有無を確認することが重要です。

公正証書遺言の場合は「公証役場で作成された遺言書」であり、この場合は既に公証人によって内容が確認済みなので、家庭裁判所での検認手続きは不要です。

遺言執行者が指定されていれば、その者が遺言に従い手続きを進めましょう。

自筆証書遺言は、紙に自書された遺言書を指します。

2020年7月以降、法務局の遺言書保管制度を利用している場合は検認不要です。

一方、自宅などで保管され封印された状態で見つかったものは勝手に開封できず、家庭裁判所で相続人立会いのもと開封する必要があります。

第1005条(過料)

第千五条 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

引用元:民法 | 第1005条

無断で開封すると過料の対象となるため、封印された遺言書を発見した場合は家庭裁判所へ提出して検認の申立てをしましょう。

検認とは家庭裁判所が遺言書を正式に確認・保存する手続きです。

相続人に遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の形式(日付や署名、加除訂正の状況等)を明確にして偽造・改ざんを防止するのが目的です。

遺言書を発見した相続人または遺言書の保管者が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺言書を提出して検認を請求します。

この請求は遅滞なく(できるだけ早く)行う必要があります。

なお、法務局の遺言書保管制度を利用した場合は、相続人等は遺言書情報証明書を請求して入手すればよく、家庭裁判所での手続きは不要です。

検認申立てには、家庭裁判所の申立書に必要事項を記入して提出します。

必要書類は、以下の通りです。

  • 遺言書原本
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍
  • 相続人全員の戸籍など相続関係を証明する書類
  • 収入印紙(800円)
  • 郵便切手

検認期日には相続人へ通知が送られ、立会いも可能です。

封印された自筆遺言書は「遅滞なく」家庭裁判所に提出することとされており、相続放棄の判断期限(3ヶ月)にも関わるため、早期に確認することが望まれます。

封印された遺言書を無断開封すると過料の対象となりますが、開封してしまっても遺言が無効になるわけではありません。

速やかに家庭裁判所に持参し指示を受ける必要があります。

また、検認を経ていない自筆遺言書では相続登記などの手続きができません。

検認後、検認済証明書付きの遺言書を用いて正式な効力を主張できるようになります。

公正証書遺言は検認不要で、そのまま遺言執行者が手続きを進めます。

いずれの場合も、遺言書の内容が確認できた時点でその指示に従って相続手続きを進めることになります。

相続人の調査・確定

相続手続きではまず「誰が相続人か」を確定することが基本です。

被相続人の法律上の相続人を全員確定しないと、後になって漏れていた相続人から異議が出たり手続きが無効になる恐れがあります。

そのため、被相続人の出生から死亡までの戸籍を連続して取得し、結婚・離婚歴、認知や養子縁組の有無などを確認して法定相続人を確定します。

併せて、各相続人の現在の戸籍や住民票も取得し、住所や身元を確認します。

戸籍を収集して相続人を特定した後、必要に応じて法定相続情報一覧図を法務局から取得することで、不動産登記や金融機関手続きの際の書類提出が簡略化できます。

相続人調査そのものには法律上の期限はありません(早めにやるに越したことはありません)。

ただし、相続放棄等の期限(3ヶ月)や相続税申告期限(10ヶ月)までに誰が相続人か確定していないと他の手続きに支障が出ます。

特に相続放棄は各相続人ごとに判断する必要があり、相続人に漏れがあってその人が後で放棄期間を過ぎてから発覚するとトラブルになります。

実務上は死亡後〜3ヶ月以内に戸籍を集めて相続人を確定させるのが望ましいでしょう。

被相続人に前配偶者との間の子や認知した子などがいるケースでは、故人と疎遠だった相続人が存在する可能性があります。

戸籍を丹念に集めれば、そうした相続人も漏れなく判明します。

万一相続人の一人でも手続きから漏れると、遺産分割協議が無効になったり、せっかく進めた名義変更をやり直す事態にもなりかねません。

専門家によると、被相続人が若い頃に離婚していて前妻との間に子がいたケースなどで相続人漏れが発覚することがあります。

戸籍の読み取りに不安がある場合は司法書士や行政書士に相談し、相続関係説明図を作成してもらうのも一手です。

相続財産の調査・財産目録の作成

誰が相続人か確定したら、次に「どんな財産・負債が遺されているか」を把握しましょう。

特に被相続人に借金などの負債がある場合、早期の財産調査と財産目録の作成が重要です。

主な財産の調査方法は、以下の通りです。

種類 調査方法・確認ポイント
預貯金 ・通帳、キャッシュカード、ネットバンキングの記録を確認
・自宅の書類や金庫に通帳がないか確認
・証書がないか確認
・取引金融機関に残高証明書を請求
・銀行名が不明な場合は郵便物や口座振替の記録から推測
不動産 ・固定資産税の課税明細書に所在地や評価額が記載
・見当たらない場合は市区町村で固定資産評価証明書を取得
・複数自治体に所有している可能性があるため、心当たりの自治体で確認
生命保険 ・保険証券や保険会社からの郵便物を確認
・不明な場合は生命保険協会の一括照会制度を利用
・契約者貸付、解約返戻金、死亡保険金などが財産になり得る
有価証券(株式・投資信託等) ・証券会社の取引残高報告書や配当通知を確認
・ネット証券の場合はログイン情報の確認、または証券会社へ問い合わせ
借入金・債務 ・金融機関からの借入明細や郵便物を確認
・カードローンやクレジット債務の履歴を調査
・知人からの借金は借用書
・メモを探す
・保証人になっていないかも確認

調査過程で集めた資料(預金残高証明、不動産の登記簿謄本、評価証明、保険証券、借用書等)は、後の遺産分割協議や相続税申告に役立ちます。

財産目録を作成する際には、「資産」と「負債」を区別し、できれば時価評価額や残高も付記しましょう。

財産調査自体に明確な期限はありませんが、相続放棄するか否かの熟慮期間(3ヶ月)内に大まかな財産状況を把握する必要があります。

そのため、3ヶ月以内を目標に財産目録を作りましょう。

もし財産調査が3ヶ月で終わらない特殊な事情がある場合は、後述のように家庭裁判所に期間延長を申し立てることも可能です。

また、後から隠れた財産や負債が見つかるケースは少なくありません。

たとえば、見落としがちな資産として退職金(死亡退職金)や死亡保険金があります。

退職金は会社の就業規則等により支給される場合があり、受取人指定がなければ相続財産となります。

また、負債では親族や知人との私的な借入、連帯保証していた債務なども忘れず確認しましょう。

万一、相続手続き完了後に新たな財産・負債が発覚すると、遺産分割協議のやり直しや相続税の修正申告が必要になることがあります。

従ってできる限り網羅的に調査することが大切です。

相続放棄・限定承認の申述

被相続人の財産調査の結果、相続による不利益を避けたいときは、家庭裁判所で相続放棄または限定承認の手続きを検討しましょう。

相続放棄は、最初から相続人とならなかったものとみなし、一切の相続財産・債務を承継しない選択です。

たとえば巨額の借金が判明した場合に有効です。

限定承認は相続によって得た財産の限度内で債務を弁済し、超過する債務は負わないという条件付き承認です。

プラスが残る可能性もあるが債務超過か不明な場合に選択されます。

限定承認は相続人全員の共同でのみ行えます。

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出して行います。

相続放棄も限定承認も管轄裁判所は同じです。

申述できるのは各相続人本人(未成年者の場合は法定代理人)です。

相続放棄は相続人それぞれが単独でできますが、限定承認は相続人全員で共同申述しなければなりません。

相続放棄申述書(または限定承認申述書)を家庭裁判所所定の様式で作成します。

添付書類として、以下が必要です。

  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍)謄本
  • 申述人の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票(最後の住所地が分かるもの)など

申述人が複数いる場合は人数分の申述書が要ります。

手数料として収入印紙800円(相続人一人につき)と、連絡用の郵便切手(裁判所が指定する金額)を用意します。

限定承認の場合は併せて相続財産目録の提出も必要です(債権者に公告するため)。

相続開始を知ったときから3ヶ月以内に申述しなければなりません。

たとえば被相続人が亡くなった日を知った日が1月10日であれば、4月9日までに家庭裁判所へ申述書を提出する必要があります。

期限内に申述書が受理されれば手続き中でも間に合ったものと扱われます(手続き完了自体は期限後でも可ですが、期限内に申述をしないと単純承認になってしまいます)。

万一3ヶ月では判断できない事情がある場合、熟慮期間の延長を家庭裁判所に申し立てることも可能です。

相続財産調査が難航している場合など、裁判所が正当な理由ありと認めれば期間を延長してくれます。

3ヶ月の熟慮期間内に相続放棄も限定承認も行わなかった場合、法律上は「単純承認」(プラスもマイナスも全て相続する)をしたものとみなされます。

一度単純承認とみなされると、原則として後から相続放棄することはできません。

その結果、多額の借金を含めすべて引き継ぐ義務を負うことになります。

ただし、期限経過後でも例外的に放棄が認められるケース(相続人不存在で相続財産管理人選任後に判明した場合等)もありますが、限定的です。

期限後に債務超過が判明しても原則覆せないため、熟慮期間内に判断することが極めて重要です。

相続放棄・限定承認そのものに罰則はありません。

申述が認められると、相続放棄の場合は家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が交付されます。

限定承認の場合は相続財産を清算する手続きに移ります。

限定承認では相続人全員で行う必要があり、手続きも煩雑(債権者への公告・弁済等)なので専門家のサポートが望ましいです。

放棄・限定承認いずれの場合も、予納金などの費用は基本不要ですが、限定承認では不動産処分等が絡むと費用がかかることがあります。

相続放棄した方は、初めから相続人でなかったものとみなされる点には注意が必要です。

たとえば長男が相続放棄すると、その子(被相続人から見て孫)が代わりに相続人になるわけではなく、最初から長男はいないものとして次順位の相続人(次男など)が繰り上がる仕組みです。

限定承認した場合、プラスの財産範囲内で債務を弁済し、残余があれば相続人が取得します。

限定承認を選択するケースは少ないですが、専門家の支援のもと適切に行えば債務超過リスクを避けつつ財産を手元に残せる可能性があります。

死亡後4か月以内に必要な手続き

死亡後4ヶ月以内に行うべき税務上の重要な手続きを説明します。

相続人が代わって申告・納税を行う必要があり、期限が比較的短いので注意が必要です。

詳しく見ていきましょう。

被相続人の所得税の準確定申告

準確定申告とは、被相続人(亡くなった人)の生前の所得について行う最終の確定申告のことです。

通常、所得税の確定申告は毎年1月1日〜12月31日までの所得を翌年2月16日〜3月15日に納税者本人が行います。

しかし年の中途で納税者が死亡した場合、死亡年の所得については相続人が代わりに税額を計算して申告・納税しなければなりません。

被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に提出します。

相続人が複数いる場合、相続人全員の連名で1通の申告書を提出するか、各相続人が個別に提出します(いずれの場合も相続人全員の情報を記載・通知する義務があります)。

郵送提出やe-Taxも利用可能です。

所得税の確定申告書(被相続人用)を使用します。

通常の確定申告書と同じ様式ですが、「準確定申告書」である旨を付表に記載します。

被相続人の収入・経費をすべて計算し、医療費控除や保険料控除等も死亡日までに支払った分の適用が可能です。

給与所得者で年末調整済みの場合でも、医療費控除やふるさと納税等があれば準確定申告で申告できます。

必要書類としては、被相続人の源泉徴収票、各種控除証明書(生命保険料控除証明など)、医療費の領収書リストなど、通常の確定申告と同様のものが必要です。

相続人代表で還付金を受領する場合は委任状も添付します。

相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内(期限日が土日祝の場合はその翌平日)です。

たとえば1月10日に死亡した場合、5月10日が申告期限となります。

また、被相続人が前年分の確定申告を未了のまま年を越して死亡した場合、前年分と死亡年分の両方を4ヶ月以内に申告することが必要です。

計算した所得税額を申告期限までに納付します。

還付になる場合は相続人が還付金を受け取ることが可能です。

複数相続人がいる場合、一人が代表して還付金を受領できます。

その際、相続人全員の同意書(委任状)を添付することが必要です。

準確定申告を期限までに行わなかった場合、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される可能性があります。

延滞税は納期限からの日数に応じて利息のように増え、無申告加算税は本来納めるべき税額の5〜20%が課され得ます。

特に事業所得や不動産所得があるケースでは税額も大きくなるため、遅延による負担増に注意が必要です。

相続人が複数の場合、原則連帯して納税義務を負います。

申告・納税を怠ると各相続人に督促が来ることもあります。

準確定申告は被相続人の一年分の所得計算を行う作業で、相続手続きの他の対応と並行して行わなければなりません。

相続人にとって負担が大きい場合、税理士に依頼して準確定申告書を作成・提出してもらうことも検討してください。

法定の添付書類や控除漏れのチェックなど、専門家に任せると安心です。

死亡後10か月以内に必要な手続き

いよいよ相続開始から半年〜10ヶ月程度が経過する時期までに行う手続きを解説します。

  • 相続税の申告・納付
  • 遺産分割協議の実施と遺産分割協議書の作成
  • 遺留分侵害額請求(必要な場合)

相続税の期限(10ヶ月)は法定の厳守すべき期限なので注意しましょう。

それぞれについて、以下から詳しく解説します。

相続税の申告・納付

相続や遺贈によって取得した財産の課税価額が基礎控除額(「3000万円+600万円×法定相続人の数」)を超える場合、相続税の申告が必要です。

基礎控除を超える遺産を取得したときは、被相続人の死亡により相続が開始した時点で相続税の申告と納税の義務が生じるため、この前提を踏まえて期限内の手続きを進めましょう。

課税対象となる遺産がある場合、相続税の申告書を税務署に提出し、税額を納付しましょう。

一方、基礎控除内で相続税が発生しない場合でも、土地の特例や配偶者控除など税額軽減措置を受けるために申告が必要なケースもあります(たとえば配偶者が法定以上に相続する場合でも配偶者控除を適用するには申告が必要)。

したがって「相続税がかからないと思うから申告不要」と安易に決めつけず、一度専門家等に確認しましょう。

提出先は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署です。

相続人の住所地ではないので注意してください。

申告書の提出方法は、直接税務署に持参するほか、郵送提出やe-Tax(電子申告)でも可能です。

提出期限内必着である点に注意しましょう。

相続税申告書一式(第1表から第15表まで該当分)を作成し、以下の添付書類が必要です。

  • 被相続人の戸籍関係書類(被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍、改製原戸籍、相続人全員の戸籍謄本)
  • 遺言書または遺産分割協議書の写し(遺産分割がまとまっている場合)
  • 財産評価に関する書類:不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金の残高証明書、有価証券の残高報告書など
  • 債務や葬式費用の領収書(債務控除や葬儀費用控除のため)
  • 各種特例の適用証明書:小規模宅地等の特例を適用する場合は宅地の位置図や利用状況の申告書、障害者控除を受ける場合は障害者手帳の写しなど、特例ごとに決められた書類
  • 納税方法に関する書類:延納や物納を希望する場合はその申請書、担保提供関係書類
  • (必要に応じて)相続関係説明図や法定相続情報証明(提出は任意ですが添付すれば戸籍類の提出省略が認められる場合があります)

申告書は分量が多く専門的なため、国税庁の「相続税の申告の手引」や各税務署の相談窓口を活用しましょう。

相続開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10ヶ月以内(期限日が土日祝の場合は翌平日が期限日)です。

10ヶ月という期限は法定の申告期限であり、一切の延長は認められていません(※災害等による申告期限延長の制度はありますが、個人的事情では延長できません)。

期限までに申告がない場合、無申告加算税(通常15%)や延滞税が課される可能性があります。

相続税の納付も申告期限(10ヶ月以内)までに行いましょう。

原則として現金一括納付です。

期限までに申告しても納税が遅れると延滞税が発生します。

納付方法は、金融機関窓口での納付、振替納税、インターネットバンキング納付、クレジットカード納付などが利用できます(クレジット納付は手数料がかかる点に注意)。

資金繰りが難しい場合、税務署へ申請して延納(分割払い)や物納(不動産等で納付)制度を利用することも可能です。

延納・物納を希望する場合は、申告書提出期限までに所定の申請書類を提出し許可を受ける必要があります。

期限までに申告しなかったり、実際より少ない額で過少申告した場合、本来の税額に加えペナルティ税が課されることがあります。

無申告加算税は本税額の10〜20%(自主的な期限後申告なら5%)です。

また、納付遅延には延滞税(年利分)がかかります。

さらに、期限内申告をしなかったことで適用できなくなる特例もあります。

特例適用を後から主張する更正の請求も、法定申告期限から5年以内にしか認められません。

したがって、必ず期限内に正確に申告・納税を行うことが肝要です。

相続税の計算は、財産評価や特例適用など専門知識を要します。

特に不動産評価額の算定や非上場株式の評価などは複雑です。

また、財産をどう分割するかで税額が変わる場合もあります(配偶者が多く取得すると非課税になる、土地を誰が取得するかで特例適用が変わる等)。

税理士に相談すれば、節税も踏まえた分割プランの提案や適切な特例適用による税額軽減が期待できます。

実際、期限ぎりぎりに駆け込んで慌てて申告書を書き間違えるより、早めに専門家に依頼し、余裕をもって正確な申告をすることが望ましいでしょう。

遺産分割協議の実施と遺産分割協議書の作成

遺産分割協議とは、複数の相続人がいる場合に、誰がどの財産を承継するか話し合って決めることです。

法律上、相続開始と同時に被相続人の財産は法定相続分に応じて相続人全員の共有状態になります。

しかし、そのままでは各財産の名義変更が難しく、また共有のままだと後々の管理処分に支障が生じます。

そこで相続人全員の合意により具体的に財産を分ける合意をするのが遺産分割協議です。

遺産分割協議自体には法律上の明確な期限はありません。

極端な話、相続開始から何十年後でも相続人全員が合意すれば協議成立し得ます。

ただし、相続税の申告までに分割内容が決まっていれば税務上有利な特例を適用でき、相続登記の義務化も進んだため、不動産については遅くとも相続開始後3年以内に名義変更しなければ過料リスクがあります。

また、民法改正(2023年)で相続開始から10年経つと遺産分割で寄与分(貢献度による取り分加算)が主張できなくなったり、家庭裁判所に持ち込んだ場合に法定相続分で分割されるおそれが出てきました。

第904条の3(期間経過後の遺産の分割における相続分)

第九百四条の三 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

引用元:民法 | 第904条の3

こうした背景から、早めに分割協議を済ませることが推奨されます。

実務的には相続税申告期限(10ヶ月)までに協議をまとめておくのが望ましいです。

遺産分割協議ではまず遺産目録を用意し、各相続人の希望をすり合わせて分配案を決めます。

話し合いがまとまれば遺産分割協議書を作成する流れです。

協議書には相続人全員の自署と実印押印が必要で、各自の印鑑証明書を添付します。

協議書に盛り込む内容は、以下の通りです。

  • 不動産は所在地・地番や登記簿記載どおりに特定
  • 預金口座は金融機関名・店名・口座種別・番号・名義人氏名

さらに「一切の相続財産について本協議書のとおり分割する」旨を明記し、相続人全員が署名・押印します。

遺産分割協議書そのものはどこかに提出するものではありません。

しかし、遺産分割協議書は名義変更手続きの際に重要な証拠書類となります。

不動産登記では協議書(または法定相続分による場合は不要)、銀行預金の払い戻し・名義変更では協議書の提示が通常必要です。

したがって各相続人用に協議書の原本または実印証明付きコピーを用意しておきましょう。

相続人間で意見が対立し協議が成立しないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。

調停でも合意できなければ審判となり、最終的には裁判所が法定相続分等に沿って分割方法を決定します。

裁判所に持ち込むと時間も費用もかかるため、できれば話し合いでまとめるのが得策です。

ただし不公平感が強いケースでは専門家(弁護士・司法書士など)を交えて調整するとスムーズになることもあります。

注意点として、相続人全員が参加し合意することが必要です。

一人でも欠けると協議は無効となります。

たとえば相続人の一人が行方不明なら不在者財産管理人を立てる、未成年者がいるなら特別代理人を選任する等の対応が必要です。

遺言書がある場合は、遺言で指定された財産分けが優先されます(遺言に書かれていない財産だけを対象に協議することになります)。

法定相続分と異なる分け方でも協議が成立すれば有効ですが、極端に特定の相続人に偏る場合、他の相続人が後に遺留分侵害額請求(後述)する可能性があります。

公平性や将来の人間関係も考慮して分割内容を決めることが大切です。

相続税の特例適用要件に「申告期限までに分割されていること」が条件のものがあります。

たとえば配偶者控除(1億6千万超でも全額非課税)や小規模宅地特例(土地評価減)は、期限内に遺産が分割されているかどうかで適用が認められるか影響します。

もし期限までに協議が整わない場合、「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出すれば、一部特例について猶予的に適用を受けられる制度もありますが、いずれにせよ早期分割が望ましいです。

さらに、不動産をどの相続人が取得するかで相続登記義務の負担者も変わってきます。

配偶者居住権など新しい制度も踏まえ、税理士・司法書士と連携して最適な分割内容を決定するとよいでしょう。

遺留分侵害額請求(必要な場合)

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者・子・直系親)が最低限確保できる相続財産の取り分のことです。

もし遺言などによって遺留分を侵害される事態(本来もらえるはずの最低額を下回る)が発生した場合、侵害された相続人は他の受遺者や相続人に対して遺留分の取り戻し(侵害額の金銭請求)ができます。

遺留分を主張する人を遺留分権利者、相手方(遺留分を侵害して多く財産を得た人)を受遺者・受贈者といいます。

被相続人の配偶者、子(代襲相続人含む)、直系尊属が遺留分権利者です。

兄弟姉妹や相続放棄した人には遺留分はありません。

遺留分侵害額請求は内容証明郵便等で意思表示するのが一般的です。

まず相手方に対し「○○の遺産分割・遺言によって自分の遺留分が侵害されているので、△△万円を請求します」と通知します。

それで交渉がまとまれば支払を受けて解決です。

合意しない場合は家庭裁判所に調停を申し立て、さらに不調なら訴訟で争うことになります。

訴訟になれば裁判所が遺留分額を算定し支払を命じる判決を下す流れです。

遺留分侵害額請求権は、相続開始及び侵害を知った時から1年以内に行使しないと時効で消滅します。

遺言書が開封されて自分の取り分が少ないと知った時から1年、または相続開始から10年(最長期間)で権利消滅となります。

したがって、遺言の内容に不服がある場合は早めに行動しましょう。

一年を過ぎると請求できなくなるため注意してください。

遺留分は財産の評価額や計算方法が法律で決まっており、請求額の根拠を明確にする必要があります。

相続財産の価額や債務、遺贈・贈与の額によって遺留分額が変わるため、専門家(弁護士)に相談して算定する方が安全です。

請求された側も、その金額が妥当か否か検討しなければなりません。

話し合いでまとまらなければ裁判となり、精神的負担もあるため、できれば遺産分割の段階で遺留分に配慮した配分を検討することが望ましいです。

たとえば特定の相続人に多く遺したい場合でも、生前に他の相続人に対し代償金を用意するなどして、遺留分争いを防ぐ工夫が考えられます。

なお、遺留分侵害額請求は権利であって義務ではありません。

請求しなければ、そのまま遺言通りの分配が行われます。

他方、請求された側は拒否できず、正当な遺留分額は支払わねばなりません。

以上のように、本手続きは全員に必要なわけではなく、特定の場合に発生し得る争いですが、念のため期限を記載しました。

死亡後1~3年以内に必要な手続き

ここからは、相続開始から1年以降~数年内に行うべき以下の手続きを説明します。

  • 健康保険の高額療養費・葬祭費など各種給付金の請求
  • 国民年金の死亡一時金の受取請求
  • 不動産の相続登記(名義変更手続き)
  • 生命保険金の受取手続き

一部は法定の期限が定められているもの、その他は権利の時効に関わるものです。

以下からは、それぞれについて見ていきましょう。

健康保険の高額療養費・葬祭費など各種給付金の請求

被相続人が生前に加入していた公的健康保険から受け取れる給付金があれば、所定の手続きを行います。

代表的なものは高額療養費と葬祭費の二つです。

それぞれについて、次の表にまとめました。

種類 内容・概要 請求先 必要書類 請求期限
高額療養費 ・亡くなる前に支払った医療費が自己負担上限を超えた分を払い戻す制度・遺族が代理で請求可能 加入していた健康保険(国民健康保険=市区町村、協会けんぽ・組合健保=保険者) ・医療費の領収書・申請書・振込先口座情報 など 診療月の翌月初日から2年
葬祭費(国民健康保険) ・国民健康保険加入者が死亡した場合、喪主などに葬祭費が支給・多くの自治体で約5万円程度 市区町村(国民健康保険担当) ・葬儀費用の領収書・会葬御礼等の書類・喪主を確認できる書類 葬儀翌日から2年以内
埋葬料(協会けんぽ・組合健保) ・会社員等の被保険者が死亡した場合、被扶養者へ支給(定額5万円など) 協会けんぽ or 健康保険組合 ・埋葬料請求書・死亡診断書の写し・住民票除票・喪主が確認できる書類 死亡翌日から2年以内
埋葬費(協会けんぽ・組合健保) ・実際にかかった葬儀費用を上限(例:10万円)まで支給 協会けんぽ or 健康保険組合 ・葬儀費用の領収書・その他保険者が求める書類 死亡翌日から2年以内

どちらも請求しなければもらえないため、忘れないよう、死亡届提出時に役所の窓口で案内を受けましょう。

自治体によっては死亡届提出時に葬祭費の案内パンフレットを渡してくれるところもあります。

どの手続きをどこにするか不明な場合、健康保険証を返却する際に係の人に尋ねると教えてもらえます。

2年という期間は比較的長く感じますが、請求漏れに気付かないまま経過することもありますので、他の相続手続きと一緒に早めに片付けてしまいましょう。

国民年金の死亡一時金の受取請求

被相続人が国民年金保険料を一定期間納付していたものの、老齢基礎年金や遺族年金を受け取ることなく亡くなった場合、その遺族に対して死亡一時金が支給される制度があります。

自営業の方が老齢年金をもらう前に亡くなったケースなどで、払い損にならないよう保険料納付状況に応じ一定額を遺族に支給するものです。

死亡一時金を受け取れる遺族は、被相続人と生計を共にしていた配偶者,子,父母,孫,祖父母,兄弟姉妹の順で、先順位者がいなければ次の者が請求できます。

なお、遺族基礎年金や寡婦年金を受給できる場合は死亡一時金は支給されません(二重給付なし)。

簡単に言えば、遺族年金の対象にならない人(たとえば子のない妻など)が受け取れる可能性がある給付金です。

保険料納付済期間が3年以上あれば支給対象となり、その納付期間に応じて12万円~32万円(付加保険料納付があれば+8,500円)と定められています。

請求先は住所地の年金事務所または市区町村の国民年金担当課です。

必要書類は以下の通りです。

  • 国民年金死亡一時金裁定請求書
  • 亡くなった方の年金手帳や基礎年金番号がわかる書類
  • 亡くなった方の住民票除票
  • 請求者の戸籍抄本
  • 世帯全員の住民票
  • 請求者の身分証
  • 受取先金融機関口座通帳など

また、亡くなった方と請求者が別世帯で住民票上住所が異なる場合は、生計同一関係に関する申立書および第三者証明書も求められます。

死亡一時金は、国民年金保険料を3年以上納めた被保険者が対象です。

請求は死亡日の翌日から2年以内が目安です。
特に、亡くなった方が自営業等で国民年金に長年加入していたが、受給前に急逝した場合、この給付金を忘れずにもらうようにしてください。

死亡一時金は遺族基礎年金(子のある配偶者や子に支給される年金)とは選択制です。

たとえば子のない妻が支給対象者の場合、5年間の寡婦年金か死亡一時金かを選ぶケースもあります。

通常は、子のある配偶者は遺族基礎年金が優先されるので死亡一時金は発生せず、子のない妻等が対象になりえます。

いずれにせよ請求しないともらえない給付金なので、条件に該当するか年金事務所で確認すると良いでしょう。

額は最大32万円程度ですが、公的な権利として取得しておきたいものです。

不動産の相続登記(名義変更手続き)

被相続人が所有していた不動産(土地・建物)の名義を相続人に変更する手続きです。

2024年4月1日施行の改正不動産登記法により、相続登記の申請が義務化されました。

相続により不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に登記申請をしなければなりません。

第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

引用元:不動産登記法 | 第76条の2

不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に申請しましょう。

相続登記はオンライン申請や郵送も可能です。

相続登記に必要な主な書類は、次の通りです。

書類名 内容・ポイント
登記申請書 ・相続を原因とする所有権移転登記申請書
・申請人(相続人)の氏名
・住所、不動産の表示を記載
・登記原因「○年○月○日 相続」およびその原因日付(死亡日)を記載
・取得分(持分)も明記
登記原因証明情報 ・相続により取得したことを証明する書面
・遺産分割協議書(全相続人の実印+原本を提出)
・遺言書がある場合
└ 公正証書遺言 → 謄本
└ 自筆証書遺言 → 検認済証明書付き原本/謄本
相続関係を証する書面 ・被相続人の除籍謄本
・改製原戸籍
・相続人全員の戸籍謄本一式
・または 法定相続情報一覧図(写し)(2024年以降はこちらの利用推奨)
住民票・戸籍附票 ・不動産を取得する相続人の住民票
・被相続人の最終住所を示す戸籍附票または住民票除票
固定資産評価証明書 ・登録免許税を算出するための評価額が記載された証明書
・市区町村で発行
・その年度の課税明細書でも代替可
登録免許税 ・相続登記の登録免許税=不動産評価額の 0.4%
・収入印紙を申請書に貼付
本人確認書類 ・申請人の運転免許証などのコピー(窓口申請時に求められる)
代理権限証書 ・司法書士などに依頼する場合の「委任状」

相続開始を知った日から3年以内に登記申請を行わなければなりません。

たとえば2024年4月2日に死亡した場合、2027年4月1日までに申請が必要となります。

2024年4月1日より前に発生した相続についても義務化の対象で、施行日から3年以内(つまり2027年3月31日まで)に登記しなければなりません。

第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

引用元:不動産登記法 | 第76条の2

こうした義務に正当な理由なく違反すると、10万円以下の過料を科される可能性があります。

また、相続登記を放置すると不動産の所有者が不明になり、後々売却や利用が困難になる社会問題(所有者不明土地問題)を招きかねません。

さらに次の世代に相続が発生した際に権利関係が複雑化し手続きが困難になるといったリスクもあるため注意が必要です。

相続登記をするには遺産分割協議が整っていることが前提です(法定相続分のまま共有名義で登記することも可能ですが、後で結局分割協議が必要)。

まだ協議がまとまっていない場合、とりあえず法定相続分で登記(法定相続登記)するという方法もあります。

その後協議成立後に持分移転するか、または相続人申告登記制度(相続人であることを申告しておくだけの簡易な登記)を利用することも可能です。

しかし原則としては、協議書ができたら速やかに登記申請するのが理想です。

なお、不動産ごとに取得者が異なる場合、申請書は物件ごとまたは一括で出せます。

一度の申請で複数不動産の相続登記ができますが、管轄法務局が異なる場合はそれぞれ提出します。

また、不動産以外の財産(預貯金、株式、自動車など)の名義変更もこの時期に行いましょう。

預貯金等は法定の期限はありませんが、凍結された口座は早めに解約手続きしないと不便です。

不動産の相続登記完了には法務局で1~2週間程度かかります。

新しく登記名義人となった相続人には登記識別情報通知(旧権利証)が発行されますので、大切に保管してください。

生命保険金の受取手続き

被相続人が生前生命保険に加入しており、死亡保険金の受取人が指定されている場合、受取人は保険会社に対して保険金の請求手続きを行います。

生命保険金は受取人固有の財産であり、原則として相続財産には含まれません(「みなし相続財産」として相続税計算には入りますが、民法上は受取人のもの)。

従って、相続手続きとは別に受取人自身が保険会社へ請求する必要があります。

加入していた保険会社(契約のある生命保険会社)の所定の死亡保険金請求書に記入し提出します。

一般に必要となる書類は、以下の通りです。

  • 被保険者(被相続人)の死亡を証明する書類:死亡診断書(保険会社所定の用紙に医師が記入したもの)や死亡届受理証明書
  • 受取人の本人確認書類:運転免許証やマイナンバーカードのコピー等
  • 受取人と被保険者の関係書類:戸籍謄本(たとえば受取人が配偶者なら婚姻関係がわかる戸籍、子なら親子関係がわかる戸籍)
  • 保険証券(保険契約書):紛失していても請求はでき、あれば提出
  • 振込先口座情報:通帳やキャッシュカードのコピー等

上記は保険会社によって多少異なるため、担当の保険外交員や保険会社コールセンターに連絡して確かめましょう。

多くの生命保険会社では保険金請求権の時効は3年と約款で定められています。

2020年4月の民法改正で一般的な債権の消滅時効は5年に延長されましたが、保険金請求権については保険法上は3年のまま(保険契約による定め)というケースが多いです。

第166条(債権等の消滅時効)

第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

引用元:民法 | 第166条

実際、生命保険各社の約款では概ね3年としていることがほとんどです。

ただし、万一時効が過ぎても事情によって保険会社が支払うケースもあり得ますが期待はできません。

したがって3年以内を一つの期限と考えて早めに請求しましょう。

受取手続きの進め方は以下の流れです。

  1. 保険会社に電話して死亡の報告
  2. 保険金請求の必要書類一式が送られるまたは担当者が訪問
  3. 必要事項を記入し、上記の書類を添付して提出
  4. 書類に不備がなければ、通常は請求から1~2週間程度で指定口座に保険金が振り込まれる

生命保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、それを超える部分は受取人ごとに相続税の課税対象となります。

ただし、受取人が配偶者であれば配偶者控除で相続税非課税になるケースも多いです。

税務申告については相続税申告の際に保険金も含めて計算することになります。

生命保険金自体を受け取る手続きと、相続税申告上の処理は区別してください。

被相続人が複数の保険に入っていた場合、それぞれ請求漏れがないよう注意します。

「契約者=被保険者=被相続人」で受取人が相続人という典型的な契約では、前述のとおり保険金はその受取人の固有財産なので遺産分割の対象ではありません。

他の相続人から「生命保険金も遺産だ」と主張されることがありますが、法律上は含まれないため遺産分割協議で保険金を計上する必要はありません(ただし遺留分算定には考慮されます)。

受取人が亡くなった方自身だった場合(まれにありますが、その場合保険金は相続財産となり、法定相続人に分配されます)や、受取人全員が被相続人より先に死亡していた場合などは扱いが複雑になるため、保険会社に確認してください。

また、共済保険などの場合も、概ね生命保険と同様に3年の請求期限となっていることが多いです。

損害保険(たとえば死亡事故による賠償金請求等)も時効管理に注意が必要です。

いずれにせよ、生命保険金は手続きをしないともらえないため、忘れず請求することが肝心です。

金額も大きいことが多いため、他の相続手続きに追われていても優先的に対応しましょう。

期限の定めがないその他の手続き(なるべく早く行うべきもの)

最後に、法律上明確な期限は定められていないものの、早めに対応したほうが良い手続きについて触れておきます。

具体的には、銀行預金・証券・自動車などの名義変更手続きや、各種解約手続きなどです。

それぞれについて、以下の表にまとめました。

種類 手続き内容 必要書類 注意点・期限
銀行口座の解約・名義変更 ・死亡通知後、銀行口座は凍結・相続人代表が払い戻しまたは相続人名義へ振替手続き ・遺産分割協議書または全員署名の払戻請求書・相続人全員の実印・印鑑証明書・被相続人の戸籍・除籍謄本・相続人全員の戸籍謄本 ・法定期限なし・生活資金に影響するため早めが望ましい・銀行によって書類・手続きが異なる
有価証券(株式・投資信託)の名義変更 ・上場株式:証券会社で相続手続き・非上場株式:会社に株主名簿の書換依頼・投資信託:金融機関で名義変更 ・遺産分割協議書 等・相続関係書類(戸籍等) ・法定期限なし・価格変動するため協議を早めに進めることが重要
自動車の名義変更(移転登録) ・運輸支局で相続による移転登録を実施 ・遺産分割協議書・被相続人・相続人の戸籍類・車検証・委任状(代理申請の場合) ・法定期限なし・車検・保険更新時に不都合あり・自動車税は4/1時点の所有者に課税されるため早めの変更が良い
各種解約・変更(クレジットカード、携帯、公共料金、賃貸等) ・故人名義の契約を順次解約または名義変更・郵便物転送手続きも可能 ・契約ごとに異なる(例:カード会社への死亡連絡、公共料金の契約番号など) ・法定期限なし・放置すると料金発生や二重払いの恐れ・郵便物転送サービスは1年間利用可能

こうした手続きは期限がないため後回しにしがちです。

しかし、放置すると不便やトラブルが生じる可能性があるため、早めに取りかかりましょう。

各段階で煩雑な手続きがありますが、一つずつ期限内に対応していけばスムーズに相続手続きを終えられます。

不安な場合は専門家に相談することも検討してください。

期限を守って相続手続きを確実に終えるためにも、早めに専門家に相談することが大切!

相続手続きは多岐にわたり、戸籍収集から遺産分割協議、相続税申告、不動産の相続登記まで煩雑で時間のかかる作業です。

本記事で述べたように、それぞれの分野で専門知識が要求され、期限管理も必要になります。

静岡県で相続手続きにお悩みの方は、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへご相談ください。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、司法書士・税理士・行政書士など、相続の専門家がチームで連携し、相続人調査・不動産評価・遺産分割協議書作成・相続税の試算・相続登記までをワンストップでサポートしています。

「何から始めればいいかわからない」「相続人同士の調整が不安」「不動産の扱いが複雑」という方でも安心して相談できる体制が整っています。

専門家がお客様の状況を丁寧にヒアリングし、最適な相続プランをご提案します。

相続の手続きを確実に、期限内に終えたい方は、ぜひ静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターをご活用ください。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

相続の疑問、専門家がまとめてお答えします

お電話でのご相談0120-200-009月〜土 9:00〜18:00(日祝定休)
無料相談を予約する

不動産の生前贈与と相続、どちらが得なのかを徹底究明!

2025.11.11

不動産の相続対策を考える際、生前贈与(存命中に財産を譲る)にするか相続(死亡後に財産を譲る)にするかで迷う方は少なくありません。

「少しでも税金を抑えたい」「家族で揉めたくない」「手続きをスムーズに済ませたい」など、相続には多くの悩みがあります。

しかし、インターネットで調べても「生前贈与がお得」「相続で一括のほうが有利」と意見が分かれ、判断に迷ってしまうケースもよく見られます。

実際のところ、生前贈与と相続のどちらが得か(有利か)の「正解」はご家庭の状況や資産額によって異なるもの。

本記事では、生前贈与と相続を最新の税制改正(2024年・2025年)も踏まえて比較検討します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

不動産の生前贈与と相続、どちらが得かの決め方

不動産を生前贈与すべきか相続まで待つべきか判断するには、次のようなポイントを総合的に考慮しましょう。

  • 税金が安くなるかどうかで決める
  • 将来的な資産価値で決める
  • 手間(手続き・費用)で決める

以下から、それぞれの項目について解説します。

税金が安くなるかどうかで決める

まず判断材料となるのが、税金面の違いです。

生前に贈与すると贈与税がかかり、亡くなってから相続すれば相続税がかかります。

さらに不動産の名義変更に伴う登録免許税や不動産取得税にも差があります。

たとえば、不動産を生前贈与で名義変更する場合、固定資産評価額の2.0%の登録免許税がかかるところが、相続による名義変更(相続登記)なら0.4%で済みます。

また、生前贈与で不動産を取得した場合は原則として不動産取得税(評価額の3~4%)が課税されますが、相続による取得は非課税扱いとなるのが一般的です(※ただし都道府県や物件の条件によって軽減措置や特例が異なります)。

名義変更時にかかるこうした税金は生前贈与のほうが高く、相続にはない負担が発生する点に注意が必要です。

肝心の贈与税と相続税についても、それぞれ計算方法や控除制度が異なるため単純比較はできません。

贈与税は年間の贈与額に応じて課税され(一般的に毎年110万円の非課税枠があります)、相続税は被相続人(亡くなった方)の全財産に基づいて課税されます。

相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除があり、たとえば法定相続人が3人なら4,800万円までは相続税がかかりません。

不動産を含めた遺産総額が基礎控除内に収まる場合、相続税は発生しないため、生前贈与をしてまで節税するメリットは基本的にありません。

むしろ生前贈与を行うと登録免許税(2%)や不動産取得税といった余計なコストが発生してしまうため、課税遺産が基礎控除内に収まりそうなケースでは税金面では相続を選んだほうが有利です。

一方、遺産の総額が基礎控除を超えるような資産規模が大きい場合や、不動産の評価額が高く相続税の負担が見込まれる場合には、生前贈与で相続財産を減らすとトータルの税負担を減らせるケースもあります。

特に注意したいのは、自宅の宅地(土地)の相続税評価を圧縮できる「小規模宅地等の特例」との関係です。

小規模宅地等の特例を使うと、一定の要件を満たした場合に限り、被相続人が居住していた土地を相続する場合に評価額を最大80%減額できます。

たとえば、評価額5,000万円の土地なら1,000万円にまで圧縮できる、という節税が可能なわけです。

ただし小規模宅地特例は、相続で取得した場合にしか適用できません。

そのため、自宅不動産の評価額が高い場合には、あえて生前贈与せず相続で取得したほうが、特例適用による相続税減額効果まで含めて考えると有利になる可能性が高いです。

反対に、賃貸物件や現金など特例のない財産について相続税が高額になりそうな場合には、「生前贈与によって高い相続税率が適用される部分を減らす」という戦略が向く場合もあります。

相続税は遺産に対して一度に課税され、累進課税で最大55%に達します。

しかしながら贈与税は毎年の贈与ごとに課税されるため、少額ずつであれば低い税率で済むのです。

極端に資産規模が大きい方には「贈与税を敢えて払い、将来の相続税を圧縮する方が最終的な税負担が減る」というケースもあり得ることを覚えておきましょう。

いずれにせよ、相続税と贈与税はそれぞれ仕組みが異なり、利用できる控除や特例によって有利不利が変わります。

節税対策をしたいなら組み合わせてもいい

生前贈与と相続は二者択一ではなく、節税のため両者を組み合わせる方法もあります。

生前贈与の課税方法は「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」という2種類。

次の表のように、それぞれ特徴を踏まえれば活用できます。

比較項目 暦年贈与 相続時精算課税制度
制度の概要 ・毎年の贈与額に応じて課税する制度
・年ごとに110万円までは非課税
・一定の親子・祖父母孫間で利用でき、累計2,500万円まで贈与税が非課税
・超過分は一律20%課税
利用できる対象 贈与者・受贈者に制限なし(誰にでも贈与可能) 60歳以上の親・祖父母 → 18歳以上の子・孫への贈与に限定
非課税枠 年間110万円(毎年リセット) 累計2,500万円(生涯で一度きり)+毎年110万円(2024年改正で追加)
税率 110万円を超える部分に累進課税(10〜55%) 2,500万円を超える部分に一律20%課税
税金の発生時期 贈与のたびに都度課税 相続発生時に贈与財産を相続財産に合算して精算課税
相続時の扱い 相続開始前7年以内の贈与は遺産に持ち戻し(2024年改正で3年→7年に延長) 贈与財産は必ず相続時に合算され精算課税される
節税効果 長期的に少額ずつ贈与すれば相続財産を着実に圧縮できる 財産評価額を早期に固定できるが、相続時に再計算されるため節税効果は限定的
向いているケース 長期的な相続税対策をコツコツ行いたい場合 まとまった金額を一度に贈与したい場合(住宅取得資金など)
注意点 ・相続7年以内の贈与は課税対象
・改正後は早期対策が必須
・制度選択後は暦年贈与に戻せない
・非課税枠を超えると20%課税
制度の選択・変更 自由に実施可能(申告不要) ・一度選択すると変更不可
・選択は税務署への申告が必要

2024年の改正により、この制度を選択していても年間110万円までの贈与であれば贈与税・相続税とも課されないという「基礎控除枠」が新設されました。

従来は、相続時精算課税を選ぶと毎年110万円の非課税贈与枠は一切使えませんでした。

改正後は「2,500万円までの特別控除」+「毎年110万円までの基礎控除」という形で、小口の贈与なら暦年贈与と同様に非課税で行えるようになったのです。

改正により相続時精算課税制度の使い勝手は向上し、「まとまった額を一度に子どもへ渡したいが贈与税は払いたくない」という場合にも柔軟に対応しやすくなりました。

生前贈与と相続時精算課税制度の双方をうまく組み合わせれば、場合によっては長期間にわたって計画的に相続税対策を行うことも可能です。

たとえば、毎年暦年贈与の非課税枠内で現金等を渡しつつ、評価額の大きい不動産は相続時精算課税制度を使って早めに移転しておくといった方法です。

こうすることで、将来の相続時に課税される遺産を前もって圧縮しつつ、贈与税の負担も最低限に抑えることができます。

実際、政府も近年の税制改正で「資産移転は贈与と相続をセットで考える必要がある」との方向性を示しており、贈与と相続を上手に組み合わせた総合的な対策が重要になっています。

将来的な資産価値で決める

不動産の価値は時の経過とともに変動するため、「生前贈与」か「相続」かを判断するうえで、将来の資産価値を見極めることが重要です。

ここでは、資産価値を次の3つの視点から整理して考えます。

  • 将来価値が上がる場合
  • 将来価値が下がる場合
  • 将来の価値が予測不可能な場合

以下から、各視点ごとの具体的な判断方法を見ていきましょう。

将来価値が上がる場合

今後の地価や需要の上昇が見込まれる不動産は、評価額が低いうちに生前贈与しておくことが有利になるケースが多く見られます。

再開発予定地や新駅周辺など、将来的に資産価値が上がりそうなエリアでは、相続時に評価額が上昇し、高額な相続税が発生する可能性があります。

たとえば、現在3,000万円の評価額が将来6,000万円に上がる見込みの不動産を考えてみましょう。

生前贈与で評価額3,000万円の段階で贈与税を払っておけば、将来の6,000万円分に対して相続税が課されるのを避けられます。

土地は特に、相続時に小規模宅地等の特例が使えないと評価額がそのまま課税対象になるため、値上がりが見込まれる場合は早めの贈与が節税につながります。

また、株式や収益物件のように将来の値上がりが予想される資産も同様です。

値上がり後に相続すると相続税の負担が重くなるため、値上がり前の段階で贈与税を払うほうが結果的に有利になる場合もあります。

ただし、贈与税と相続税はいずれも累進課税(最高税率55%)ですが、課税方式や控除額が異なります。贈与を行う際は、将来の税負担シミュレーションを専門家に依頼してから決断するのが安全です。

将来価値が下がる場合

一方で、今後不動産の価値が下がる可能性がある場合は、生前贈与を急がず、相続まで待つほうが有利になるケースもあります。

地価が下落傾向にある地域や、需要減少が見込まれるエリアの不動産は、数年後には評価額が低くなり、相続税の課税対象外になる可能性があるからです。

たとえば、現時点で相続税がかかると見込まれている3,000万円の資産でも、将来2,000万円まで下落すれば、基礎控除内に収まって相続税がゼロになることも考えられます。

このようなケースで早まって生前贈与してしまうと、贈与税や名義変更にかかる登録免許税・司法書士報酬などの費用を余計に負担する結果になります。

さらに、一度名義を子や孫に変更した不動産を元に戻すことは原則できません。

贈与の取り消しは実務上不可能に近いため、「将来値下がりしそうかどうか」を冷静に見極めることが大切です。

不動産市場の動向、地価公示の推移、周辺開発計画などを定期的に確認し、価値下落が見込まれるなら贈与を待つ判断も選択肢の一つになります。

将来の価値が予測不可能な場合

資産価値の変動リスクを踏まえると、税金を事前に計画的に抑える仕組みを整えることが重要です。

贈与税は「贈与時点の評価額」に、相続税は「相続発生時の評価額」に課税されるため、将来の価値予測によってどちらが有利かが変わります。

贈与を選ぶ場合は、贈与税の基礎控除(年間110万円)や相続時精算課税制度(2,500万円まで非課税)などの特例を上手く活用すれば、節税効果を高められます。

相続を選ぶ場合でも、小規模宅地等の特例や配偶者控除を組み合わせることで、課税対象額を大幅に減らすことが可能です。

どちらが有利になるかは、将来の資産価値の見通しと特例の適用可否によって変わります。

したがって、税理士などの専門家に相談し、資産価値の予測を含めた試算を行うことが最も確実な方法です。

専門家の助言をもとに、生前贈与と相続のどちらが総合的に得かを比較し、最適なタイミングで判断しましょう。

手間(手続き・費用)で決める

手続きや費用の違いを整理するときは、どの方法にどんな特徴があるのかを順に理解することが大切です。

ここでは、次の手続きに注目します。

  • 生前贈与
  • 相続登記

それぞれの違いを押さえることで、ご自身の状況に合った判断がしやすくなります。

以下から、順番に解説していきます。

生前贈与

生前贈与は、贈与者と受贈者の2者間で完結するため、手続きが比較的シンプルでスピーディーです。

贈与契約書を作成し、不動産の名義変更登記を行えば手続きとしては完了します。

相続のように相続人全員で遺産分割協議をする必要がなく、合意形成の手間もかかりません。

ただし、初期費用が高いというデメリットがあります。

登録免許税(評価額の2%)や不動産取得税(評価額の3〜4%)を贈与時点でまとめて支払う必要があり、評価額が高い場合には数十万〜数百万円単位の出費になることもあります。

こうした税金は原則一括納付であり、現金の準備が難しい場合は相続を選ぶほうが現実的です。

また、登記手続きは司法書士への依頼が一般的で、報酬は数万円〜十数万円程度が相場です。

したがって、手続きは早いものの、コスト面での負担が大きい点を理解しておく必要があります。

贈与のタイミング

生前贈与と相続では、手続きを行うタイミングが根本的に異なります。

生前贈与は贈与者が生きているうちに意思決定して実行できますが、相続は亡くなってからでないと始まりません。

問題は、贈与者が高齢になり判断能力が低下した場合です。

たとえば認知症を発症すると、自宅を売却して介護資金を確保したくても本人の判断ではもう売れず、資産が凍結してしまうことがあります。

このような場合、家庭裁判所で後見人を選任して許可を得る必要があり、数ヶ月かかるうえに手続きも煩雑です。

そのため、意思能力があるうちに贈与を済ませておくことは、将来的な手続きリスクを減らす有効な手段です。

あらかじめ名義を信頼できる家族へ移しておけば、贈与者が判断能力を失っても、新しい名義人の判断でスムーズに不動産を売却・運用できます。

相続登記

相続登記は、生前贈与と比べて手続きが複雑で時間がかかるのが特徴です。

被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて集め、相続人全員で遺産分割協議書を作成しなければなりません。

このため、相続人が多い・疎遠・所在不明などの場合には、手続きが長期化しやすい傾向があります。

また、相続登記は相続発生後にしか行えないため、登記完了までどうしても時間差が生じます。

しかし一方で、費用負担は軽いという利点があります。

登録免許税は固定資産評価額の0.4%と低く、不動産取得税は非課税です。

現金を多く用意する必要がないため、費用面では相続のほうが有利といえます。

相続登記義務化への対応

2024年4月から、不動産の相続登記は義務化されています。

相続で不動産を取得した相続人は、「相続があったことを知った日」から3年以内に登記を申請しなければなりません。

怠ると、過料の対象となる場合があります。

第76条 2(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

引用元:不動産登記法 | 第76条 2項

しかし、生前贈与で既に名義変更しておいた不動産は相続財産に含まれないため、相続登記義務の対象外となります。

つまり、生前贈与を済ませておけば、相続時の登記申請が不要で、期限を気にする必要もありません。

特に、相続人自身が高齢であったり仕事で忙しかったりする場合は、事前の名義変更が負担軽減になります。

家族や生活事情によって「不動産の生前贈与と相続のどちらが得か」の最適解は変わる!

不動産は現金と違って分割しづらい資産であるため、遺産分割次第では家族間のトラブル(いわゆる「争族」)に発展しやすいのが現状です。

以下の表で、家族・生活状況ごとに生前贈与が適しているケースと相続が適しているケースを整理してみましょう。

家族・生活状況 生前贈与が適しているケース 相続が適しているケース 注意点・補足
相続人が複数いる場合(兄弟姉妹など) 相続人同士で揉める可能性が高い場合、あらかじめ特定の人に不動産を贈与しておくことで「争族」を防げる 相続人間の関係が良好で、遺産分割協議が円滑に進む見込みがある場合 特定の相続人に多く渡しすぎると遺留分を侵害するおそれがあるため、贈与額に配慮が必要
特定の子に自宅を継がせたい場合 親が元気なうちに名義変更でき、確実に希望の子に不動産を渡せる 遺言書による指定も可能だが、内容への不満や無効主張などトラブルの余地がある ・生前贈与は確実だが、遺留分を侵害しないように注意
・介護貢献のある子には有効な手段
配偶者(妻・夫)がいる場合 結婚20年以上で自宅を贈与する場合、贈与税の配偶者控除(2,000万円非課税)を利用できる 配偶者の税額軽減により、相続で1億6,000万円または法定相続分まで非課税 ・生前贈与では登録免許税・不動産取得税などの初期費用が必要
・多くのケースで相続の方が有利
不動産を誰が利用するか(居住・使用状況) 将来の居住者が決まっておらず、親が生前に柔軟に処分や贈与をしたい場合 同居の子や配偶者が住み続ける予定がある場合は、小規模宅地特例や配偶者居住権が使える ・生前贈与後も親の居住は可能だが、法的居住権はない
・親子関係悪化や売却時に居住権が失われるリスクあり
共有名義を避けたい場合 相続前に特定の人へ単独で不動産を贈与しておくことで共有状態を防げる 相続で共有となった場合、全員の合意があれば売却・活用可能 ・持分贈与を毎年繰り返すと定期贈与とみなされるリスクあり
・専門家と相談して計画的に実施すべき

家族構成(相続人の人数や関係性)や生活事情(居住状況や介護の有無、資産状況など)によって、生前贈与と相続のどちらを選ぶべきかの最適解は変わります。

不動産の承継は一度決めると後戻りが難しいため、ご家庭ごとの事情に応じて慎重に判断してください。

不動産の生前贈与と相続のどちらが得か、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターと見つけよう

生前贈与と相続のメリット・デメリットを比較しても、実際にご自身のケースでどちらを選ぶべきか判断するのは簡単ではありません。

税金計算のシミュレーションや将来の見通し、家族への説得など、専門的な知識と経験が求められる場面も多いもの。

そこで心強い味方となるのが、専門的な機関の存在です。

私たちは、静岡県で相続支援を行っている静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターです。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、税理士・弁護士・司法書士といった各分野の専門家と協力し、一人ひとりの状況に合わせたオーダーメイドの相続対策プランを提案・実行しています。

不動産の名義変更や相続登記、相続税申告、遺産分割の調整に至るまで、相続に関するあらゆる手続きをワンストップでサポート。

生前贈与と相続のどちらが有利か迷う場合でも安心して相談いただけます。

静鉄不動産は地元静岡で100年の実績があり、地域密着型の安心・安全・高品質なサービスを提供し、依頼者それぞれの相続のお悩みを解決してきました。

初回相談は無料で対応しているため、専門家の意見を聞いてみたいという方はお気軽にお問い合わせください。

電話でのお問い合わせ

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

相続の疑問、専門家がまとめてお答えします

お電話でのご相談0120-200-009月〜土 9:00〜18:00(日祝定休)
無料相談を予約する

メールでのお問い合わせはこちら

再建築不可物件を相続したらどうすべき?現実的な対応方法を解説

2025.11.11

相続財産に「再建築不可物件」が含まれている場合、活用方法や手続きに悩む方は少なくありません。

再建築不可物件とは、建築基準法上の接道義務を満たさず、新築や大規模な増改築が原則認められない敷地(またはその上の建物)のことです。

相続でこうした物件を受け継いだ場合、「一体どうすれば良いのか?」と途方に暮れてしまうでしょう。

相続した不動産が再建築不可物件だと、売却のしづらさや維持費の負担など多くの問題が生じる可能性があります。

しかし、適切な知識を持って対処すれば、こうした物件でも有効活用する道は残されています。

本記事では、再建築不可物件を相続した際に知っておきたい基礎知識や現実的な対応方法について詳しく解説します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

再建築不可物件の相続について知っておくべきこと

初めに、「再建築不可物件」とはどのような不動産なのかを押さえておきましょう。

特に知っておきたいポイントとして、次の2つが挙げられます。

  • 再建築不可になる理由
  • 相続時に問題が起こりやすい理由

それぞれ以下で詳しく見ていきましょう。

再建築不可になる理由

再建築不可物件になってしまう一般的な理由は、土地の接道条件を満たしていないことです。

建築基準法では「幅員4m以上の道路に2m以上接していること」という接道義務があります。

建築物の敷地は、原則として4m以上の幅員の道路に2m以上接していなければならない。(法第

43条第1項) ※同条第2項により特定行政庁が認可又は許可した場合は適用除外

引用元:国土交通省「接道規制のあり方について

敷地が道路にまったく接していない土地や、接道部分の幅が2m未満しかない土地は、新築はおろか大規模な増改築も基本的に認められません。

現に再建築不可物件の多くは、狭い路地に面した古い木造家屋や行き止まりの袋地など、接道条件をクリアできない物件です。

また、接している道路が建築基準法上の「道路」として認められていないケースも再建築不可の原因となります。

たとえば前面道路が個人所有の私道である場合、行政の指定する要件を満たさなければ建築は許可されません。

第42条(道路の定義)

第四十二条 この章の規定において「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、六メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。

(略)

二 都市計画法、土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)、旧住宅地造成事業に関する法律(昭和三十九年法律第百六十号)、都市再開発法(昭和四十四年法律第三十八号)、新都市基盤整備法(昭和四十七年法律第八十六号)、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和五十年法律第六十七号)又は密集市街地整備法(第六章に限る。以下この項において同じ。)による道路

引用元:建築基準法 | 第42条

特に私道が複数の共有者によって管理されている場合は注意が必要です。

再建築を行うには、その私道の所有者全員の同意を得る必要があります。

権利関係が不明確だったり一部でも同意が得られなかったりすると、新築の許可が下りないことが多いのです。

そのため再建築不可物件を活かすには、道路の状態や権利関係について役所で調査・確認することが欠かせません。

相続時に問題が起こりやすい理由

再建築不可物件を相続すると、他の不動産に比べて次のような問題が発生しやすくなります。

  • 買い手が限られるため売却価格が極端に安くなる金融機関の担保にできず、資金調達が難しい
  • 老朽建物を壊して更地にしても価値が上がりにくい
  • 相続人が複数いる場合、分割が難しく話し合いが長引く

再建築不可物件は需要が限られているため市場評価が低く、実勢価格の半額以下でしか売れないケースもあります。

その結果、「この価格なら売らない方が良い」と意見が分かれ、相続人の間で処分が難航することもあります。

また、資産価値や換金性が低いため、銀行ローンの担保に利用できないのが一般的です。

そのため、相続した物件を活用して融資を受けようとしても断られたり、不利な条件を提示されたりするケースがあります。

さらに、老朽化した建物を解体して更地にしても新築が認められず、土地の利用価値は向上しません。

解体費用がかかるうえ、賃貸や売却などの活用も難しく、固定資産税などの維持コストだけが発生して「負動産」になってしまうこともあります。

加えて、不動産は現金のように分割できないため、誰が引き取るか・代償金をいくらにするかで意見が対立しやすいです。

話し合いが長引いた結果、資産として扱いづらいことから、相続した再建築不可物件を持て余して放置してしまう方も少なくありません。

しかし、放置すればするほど固定資産税や管理コストなど維持費が発生し続けるため、その結果、負担だけが増え続けてしまいます。

特に空き家のまま放置して老朽化が進めば倒壊や近隣への悪影響(治安悪化など)につながるリスクもあり、自治体から是正を求められるケースすらあります。

再建築不可物件を相続した場合の現実的な対処法

それでは、再建築不可物件を相続した場合に取り得る現実的な対処法を見ていきましょう。

再建築不可とはいえ、状況次第では以下のような活用・処分の方法が考えられます。

方法 概要 注意点・留意事項
隣地を購入または一部売却して接道義務を満たす ・接道部分の幅や間口が足りない場合、隣接地を一部購入するか、自分の土地を一部売却して敷地が道路に2m以上接するようにする方法
・接道義務を満たせば再建築が可能になる
・隣地所有者との交渉・合意が必要。現実的に実行できるかどうかは隣地の協力次第
・費用負担も発生するが、実現すれば土地の資産価値を回復できる
建物をそのまま活かして賃貸に出す ・建て替えはできなくても、既存の建物を修繕・リフォームして賃貸物件として活用する方法
・古民家リノベーションや民泊として再生する事例もある
・道路が狭い場所では工事や資材搬入に制約が出る可能性がある
・修繕費を抑える工夫や、需要に合った用途(賃貸・民泊など)の検討が必要
専門の不動産業者に買取を依頼する ・再建築不可物件の買取を専門とする不動産会社に売却する方法
・「訳あり不動産」や「負動産」の扱いに慣れた業者なら、通常の市場では買い手がつかない物件でも買い取ってくれる場合がある
・一般市場より価格は下がるが、早期に現金化できるのがメリット
・相続税の納税資金を確保したい場合や、早く処分して負担を減らしたい場合に有効

以上のような対処法を検討する際は、土地の立地条件や建物の状態、相続人全員の意向などを整理したうえで判断することが大切です。

「売る・貸す・保有する」のどの方針を選ぶにせよ、一度専門家に相談して客観的な意見をもらうと最適な方向性が見えやすくなります。

なお、相続から3年10か月以内に売却する場合、法律によって譲渡所得税の軽減につなげることができます。

第39条(相続財産に係る譲渡所得の課税の特例)

第三十九条 相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下この条において同じ。)による財産の取得(相続税法又は第七十条の五、第七十条の六の九、第七十条の七の三若しくは第七十条の七の七の規定により相続又は遺贈による財産の取得とみなされるものを含む。第六項において同じ。)をした個人で当該相続又は遺贈につき同法の規定による相続税額があるものが、当該相続の開始があつた日の翌日から当該相続に係る同法第二十七条第一項又は第二十九条第一項の規定による申告書(これらの申告書の提出後において同法第四条第一項に規定する事由が生じたことにより取得した資産については、当該取得に係る同法第三十一条第二項の規定による申告書。第四項第一号において「相続税申告書」という。)の提出期限(同号において「相続税申告期限」という。)の翌日以後三年を経過する日までの間に当該相続税額に係る課税価格(同法第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により当該課税価格とみなされた金額)の計算の基礎に算入された資産の譲渡(第三十一条第一項に規定する譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含む。以下この項、第四項及び第八項において同じ。)をした場合における譲渡所得に係る所得税法第三十三条第三項の規定の適用については、同項に規定する取得費は、当該取得費に相当する金額に当該相続税額のうち当該譲渡をした資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額を加算した金額とする。

引用元:租税特別措置法 | 第39条

誤った判断で損失を被るリスクを減らすためにも、専門家の知見を積極的に活用しましょう。

早い段階での専門家への相談がおすすめ!

再建築不可物件の相続問題は、不動産の権利関係や評価額の問題に加え、法律・税金など複数の専門知識が絡む複雑な分野です。

たとえば次のような判断・手続きが必要になります。

分野 主なポイント 注意点・リスク
法律 接道義務を満たすために、役所との協議や私道所有者の同意取得など、建築基準法・民法上の調整が必要 ・私道の共有者との交渉や行政手続きは複雑で、専門知識が求められる
・手続きを誤ると再建築許可が下りない可能性もある
税務 相続税評価額の算定や、特例(小規模宅地等の特例など)の適用可否によって税額が変わる ・不動産評価の誤りや特例の見落としで税負担が増えるおそれがある
・更地か建物付きかで固定資産税の扱いも異なるため、税務上有利な判断が必要
不動産 売却や賃貸などの活用を検討する際は、市場動向を踏まえた戦略を立てることが重要 ・相場を無視した価格設定や売却タイミングの誤りで損失が出ることがある
・買取依頼をする際も、複数の専門業者を比較検討しないと適正価格で売却できない可能性もある

こうした複雑な判断を一般の方が独力で行うのは難しいのが実情です。

再建築不可物件の扱いに慣れていない不動産会社も多いため、なおさらプロの力を借りる価値があります。

早い段階で不動産会社・税理士・司法書士など信頼できる専門家と連携するのが、安全かつ効率的な進め方です。

実際、私道の問題で再建築を諦めていたケースが専門家のサポートで建築可能になった例もあります。

対応に時間を要するケースもあるため、「困った」と思ったらできるだけ早めに相談することをおすすめします。

静岡で相続についてお悩みの方は、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターにご相談ください。

静岡鉄道グループの100年にわたる実績と信頼をもとに、不動産・税務・法律の各分野で実績豊富な専門家(司法書士・税理士・弁護士)がチームを組み、あなたの相続をトータルで支援します。

相続の内容やお悩みは人それぞれ異なりますが、静鉄不動産ではあなたの状況に合わせた「オーダーメイドの相続対策」を提案可能です。

地元静岡で長年培ってきた知識とネットワークを活かし、安心・安全・高品質なワンストップサービスを提供しています。

たとえば次のようなことまで、一括してサポートいたします。

  • 生前の相続対策(資産の整理・遺言書作成・家族信託など)
  • 相続発生後の各種手続き(相続登記・相続税申告・遺産分割協議など)
  • 相続不動産の整理・売却・有効活用までの一貫サポート

専門家チームによる包括的なサポート体制があるため、再建築不可物件のように難しい案件でも安心してお任せいただけます。

早めの相談こそが相続をスムーズに進める一番の近道です。

「こんなこと聞いてもいいのかな?」という些細なことでも構いませんので、まずはお気軽に静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへお問い合わせください。

再建築不可物件でも相続登記は義務!

たとえ再建築不可物件であっても、相続登記の手続きは必ず行わなければなりません。

2024年の法改正により相続登記が義務化されました。

相続が発生した日(または遺産分割が成立した日)から3年以内に登記申請をしないと、10万円以下の過料の対象となります。

第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第七十六条の二 

(省略)

2 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

第164条(過料)

第百六十四条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

引用元:不動産登記法 | 第76条164条

 

相続登記をしないまま放置していると、いざその不動産を売却・活用しようとしても名義が先代のままでは法的な手続きが進められません。

買主が見つかっても所有権移転登記ができず、取引に支障をきたすでしょう。

また相続登記を怠ったまま相続人の誰かが亡くなってしまった場合、さらに相続関係が複雑化し問題が深刻になります。

「名義が先代のままの土地」が増えた結果、全国で所有者不明土地が社会問題化した経緯もあり、こうした事態を防ぐためにも登記義務化が導入されたのです。

特に、相続人が複数いる場合は早めに協議を進めておくことが重要です。

相続登記をするには、誰がその不動産を相続するか決める必要があり、相続人全員の合意による遺産分割協議書が求められます。

相続人同士の話し合いがまとまらなければ、いつまで経っても名義変更ができず登記期限の3年を超えてしまうリスクがあります。

そのような事態を避けるためにも、相続発生後できるだけ早く相続人間で話し合いを行い、誰が物件を引き継ぐかを決めておきましょう。

必要に応じて専門家の立ち会いや調停制度の利用も検討し、合意形成を図ることが大切です。

早めに準備しておけば、登記の際に必要となる戸籍や遺産分割協議書の収集・作成もスムーズに行えます。

再建築不可物件の相続で後悔しないために!静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターにご相談ください

再建築不可物件を相続したら、まず取り組むべきことは「現状把握」です。

以下のステップを踏むことで、無駄な出費やトラブルを避けつつ、その不動産の最善の活用策を見出すことができます。

  1. 接道状況の確認
  2. 建物・土地の状態チェック
  3. 方針の家族会議
  4. 専門家への相談と手続き

上記の順番で動けば、「何から手を付ければ良いかわからない」という状態に陥らずに済み、結果的に資産価値を最大限に活かすことができます。

再建築不可物件は一見すると「負の遺産」のように感じられるかもしれません。

しかし、状況を整理し専門的なサポートを得ながら対応すれば、十分に価値ある資産として扱うことが可能です。

静岡で相続に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへご相談ください。

静岡鉄道グループが培ってきた豊富な経験と信頼を基盤に、不動産・税務・法律の専門家が連携し、ワンチームでサポートいたします。

それぞれの状況に応じた最適な相続プランを設計し、生前の準備から相続発生後の手続き、不動産の整理・活用までを一括して対応します。

相続の円満な解決には、早めの行動が大切です。

相続に関するお悩みやご相談がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

電話でのお問い合わせ

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

相続の疑問、専門家がまとめてお答えします

お電話でのご相談0120-200-009月〜土 9:00〜18:00(日祝定休)
無料相談を予約する

メールでのお問い合わせはこちら

生前贈与での不動産名義変更の目的や流れを一挙解説!

2025.11.11

生前贈与とは、相続が発生する前に不動産などの財産を子どもや孫へ贈与し、その名義を移しておくことを指します。

親などが元気なうちに、希望通りに財産を引き継ぐ手段の一つとして利用される方法です。

亡くなった後に行う相続手続きに比べると手間が少なく、トラブル防止や節税対策として検討されることが多い方法です。

生前贈与によって贈与時点で名義変更を行うため、その時点から不動産の所有権は受け取った側(受贈者)に移転します。

この記事では、生前贈与による不動産の名義変更について、その目的やメリット・デメリット、具体的な手続きの流れや注意点、必要書類まで詳しく解説します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

生前贈与で不動産の名義変更を行う目的

生前贈与を活用して不動産の名義をあらかじめ変更しておく主な目的は、主に次の3点です。

目的 内容 期待できる効果
相続発生後の名義変更の手間を軽減するため ・生前に名義を移しておけば、相続発生後に不動産の相続登記などを行う必要がなくなる
・相続時の手続きや書類準備を事前に済ませられる
相続開始後の事務負担を軽減し、残された家族の手続きをスムーズにする
遺産分割を巡る争いを防ぐため ・不動産は現金のように分割できず、相続時に「誰が引き継ぐか」で揉めることが多い
・生前に名義変更しておけば、遺産分割協議でもめるリスクや共有名義による売却困難を回避できる
親族間のトラブルを未然に防ぎ、円満な財産承継を実現できる
相続税の負担を軽くするため ・将来的に価値が上がる不動産を早めに贈与すれば、相続時の課税対象から除外でき、節税効果が見込める
・家賃収入などの利益も早めに受贈者側に移すことで、贈与者の相続財産を減らす効果がある
相続税の課税額を抑え、財産をより多く残すことができる

特に、家族内で「誰がどの不動産を引き継ぐか」を生前に決めておくことは、相続時のトラブルを事前に回避できるため利点です。

親族間の争いを避け、スムーズな財産承継を行うために、生前贈与による名義変更が検討されるのです。

生前贈与と相続の使い分け方

生前贈与は節税やトラブル回避の観点でおすすめな手段です。

しかし、すべてのケースに最適とは限りません。

贈与税の負担が重くなりすぎたり、他の相続人との公平性、バランスを欠いてしまったりする場合もあるためです。

まず、生前贈与の際にネックになるのが贈与税です。

贈与税は基礎控除額である年間110万円を超える贈与に対して課税され、課税額は金額に応じて高率になります(たとえば基礎控除後の課税価格が200万円以下なら税率10%、1,000万円以下なら40%、3,000万円超では55%もの税率)。

ただし、実務で多い親から子・孫への贈与は特例税率が適用され、たとえば1,000万円以下の部分は30%の税率区分が含まれます。

評価額の高い不動産を生前贈与すると多額の贈与税がかかるケースも多く、贈与によってかえって税負担が増える可能性もあるため注意が必要です。

また、生前に特定の相続人へ不動産を贈与すると、他の相続人との公平性にも配慮しなくてはなりません。

生前贈与で受け取った利益は「特別受益」とみなされ、遺産分割の際に他の遺産と合算して計算されるため、贈与を受けた人の相続分が減ってしまう可能性があります。

たとえば長男が生前に土地を贈与されていた場合、後日の遺産分割協議ではその価値を考慮して他の兄弟の取り分を増やす調整(持ち戻し計算)が行われることがあります。

このように、他の相続人との公平を損なう恐れもあるため、生前贈与を行う際は家族全体で十分に話し合うことが大切です。

さらに、税制面でも相続の方が有利になるケースがあります。

たとえば、被相続人と同居の自宅土地など一定の不動産については相続時に評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」が適用できる場合がありますが、この特例は生前贈与には適用されません。

要件を満たせば相続による取得の方が税額を大幅に減らせる場合もあるため、単純に「贈与すれば得」「相続の方が損」とは言い切れません。

生前贈与と相続のどちらが適切かは状況によって異なります。

不動産の評価額や他の財産、家族構成、将来の資金計画などを踏まえて、綿密なシミュレーションが必要です。

不安な場合は税理士など専門家に相談し、贈与と相続のメリット・デメリットを比較検討すると良いです。

【対策あり】年間110万円を超える贈与には贈与税がかかる

生前贈与を検討する際に最も注意すべきポイントの一つが贈与税です。

冒頭で触れたとおり、贈与税には年間110万円の非課税枠(基礎控除)があり、110万円を超える贈与には贈与を受けた人(受贈者)に対して課税が発生します。

不動産のように評価額が高額になりやすい財産では、この110万円を超える部分について高い税率で贈与税が課されるため、事前に税額を試算しておくことが重要です。

贈与税の負担を抑える対策として代表的なのが、「相続時精算課税制度」の活用です。

相続時精算課税制度は一定の要件の下で選択できる制度で、生前に贈与税を納める代わりに相続時にまとめて精算する仕組みになっています。

相続時精算課税を選ぶと、累計2,500万円までの贈与については贈与税が非課税となり、超過分に一律20%が課税されます。

また、贈与財産は贈与時評価で相続財産に加算して相続税を計算します。

相続時精算課税制度を利用すれば、大きな不動産であっても最大2,500万円までは贈与税がかからずに移転できるため、一時的な贈与税負担を大幅に軽減が可能です。

ただし、非課税だからといって完全に税金がゼロになるわけではなく、贈与した財産は相続時に清算される(課税を先送りする)制度である点に注意が必要です。

また一度選択するとその贈与者との間では元の暦年課税(毎年110万円控除の制度)に戻れないことや、小規模宅地特例が使えなくなるなどのデメリットもあります。

2024年贈与分からは、相続時精算課税を選択していても「年110万円までの贈与は申告不要・非課税」の取り扱いが導入されています。

また、生前贈与の相続税加算期間は「死亡前7年」に拡大されています。

相続時精算課税の適用要件や手続きは複雑なため、利用を検討する際は税理士に相談し、自分たちのケースで本当に有利か慎重に判断しましょう。

生前贈与による不動産の名義変更の流れ

生前贈与によって不動産の名義変更(所有権移転登記)を行う場合、その手続きは相続登記とは異なり「贈与契約」に基づいて進める必要があります。

一般的な流れは次のとおりです。

手続き段階 主な内容 注意点・ポイント
贈与契約書の作成 ・贈与者(渡す人)と受贈者(受け取る人)の間で、不動産贈与に関する契約書を作成する
・契約書には不動産の所在地・評価額・贈与時期・条件を明記し、双方が署名押印する
・口頭でも贈与は成立するが、トラブル防止のため必ず書面で作成すること
・署名は手書き、押印は実印が望ましい
・契約金額に応じて収入印紙を貼付する必要がある
・この契約書は「登記原因証明情報」としても使用される
登記申請書の作成・提出 ・不動産の所有権移転登記を行うため、法務局に提出する登記申請書を作成
・所在地・地番・登記原因(贈与)・日付・贈与者と受贈者の情報を記載する
・必要書類を揃え、不動産所在地を管轄する法務局へ提出する
・本人申請も可能だが、書類不備を避けるため司法書士に依頼するのが安全
登録免許税の納付 ・登記の際に必要な税金
・贈与による所有権移転登記では、不動産の固定資産税評価額の2%が課税される
・例:評価額3,000万円の場合、登録免許税は60万円
・登記申請書に収入印紙を貼付して納付する
・贈与税や不動産取得税とは別に必要な税金である
・事前に固定資産評価証明書で税額を確認しておくこと
名義変更の完了・各種変更手続き ・登記が完了すると、登記名義人が贈与者から受贈者に変更される
・登記識別情報通知(新しい権利証)が発行される
・名義変更後、固定資産税・都市計画税の納税義務は受贈者へ移転
・固定資産税の送付先変更や水道・電気などライフラインの名義変更も行うこと
・登記識別情報通知は権利証として大切に保管する

以上が生前贈与による不動産名義変更の基本的な流れです。

なお、作成した贈与契約書はできれば公正証書にしておくことが望ましいです。

公証役場で契約書を公正証書にしておけば、契約内容の信頼性が高まり原本も公証役場で保管されるため、万一契約書を紛失した場合でも安心できます。

贈与契約書を公正証書にすると証拠能力が高まります。

後日の「言った言わない」の争いや税務署からの確認にも確実な対応が可能です。

名義変更後の固定資産税の支払い義務に注意

生前贈与による名義変更が完了すると、受贈者は新たな不動産の所有者となります。

そのため、贈与を受けた翌年度からは当該不動産にかかる固定資産税・都市計画税の納税義務が受贈者に移ります。

固定資産税は毎年1月1日時点の不動産所有者に課税される税金で、一般的に固定資産税評価額の1.4%(標準税率)、都市計画税は0.3%が課税される仕組みです。

名義変更後初めての年度には、市町村から受贈者宛てに納税通知書が届きます。

前所有者と連絡を取り合いながら漏れなく手続きを行いましょう。

また、将来的にその不動産を売却する場合にも注意が必要です。

生前贈与で取得した不動産を売却する際の譲渡所得税の計算では、基本的に贈与者が当初取得した時の購入費用(取得費)を引き継ぐ形です。

たとえば、親が1,000万円で購入した土地を子に贈与し、子がその土地を後に3,000万円で売却した場合、取得費は親の購入額1,000万円を引き継ぐため、売却益は約2,000万円とみなされます。

その結果、譲渡所得税が高額になる可能性があります(相続で取得した場合には、一定条件下で相続税額を取得費に加算できる特例がありますが、生前贈与で取得した場合はこの特例が使えません)。

このように、生前贈与を受けた不動産の売却時には思わぬ税負担が発生し得るため、早い段階で税理士に相談しシミュレーションしておくと安心です。

贈与税・相続税・譲渡所得税と複数の税金が関わるケースに該当するので、税務の専門家に計算を依頼し、最適なタイミングや方法を具体的に決めましょう。

なお、名義変更後に固定資産税を新所有者(受贈者)が支払うことになる点について、ご家族内で事前に共有しておくことも大切です。

贈与により不動産を譲り受けても、維持管理費や税金の負担が発生することを理解した上で、贈与後の資金計画を立てましょう。

生前贈与による不動産の名義変更の登記に必要な書類

不動産の生前贈与に伴い所有権移転登記を行う際には、以下表のような書類を用意する必要があります。

登記申請書と合わせて各書類を贈与者の住所地(または不動産所在地)を管轄する法務局に提出しましょう。

書類名 内容・概要
登記申請書 ・登記手続きを行うための申請書
・贈与による所有権移転登記用の書式に必要事項を記入し、贈与者・受贈者が署名押印する(司法書士に依頼する場合は司法書士が作成します)
贈与契約書(登記原因証明情報) ・贈与の事実を証明する書面
・通常は当事者間で締結した贈与契約書がこの証明書
・原本を提出し、登記完了後は原則返却されないのでコピーを保管しておく
登記済権利証または登記識別情報 ・贈与者側で保管している不動産の権利証(古い登記済証)あるいは登記識別情報通知書
・現在の所有者だけが保有できる書類であり、登記申請の際に提出(または情報を提供)することで、本人確認の証拠として用いられる
固定資産評価証明書 ・不動産の市町村役場で発行してもらえる、その年度の固定資産税評価額を証明する書類
・登録免許税額の算定に使用する
・年度途中で評価替えが行われている場合は、登記申請時の最新年度の評価証明書が必要
贈与者の印鑑証明書 ・贈与者(旧所有者)の実印の印鑑証明書
・発行日から3ヶ月以内の原本を用意する
・贈与という重要な財産処分行為であるため、贈与者本人の実印押印と印鑑証明の提出が求められる
受贈者の住民票(住所証明書) ・受贈者(新所有者)の住所を証明する書類として住民票の写しを提出する
・登記簿に登録する新所有者の住所氏名を確認するために必要
・住民票は発行日からの期限は特にありませんが、住所や氏名に変更がない最新のものを用意する(戸籍附票や受贈者の印鑑証明書で代用も可)
贈与者・受贈者それぞれの本人確認書類 ・登記申請を本人で行う場合は、窓口で運転免許証など写真付きの本人確認書類の提示が求めらる
・司法書士に依頼する場合も、委任状に添付する形で両者の本人確認資料のコピー(運転免許証等)が必要

以上の書類をすべて揃えて、初めて登記申請が受理されます。

不動産ごとに必要書類が異なる場合や追加書類(例:農地を贈与する場合の許可証など)が必要となるケースもありますので、具体的には法務局や司法書士に確認すると確実です。

書類の不備や不足があると申請がスムーズに進みませんので、事前にチェックリストを作成して漏れのないよう準備しましょう。

不動産の生前贈与による名義変更は専門家と相談した上で安心して進めよう!

ここまで、生前贈与による不動産の名義変更について、目的やメリット・デメリット、手続きの流れ、注意点、必要書類まで解説しました。

不動産の生前贈与による名義変更は、相続対策として有効である一方、税金計算や登記手続きに専門的な知識を要する複雑な面があります。

贈与契約書の作成から登記申請、贈与税・相続税の申告に至るまで正確に行う必要があるため、早めに専門家へ相談することが不可欠です。

実際に贈与や相続の手続きを進める段階になると、「誰に相談すればいいのか」「どこまで自分で対応できるのか」と迷う方が多いのも事実です。

もし静岡県内で相続や不動産に関するお悩みを抱えている方は、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへぜひご相談ください。

静岡鉄道グループは2019年に創立100周年を迎えており、100年にわたって培った静岡地域での信頼と実績を背景に、相続に関するあらゆる知識とネットワークを駆使してサポートいたします。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、不動産のプロである静鉄不動産が窓口となり、提携する司法書士・税理士・弁護士など各分野の専門士業が連携してワンストップで対応が可能です。

生前贈与の活用による相続税対策の立案から、登記・税務申告、将来的な遺産整理まで、一貫してお任せいただけます。

静岡に根ざした企業ならではのきめ細やかな対応と、グループ総合力による安心・安全・高品質なサービスで、皆様の大切な財産承継をお手伝いいたします。

生前贈与はタイミングを逃すと効果が薄れる場合もあるため、早めの対策開始が肝心です。

まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

電話でのお問い合わせ

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

相続の疑問、専門家がまとめてお答えします

お電話でのご相談0120-200-009月〜土 9:00〜18:00(日祝定休)
無料相談を予約する

メールでのお問い合わせはこちら

数次相続登記ってどんなもの?手順や覚えておきたいことを一挙解説!

2025.11.11

相続手続きは一度きりとは限りません。

ある相続が終わる前に次の相続が発生すると、登記手続きが複雑化してしまいます。

数次相続登記とは、相続が連鎖して起きた場合に必要となる不動産の名義変更手続きを指します。

この記事では、数次相続登記の概要から具体的な手順、注意点までを分かりやすく解説します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

数次相続登記とは?

数次相続登記とは、最初の相続手続きが完了する前に次の相続が発生した際に行う、不動産の名義変更登記のことです。

たとえば、父が亡くなったあと相続登記をしないまま長男も亡くなった場合、父から長男へ、さらに長男の子へと相続が連続して起こることになります。

このように、短期間で複数の相続が続けて発生する状況を「数次相続」といいます。

数次相続が起きると、相続人や被相続人が世代をまたいで増えるため、相続関係が複雑になります。

そのため、通常の相続登記よりも戸籍の収集や相続関係図の作成、各種書類の整理に多くの手間がかかり、複数回の相続を一括して処理するためには、慎重で丁寧な確認作業が求められます。

なぜ数次相続登記が必要になるのか

不動産の名義変更登記を長期間放置すると、世代を経るごとに相続人の数が増え、権利関係が複雑化します。

たとえば、本来は父から子への相続登記だけで済んだものが、その子も亡くなってしまうと「父から子へ、子から孫へ」と相続人が世代をまたいで増え、全員の合意を得て登記することがほぼ困難になるケースもあります。

相続人同士の話し合いや手続きが難航し、相続財産の管理・処分にも支障をきたす恐れがあるのです。

また、2024年4月から相続登記は法律で義務化されました。

正当な理由なく登記申請を怠った場合、法務局の催告に応じないと10万円以下の過料が科される可能性があります。

なお、令和6年4月1日以前に発生した相続についても、相続人がその不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記申請を行う必要があります(経過措置あり)。

つまり、数次相続が発生している場合、できるだけ早く登記を済ませることが重要です。

早期に対処すれば相続人の負担やトラブルのリスクを減らすことができるでしょう。

数次相続登記の流れ

数次相続登記では、複数回の相続を整理しながら最終的な不動産名義を確定させていきます。

基本的な手順は以下の表のとおりです。

手順 概要
相続関係図の作成 ・亡くなった方ごとに家系図形式の相続関係図を作成し、誰から誰へ相続が続いているかを視覚的に整理する
・各世代の被相続人と法定相続人の関係を図示する
戸籍謄本の収集と相続人の確定 ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて収集し、相続人を正確に確定する
・戸籍確認不足による相続人漏れを防ぐ重要なステップ
遺産分割協議と協議書の作成 ・相続人全員で遺産の分配を話し合い、合意内容を文書化する(遺産分割協議書)
・一次・二次相続でそれぞれ作成し、承継の流れを明記する
登記申請手続き ・必要書類を揃えて法務局に登記申請する
・原則として相続回数ごとに名義変更を行うが、条件を満たせば中間省略登記も可能

段取り良く進めれば、煩雑な数次相続の登記でも必要な手続きを効率的に完了できます。

特に法定相続情報一覧図(戸籍に基づいて法務局が認証する公的な家系図)を一次相続・二次相続それぞれで作成しておけば、戸籍原本を提出せずに済み他の手続きにも使えるため便利です。

いずれにせよ、最初から最後まで関係者と書類を整理しながら一括して進めると、ミスや手戻りを最小限に抑えることができます。

数次相続登記を行う上で覚えておきたいこと

数次相続登記を行ううえで、以下について覚えておきましょう。

  • 登記の申請方法
  • 登録免許税の計算方法
  • 専門家に相談すべき判断基準

上記のポイントについて、以下で詳しく解説します。

登記の申請方法

相続登記の申請は、紙申請(書面による提出)とオンライン申請の2種類の方法があります。

しかし、数次相続のケースでは添付すべき書類が膨大かつ複雑になりがちです。

オンライン申請では各種書類をスキャンして電子データ化し電子署名を付与する必要があり、書類同士の整合性確認も含め初心者にはハードルが高いといえます。

そのため実務上は、法務局の窓口や郵送で紙の書類を提出する方法が選ばれることが多いのが現状です。

主な必要書類は以下のとおりです。

  • 被相続人全員の出生から死亡までの戸籍謄本(改製原戸籍・除籍謄本を含む)
  • 全相続人の現在の戸籍謄本
  • 全相続人の住民票の写し(住所証明)
  • 全相続人の署名・実印押印済み遺産分割協議書(一次相続分・二次相続分)
  • 全相続人の印鑑証明書
  • 登記申請書
  • 相続する不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)
  • 固定資産税評価証明書(不動産の評価額が記載された市町村発行の書類)
  • 登録免許税の納付証明(収入印紙や電子納付の領収書等)

一つでも不備があると、法務局で申請が受理されず差し戻しとなる可能性があります。

特に戸籍関係や協議書の内容に矛盾がないか事前にしっかり照合し、申請書への記載事項(相続人・被相続人の氏名や死亡日付、登記原因など)も正確に記入することが大切です。

登録免許税の計算方法

登録免許税とは、不動産の所有権移転登記を行う際に納める税金のことです。

相続登記の場合、原則として不動産の固定資産税評価額に対して0.4%の税率で課税されます(評価額1,000万円なら4万円が税額)。

たとえば、土地と建物を相続すればそれぞれに0.4%ずつ課税され、登録免許税分の費用が発生します。

数次相続で登記申請が複数回にわたる場合でも、一度にまとめて登記する形にすれば手続きの簡略化が可能です。

また、登録免許税の負担も軽減できるメリットがあります。

ただし中間省略登記を利用できるかは要件を満たす場合に限られ、申請書の書き方も通常と異なる部分が出てきます。

税額の節約を狙うあまり誤った申請をしてしまうと本末転倒ですので、少しでも不安があれば専門家に確認しましょう。

専門家に相談すべき判断基準

数次相続登記は相続手続きの中でも難易度が高い部類に入ります。

自力で進めるのが難しいと感じたら、早めに司法書士や弁護士など専門家に相談するのが賢明です。

特に以下のようなケースでは、専門家の力を借りることをおすすめします。

  • 相続人の数が多い場合(相続人が10人以上、極端なケースでは「何十人」に達する場合)
  • 相続が三次、四次と複数回重なっている場合(相続関係が世代をまたいで連鎖している)
  • 一部の相続人とまったく連絡が取れない場合(所在不明者がいて遺産分割協議が進まない)
  • 相続人間で意見が対立し、遺産分割協議がまとまらない場合(話し合いが決裂している)
  • 相続財産に不動産が含まれ、権利関係が複雑な場合(共有持分や地目変更など専門的判断が必要なケース)
  • その他専門知識を要する場合(相続税の申告が必要、手間や時間をかけられない事情がある等)

上記のような状況では、無理に自分たちだけで対処しようとするとミスが生じてやり直しになったり、関係がさらにこじれたりするリスクがあります。

初期段階で専門家に相談・依頼した方が、結果的にスムーズに進みます。

登記に関しては司法書士、相続税が絡むなら税理士、争いに発展しそうなら弁護士といったように、状況に応じて適切な専門家に相談しましょう。

数次相続登記でよくあるトラブル例

数次相続登記では関係者が多いぶん、手続き上のトラブルも起こりやすくなります。

代表的な例として、以下表のようなものが挙げられます。

トラブルの内容 詳細
相続人の一部と連絡が取れず、遺産分割協議が進まない ・協議には相続人全員の参加が必要
・一人でも所在不明・連絡不能だと手続きが停止
・不在者財産管理人の選任など別途手続きが必要になる場合もある
戸籍の確認不足により、本来の相続人が漏れていた 認知された子どもや前婚の子など、後から判明した相続人の存在により、再協議・再登記が必要となり、大幅な時間と労力を要する
相続分の計算ミスにより、登記内容を訂正・やり直しする羽目になった ・遺産分割協議書の持分割合の計算ミスにより、登記が受理されない・後から更正が必要になる
・分数の取り扱いに注意が必要
書類の不備や記載の矛盾で、法務局から申請を差し戻される ・戸籍や住民票、協議書、申請書の情報に食い違いがあると受付保留になってしまう
・誤字脱字や添付書類の欠落も差し戻しの原因となる。再取得・訂正・再署名の手間が増す

こうしたトラブルは、初動で戸籍を丁寧に洗い出し、相続関係図と遺産分割協議書の内容を付き合わせて確認すると未然に防げます。

また、申請書類は提出前に法務局の窓口相談などでチェックしてもらうと安心です。

数次相続登記は煩雑ですが、一つひとつの確認を怠らないことが重要です。

数次相続登記を行う最適なタイミング

理想的なのは、最初の相続が発生した時点で速やかに登記を済ませてしまうことです。

もし先延ばしにしている間に次の相続が起きてしまうと、関係者が一気に増えて手続き難易度が格段に上がります。

たとえば、本来、父から母へ名義変更しておけばその後は母から子への登記だけで済んだものが、母への相続登記をしないまま母も亡くなってしまうと「父から母へ、母から子へ」の2回の登記を行う必要が生じます。

次の相続人が高齢で認知症になったり亡くなったりすると、さらにその子どもたちが手続きに加わり状況は雪だるま式に複雑化します。

相続登記は後回しにせず、早めに完了させておくことが何よりの予防策です。

先々の世代に余計な負担や火種を残さないためにも、相続が発生したら速やかに名義変更登記まで終えておくのが望ましいです。

数次相続登記完了後に確認すべきこと

数次相続登記の申請が無事完了したら、最後に登記事項証明書(登記簿謄本)を取り寄せて内容を確認しましょう。

登記完了後の証明書には、新たな所有者(相続人)の氏名・住所、持分割合、登記原因(相続)や日付などが記載されています。

こうした情報が遺産分割協議書の合意内容と一致しているか、一つずつ照合してください。

特に持分の割合や相続人の氏名・住所表記ミスは見落とされがちです。

仮に誤記が見つかった場合は、更正登記などの手続きを経て早めに訂正しておくことが大切です。

金融機関の名義変更や、不動産の利活用(売却・担保設定など)を進める上でも必要となる場合がありますので、取得した登記事項証明書は大切に保管しておきましょう。

数次相続登記は大変!登記は後回しにせず、早めに整理しよう!

数次相続登記は、複数世代にまたがる相続を一度に整理しなければならない複雑な手続きです。

相続人が増えるほど連絡調整や書類の整合も煩雑になり、場合によっては、相続登記自体が何年も進まない恐れすらあります。

だからこそ、相続が発生した段階でできるだけ早く登記に着手し、次の世代に負担を残さないことが重要です。

特に数次相続のように相続関係が重なるケースでは、戸籍の収集・整理、相続人全員での話し合い、登記書類のチェックと確認など、通常以上に多くの工程が要求されます。

確実に手続きを完了させ、後々のトラブルを防ぐためには、専門知識が豊富で地域事情にも詳しいプロの力を借りるのが賢明です。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、地元静岡に根ざして100年で培った信頼と実績をもとに、相続に関するあらゆる相談に対応しています。

司法書士・税理士・弁護士といった各分野の士業専門家とも連携し、不動産登記の手続きはもちろん相続税の申告や遺産分割協議のサポートまでワンストップでトータル支援できる体制を整えています。

相続の発生前から発生後まで、「今のうちに何をすべきか」を丁寧にご説明し、ご家族に最適な方法をご提案いたします。

専門チームが一丸となってあなたの相続問題に取り組み、複雑な数次相続であっても迅速かつ適切に対応いたします。

どんなに複雑な相続でも、早めの行動がトラブル防止の第一歩です。

数次相続が発生している方や、過去の相続登記がまだ済んでいない方は、お気軽に静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへご相談ください。

電話でのお問い合わせ

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

相続の疑問、専門家がまとめてお答えします

お電話でのご相談0120-200-009月〜土 9:00〜18:00(日祝定休)
無料相談を予約する

メールでのお問い合わせはこちら

相続した不動産の活用はどうすれば良い?放置するリスクと目的別の選択肢を解説

2025.10.09

親などから不動産を相続したものの、何から手をつければよいか分からずお困りではないでしょうか。

ご自身が住む予定がなければ、固定資産税や管理の負担だけが重くのしかかります。

かといって何もしないまま放置すれば、建物の老朽化による事故や資産価値の低下など、さらに深刻な問題につながる恐れもあります。

この記事では、相続した不動産の活用方法について、放置した場合のリスクと目的別の選択肢を交えながらわかりやすく解説します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

相続した不動産の活用を考えるべき理由4つ

相続した不動産を「とりあえずそのままにしている」という方は少なくありません。

しかし、そうした判断は次の理由から将来的に大きな損失やトラブルにつながる可能性があります。

  • 税金が最大6倍になる「特定空き家」に指定される可能性があるから
  • 建物の老朽化が原因で損害賠償を請求されるリスクがあるから
  • 次第に資産価値が下がり売却も賃貸もできなくなるから
  • 不法投棄や放火の標的になり近隣トラブルに発展しやすいから

ここでは、すぐに行動を起こすべき具体的な4つの理由を解説します。

税金が最大6倍になる「特定空き家」に指定される可能性があるから

管理されていない空き家は、自治体から「特定空き家(とくていあきや)」に指定されることがあります。

「特定空き家」に認定されると、住宅用地の特例(住宅の土地について固定資産税を1/6または1/3に軽減する制度)が適用されなくなり、土地にかかる固定資産税が最大で6倍に跳ね上がる可能性があります。

さらに2023年12月以降は「管理不全空家」という新たな区分もでき、管理が不十分な空き家でも行政から勧告を受けると同様に特例が外れる対象となりました。

第13条(適切な管理が行われていない空家等の所有者等に対する措置)

第十三条 市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、基本指針(第六条第二項第三号に掲げる事項に係る部分に限る。)に即し、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。

2 市町村長は、前項の規定による指導をした場合において、なお当該管理不全空家等の状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときは、当該指導をした者に対し、修繕、立木竹の伐採その他の当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な具体的な措置について勧告することができる。

引用元:e-Gov 法令検索 | 民法

つまり、空き家を放置していると税負担が急増するリスクが一層高まっています。

この図表は、固定資産税評価額2,000万円・200㎡以下の土地を想定した場合の税額比較です。

住宅用地特例が適用されている間は、固定資産税が約4.7万円・都市計画税が約2万円で、合計約6.6万円。

しかし、特例から除外されると、それぞれ約28万円と6万円に跳ね上がり、合計で約34万円(約5倍)もの税負担になります。

空き家を適切に管理せず放置すれば、こうした想定外の高額な税金を毎年支払う事態になりかねません。

建物の老朽化が原因で損害賠償を請求されるリスクがあるから

建物は年月の経過とともに必ず老朽化します。

もし管理を怠った結果、屋根や外壁が崩落して通行人にケガをさせたり、隣の家を壊してしまったりすれば、所有者として多額の損害賠償責任を負うリスクがあります。

実際、倒壊した空き家が隣家を直撃し、隣の家族が亡くなるという最悪の想定では、試算上2億円以上もの損害賠償額になるケースも報告されています。

このように放置された空き家が周囲に危害を及ぼせば、金銭面でも想像を超える負担となりかねません。

命に関わる危険すらある以上、空き家を何もせず放置することの潜在的なリスクは計り知れないと言えるでしょう。

次第に資産価値が下がり売却も賃貸もできなくなるから

不動産の価値は一般的に築年数の経過とともに下落していきます。

活用せずにただ放置している間に建物はどんどん傷み、市場での魅力も失われてしまいます。

いざ売却や賃貸を考えたときには、買い手も借り手も見つからない「負動産」になってしまう恐れがあります。

事実、長期間空き家のまま放置すると修繕箇所が増えてしまい、売却時に「現状渡し(瑕疵担保免責)」や「リフォーム前提」でしか売れず、大幅な値引きを余儀なくされるケースもあります。

つまり、時間が経つほど資産価値は下がり続け、「売りたくても売れない」という最悪の事態に陥りかねないのです。

早めに手を打つことが肝心です。

不法投棄や放火の標的になり近隣トラブルに発展しやすいから

人の出入りがない空き家は、ゴミの不法投棄や不審者の侵入、さらには放火といった犯罪の標的になりやすい傾向があります。

実際、放置された空き家が犯罪の温床となり、侵入者にガラスを割られたり放火されたり、不法廃棄物を投げ込まれたりする事例は少なくありません。

こうした行為によって建物や周囲に損害が出れば、その処理費用や修繕費は所有者であるあなたの負担です。

さらに景観や治安の悪化により近隣住民との関係も悪化し、深刻なトラブルに発展する可能性もあります。

空き家を持て余しているだけで精神的な負担まで抱え込むリスクがあることを認識しておきましょう。

相続不動産の活用法は4種類

以上のようなリスクを理解した上で、ここからは具体的な活用方法を見ていきましょう。

選択肢は多岐にわたるものの、「収益を得たい」「手間をなくしたい」といったあなたの目的に合わせて考えると、次の4つのパターンに分類できます。

  • アパート経営・戸建て賃貸
  • 駐車場経営・土地貸し
  • 不動産売却
  • 自己利用・リフォーム

以下から、それぞれ詳しく見ていきましょう。

アパート経営・戸建て賃貸

相続した不動産を資産として捉え、賃貸物件にすれば家賃収入という定期収入が得られます。

相続税対策としても有効で、長期的に安定した収益を目指すなら、たとえば更地にしてアパートやマンション、あるいは戸建て住宅を建てて貸し出す方法があります。

初期投資は比較的高額になりますが、入居者がいる限り継続的な家賃収入が期待でき、資産形成の柱となり得ます。

ただし、表面的な利回り(家賃収入率)だけで飛びつくのは危険です。

建設費などの初期投資、固定資産税や修繕費といった運営コスト、そして空室のリスクまで含めて、長期的な視点で実質的に手元にいくら残るのかシミュレーションすることが重要です。

一般に賃貸経営では家賃収入の15~20%程度が管理費や修繕費などの運営費に消えるとされます。

さらに、満室を前提とした利回り計算は机上の数字にすぎません。

急な出費や空室が発生しても収支が成り立つか、しっかり余裕を持った計画を立てましょう。

賃貸運営において知っておきたいポイントとして、次の2つがあります。

  • 活用の手間をかけたくない場合は外注化が必須
  • 立地が悪くても諦めるのは早い

以下から、それぞれ詳しく解説します。

活用の手間をかけたくない場合は外注化が必須

アパート経営や駐車場経営には、入居者募集や賃料の集金、建物・敷地の清掃や設備点検など様々な管理業務が伴います。

ご自身でそれらの手間をかけたくない場合は、物件管理を代行してくれる信頼できる管理会社を見つけることが重要です。

管理委託料はかかりますが、プロに任せることで空室対策やトラブル対応も含めてトータルサポートが受けられます。

複数の管理会社からサービス内容と料金を取り寄せ、比較検討してみましょう。

立地が悪くても諦めるのは早い

「駅から遠いし田舎だから、この土地の活用は無理だ」と諦める必要はありません。

たとえば幹線道路沿いで人通りや車通りが多ければ資材置き場や店舗用地として、大学の近くなら学生向けアパートとして活用できる可能性があります。

どんな土地にも必ずその土地なりの強みがあります。

固定観念にとらわれず、立地の特性をプロの視点で見極めてもらうことが成功の鍵です。

実際、「田舎だから難しい」と思われがちな土地でも、適した活用方法を見つけ収益化に成功している事例は少なくありません。

経験豊富な不動産会社に相談し、アイデアや知見を借りましょう。

駐車場経営・土地貸し

建物を建てずに、少ない初期投資で始められるのが駐車場経営や土地そのものの賃貸です。

更地や広い空き地がある場合、コインパーキングや月極駐車場にすれば比較的安価な工事で運用を開始できます。

また事業者に土地を貸し出して資材置き場などに使ってもらう方法もあります。

建物を建てるより管理の手間も少なく、将来的に別の活用法へ転用しやすい柔軟性が魅力です。

特に、形がいびつだったり狭小だったりして建物が建てにくい土地でも、資材置き場や駐車場なら活用しやすいケースがあります。

ただし注意点として、古い家を取り壊して更地にしてしまうと固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が上がる可能性があります。

たとえば家を解体して駐車場にする場合、土地が「住宅用地」でなくなるため前述した1/6や1/3の軽減措置が受けられず、固定資産税等の負担が増す点に留意してください(固定資産税評価額や土地面積によっては従前の数倍に跳ね上がるケースもあります)。

解体費用も含め、こうしたコスト面を踏まえた上で収支計画を立てましょう。

不動産売却

固定資産税の支払いや建物の維持管理といった継続的な負担、そして将来起こりうるリスクから完全に解放されたい場合は、不動産を売却して現金化するのが最も確実な方法です。

また、不動産をお金に換えてしまえば複数の相続人間で公平に遺産を分けやすくなるという大きなメリットもあります。

実際、空き家を売却すれば管理費や労力の負担がなくなり、倒壊などのリスクも排除できます。

親から受け継いだ大切な家を手放す寂しさはあるかもしれませんが、誰も住んでいない家を維持し続けるよりも、ご自身の生活や将来の安心を優先すべき場合も多いでしょう。

売却を検討する際は信頼できる不動産会社に査定を依頼し、適切な売却方法(仲介か買取か)やタイミングのアドバイスを受けることをおすすめします。

自己利用・リフォーム

すべての判断基準がお金だけではありません。

親が大切にしてきた家や土地への思い入れも、重要な要素です。

あえて収益化を目指さず、ご自身やご家族が住むためにリフォームしたり建て替えたりする「自己利用」も、不動産の価値を未来へ引き継ぐ立派な活用法です。

住まいとして活用すれば、固定資産税の住宅用地特例も引き続き受けられます。

ご先祖様の思い出の詰まった家に住み続けられるという精神的な充足感も得られます。

もちろん、古い家を住み継ぐには耐震や断熱性能の向上を含め多額のリフォーム費用が必要になるケースがあることも。

しかし昨今は古民家再生や空き家リノベーションを支援する公的補助金制度も整備されつつあります。

自治体によっては補助金や減税措置が利用できる場合もあるため、一度専門家に相談してみると良いでしょう。

金銭面のメリットだけでなく、「家族の歴史を守る」という価値も含めて総合的に判断してください。

相続不動産の活用で確認しておくべきこと

相続不動産を実際に活用する際の注意点は次のとおりです。

  • 小規模宅地等の特例
  • 税金3000万円控除の特例
  • 換価分割
  • 不動産の「共有名義」

いずれも、お金と人間関係で失敗しないためには必要な知識です。

以下からは、それぞれについて解説します。

小規模宅地等の特例

「小規模宅地等の特例」とは、一定の要件を満たせば被相続人が所有していた宅地の相続税評価額を最大80%も減額できる制度です。

個人が、相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族(「被相続人等」といいます。)の事業の用または居住の用に供されていた宅地等(土地または土地の上に存する権利をいいます。以下同じです。)のうち一定のものがある場合には、その宅地等のうち一定の面積までの部分(「小規模宅地等」といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、下記の「減額される割合等」の表に掲げる区分ごとにそれぞれに掲げる割合を減額します。

引用元:国税庁 | No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

たとえば、評価額1億円の土地でも2,000万円の評価に圧縮できるほど強力な特例なのです。

自宅の土地(330㎡まで)や事業用宅地(400㎡まで)などが対象。

要件としては「相続開始直前に被相続人や同居親族が住んでいた」「相続後も一定期間その親族が住み続ける」など細かな定めがあります。

適用できるかどうかで相続税額が大きく変わるため、ご自身のケースで特例が使えるかどうか、まず最初に税理士など専門家に確認することが重要です。

なお、特例は基本的に「被相続人と同居していた親族」が土地を相続する場合に適用されます。

ただし例外的に、被相続人と同居していなかった子どもでも自宅を相続すれば適用できる「家なき子特例」などもあります。

要件は複雑なので、自己判断せず専門家の判断を仰ぎましょう。

税金3000万円控除の特例

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合でも、一定の条件を満たせば最高3,000万円まで課税されない特例があります。

本来、自宅を売った際に使える「居住用財産3,000万円特別控除」という制度。

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。

これを、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。

引用元:国税庁 | No.3302 マイホームを売ったときの特例

相続で取得した実家の空き家を売った場合にも適用できるよう特例措置が設けられています。

ただし令和6年(2024年)1月以降の譲渡については、相続人が3人以上いるケースでは特別控除額が一人あたり2,000万円に縮小される変更が加わりました。

改正により、兄弟姉妹など複数人で空き家を相続した場合は恩恵がやや小さくなります。

しかしながら、それでも減税効果があることに変わりありません。

また、不動産を賃貸して得た所得(不動産所得)については青色申告を選択することで所得控除や損失繰越のメリットを受けられます。

青色申告特別控除として、事業的規模(目安:戸建なら5棟以上、アパートなら10室以上の賃貸)で経営している場合は最大65万円、目安未満の規模なら10万円が所得から控除可能です。

たとえば相続した物件を賃貸経営する場合、規模によって控除額が変わるため、自分が65万円控除の対象になり得るか事前に確認しましょう。

さらに青色申告をすれば、万一赤字になった年の損失を3年間繰り越して翌年以降の所得から差し引くこともできます。

適用を受けるには事前に税務署へ届出が必要なので、税理士に相談して手続きを進めてください。

換価分割

不動産は現金のように簡単に分割できないため、相続トラブルの最大の原因になりがちです。

複数の相続人がいる場合、不動産を売却して現金化し、法定相続分に従って分ける「換価分割」は、公平性や合意形成の観点で非常に有力な方法と言えます。

換価分割なら遺産全体を1円単位で分配できるため、「誰か1人だけが不動産を取って他の人が不公平」という事態が起こりません。

また評価額の算定を巡って揉めることもなく、代償金(不動産を取った人が他の相続人に支払う補償金)を用意する必要もありません。

公平に遺産分割でき、争いが生じにくい点が換価分割の最大のメリットです。

デメリットとして、不動産という資産そのものは手元に残らず現金に姿を変えてしまう、というものがあります。

したがって、「先祖代々の土地を失う」「売却費用や譲渡税がかかる」といった懸念点はあります。

しかし相続人全員の合意さえ取れれば比較的スムーズに手続きが進む方法でもあるため、「誰もその不動産を引き継ぎたくない」「遺産をできるだけ公平に分けたい」という場合には意義のある選択肢となります。

不動産の「共有名義」

安易に不動産を兄弟姉妹など複数人の共有名義で相続するのは避けるべきです。

共有者全員の同意がなければ売却も活用もできず、一人でも反対すれば何も進められなくなります。

実際、共有者の意見が割れてしまい「売るに売れず」「使うに使えず」で不動産が塩漬けになるケースは後を絶ちません。

また共有者の一人に認知症や判断能力の低下が起こった場合、意思確認ができず法律行為がストップしてしまうリスクもあります。

さらに次の相続が発生すると権利関係は雪だるま式に複雑化し、関係者が増えすぎて身動きが取れなくなる恐れもあります。

こうした理由から、専門家は口を揃えて「不動産の共有はトラブルの元」と指摘しています。

可能であれば単独名義で相続し、他の相続人には金銭で埋め合わせる代償分割を行うか、または思い切って売却して換価分割する方が無難です。

どうしても共有を避けられない場合は、共有者間で事前に「将来売却する際は皆で協力する」等のルールを書面に残しておくのも一策ですが、それでも将来的な保証にはなりません。

将来の禍根を残さないためにも、共有名義は極力避けるようにしましょう。

相続不動産の活用に役立つ専門家の選び方

相続不動産の活用が成功するかどうかは、信頼できるパートナーとなる専門家を見つけられるかにかかっています。

後悔しないための専門家選びのポイントは、次の3つです。

  • 複数の会社を比較して選ぶ
  • 税理士や司法書士とも連携しているかどうかで選ぶ
  • 担当者の人柄と提案の具体性で選ぶ

以下から、それぞれ詳しく見ていきましょう。

複数の会社を比較して選ぶ

最適な答えは、一社の意見だけで見つかるものではありません。

不動産の相談はぜひ最低でも2~3社の不動産会社に行い、物件の査定価格だけでなく「どのような活用プランを提案してくれるか」を比較検討することが不可欠です。

複数社に相談することで各社の対応力や提案内容の質を見比べられます。

さらに「たまたま最初に相談した業者の意見が偏っていた」という事態を避けることもできます。

不動産会社側も複数社への相談は当然だと理解しているため、遠慮する必要はまったくありません。

複数社から話を聞いて比較することで、あなたの不動産が持つ本当の価値や可能性を客観的に判断しやすくなるでしょう。

税理士や司法書士とも連携しているかどうかで選ぶ

相続では、不動産活用だけでなく相続税の申告(税理士)や名義変更の登記(司法書士)といった手続きも必ず発生します。

各分野の専門家を自分で一から探して依頼するのは大変な労力です。

そこで、不動産の相談窓口が税理士・司法書士などと連携してワンストップで対応してくれる会社を選ぶと、手続きがスムーズに進み安心です。

不動産会社の中には相続コンサルティングに力を入れているところも多く、グループ内や提携先に専門士業を抱えているケースがあります。

たとえば静岡の「静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター」のように、地元の税理士・弁護士・司法書士など信頼できる専門家ネットワークと協力し、複雑な税申告や相続トラブルにも迅速かつ適切に対応してくれるところもあります。

ワンストップで相談できる窓口であれば、自分で各方面に問い合わせる手間も省け、安心感が違うでしょう。

担当者の人柄と提案の具体性で選ぶ

提案内容や会社の規模も大切ですが、最終的には「この人に任せたい」と思えるかどうかが重要です。

不動産や相続の相談は長期にわたることも多いため、担当者と相性が良く信頼関係を築けるかは取引成功の鍵となります。

あなたの話に親身に耳を傾け、メリットだけでなくデメリットもきちんと説明してくれるか、確認しましょう。

たとえば物件の利点ばかりではなく潜在的なリスクも正直に伝えてくれる担当者であれば信頼感が増します。

根拠のない楽観論ばかり語る方よりも信用できます。

また、収支シミュレーションや活用プランの比較表など、具体的で根拠のある提案をしてくれるかどうかも見極めポイントです。

丁寧なヒアリングを行ったうえでこちらのニーズに合った適切な提案ができる担当者かどうか、複数社と話す中でチェックしてみてください。

相続不動産の活用に関してよくある質問

相続不動産の活用を検討している方から特によく寄せられる質問は、次のとおりです。

  • 遠方にある実家でも活用や売却はできますか
  • まだ活用方法が決まっていませんが、業者に査定を依頼できますか
  • 農地や山林など活用が難しい不動産はどうすればよいですか

以下からは、それぞれを回答形式で深堀りしていきます。

遠方にある実家でも活用や売却はできますか

はい、可能です。

最近では電話やオンラインでの相談に対応している不動産会社がほとんどです。

不動産会社は現地の調査や管理、売却活動もすべて引き受けてくれます。

したがって、ご自身が遠方に住んでいて現地に頻繁に行けない場合でも心配いりません。

たとえば書類のやり取りは郵送や電子メールで行い、内覧の立会いや物件管理は現地の不動産会社スタッフに任せる、といった形で進められます。

「遠方に住んでいる」という理由で活用を諦める必要はまったくありません。

むしろ遠方だからこそ早めに専門家に任せてしまった方が、無駄な出費や労力を省けるでしょう。

まだ活用方法が決まっていませんが、業者に査定を依頼できますか

もちろん問題ありません。

むしろご自身で活用法を決めてしまう前にプロに相談することで、思いもよらなかった最適な活用法を提案してもらえる可能性があります。

不動産会社は「まず物件の価値を知りたい」という相談にも快く応じてくれますし、無料で査定してくれる会社がほとんどです。

査定結果を聞いたからといって必ず売却しなければならないわけではありません。

「売る」「貸す」「保有する」のどの道を選ぶにせよ、まず客観的な物件評価を知っておいて損はありません。

複数の会社に査定をお願いし、それぞれの会社がどんな活用提案を示してくれるか比較してみるのも有益でしょう。

農地や山林など活用が難しい不動産はどうすればよいですか

専門家に相談し、あらゆる選択肢を確認することが第一歩です。

農地は農地法による制約、山林は需要の乏しさなど、活用が難しいケースが確かにあります。

とはいえ全く方法がないわけではありません。

たとえば農地であれば市民農園として区画貸しする、山林であれば隣接地の所有者に購入を打診する、といった活用・処分の方法が考えられます。

また、相続放棄という選択肢も視野に入ります。

相続開始前であれば生前に他の資産と切り離して処分しておく、生前贈与で手放す、といった対策も可能です。

難しい不動産ほど独断で判断せず、専門家に現状を伝えて「売却すべきか保有すべきか」「手放すならどんな手順か」など具体的なアドバイスをもらいましょう。

場合によっては行政の相談窓口で補助制度などの情報を得られることもあります。

一人で悩まず、必ず信頼できる専門家と一緒に最善策を探してください。

相続不動産の最適な活用は信頼できるパートナーに任せよう

相続した不動産を放置するリスクから、具体的な活用法、そして最適な選択をするための視点まで解説してきました。

大切なことは、何もしないまま放置しないこと、そしてできるだけ早く行動を起こすことです。

ご自身の状況に合った最適な活用法を見つけるために、まずは専門家へ相談してみましょう。

相続不動産の活用には不動産・税金・法律・家族間調整など複雑な要素が絡み合います。

ワンストップで相談できるパートナーがいれば、不動産活用の道がひらけます。

静岡エリアで相続不動産にお悩みなら、地域に精通した専門家ネットワークを持つ「静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター」へお気軽にご相談ください。

静岡鉄道グループの総合力で、不動産の活用から税務・法務までワンストップでサポート可能です。

初回相談は無料です。

一人で抱え込まず、専門家に相談することから始めてみてください。

あなたにとって最善の解決策を、一緒に見つけ出しましょう。

電話でのお問い合わせ

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

相続の疑問、専門家がまとめてお答えします

お電話でのご相談0120-200-009月〜土 9:00〜18:00(日祝定休)
無料相談を予約する

メールでのお問い合わせはこちら