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不動産の相続評価とは?計算方法や減額ポイントをわかりやすく解説

2025.07.29

不動産を相続する際、重要になるのが不動産の評価です。

正しく不動産を評価することは相続税の申告に欠かせませんが、耳慣れない用語も多く、時間や手間もかかります。

不動産を相続したものの、どこから手をつければ良いか分からないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。

この記事では相続不動産評価の基本ルールや、税金を減らすために知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

不動産の相続評価が重要視される理由

不動産は相続財産の中でも金額が大きいため、相続税の課税対象になるか判断するうえで、その評価額は非常に大きな意味を持ちます。

不動産の価値は立地や形状、建物の状態などにより大きく変動します。

そのため相続時の不動産評価が誤っていると、相続税の申告金額に誤差が生じるだけでなく、修正申告や追徴課税を求められる可能性もあるのです。

また、評価額は相続人同士の遺産分割協議にも大きな影響を与えます。

「自分だけ損をしている」「誰かにとって都合の良い不動産評価をしたのではないか」という感情的な問題から、法的トラブルにまで発展するケースも少なくありません。

こういったケースを未然に防ぐためにも、相続する不動産を正しく評価することは非常に重要です。

不動産の相続評価額の調べ方

不動産の相続評価額を調べるには、どのようにすれば良いのでしょうか。

ここでは、「路線価方式」と「倍率方式」の違いや注意点について詳しくまとめました。

路線価方式と倍率方式の違いを知ることからはじめる

土地の評価額を調べるには、まず「路線価方式」と「倍率方式」のどちらが適用されるかを確認する必要があります。

路線価方式は、国税庁が公表する「路線価図・評価倍率表」に基づいて評価する方法です。

一方、倍率方式は固定資産税評価額に国税庁が公表している倍率をかけて計算する方法で、計算式は以下のようになります。

固定資産税評価額×評価倍率=土地の評価額

どちらの方式が採用されるかは、評価対象の不動産が「路線価図・評価倍率表」に記載されているかで変わります。

路線価図に記載されている土地は路線価方式、そうでない土地は倍率方式になると考えれば良いでしょう。

路線価方式は市街地や住宅地、倍率方式は農村地や路線価が設定されていない土地、郊外の広大地などに用いられるのが一般的です。

建物の評価額を調べる

建物の相続評価額は市町村が算出した「固定資産税評価額」を基準としています。

この評価額は、市町村から毎年送付される固定資産税の納税通知書で確認することができます。

納税通知書がない場合は、不動産が所在する市町村役場で固定資産台帳を閲覧することでも確認が可能です。

不動産の評価額は居住用か事業用か、木造か鉄筋かといった違いで異なります。

建物の老朽化や使用状況によっても評価額に差が出るため、現況と納税通知書の記載内容を照らし合わせることが重要です。

実際の市場価格と大きく差があることも珍しくないため、「市場価格=評価額」ではないという点に注意しましょう。

同じ評価額でも使い道によって価値が変わることがあることに注意

不動産の評価額が同じでも、その利用目的や現況によって実際の価値が大きく異なるケースがあります。

貸家が建っているか、更地になっているかで、同じ土地でも評価や節税効果に差が生まれることも。

また、今後の土地活用の見込みによっても、実質的な価値は変わってきます。

評価額だけを見て相続の判断をすると、後になって予想と違う結果になることも珍しくありません。

不動産の活用状況や将来的な用途も視野に入れたうえで、総合的な判断を下すことが大切です。

相続評価額が高く出る不動産の特徴

相続評価額は不動産の立地や形状、利用状況によって変わります。

そのなかで評価額が高く出る不動産には、いくつかの特徴があります。

交通アクセスの良い都市部や駅に近い立地の不動産は、高い路線価が設定されることが多く、結果として評価額が上がります。

また、四角形に近い土地や再開発地域など、活用しやすい土地も評価額が高くなる傾向があります。

こうしたの不動産は資産価値が高い分、相続税評価も高くなりやすいため、相続税が高額になる可能性があります。

そのため納税資金が用意できず、やむを得ず相続放棄を選ぶケースも少なくないのです。

資産価値が高いのは必ずしもプラスに働くことばかりではない、という点に注意が必要です。

相続評価額が低く出る不動産の特徴

相続評価額が低く出やすい不動産として、以下のようなものが挙げられます。

  • 建物に道路が面していない無道路地
  • 私道を含む土地
  • 崖地や傾斜地
  • 借地権付き建物

基本的に使用用途が限定されたり、売却や活用のハードルが高くなる土地は、評価額が低くなりやすいと考えれば良いでしょう。

評価額が下がるとそれだけ相続税の負担が少なくなるので、その点はメリットといえます。

しかし評価の低い不動産は、遺産分割しづらくなるという問題もあります。

扱いが難しい不動産を引き継いだ相続人が、「厄介なものを押し付けられた」と不公平感を感じるケースも少なくありません。

評価が低くなりやすい土地の相続は、評価額だけでなくその後の活用も含めて総合的に考えることが大切です。

不動産の相続評価額が遺産分割に与えるさまざまな影響

不動産の相続評価額は、引き継ぐべき土地の資産価値を知るうえで大切なものです。

そして、不動産の相続評価額は遺産分割協議にも大きな影響を与えます。

不動産の相続評価が遺産分割に与える影響として、次のような例が挙げられます。

  • 評価額の認識が違うと相続人同士の対立が生まれやすくなる
  • 共有相続は将来的な売却や管理トラブルにつながりやすい
  • 代償分割は評価額が不公平感の火種になりやすい
  • 換価分割は売却価格と評価額の差が不満につながりやすい

ここからは、具体的なケースそれぞれについて詳しく見ていきましょう。

評価額の認識が違うと相続人同士の対立が生まれやすくなる

相続人によって不動産の評価基準が異なることで、意見の食い違いが起きることがあります。

一般的には税務上の評価額を基準に考えますが、なかには市場価格や感情的な価値を重視する方もいます。

「実勢価格ではもっと高いはずだ」「固定資産税評価額では安すぎる」などの主張が食い違い、最終的に分割案がまとまらなくなることもあります。

公平感を保つために、まずどの評価を基準にするのか最初に擦り合わせてから話し合いに臨むことが大切です。

共有相続は将来的な売却や管理トラブルにつながりやすい

共有名義の不動産は売却や建て替えに名義人全員の同意が必要なので、土地建物の活用や長期運用に支障をきたすことがあります。

管理費用の負担や修繕方針などをめぐって紛争に発展したり、意見がまとめきれず「塩漬け」になってしまうなど、長期的なトラブルを招くことも。

特に不動産の評価額が高い場合は利害が対立しやすいため、共有名義での相続は慎重に検討しましょう。

代償分割は評価額が不公平感の火種になりやすい

代償分割とは相続人のひとりが不動産を相続し、他の相続人に相続相当額の代償金を支払う方法です。

この場合、代償金の根拠になる評価額の算出方法が不透明だったり、相続人のあいだで認識のズレが生じていると、不公平感を生んでしまう可能性もあるのです。

換価分割は売却価格と評価額の差が不満につながりやすい

換価分割は不動産を売却して現金化し、売却金を相続人で分配する方法です。

不動産を引き継ぐ方がいない際に用いられる方法ですが、売却時の相場や需要によっては売却金が予想より少ないこともあります。

そうなると「本当はもっと高値で売れたのではないか」「評価額よりも安い価格でしか売れなかった」などの損失感や不公平感を生み、トラブルに発展する可能性があるのです。

相続評価額を減額できるポイントの見極め方

不動産の相続評価には、次のように一定条件を満たせば評価額を下げられる可能性があります。

  • 借地権が設定されているか
  • 貸家建付地になっているか
  • 「地積規模の大きな宅地」にあてはまるか
  • 小規模宅地等の特例を利用できるか

税制上の特例や土地の利用状況を正しく把握して、減額ポイントをしっかり押さえることで、相続税を減額できる可能性も。

ここでは、相続評価額を減額できる要件を分かりやすく解説していきます。

借地権が設定されているか

借地権付きの土地(貸地)は所有者が自由に利用・処分できないため、評価額が大きく下がる傾向があります。

貸地の評価額は、自用地評価額から地域ごとに決められた借地権割合(30%~90%)を差し引いて算出されます。

借地権割合は国税庁のウェブサイトに掲載されているので、自分たちでも調べることが可能です。

貸家建付地になっているか

第三者に賃貸するための建物を建てつけている「貸家建付地」は、自用地よりも評価額が減額されます。

貸家建付地の相続評価額は、以下のような計算式で算出されます。

自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

ただし、賃貸契約の内容や居住実態によっては適用できない場合もあるため、注意が必要です。

「地積規模の大きな宅地」にあてはまるか

一定の広さがある住宅用地については、「地積規模の大きな宅地」として評価額を引き下げられる可能性があります。

地域によって引き下げの要件は異なりますが、面積が1,000㎡(最大都市圏では500㎡)かつ分譲住宅の多い地域にある土地は「地積規模の大きな宅地の評価」の対象になる可能性があります。

国税庁のウェブサイトに「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件チェックシートがあるので、相続する土地が当てはまるか確認してみると良いでしょう。

小規模宅地等の特例を利用できるか

被相続人が自宅として居住していた土地を相続する場合、最大80%の評価減が可能となる「小規模宅地等の特例」を利用できる可能性があります。

この特例を受けられるのは「配偶者・同居親族・一定条件を満たした別居親族」に限られています。

限度面積は330㎡と制限されていますが、評価額を大きく下げることができるので、特例を適用できるかは真っ先にチェックしておくポイントといえるでしょう。

不動産の相続評価をプロに依頼したほうが良いケース

不動産の相続評価は自分で調べることも可能ですが、正確に評価するには不動産の専門家に依頼するという選択肢も。

プロへの依頼を検討したほうが良いケースとして、次の3つがあります。

  • 評価が難しい土地を相続した場合
  • 特例や節税についてアドバイスを受けたい場合
  • 相続人同士でトラブルが発生している場合

以下からは、各ケースについて詳しく見ていきましょう。

評価が難しい土地を相続した場合

旗竿地や無道路地、複雑な形状の土地は相続評価が難しく、自分たちで評価を行うと思わぬポイントを見落としてしまうことがあります。

税理士は書類の調査だけでなく役場の記録や現地調査を行い、正確な評価を行うことが可能です。

特に土地の一部に借地権が絡んでいたり、現況と登記が異なるようなケースは収集するべき資料も多いため、プロに任せるほうが良いでしょう。

特例や節税についてアドバイスを受けたい場合

相続する不動産の評価額を下げるには、一定の条件を満たす必要があります。

制度や特例の条件は複雑なものも多く、ほんの少しの違いで適用が認められないことも。

自分たちのケースに合った特例や節税について、直接アドバイスを受けられるのは大きなメリットといえるでしょう。

相続人同士でトラブルが発生している場合

相続人同士で不動産の評価や分割方法を巡って対立している場合は、第三者を挟んだほうが良いでしょう。

特に代償分割や換価分割を選択する際には、相続人全員の意見をしっかりすり合わせることが大切です。

「プロの税理士が不動産を評価した」という事実だけでも信頼性が上がり、その後の遺産分割協議がスムーズに進むという効果も期待できます。

不動産の相続評価でよくある質問

不動産の相続評価に関して、よくある質問をまとめました。

不動産の相続評価は自分でもできる?

不動産の相続評価は、国税庁のウェブサイトで公開されている路線価図や倍率表を用いて算出するのが一般的です。

初めての方でもある程度時間をかければ、相続評価を自分で行うことはできるでしょう。

ただし、特殊な形状の土地や複数の評価方法が絡む場合、相続する土地が複数ある場合、自分たちだけで評価を行うのはかなりの時間と手間を要します。

不安がある場合は、税理士など専門家に依頼することを検討しましょう。

プロに依頼するタイミングはいつくらいがベスト?

不動産評価に不安がある場合は、相続税の申告準備を始める前に相談するのがベストです。

相続税の申告期限は被相続人の死亡の翌日から10か月以内と定められているため、遅くともその数か月前には評価などの準備を始める必要があります。

(相続税の申告書)
相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内(その者が国税通則法第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

引用元:相続税法第27条の2

早めに専門家へ相談することで特例や節税の検討にも、余裕をもって取り組めるでしょう。

不動産の相続評価を間違えたらどんなことが起きる?

誤った相続評価をもとに相続税の申告を行うと、税務調査で指摘を受ける可能性があります。

過少申告が判明すると追徴課税だけでなく、加算税や延滞税が課されることもあります。

過大申告した場合は、「更正の請求」という手続きで返金を受けられますが、手間や時間がかかります。

どちらにしても多大な労力や負担を伴うので、相続評価は正確に行うことが大切です。

不動産の相続評価は誰が行うもの?

法的には相続人自身が評価を行い、その評価をもとに相続税を申告する仕組みとなっています。

ただし、評価が難しい土地や権利関係が複雑な土地は、専門家に依頼することをおすすめします。

特に相続人のあいだで意見が分かれている場合は、専門家のアドバイスをひとつの判断基準にするのもひとつの方法です。

相続不動産の評価はプロに依頼するのがおすすめ

不動産の相続評価は、遺産分割協議や相続税の申告において非常に重要なものです。

自分で行うことも可能ですが、評価が難しい土地や権利関係が複雑な土地は専門家に評価を依頼することをおすすめします。

相続のなかでも不動産に関する手続きは特に複雑で、幅広い専門知識が求められる分野です。

静鉄不動産では司法書士を中心とした専門家と連携した「相続ワンストップサポート」を行っております。

相続手続き全般からその後の土地活用、遺品整理まですべてワンストップでお手伝いいたします。

相続手続でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

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相続登記申請書の書き方ガイド!必要書類やチェックポイントも解説

2025.07.23

相続で不動産を取得した人は、相続登記を行うことが義務付けられています。

(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

引用元:不動産登記法 第76条の2

親の不動産を相続したので、相続登記のやり方をネットで調べているという方も多いのではないでしょうか。

相続登記に関する用語には専門的なものが多く、法務局の説明だけでは分かりづらいものです。

この記事では相続登記を自分で行いたいという方に向けて、相続登記申請書の書き方や必要書類、よくあるつまづきポイントまで分かりやすく解説しています。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

相続登記申請書ってなに?書き方が決まってるの?

相続人が正式に不動産を引き継ぐための手続として、相続登記は非常に大切なものです。

相続不動産の名義を変更するには「相続登記申請書」という書類を、不動産を管轄する法務局へ提出する必要があります。

この手続きをしなければ、不動産は被相続人(亡くなった人)の名義のまま変更されません。

申請書の作成は手書きでもパソコンでもOK

相続登記申請書の作成は、手書きでもパソコンでも認められています。

法務局のウェブサイトにテンプレートと記載例が提供されているので、そちらを利用するのが確実です。

しかし形式が異なっていても、法務局が指定する必要事項を正確に記載していれば問題なく受理されます。

内容の正確性が重視される

相続登記申請書で最も重視されるのは、必要事項が誤りなく正確に記載されているかという点です。

申請書には「誰が・どの不動産を・どのような理由で取得したか」を詳しく記載します。

法務局ではこの内容をもとに、登記簿を変更して相続人を新しい所有者として登録します。

形式が異なっていても問題はありませんが、記載漏れや誤りがあると受理されず再提出になってしまうケースも珍しくないのです。

相続登記申請書の書き方!基本構成と記入例

相続登記申請書として以下を書いていきます。

引用元:法務局「登記申請書記載例」

しかし、相続登記申請書と言っても、それぞれ以下のように相続の状況によって記載すべき内容が異なります。

  • 相続人が1人だけの場合
  • 相続人が複数いる場合
  • 相続した不動産が共有持分である場合

ここでは以下のような相続人が複数いるケースを例に取って、申請書の書き方について解説していきます。

  • 被相続人:夫
  • 相続人:妻と子ども3人
  • 相続不動産:実家の一軒家

このようなケースの場合、相続登記申請書の書き方は以下のようになります。

①登記申請書

書類の名前は「登記申請書」と表記します。

②登記の目的

被相続人が不動産の所有権をすべて持っている場合は「所有権移転」と記載します。

③原因

この部分には被相続人が亡くなった日付を記載します。

④相続人

被相続人氏名と相続人の氏名・住所・連絡先・相続の持ち分を記載して押印します。

登記申請においては押印は実印でなく、認印でも原則として差し支えありません。

しかし、登記の内容や添付書類によっては実印や印鑑証明書が必要になることもあるため、事前に対象となる不動産を管轄する法務局に確認することをおすすめします。

たとえば、遺産分割協議による登記では法定相続人全員の実印と印鑑証明書が必要です。

申請人は、相続人のうち1名が代表して申請できますが、遺産分割協議書などの添付により、他の相続人全員の同意が前提となります。

ただし、申請にあたっては法定相続人全員の同意と必要書類が揃っている必要があります。

相続人のうちのひとりが全員分の相続登記を申請することもできますが、申請者以外に登記識別情報通知

書が発行されなくなるので、注意が必要です。

連絡先電話番号は、昼間でも通話可能な電話番号を記載するようにしましょう。

⑤添付書類

「登記原因証明情報・住所証明情報・評価証明書」と記載します。

「登記識別情報の通知を希望しません」は基本的にチェックを外しておきましょう。

登記識別情報は従来の権利証に代わるもので、不動産の売買や抵当権設定に必要なものです。

通知を受けなかった場合、後日再発行することはできませんので、特別な理由がない限り通知を受け取ることをおすすめします。

⑥申請日と管轄法務局

法務局へ申請を行った日と、不動産を管轄する法務局名を記載します。

⑦課税価格と登録免許税

課税価格は毎年4~5月に送られてくる固定資産税課税明細書に記載されている「価格」もしくは「評価額」を転記します。

登録免許税は上記で記載した「価格」もしくは「評価額」の0.4%です。

たとえば、評価額が500万円だった場合は0.4%で2万円となります。

⑧不動産の表示

登記事項証明書から所在・地番・地目・地積・(建物がある場合は)床面積を転記します。

登記事項証明書に記載されている不動産番号を明記すれば、以上の4項目(5項目)を省力可能です。

相続登記申請書の書き方で間違いやすいポイント

相続登記申請書に記載漏れや誤りがあると、更生登記の申請を別途行わなければならず、二度手間になってしまいます。

ここでは、相続登記申請書の書き方で間違いやすいポイントをみていきましょう。

誤字脱字や押印漏れ

住所や氏名を間違えていたり、押印が漏れていたりするケースです。

相続登記申請書の押印箇所は、相続人(申請人)の氏名後ろです。

特に相続人が多い場合は見落としやすいので、よく確認するようにしましょう。

不動産番号の記載ミス

登記事項証明書に記載されている不動産番号を記載すれば、所在・地番・地目・地積・(建物がある場合は)床面積の記載を省略することができます。

しかし不動産番号そのものを間違えてしまうと、書類不備になってしまう可能性があります。

不動産番号は、登記事項証明書の右上にある13桁の番号です。

よく確認して、誤りのないよう転記しましょう。

登録免許税の計算間違い

登録免許税は、固定資産税課税明細書に記載されている「価格」もしくは「評価額」の0.4%と定められています。

たとえば評価額1,000万円の不動産であれば計算式は「1,000×0.004=40,000」です。

誤りがないよう、数字を確認しながら計算しましょう。

添付書類のミス

申請書に添付する書類の不足や間違いによって、「補正通知」が届くことがあります。

たとえば以下のように添付書類が間違っていた場合です。

  • 住所の番地表記が住民票と一致していない
  • 評価証明書が古い年度のものだった

補正対応のために再訪問が必要となるため、時間的なロスが大きくなってしまいます。

初回提出時に添付書類に間違いがないかチェックをしっかりとしておきましょう。

相続登記申請書に添付する必要書類

相続登記には、申請書とともに以下のような書類が必要です。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(原本・コピー)
  • 被相続人の住民票の除票(原本・コピー)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産を取得する人の住民票(原本・コピー)
  • 相続する不動産の固定資産評価証明書(原本・コピー)
  • 相続関係説明図
  • 返送用切手と封筒

またどのような相続なのかによって、以下のように追加で必要な書類があります。

遺言書による相続の場合 ・遺言書(原本・コピー)
遺産分割協議書による相続の場合 ・遺産分割協議書(原本・コピー)
・相続人全員の印鑑証明書(原本・コピー)

戸籍謄本等は原本を提出するのが基本ですが、相続関係説明図を提出しておけば、原本を返却してもらえます。

相続関係を分かりやすく説明するのに便利なものなので、作成しておくと良いでしょう。

参考記事:相続不動産の登記に必要な書類とは?ケース別の書類一覧や注意点を解説

相続登記申請書の提出方法と提出先は確認必須

相続登記を行うのは、対象となる不動産を管轄する法務局です。

法務局は各都道府県にあり、そのなかで出張所が点在しています。

管轄内であれば出張所でも手続可能なので、最寄りの法務局を選ぶと良いでしょう。

書類の提出方法は、以下の3通りがあります。

  • 直接窓口で提出する
  • 郵送で提出する
  • オンラインで提出する

電子証明書付のマイナンバーカードを持っていれば、オンライン申請も選択できます。

なお、郵送の場合は、「法務局◯◯出張所 登記受付係 宛」とし、角2封筒に「登記申請書在中」と朱書きして送りましょう。

相続登記申請書の書き方でプロのサポートを受けるべき人

相続登記申請書の作成は、ある程度事務作業に慣れている方であればさほど難しいものではありません。

しかし、書類の記載ミスや書類不備があると、更正登記(提出した内容を訂正する手続)を再度行わねばならず二度手間になってしまうことも。

  • 書類作成の時間が取れない人
  • 相続関係が複雑な人
  • 相続不動産が遠隔地にある人

このような条件に当てはまる方は、プロのサポートを受けることを検討しましょう。

書類作成の時間が取れない人

相続登記申請書の作成に欠かせない必要書類の収集や、戸籍を読み解く作業はじっくり腰を据えて取り組まなければならない作業です。

また、役所や法務局とのやり取りは平日が中心になるため、仕事や家事で平日の時間が取れない方には負担が大きい面も。

書類作成の時間を取るのが難しい人は、専門家に依頼することを検討したほうが良いでしょう。

相続関係が複雑な人

被相続人(亡くなった人)が養子縁組をしている場合や、複数の結婚歴があると自分たちが把握していない相続人が存在する可能性があります。

正確な相続関係を把握するためには、被相続人の出生から死亡までの記録が記載された戸籍謄本を読み解いていかなければなりません。

また、もし知らない相続人が出てきた場合、自分たちだけで連絡を取って相続に関する話し合いをするのは心理的にハードルが高いものです。

専門家に依頼すると書類収集の代行や戸籍の調査だけでなく、相続人とのスムーズなやり取りについてもサポートを受けられます。

相続関係が複雑な人は、早めに専門家に相談しておくことをおすすめします。

相続不動産が遠隔地にある人

相続登記は、対象となる不動産を管轄する法務局で行います。

遠隔地にある場合は郵送やオンラインで申請する方法もありますが、かなりの時間と手間が必要です。

また、不動産が複数ある場合も、それぞれを管轄する法務局で相続登記を行わなければなりません。

専門家に依頼すれば書類収集から相続登記まで代行してもらえるので、時間や手間を大幅に節約することができます。

相続登記申請書の書き方で困ったときは誰に聞けばいい?法務局・専門家・相談先の選び方

相続登記申請書の書き方を相談する先として、法務局と専門家のどちらを選べば良いのでしょうか。

ここでは、それぞれのメリットとデメリットについてみていきましょう。

法務省のウェブサイトを確認する

法務局に相談する前にまずチェックしたいのが、法務局のウェブサイトです。

自分で相続登記を行う人向けのハンドブックが公開されています。

相続登記申請書のテンプレートや記載例も掲載されているので、ある程度の情報は得られるでしょう。

ただ、法務局のウェブサイトは情報が点在しており、必要な情報を探し出しづらいというデメリットも。

法務局では、相続登記の無料相談会を実施していることもあります。

こちらも法務局のウェブサイトや、対象となる不動産を管轄する法務局に問い合わせてみると良いでしょう。

ただし、この無料相談で相談できるのは具体的な書類の作成方法のみです。

書類の収集方法や相続人同士のトラブルといった、個別の事情や法律に関する相談には対応していないので注意しましょう。

総合的なサポートなら司法書士がおすすめ

相続登記をサポートしてくれる法律の専門家としては、司法書士や弁護士が挙げられます。

弁護士は法律業務全般を行うことができますが、登記業務を代行するケースはあまり多くありません。

ただし、相続人同士で既にトラブルが起きており、訴訟に発展しそうなときは最初から弁護士に依頼するのもひとつの方法です。

そうでない場合、登記業務の実務は司法書士が行うのが一般的です。

司法書士は書類の収集から登記の代行まで、相続全般をサポートする法律の専門家です。

費用面でも司法書士のほうが費用が安いことが多いため、相続全般の総合的なサポートを依頼するなら司法書士がおすすめです。

参考記事:司法書士に相続相談できる内容とは?費用相場や探し方を詳しく解説

相続登記申請書の書き方が不安な方はプロに相談する方法もおすすめ!

相続登記申請書の作成は聞き慣れない言葉が多いだけでなく、さまざまな書類を集める必要があります。

また、相続後の土地の活用についてもどうしようかとお悩みの方も少なくありません。

静鉄不動産は地域密着型の不動産会社として、数多くの方の土地活用をサポートしてきました。

そんな不動産に強みを持つ静鉄不動産と専門士業が連携しワンストップの相続サポートサービスを提供しているのが、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターです。

静鉄不動産がこれまで培ったノウハウと相続のプロフェッショナルが連携して、お客様の相続のお悩みごとを解決いたします。

相続でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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相続人申告登記とは?必要な手続きのやり方や書類、注意点を解説

2025.07.23

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。

これまでに相続した土地についても「何か手続きをしなくてはいけないの?」と気になっている方が多いのではないでしょうか。

相続人申告登記はすぐに名義変更をしない方でも、義務を果たせる新しい制度です。

手続きの方法や相続登記との違い、間違いやすいポイントを、初めて手続きを行う方にも分かりやすく解説します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

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司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

相続人申告登記は自分が相続人であることを申し出る手続き

相続人申告登記とは「自分がこの不動産の相続人である」ということを法務局に申し出る手続きです。

相続が発生した不動産は、名義を相続人に変更する「相続登記」を行うのが本来の流れです。

しかしさまざまな事情で相続手続が進められない場合や、遺産分割協議がまとまっていない場合に、相続人申告登記を活用することで、相続登記の義務を一時的に果たしたことにできるのです。

相続登記の義務化に伴い2024年からスタート

相続人申告登記の制度は、2024年4月1日から相続登記が義務化されたことに伴って新設された制度です。

相続登記は「不動産の取得を知った日から3年以内」に、手続を完了させなくてはなりません。

(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

引用元:不動産登記法 第76条の2

この制度は2024年4月1日以前に相続を開始した不動産も対象で、猶予期間とされる3年間の間に相続登記を終えなければなりません。

しかしさまざまな事情で期限内に相続登記を完了させることが難しい場合の救済措置として、相続人申告登記の制度が新設されたのです。

参考記事:相続登記の義務化についてわかりやすく解説!罰則や放置するリスクとは?

相続登記との違い

相続登記と相続人申告登記は、登記簿に記載される情報が大きく異なります。

相続登記は不動産を相続人の名前に変更し、登記簿に記録するための手続きです。

一方、相続人申告登記はあくまで「相続人は自分である」申告するだけで、登記簿に不動産の権利者として名前が記載されるわけではありません。

相続登記済なら申告登記は不要

相続人申告登記はなんらかの事情で相続登記ができない時に、ひとまず登記の義務を果たしたとみなすための制度です。

そのため、すでに相続登記を済ませている不動産については、改めて相続人申告登記を行う必要はありません。

相続人申告登記はどのような時に行う?

相続人申告登記は必ず行わなければならないというものではありませんが、以下のような場合に用いられます。

  • 相続関係の調査に時間がかかっている時
  • 遺産分割協議に合意を得られない時

被相続人の婚姻歴や養子縁組の有無により、書類収集の難易度は大きく変わります。

場合によっては複数の役所から書類を取り寄せなければならないケースもあり、相続手続をなかなか始められないことも。

他にも遺産分割協議の話し合いがまとまらない時にも、相続人申告登記を行います。

相続登記の期限である3年以内に登記が行えないと分かったタイミングで、相続人申告登記を検討すると考えれば良いでしょう。

相続人申告登記をしないとどうなる?

2024年4月の法改正以降「相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内」に、相続登記または相続人申告登記のどちらかを行わなければなりません。

相続人申告登記をせずに放置していると、相続登記の申請を怠ったとして以下の法律に基づき、10万円以下の過料に処される可能性があります。

(過料)
第百六十四条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

引用元:不動産登記法 第164条

 

相続人申告登記は相続人の確定に時間がかかったり、遺産分割協議がまとまらないなどの事情を加味したうえで新設された制度です。

期限内に必ずどちらかの手続きを行いましょう。

参考記事:相続の手続きはいつまで?期限と間に合わない場合の対処法を解説

相続人申告登記を行うメリット

相続人申告登記を行うメリットとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 相続人単独でも手続きができる
  • 相続登記の不履行による過料を回避できる
  • 費用や手続きの負担が少ない
  •  

それでは、それぞれの内容について詳しくみていきましょう。

相続人単独でも手続きができる

相続人申告登記は相続人が単独で行うもので、他の相続人の同意を得る必要がありません。

そのため、遺産分割協議や相続人の確定が終わっていない状態でも、単独で手続きできます。

相続登記の不履行による過料を回避できる

不動産の相続は遺産分割協議や書類の収集に時間や手間がかかることが多く、相続登記の期限まで余裕がないというケースも少なくありません。

相続人申告登記を行うことで、ひとまず登記の義務は果たされるので、相続登記の不履行による過料を心配しなくても良くなります。

義務を果たしたうえで余裕をもって相続手続を進められるのは、大きなメリットといえるでしょう。

費用や手続きの負担が少ない

相続人申告登記は押印や電子署名が必要ないというだけでなく、費用負担も少ないという特徴があります。

相続登記と比べて必要書類も少ないので、単独で簡単に手続きが行えます。

相続人申告登記を行うデメリット

相続人申告登記を行うデメリットとして「相続人申告登記では登記簿に所有者としては載らない」という点が挙げられます。

ここでは、なぜ所有者として記載されないのか、それによって何が起きるのかを詳しく解説します。

相続人申告登記では所有者として登録できない

相続人申告登記は不動産の所有者が誰かを申告する制度です。

そのため、登記簿に記載されるのは「自分がこの不動産の相続人である」という情報だけです。

登記簿に所有者として記載されるには、相続登記を行わなければなりません。

遺産分割協議がまとまったら相続登記を再度行う必要がある

相続人申告登記を行ったあと遺産分割協議がまとまったら、改めて相続登記を行う必要があります。

相続人申告登記はあくまで「つなぎ」であり、不動産の名義を正式に変更できるのは相続登記のみです。

ただし相続登記の期限は3年以内と定められており、その間に遺産分割協議がまとまれば相続人申告登記を行う必要はありません。

二度手間を避けるのであれば、ある程度手続きの進捗を見守り、いよいよ期限内に間に合わないという段階になってから相続人申告登記を行うという方法もあります。

売却ができない

不動産を活用するあてがない、誰も住む人がいないなどの理由で相続不動産の売却を検討するケースです。

売却して得られた現金を法定相続分にのっとって分配する方法を「換価分割」と呼びます。

不公平感が少なく、相続人の経済的負担が少ないというメリットがありますが、この方法を選択するには不動産を相続人名義に変更するのが原則です。

相続人申告登記は「自分が相続人である」と申告するだけのものなので、この時点では不動産の権利を持っていないため売却することはできません。

登記簿に住所氏名が記載される

相続人申告登記を行うと、登記事項証明書に申告した人の住所・氏名が相続人として記載されます。

これ自体に問題はないのですが、登記事項証明書は第三者でも取得できるため、相続不動産と申告人の関係を容易に知ることができます。

具体的には不動産売却の勧誘や土地活用のセールスを受けたり、庭木の伐採や清掃をしてほしいといった近隣からの要望が持ちかけられる可能性が。

相続手続を内密に進めたい場合や、プライバシーに配慮したいというときは慎重に考えるほうが良いでしょう。

相続人申告登記の必要書類

相続人申告登記の必要書類として、以下のようなものが挙げられます。

書類
入手場所
被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本(除籍謄本) ※申し出を行うのが被相続人の子どもであれば不要 本籍地の市町村役場
申し出をする人の戸籍謄本 本籍地の市町村役場 (マイナンバーカードがあればコンビニエンスストアや郵送でも取得可能)
申し出をする人の住民票 市区町村役場 (マイナンバーカードがあればコンビニエンスストアなどの端末から入手可能)

申し出を行うのが被相続人の子どもであれば、自分の戸籍謄本だけで相続関係を証明することができますが、被相続人の兄弟姉妹(もしくは甥・姪)の場合は、上位の相続人(子どもや両親)が亡くなっていることを証明する書類を提出することになります。

その場合は被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)や、改正原戸籍を取得することになりますが、兄弟姉妹の戸籍謄本をいきなり請求することはできません。

取得手続きは市町村によって異なりますが「相続のために必要である」という証明が必要になるケースがほとんどです。

書類の手配には時間や手間がかかりますが、被相続人の戸籍謄本は相続手続にも欠かせないものなので早めに取り掛かることをおすすめします。

場合によっては、専門家に相談することも視野に入れましょう。

申告登記のやり方と提出の流れ

相続人申告登記のやり方と提出の流れは以下のようになっています。

  • 必要書類を収集する
  • 申出書を作成する
  • 法務局に書類を提出する

それでは、順を追って流れを見ていきましょう。

必要書類を収集する

先に解説した必要書類を収集します。

戸籍謄本や住民票は相続手続でも必要なので、真っ先に取り掛かることをおすすめします。

特に兄弟姉妹の相続の場合、書類収集に手間と時間がかかります。

相続不動産の確定と並行して進めていくと良いでしょう。

相続不動産を確定させる

相続する不動産が複数ある場合、相続人申告登記はそれぞれ一件ずつ行う必要があります。

固定資産税の通知書や権利証などをもとに、被相続人の所有していた不動産を確定させましょう。

相続人申告登記ならびに相続登記は、不動産を管轄している法務局に申請します。

相続不動産が点在していて確定が難しい場合は、専門家に代行してもらうことも検討しましょう。

申出書を作成する

相続不動産が確定できたら、申出書を作成していきます。

相続人申告登記の申出書は、法務局の「相続人申告登記について」からダウンロード可能です。

申立書の作成は、手書き・パソコンいずれの形式でも問題ありません。

以下のように相続人の立場(子、配偶者、兄弟姉妹等)それぞれの記載例も用意されていますので、初めての方でもさほど迷うことはないでしょう。

また、マイナンバーカードを持っていればWebブラウザ上で申請が行える「かんたん登記申請」を利用することもできます。

法務局に書類を提出する

完成した申立書と必要書類を、不動産を管轄している法務局へ提出します。

申告登記には費用はかかりません。

法務局まで直接出向けない場合は、郵送で申請することも可能です。

相続人申告登記でよくある質問

相続人申告登記でよくある質問を以下にまとめました。

  • 過去に相続した不動産でも相続人申告登記はしたほうが良い?
  • 相続人のひとりが相続人申告登記をしたら、ほかの相続人にも適用される?
  • 相続人申告登記のあと住所・氏名の変更があった場合はどうすれば良い?

ここでは、質問について詳しく回答していきます。

過去に相続した不動産でも相続人申告登記はしたほうが良い?

過去に相続した不動産も、相続登記義務化の対象です。

相続人のひとりが相続人申告登記をしたら、ほかの相続人にも適用される?

相続人申告登記は相続人が個々で行うものなので、相続登記の義務を果たしたとみなされるのは申出書を提出した相続人のみです。

他の相続人も同じように相続登記の義務を果たすには、それぞれが相続人申告登記を行う必要があります。

ただし、複数の相続人が連名で申告登記を行うことは可能です。

まとめて行えば書類の収集や事務作業を大幅に節約できるので、事前に相続人同士でよく相談することをおすすめします。

相続人申告登記のあと住所・氏名の変更があった場合はどうすれば良い?

相続人申告登記のあと住所や氏名に変更があった場合は、その旨を届け出る必要があります。

申告登記と同じように申立書を提出するか、オンラインで手続を行います。

オンラインで手続きを行う場合は、申告登記の際に利用した「かんたん登記申請」は対応していないので、「登記・供託オンライン申請システム」を利用する必要があります。

手続きに自信がないときは専門家に依頼するという選択肢も

相続人申告登記は相続登記の期限内に手続が完了しそうにない時、登記の義務を果たせる新しい制度です。

手続や必要書類は相続登記よりも簡略化されていますが、不動産が複数ある場合や手続の時間を取れそうにない場合は、専門家に依頼するという選択肢も。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、静鉄不動産と専門家が連携して相続財産調査から登記、不動産の管理・運用・売却までお客様のお悩みを解決します。

どうぞお気軽にご相談ください。

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相続不動産の共有名義は危険?トラブルを回避するための対策を解説

2025.07.23

相続によって親の不動産を引き継ぐ際、「平等に分けられないしとりあえず共有名義にしておこう」と考える方も少なくありません。

しかし共有名義にしたことで「売却の同意が得られず、土地を活用できない」「土地の維持費用を誰が払うかで揉めた」などの問題が起きやすいという面も。

この記事では相続で共有名義にした不動産の注意点や、将来のトラブルを回避するための対策を分かりやすく説明します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

相続不動産の共有名義とは?

相続不動産を共有名義で所有するとは、どのような状態を意味しているのでしょうか。

ここでは相続ルールに基づいて、基本的な概要を解説していきます。

各共有者が登記に記される「持分」という権利を持っていること

相続した不動産を複数人で共有する場合、共有者全員の氏名と持分が記載されます。

持分は割合で記載されており、その割合分だけ法的な権利を持つことを意味しているのです。

持分の割合は法定相続分や遺産分割協議によって決まる

不動産を共有する際の持分は、法定相続分や遺産分割協議によって決められます。

たとえば兄弟3人で親の不動産を相続する場合、法定相続分通りに分けると3分の1ずつ所有することになります。

遺産分割協議で同意を得られればこの割合を変えたり、誰かひとりだけが不動産を取得することも可能です。

不動産の相続時に共有名義が選ばれる理由

不動産の共有名義が選ばれる理由として、不公平感が少ないという点が挙げられます。

不動産はその性質上、現物のまま均等に分けることが難しい財産です。

とりあえず共有名義にしておくことで、まずは平等に相続したという納得感が得られるのは理由として大きいでしょう。

また、将来的に土地の活用方法が決まっていない時に、暫定措置として一旦は共有名義にしておくという選択も多くみられます。

共有名義の不動産だけを相続放棄することはできない

相続放棄をすると最初から相続人ではなかったという扱いになるため、相続財産すべてに対する権利を失います。

そのため預貯金は引き継ぎたいが不動産は要らないなど、相続する範囲を指定することは認められていません。

共有名義の不動産だけを相続したくないという場合は、遺産分割協議などで持分を設定する必要があります。

相続不動産の共有名義を放置することで起きる3つのリスク

相続した不動産を「とりあえず」で共有名義にして放置すると、思わぬトラブルの原因になることも。

ここでは相続不動産の共有名義を放置することで起きるリスクを、3つにまとめてみていきましょう。

相続が複雑化して権利関係が混乱する

共有名義人が亡くなると、法定相続人に持分が引き継がれます。

持分を法定相続分に従って分割していくと、代が替わるにつれて所有者はどんどん増えていってしまいます。

誰がどれだけの権利を持っているのか不明確になり、権利関係が非常に複雑になってしまうというリスクが生じるのです。

持分売却により資産価値が低下する

共有者は自分の持分の範囲であれば、不動産を売却することができます。

つまり他の共有者の同意がなくても、第三者に持分を売却することが法的に認められており、知らない人が突然共有者になるリスクも考えられます。

しかし土地の一部が売却されてしまうと全体の活用に支障をきたし、資産価値が低下する可能性も。

また、知らないうちに他人と共有関係になるかもしれないというリスクも考えられます。

維持費の負担や占拠などで意見が対立しやすい

共有不動産にかかる固定資産税や維持管理費は、各共有者が持分に応じて負担する必要があります。

また、不動産のメンテナンスや清掃など、負担を分担しづらい作業も少なくありません。

しかし、こうした支払いを滞納したり、誰かひとりに負担が集中している、もしくは占有している状態が長く続くと、不公平感からトラブルに発展するおそれがあります。

たとえば、兄弟3人で共有している不動産で、1人がその物件を単独で居住したり賃貸運用しているにもかかわらず、得た収益を分配していない場合、他の2人が損害賠償請求(不当利得返還請求)を行うといったトラブルも起きています。

相続不動産の登記で共有名義を選ぶときの注意点

相続不動産の登記で共有名義を選ぶときの注意点として、以下のようなものが挙げられます。

  • 「共有名義」は自動的に決まるわけではない
  • 共有名義にしてしまうと、売却・建て替え・賃貸など全て共有者の合意が必要となる
  • 登記申請には、誰がどの割合で共有するかが書かれた協議書が必要となる
  • やむを得ず共有名義にする場合は管理ルールの覚書を残しておく

それでは、それぞれの内容について詳しくみていきましょう。

「共有名義」は自動的に決まるわけではない

遺産分割協議を行わない場合、相続財産は法定相続分に従って分けることになりますが、自動的に名義が変更されるわけではありません。

相続登記を行い、それぞれの持分を登記する必要があります。

共有者が亡くなった場合も同様で、自動的に名義が書き換わることはないので注意が必要です。

売却・建て替え・賃貸など全て共有者の合意が必要となる

不動産の売却や建て替えといった「変更行為」には、共有者全員の同意が必要です。

(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

引用元:民法第251条

 

一方、賃貸や修繕などの「管理行為」は、共有者の持分の過半数による同意で実施することが可能です。

(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

引用元:民法第252条

 

ただし、具体的な事情によって判断が分かれる場合もあるため、事前に専門家へ相談しておくと安心です。

共有者が死亡すると再相続で名義人が雪だるま式に増える

共有者が亡くなった場合、その権利は相続人に移行します。

相続不動産の2分の1を持つ人が亡くなった場合、法定相続においては配偶者や子どもがその不動産を相続する権利を持ちます。

配偶者と子どもが1人いるケースでは2分の1ずつ相続するので、全体から考えると、2分の1をさらに半分にした4分の1を所有することになります。

このように持分が細分化され、年数が経つにつれて共有者が雪だるま式に増えていくという問題が生じやすくなるのです。

管理責任者をあらかじめ決めておくと後々トラブルを防げる

固定資産税の支払いや修繕対応といった日常の管理は、「誰かがやるだろう」と放置されやすいものです。

共有名義の登記をする時点で管理に必要な項目を洗い出し、それぞれに担当や責任者を決めておくことをおすすめします。

登記申請には、誰がどの割合で共有するかが書かれた遺産分割協議書が必要となる

登記申請は不動産の所有者や権利関係を登記簿に記載する手続きです。

相続によって不動産を共有名義にする場合は、誰がどの割合で共有するかを明文化した遺産分割協議書が必要になります。

なお、協議書には持分割合だけでなく、「売却や建て替えの際は○人以上の同意が必要」「管理費用は○○の比率で分担する」など、今後の管理や処分に関する意向をメモ程度でも書き加えておくと、後々のトラブル防止に役立ちます。

協議書自体に法的強制力を持たせるためには、内容を公正証書化したり、共有者間での署名・押印をしっかり整えておくことも検討しましょう。

やむを得ず共有名義にする場合は管理ルールの覚書を残しておく

共有名義の不動産で起きやすいトラブルとして、物件の占有や維持費の負担などが挙げられます。

今までなんとなく管理がうまくいっていた物件でも、年数の経過や状況が変わることでそのバランスが崩れることも考えられます。

共有名義にして登記を行う時点で、管理ルールをしっかり決めて覚書として残しておきましょう。

相続不動産の共有名義を解消する4つの方法

相続不動産の共有名義を解消する方法として、以下の4つが挙げられます。

  • 不動産を売却して現金で分ける(換価分割)
  • 不動産を引き継ぐ人が代償金を支払う(代償分割)
  • 土地を分筆して個々に分ける(現物分割)
  • 自分の持分を第三者に売却する

ここでは、それぞれの内容について詳しく説明していきます。

不動産を売却して現金で分ける(換価分割)

不動産を売却して、その代金を相続人で分ける方法です。

相続人が誰も土地を引き継げない場合や、代償分割の資金を用意できない場合などによく選ばれる方法です。

現金で分けられるので不公平感が少ないというメリットがある一方、被相続人(亡くなった人)の名義では売却できないので、いったんは相続を行わなければならないというデメリットもあります。

不動産を引き継ぐ人が代償金を支払う(代償分割)

相続人の誰かが不動産を引き継ぎ、他の相続人には持分に相当する代償金を支払うという方法です。

家屋と畑を取得して家業を引き継ぐ場合などに、よく選ばれています。

相続不動産を維持できるというメリットはありますが、不動産を引き継ぐ人が代償金を支払わねばならないため経済的な負担が大きくなるというデメリットも。

土地を分割して個々に分ける(現物分割)

相続人の持分に応じて土地を分割し、それぞれが登記する方法です。

分割したあとは土地をどのように活用するかは各相続人に委ねられるため、自由度の高い方法といえるでしょう。

ただし、建物込みで資産価値を形成している場合や、土地面積が小さい場合など、分割すること自体が難しいというケースも考えられます。

自分の持分を第三者に売却する

共有名義の場合、自分の持分の範囲であれば自由に売却が可能です。

しかし他の共有者との感情的な問題、相場よりも安く買い叩かれるリスクなどを考えると、できる限り避けたほうが良いでしょう。

相続不動産が共有名義になっていて話し合いがまとまらない場合の対応策

相続不動産の共有状態を解消するのに、どうしても話し合いがまとまらない場合、どのような対応策が考えられるかをみていきましょう。

共有物分割請求調停を行う

共有物分割請求調停では、裁判所を介して共有名義の解消のための話し合いを行います。

当事者同士の話し合いで合意に至らなかった場合、訴訟を提起することもできますが、話し合いで解決したいという意思があるときに調停を選択するケースが多いようです。

調停によって成立した内容は調停調書として記録され、裁判判決と同様の効力を有します。

場合によっては強制執行も可能になるので、内容は充分チェックするようにしましょう。

専門家に相談する

不動産の共有状態は権利的に複雑な部分も多く、思い込みや誤解から話し合いがまとまらないケースも少なくありません。

お互い冷静に話し合うためにも、まずは情報を整理したうえで、専門家に相談するのもひとつの方法です。

相続不動産の共有名義でよくある質問

共有名義の不動産を相続した場合、その人それぞれの状況によって手続きをどのように進めれば良いのかが複雑です。

  • 共有名義人が亡くなったら誰が引き継ぐ?
  • 共有名義の固定資産税は誰が支払う?
  • 連絡の取れない共有名義人がいるときはどうすれば良い?
  • 共有者が認知症・判断不能なときはどう対処する?
  • 建て替えやリフォームをしたいとき、どう進めればいい?
  • 共有名義の不動産を貸すとき、賃料はどう分ければいい?
  • 共有名義の不動産を勝手に使われた場合、損害賠償を請求できる?

上記様な疑問について詳しく解説します。

共有名義人が亡くなったら誰が引き継ぐ?

共有名義人が亡くなった場合、所有していた不動産は以下の法律に基づき、法定相続人に引き継がれます。

(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

引用元:民法第896条

 

別の共有名義者に引き継がれることはないので、注意しましょう。

共有名義の固定資産税は誰が支払う?

共有名義の不動産にかかる固定資産税は、共有者がその持分割合に応じて負担することになっています。

しかし実際のところは代表者がまとめて払う仕組みになっているので、市町村から共有者に対して請求が届くことはありません。

連絡の取れない共有名義人がいるときはどうすれば良い?

連絡が取れない共有者を探す方法として、以下のような方法が挙げられます。

  • 登記簿から住所を確認する
  • 不在者財産管理人の申し立てを行う

登記簿や住民票から探す場合は、弁護士に相談するのもひとつの方法です。

職務上の請求権限を持っているので、手続きがスムーズに進められます。

共有者が認知症・判断不能なときはどう対処する?

共有名義人が認知症や病気などで意思能力を失っていると判断された場合、本人の同意が必要な事柄については「成年後見人」が本人に代わって判断することになります。

成年後見制度の申し立ては時間や手間がかかり、自分たちだけで手続きを行うのは困難です。

高齢の共有者がいる場合は、早めに対策を講じておくことをおすすめします。

建て替えやリフォームをしたいとき、どう進めればいい?

建て替えやリフォーム、解体などを行うには共有名義人全員の同意が必要です。

一部のリフォームや補修には同意が要らないものもありますが、不動産の資産価値に関わる変化を加える場合には同意が必要だと考えたほうが良いでしょう。

基本的には話し合いで同意を得ることになりますが、まとまらない場合は共有物分割請求調停の申し立てを行い、裁判所を介して交渉を続けていくことになります。

調停でも合意が得られない場合は、訴訟へ発展する可能性もあるので、早めに専門家に相談することをおすすめします。

共有名義の不動産を貸すとき、賃料はどう分ければいい?

共有名義の不動産から得られた家賃収入は「法定果実」と呼ばれ、不動産を所有している人全員に権利があります。

家賃収入の分配する割合は共有者の持分割合に準じるため、たとえば3分の1の持分を持っていれば、家賃収入も3分の1受け取ることができます。

なお、賃貸契約を代表者が単独で結んでいた場合、他の共有者と収益配分でトラブルに発展する可能性があります。

賃貸契約を開始する際に、収益配分についてしっかり取り決めておくことが大切です。

共有名義の不動産を勝手に使われた場合、損害賠償を請求できる?

共有者は不動産の全部を使用することができますが、あくまで持分に応じた使用に限られます。

共有者は原則として不動産全体を使用できますが、以下の法律に基づき、他の共有者の権利を侵害しない範囲でなければなりません。

(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

引用元:民法第249条

 

そのため共有者のひとりが不当に不動産を占有している場合は、損害賠償を請求することも可能です。

このような不当な使用は、上記民法第249条の趣旨に反するだけでなく、不法行為(民法第709条)や不当利得(民法第703条)として損害賠償や返還請求の対象となることがあります。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用元:民法第709条

(不当利得の返還義務)
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

引用元:民法第703条

実際の請求には、独占使用による損失や受け取っていた賃料相当額などを立証する必要があります。

ただし不動産の使用は民法で認められた権利のため、法的トラブルになると事態が複雑になる可能性も。

共有不動産は、事前に使用範囲を明確に取り決めておくことをおすすめします。

次世代に迷惑をかけないために相続不動産の共有名義は見直しをしよう

共有名義の不動産は売却や土地活用に全員の同意が必要になるため、将来的にトラブルのリスクが高まります。

土地の資産価値を下げず、スムーズに共有名義の見直しをするなら専門家の助言を受けることを検討しましょう。

静鉄不動産は地域密着型の不動産会社として、長年多くのお客様の暮らしをサポートしてきました。

その蓄積されたノウハウと士業の専門知識を活かし、相続のお困りごとを解決する静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターを展開しています。

共有名義の不動産の相続手続きや、遺産分割、財産調査から法務サポートまで、どうぞお気軽にご相談ください。

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相続不動産を公平に分割するには?必要な準備やルールを解説

2025.07.23

親が亡くなったあと、残された兄弟姉妹で悩んでしまいがちなのが実家や土地などの不動産をどのように分ければよいかという問題です。

実際に国税庁が令和5年12月に公表した「令和4年分 相続税の申告事績の概要」によれば、令和4年に相続申告された財産のうち、土地が31.0%、家屋が6.4%と、不動産が37.4%を占めています。

引用元:国税庁「令和4年分 相続税の申告事績の概要

現金と違って不動産は均等に分けることが難しいため、相続財産のなかでも分割が難しい部類に入ります。

兄弟姉妹にトラブルなく分けたいが、どこから手をつければよいか分からず悩んでいるという方も多いのではないでしょうか。

この記事では相続した不動産を分割する方法や注意点を、初めて相続に向き合う方にも分かりやすく解説します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

相続で不動産を分割するときの基本ルール

民法において亡くなった方(被相続人)の財産は、法定相続人に引き継がれます。

財産には預貯金や有価証券だけでなく、不動産も含まれています。

不動産の相続は遺言があればその内容に従い、遺言がなければ民法で定められた順位と持ち分で相続人に分けられます。

それでは、不動産を分割するとき特有の基本ルールについてみていきましょう。

不動産は「現物分割」しにくい

相続における「現物分割」とは、財産をそのまま分けることを指します。

預貯金であれば持ち分ごとにきれいに分割できますが、土地や建物は実物があるので持ち分通りにきれいに分けることができません。

また、細かく分割することで土地の活用ができなくなったり、資産価値が低下する可能性も。

共有名義にしても権利関係が複雑になるので、デメリットのほうが大きくなるケースも珍しくありません。

「不動産の相続は難しい」といわれる理由のひとつは、こういった点にあるといえるでしょう。

誰か1人が全部もらうには「遺産分割協議」が必要

相続人のうち誰かひとりが不動産をすべて引き継ぐには、遺産分割協議を行う必要があります。

これは不動産に限らず財産を分割する際に必要なもので、相続財産を「誰が・どのように」引き継ぐのかを決めるものです。

相続人全員で話し合って不動産を誰か取得するかを決め、その内容を文書に記録し、その内容に従って相続手続きを進めていきます。

法定相続人の不動産持ち分

法定相続人の相続割合は、以下のように民法によって決められています。

(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

引用元:民法第900条

まず法定相続人になれるのは配偶者・子(孫)・父母(祖父母)・兄弟姉妹(甥・姪)です。

誰が相続人になるかは相続順位によって決まりますが、配偶者は常に最上位の相続人になります。

法定相続分の持ち分は以下のようなものです。 最上位の相続人となる配偶者を起点に考えてみましょう。

相続人の組合せ
配偶者の取り分
その他相続人の取り分 ※人数で均等に分ける
配偶者のみ 全部 なし
配偶者と子ども 2分の1 2分の1
配偶者と親(祖父母) 3分の2 3分の1
配偶者と兄弟姉妹 4分の3 4分の1
子ども(孫)のみ なし 全部
親(祖父母)のみ なし 全部
兄弟姉妹のみ なし 全部

子どもや兄弟姉妹が亡くなっている場合は、孫や甥・姪が相続人となります。

参考記事:相続人の順位はどう決まる?遺産の分け方やケースごとにポイントを解説

相続不動産の分け方は4つ

相続不動産を分ける方法として、次の4つが挙げられます。

  • 代償分割
  • 現物分割
  • 共有分割
  • 換価分割

ここでは、それぞれの方法について詳しく解説していきます。

代償分割

不動産を相続人のひとりが引き継ぎ、他の相続人には持ち分に相当する代償金などを渡す方法です。

相続人のひとりが不動産や家業を引き継ぐ場合などに、よく選択されます。

不動産を手放さなくてよいというメリットがある一方で、不動産を引き継いだ相続人の経済負担が大きくなるというデメリットもあります。

また、代償金の額によっては贈与税がかかる可能性もあるという点に注意が必要です。

原則として代償金は贈与税の対象にはなりませんが、相場とかけ離れていた場合には贈与とみなされる可能性があるため、その際には士業の専門家への確認が望ましいです。

現物分割

法定相続分に従い、不動産を分筆して分ける方法です。

不公平感が少ないというメリットはありますが、もともとの土地が狭かったり、建物が建っている場合など現実的には難しいケースが少なくありません。

また、土地を分割することで資産価値が下がってしまい、土地の活用に支障をきたす可能性もあります。

相続不動産がある程度広く、建物が建っていない場合などに用いられる方法です。

共有分割

相続人全員が共有名義で不動産を引き継ぐ方法です。

法定相続分に従って、それぞれの持ち分を登記簿に記載します。

すぐに不動産を手放さなくて済み、相続税の節約にもつながるというメリットがある一方、売却や解体に全員の同意が必要になるためトラブルに発展しやすいという問題も。

また、年数が経って共有者が亡くなった際に権利関係が複雑になりやすいというデメリットもあります。

換価分割

相続不動産を売却し、売却代金を相続人で分け合う方法です。

現物のままでは分けづらい不動産を、現金に換えることで法定相続分通りに分配できます。

相続人の間で意見がまとまらない場合にも有効な方法ですが、換価分割の前に、まずは不動産を相続人名義に相続登記する必要があります。

登記が完了していなければ、売却手続きができません。

また、不動産の市場価格の変動によって受け取れる金額が左右される点には注意が必要です。

相続不動産を分割する際の流れ

相続不動産を分割する際の流れは以下のようになっています。

  • 遺言書の有無を確認する
  • 必要書類を収集する
  • 法定相続人を確定させる
  • 相続財産を確定し、評価を行う
  • 遺産分割協議を行う

遺言書の有無を確認する

まず最初に被相続人(亡くなった人)が遺言書を残していないか、よく確認しましょう。

遺言書は相続において非常に優先度が高い書類で、あとから遺言書が出てきた場合、相続手続を最初からやり直さなければならないことも。

遺言書の記載内容は法定相続分よりも優先されるため、たとえば「自宅は長男に相続させる」と記載があれば、そのとおりに登記を行うことになります。

ただし遺言内容がすべて通るわけではなく、相続人には最低限の取り分として「遺留分」が法律で認められています。

遺留分を侵す遺言については、裁判所に対して遺留分侵害額の請求調停を起こすことが可能です。

遺言がない場合は法定相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産をどのくらい引き継ぐかを話し合うことになります。

必要書類を収集する

一般的な相続に必要な書類として、以下のようなものが挙げられます。

  • 被相続人の出生から死亡までが記載された戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 相続人全員の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 相続不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)
  • 固定資産評価証明書

被相続人(亡くなった人)に複数の婚姻歴があったり、養子縁組を行っていた場合、必要書類を集めるのに時間や手間がかかるケースも少なくありません。

必要書類の収集は相続人同士で手分けして、できるだけ早めに取りかかることをおすすめします。

参考記事:相続不動産の登記に必要な書類とは?ケース別の書類一覧や注意点を解説

法定相続人を確定させる

戸籍謄本をもとに出生からの記録を辿り、法定相続人を確定させます。

以前の婚姻で設けた子どもや養子も、法定相続人として同じ権利を持つため、戸籍謄本を読み解いていく作業が必要です。

また、子や兄弟姉妹が亡くなっている場合は孫や甥・姪が代わりに相続人になります。

相続財産を確定し、評価を行う

土地の権利証や固定資産税の通知書等をもとに、相続財産を確定させていきます。

不動産の場合は評価額をもとに遺産分割協議を行うため、この時点で評価を行っていく必要があります。

評価方法として一般的なものは、以下のようなものです。

  • 相続税評価額(路線価方式など):相続税の計算に使われる公的評価。売買価格より低めになることが多い
  • 固定資産税評価額:市区町村が税額計算に使用する
  • 時価(実勢価格):市場で売却する場合の価格

相続する不動産が複数あったり、評価が難しい場合は専門家へ相談するのもひとつの方法です。

遺産分割協議を行う

遺産分割協議は被相続人の財産をどのように分けるか話し合うもので、相続人全員が参加しなければならないものです。

特に不動産は法定相続分通りに分割するのが難しい部類に入り、不公平感が出たり感情の対立が起きやすいものです。

合意した内容を遺産分割協議書に記載しておくことで「全員で話し合って同意した」という根拠にもなります。

相続登記を行う

財産の分割方法が決まったら、不動産を相続する人の名義に書き換える相続登記を行います。

相続登記は2024年4月1日から義務化されており、「相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内」に登記を行わないと、10万円以下の過料が科されるおそれがあります。

(相続等による所有権の移転の登記の申請)
所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権所有権を取得した者も、同様とする。

引用元:不動産登記法 第四条第七十六条の二

また、相続登記が終わらないと売却もできないので、期限内にかならず手続きを済ませましょう。

相続不動産の分割で揉めやすいのはどんなときか

不動産の相続は制度上の難しさや、平等に分けづらいという性質もあり、トラブルに発展しやすいものです。

ここでは、以下のようなトラブルについて事例と対策を解説していきます。

  • 換価分割がうまくいかないとき
  • 代償分割の資金がないとき
  • 分け方で話し合いがまとまらないとき
  • 寄与分や特別受益を主張されたとき

換価分割がうまくいかないとき

換価分割は不動産を売却した売却益を平等に分ける方法ですが、需要と供給のバランスや景気によって売却額が大きく変動するというリスクがあります。

また、どのタイミングで売却するかで相続人の意見が対立し、手続きが進められなくなることも。

こういった場合は、複数の不動産会社に査定を依頼しておおまかな相場を知るとともに、相続人間で情報をしっかり共有することが大切です。

代償分割の資金がないとき

代償分割は相続人のひとりが不動産を相続し、他の人には相続分に相当する代償金を渡す方法です。

ここで問題になるのが不動産を引き継ぐ人が代償金を用意できず、手続きがストップしてしまうという事態です。

こういった場合は分割払いの契約を結んだり、不動産を担保にして融資を受けて代償金を支払うことになります。

また、不動産以外の相続財産でバランスを取るという方法もあります。

分け方で話し合いがまとまらないとき

遺産分割協議がまとまらない時には、家庭裁判所の遺産分割調停を利用できます。

調停は裁判に進む前段階ともいえるもので、調停委員立ち合いのもとで互いの主張を整理しながら合意を目指します。

調停は自分たちだけで申し立てできますが、その前に専門家に相談してアドバイスを受けるのもひとつの方法です。

寄与分や特別受益を主張されたとき

「親の介護を長年続けていた」「他の兄弟は家を買う時に援助をもらっていた」など、生前の貢献や被相続人から受けた利益を相続分に加味してほしいと主張されるケースです。

寄与分や特別受益について民法903条、904条の2で次のように定義されています。

(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

引用元:民法第903条

(寄与分)
第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

引用元:民法第904条の2

寄与分や特別受益を加味して相続分を修正した事例はありますが、実際に認められるケースは多くありません。

しかしこういった問題は長年蓄積された感情の問題でもあるため、法律論だけで納得するのは難しい部分も。

どうしても話がまとまらない場合は、専門家に相談することをおすすめします。

相続した不動産の分割をプロに相談したほうがよいケース

相続した不動産の分割において以下のような問題が起きている場合は、司法書士や弁護士といった専門家に相談することをおすすめします。

  • 相続する不動産が複数あり、種類もさまざまある
  • 相続人同士のトラブルが起きている
  • 手続きを進める時間が取れない
  • 書類収集が難航している

ここではそれぞれについて詳しく解説していきます。

相続する不動産が複数あり、種類もさまざまある

相続する不動産が複数ある場合、分割の難易度が一気に上がります。

物件ごとに今後の活用方法を決めたり評価額を算出するのは、広い分野の総合知識が求められます。

遺産分割協議から相続登記まで代行してもらうなら、司法書士に相談するとよいでしょう。

参考記事:司法書士に相続相談できる内容とは?費用相場や探し方を詳しく解説

相続人同士のトラブルが起きている

「話し合いがこじれてしまい、手続きが止まっている」「感情的になって話が進まない」という場合は、弁護士を代理人に立てるという選択肢があります。

専門家に間に入ってもらって情報を整理するだけでも、案外あっさりと合意を得られるケースも少なくありません。

また、話し合いがまとまらず裁判に発展した場合、代理人になれるのは弁護士だけです。

費用はかかりますが、裁判を見据えての話し合いであれば最初から弁護士に依頼するほうがスムーズに進むでしょう。

手続きを進める時間が取れない

相続は慣れない用語が多いだけでなく作業も煩雑なため、仕事や家事で忙しい人にとっては大きな負担です。

また、法務局などの官公庁は平日しか開いていないので、そのたびに休みを取らなければならないという問題も。

司法書士や行政書士に依頼すれば、必要書類の準備から法務局への申請まで代行してもらえるため、時間や労力を大きく節約できます。

書類収集が難航している

被相続人が複数回結婚していたり、養子縁組をしていると、必要な書類を集めるのが非常に煩雑になります。

戸籍謄本(全部事項証明書)を漏れなく集めるのは、相続手続において非常に重要なステップです。

専門家に依頼すれば書類収集も代行してもらえるので、ミスや漏れを防いでスムーズに手続きを進められるでしょう。

相続不動産をきれいに分割するには「正しい順番」を守り「冷静な話し合い」をすることが大切

不動産の分割は注意するべきポイントも多く、進める順番を誤るとトラブルに発展する可能性もあります。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは不動産の相続から活用・売却にともなう手続をサポートする「相続ワンストップサポート」を展開しています。

さまざまな分野のプロフェッショナルと連携し、安心・確実な相続を実現します。

初回のご相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

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相続の相談は誰にする?悩み別に最適な窓口と選び方を紹介

2025.06.11

「相続が発生したけれど、何から始めればいいのか分からない」「弁護士?司法書士?誰に相談すればいいの?」など、相続について相談先がわからないという不安を感じている方は多いと思います。

相続は、人生において何度も経験することではありません。

そのため、いざというときにどこに、何を相談すべきか分からず、立ち止まってしまう方も多くいらっしゃいます。

そうならないためにも、この記事では、「自分の悩みには誰が最適なのか?」をすぐに判断できるよう、相続の相談先を悩み別にわかりやすく整理し、解説していきます。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

【お悩み別】相続の問題に対応できる相談窓口

相続の相談は、相談内容にあった最適な窓口を選ぶことから始まります。

お悩みごとに最適な窓口を一覧表にまとめています。

相続に関する基本的な相談 市役所・法テラス
相続税に関する基本的な相談 税務署・税理士
遺産分割に関するトラブルの発生時 弁護士・法テラス
相続放棄に関する相談 家庭裁判所・司法書士・弁護士
相続人調査や財産調査 司法書士・弁護士
相続不動産登記の相談 司法書士
戸籍収集・預貯金解約などの実務代行 行政書士
金融資産の手続きや今後の運用 金融機関
遺言書の作成・執行 公証役場・弁護士・司法書士
判断能力が低下した親の財産管理・生前対策 家庭裁判所・司法書士・弁護士
生前贈与・家族信託に関する相談 司法書士・税理士・弁護士・信託専門家

それぞれの相談先について詳細を説明します。

【市役所】相続の基本的な相談

市役所では相続に関する基本的な情報を教えてくれます。

市役所が対応してくれる主な相談内容は次のとおりです。

  • どんな手続きをしたら良いのかわからない
  • 対応してくれる窓口を知りたい
  • 各種届出や戸籍謄本、印鑑証明書などの相続手続きに必要な証明書の取得

相続手続きは市役所で行う手続きも多いため、基本的なことは一通り教えてくれます。

公共機関ということもあり、相談費用はかかりません。

【税務署・税理士】相続税に関する基本的な相談

税務署では相続税の基本的な情報(申告義務、書類形式など)を案内しています。

対応してくれる主な相談内容は次のとおりです。

  • 相続税の申告義務の有無
  • 相続税申告書の書き方
  • 相続税申告時の必要書類
  • 相続税の簡単な計算方法
  • 基礎控除の計算方法や特例などの要件

また、税務署での相談は無料であり、電話相談も受け付けています。

基本的な手続きに関する相談なら税務署でも問題ないと言えるでしょう。

しかし節税方法や複雑な財産構成に応じた戦略的な対策は行っていません。

込み入った内容や節税方法については、税理士への相談がおすすめです。

【弁護士・法テラス】遺産分割に関するトラブル発生時

遺産分割など、相続に関するトラブルに巻き込まれている場合は、弁護士への相談がおすすめです。

弁護士への主な相談内容は次のとおりです。

  • 遺産分割の内容に承認が取れずに揉めている
  • 見つかった遺言書の信憑性が低い
  • 遺言書に遺留分侵害の可能性が見られるため、侵害額請求をしたい

弁護士への相談費用は無料のところもあれば、有料としている事務所もあり、費用体系も事務所や相談内容や規模によって異なります。

たとえば、遺産分割調停の相談において、着手金が20万円〜30万円程度からの事務所もありますが、実際の金額は案件の難易度や財産規模によって異なります。

また、法定相続人は誰になるのか、相続放棄などや専門的な相談内容は法テラスに相談すると、詳しく教えてくれます。

法テラスでは、収入額が一定額以下の方は無料相談を受けられます。

この回数は3回までです。

【家庭裁判所・司法書士・弁護士】相続放棄に関する相談

相続放棄に関する相談は、弁護士や司法書士、家庭裁判所への相談がおすすめです。

  • 相続放棄の手続きを依頼したい
  • 相続放棄をした方が良いのか迷っている
  • 家庭裁判所とのやり取りを専門家に任せたい

相続放棄の申述は家庭裁判所に対して行う必要があり(民法第938条)、司法書士は申述書の作成支援は可能ですが、裁判所への代理申請はできません。

また、紛争が絡む場合は、弁護士(弁護士法第72条)でなければ対応できません。

とりあえずは司法書士に相談しておけば問題ありませんが、紛争がある場合は弁護士への相談を検討すると良いでしょう。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターのような、士業連携で対応している場合は、紛争の有無にかかわらず様々な士業と提携してワンストップで対応ができるので、おすすめです。

【司法書士・弁護士】相続人調査や財産調査

司法書士は戸籍謄本の収集や法定相続情報一覧図の作成や、相続人調査の手続きをスムーズに進めることができます。

不動産登記に関する知識も十分です。

弁護士は相続人調査に加えて、財産調査もスムーズに進めることができ、関係機関への照会も代理することができます。

司法書士、弁護士ともに調査結果を踏まえた上で、最適な手続きをアドバイスしてくれます。

具体的な相談内容は次の通りです。

  • 相続放棄を検討するために財産調査をしたい
  • 相続人の特定をしたい
  • 個人ではできない手続きを依頼したい

【司法書士】相続不動産登記の相談

司法書士は相続登記の専門家です。

相続登記に関する悩み事は、司法書士へ相談すると解決に導いてくれるでしょう。

相続登記に関する主な相談内容は次のとおりです。

  • 相続登記申請書の作成と提出を全部任せたい
  • 必要書類の収集を任せたい
  • 相続登記に関する質問がしたい

相続登記は自分で手続きすることもできますが、専門的な知識が必要で面倒な手続きにも対処しなければいけません。

参考記事:不動産の相続登記を自分でやる方法と注意点 | 必要書類や費用も解説

特にこだわりがなければ、司法書士へ一任するのがおすすめです。

【行政書士】戸籍収集・預貯金解約などの実務代行

行政書士は、遺産分割協議書の作成や戸籍収集、法的紛争を含まない名義変更の手続きを代行できます。

預貯金の解約手続きについては、金融機関によっては行政書士の代行が認められるケースもあります。

ただし、相続人間で争いのあるケースでは弁護士への相談が必要です。

行政書士は、主に法的な解釈の必要がない実務的なサポートが可能、と認識しておきましょう。

行政書士へ相談できる主な内容は次のとおりです。

  • 細々した名義変更などの手続きを全て一任したい
  • 相続財産の種類や評価額などを一覧表にまとめたい
  • 預貯金口座の解約や払い戻しについて

【金融機関】金融資産の手続きや今後の運用

相続が発生すると、被相続人の預金や保険など、金融資産の手続きを進めなければいけません。

被相続人の遺品や通帳の明細などを頼りに取引のあった金融機関を確認しつつ、名義変更や解約などの手続きを進めます。

金融機関への主な相談内容は次のとおりです。

  • 口座の解約や払い戻しがしたい
  • ローンの残債の確認がしたい
  • 相続した預貯金や有価証券の運用のアドバイスが欲しい

金融機関は状況に合わせて、今後の手続きと運用をサポートしてくれます。

今後の運用を深く検討してみたい場合は、複数の金融機関に相談すると、より良い選択肢を見出すことができるかもしれません。

【公証役場・弁護士・司法書士】遺言書の作成・執行

公証役場や弁護士は、遺言書の作成や執行をサポートできます。

司法書士もサポートできますが、より高い専門性を期待する場合は公証役場や弁護士のサポートを受けた方が良いです。

遺言書の作成について、主な相談内容は次の通りです。

  • 遺言書の形式と内容について相談したい
  • 遺言書作成の全般的な内容を確認したい
  • 複雑な相続に関するアドバイスを受けたい

遺言内容が複雑でない場合は公証役場、遺産分割で紛争が生じる可能性がある場合や複雑な財産や相続関係がある場合は、弁護士への相談がおすすめです。

【家庭裁判所・司法書士・弁護士】成年後見制度に関する相談

相続が発生する前に、認知症などで判断能力が低下した親の財産をどう管理すればよいか悩むケースも少なくありません。

このような場合、「成年後見制度」を利用することで、家庭裁判所が選任する後見人が代わりに財産管理や契約行為を行うことができます。

また、自分で後見人を指定しておきたい場合は「任意後見契約」の締結も可能です。

家族信託との違いについても併せて相談すると良いでしょう。

【税理士・弁護士・信託専門家】生前贈与・家族信託に関する相談

相続が発生する前に、あらかじめ財産を移転したい、将来の相続トラブルや税負担を減らしたいと考える方には、「生前贈与」や「家族信託」の活用がおすすめです。

生前贈与は、年間110万円まで非課税で贈与できる「基礎控除」や、特定目的に限定して非課税枠が拡大される「教育資金の一括贈与」「結婚・子育て資金の一括贈与」などの制度があります。

一方、家族信託は、認知症対策や相続後の資産承継に柔軟に対応できる制度です。

信頼できる家族などを「受託者」として、財産管理や処分を任せることで、親族間での円滑な資産運用が可能になります。

また、司法書士や弁護士のほか、信託実務に詳しい家族信託専門士や信託会社に相談するケースもあります。

相談できる専門家は、司法書士、税理士、弁護士、信託専門家です。

相続の一連の流れと対応できる士業

全体的な相続の流れと手続きごとに対応できる士業の一覧表を作成しました。

専門家への依頼を検討している方は、参考にしてみてください。

相続手続きの基本的な流れ

  • 遺言書の有無の確認
  • 相続人と相続財産の調査
  • 相続放棄と限定承認の選択
  • 遺産分割協議と遺産分割協議書の作成
  • 相続登記や名義変更
  • 相続税の申告と納付

各手続きに対応できる士業

相談内容 対応可能な士業
遺言書の有無の確認 弁護士 司法書士(代理申請を除く)
相続人の調査 弁護士 司法書士 税理士 行政書士
相続財産の調査 弁護士 司法書士 税理士 行政書士
遺産分割協議書の作成 弁護士 司法書士 税理士 行政書士
相続放棄と限定承認の選択 弁護士 司法書士(代理申請を除く)
相続登記 弁護士 司法書士
相続税の申告と納付 税理士
相続人どうしの紛争解決 弁護士

相続相談窓口に迷ったら?おすすめの選び方

相談窓口に迷ったら、まずは状況の切り分けから入るとわかりやすいです。

相談窓口に迷った時のおすすめの選び方を紹介します。

STEP1:何に困っているかを明確にする

相続の相談窓口は多岐に渡るため、まずは何に困っているのか明確にしなければいけません。

  • 相続手続き全般の流れを知りたい
  • 遺産分割の揉め事を解消したい
  • 相続放棄を検討している
  • 遺言書を作成したい

今、どんなことで迷っているのか、整理してみると適切な相談先を見つけやすくなります。

相続の悩みは大まかに分けることができますので、該当の悩みに対応する相談先を探してみてください。

相続に関する悩み事 対応可能な士業やチーム 詳細
相続人どうしの揉め事 弁護士 仲介や裁判の対応ができる
相続税が発生する見込みで、どうしたら良いのかわからない 税理士 節税や納税資金対策など、税金に関する専門的な対応ができる
不動産や登記の手続きが必要 司法書士 相続登記の専門家として、効率よくミスのない手続きができる
忙しいので手続きを全て一任したい 士業連携チーム 各士業による連携によって全ての課題を解決する

STEP2:相談窓口を決める

次に相談する窓口をどこにするかを決めていきましょう。

相続手続きに関する相談であれば無料相談窓口

基本的な相続の手続きの流れや必要書類、期限などに関する一般的な情報を知りたい場合は、無料相談窓口の利用も良い選択肢の一つです。

自治体や弁護士会、司法書士会などが提供する無料相談会では、専門家から基本的なアドバイスを受けることができます。

無料とはいえ、専門家からのアドバイスは心強いものです。

今後どんな手続きが必要になるのか、把握することができます。

ただし、無料相談は時間や相談内容に制限があります。

個別の複雑な相談や具体的な手続きの代行を依頼する場合は、実際に専門家や士業連携チームに依頼して打ち合わせを進めなければいけません。

相続に関する特定の悩みであれば、専門家に相談

すでに悩み事が明確になっている場合は、専門家への相談がおすすめです。

悩み事に対応する相談先は次のとおりです。

相続に関する基本的な相談 市役所・法テラス
相続税に関する基本的な相談 税務署・税理士
遺産分割に関するトラブルの発生時 弁護士
相続放棄に関する相談 家庭裁判所・司法書士・弁護士
相続人調査や財産調査 司法書士・弁護士
相続不動産登記の相談 司法書士
戸籍収集・預貯金解約などの実務代行 行政書士
金融資産の手続きや今後の運用 金融機関
遺言書の作成・執行 公証役場・弁護士・司法書士

専門家へ依頼する時は、状況を明確に伝えるほど具体的な解決策のアドバイスが得られます。

依頼するときは状況を整理して、ピンポイントに相談することをおすすめします。

参考記事:司法書士に相続相談できる内容とは?費用相場や探し方を詳しく解説

相続全般の相談で、複数の専門家への相談が必要な場合は士業連携チームに相談

相続は税金と法律、手続きなどの要素が複雑に絡む業務です。

それぞれの専門家へ依頼すると窓口が幾つかに別れてしまい、通すのも大変です。

可能であれば、士業連携チームで相談に対応してくれるところを選ぶと手間がかかりません。

相続に強い士業法人では、税理士や弁護士、司法書士が連携して課題の解決にあたります。

また、相続特化型の行政書士・司法書士事務所でも柔軟な対応が可能です。

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スムーズな相続の問題解決には、課題にあった相談先の選択が必要です。

基本的な相談では、市役所などの無料相談窓口がおすすめです。

基本的な知識や手続きを知りたいだけなら、無料相談窓口でも十分に事足ります。

明確な悩みを抱えている場合は、それぞれの専門家への個別相談にて問題解決を図ります。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターは、司法書士や弁護士、行政書士など相続手続きに関わる士業で構成された組織です。

幾つかの課題を抱えている場合は、個別に士業へ相談する必要がありますが、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターなら一つの窓口で全ての問題へ対応可能です。

それぞれの専門家が、個別最適化されたオーダーメイドな相続対策を提案します。

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相続時の空き家特例とは?気になる要件や適用条件を徹底解説

2025.06.11

相続した空き家を売却なり、処分したい方にとってありがたい制度が「空き家特例(被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除)」です。

空き家特例には、相続した空き家を税制面から後押しすることによって、増え続ける空き家の放置を防ぎ、市場への流通を促進するという国の目的があります。

空き家特例を活用することで、相続した空き家の売却などをしやすくなるため、空き家を相続した方はぜひこの制度を知っておきましょう。

この記事では、空き家特例の適用条件や併用できる他の特例などについて詳しく解説します。解説します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

空き家特例とは|相続した不動産の譲渡所得が軽減される制度

空き家特例とは、相続した空き家を売却した時の譲渡所得(利益)から最高3,000万円までを控除できる制度です。

譲渡所得とは、譲渡価格(売却金額)から不動産取得費(※不動産取得費には、被相続人が購入した金額や改修費が含まれますが、これらの証明書類がない場合は概算取得費として売却額の5%で計算され、課税額が高くなる場合があります)と譲渡費用を差し引いた金額のことです。

この譲渡所得に3,000万円の特別控除を適用できます。

空き家特例は、相続などで空き家を所有することになった方の、売却に関する税負担を少なくすることで、放置された空き家を減らす目的のために制定された制度です。

なお、相続によって取得した財産の総額が、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合には、空き家特例の有無にかかわらず、相続税の申告と納税が必要です。

空き家特例はあくまで売却時の譲渡所得税に関する優遇制度であり、相続税の申告義務を免除するものではないため、注意しましょう。

空き家特例を利用する場合、適用要件が細かく定められているため、自分の状況が合致するか事前によく確認する必要があります。

対象になる物件や敷地

空き家特例を利用できる人は、原則として、被相続人の子や配偶者などの法定相続人であり、かつ家屋や敷地を相続または遺贈で取得した個人です。

被相続人と生計を共にしていなかった甥や姪など、直系血族・配偶者以外のケースでは適用が認められない可能性があるため注意が必要です。

空き家特例の対象となる空き家や敷地は、以下の要件を満たしている必要があります。

  • 相続開始の直前まで被相続人が1人で居住していた家であること
  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと

敷地については家屋とセットで譲渡されることが原則です。

例外的に家屋を取り壊して更地で譲渡する場合、一定条件を満たせば適用の対象となります。

空き家特例の適用要件

空き家特例には次の適用要件が定められています。

  • 相続または遺贈によって空き家を取得している
  • 相続の開始日から3年を経過した年の12月31日までに譲渡が完了している
  • 売却代金が1億円以下
  • 相続した時から譲渡までに事業・貸付・居住の目的での利用がない
  • 一定の耐震基準に適合している
  • 親子や夫婦など身内での譲渡でない
  • 他の特例を受けていない

定められた要件をすべて満たす必要があります。

一つでも満たさない場合は、特例の適用を受けることはできません。

空き家特例の利用を検討する方は、国税庁のホームページや税務署で確認することをおすすめします。

【2024年以降】空き家特例の最新改正ポイント

空き家特例2024年の改正にて期限が延長され、現在は令和9年12月31日までとなっています。

その他、2024年に改正された空き家特例の詳細は次のとおりです。

  • 買主が譲渡の日から翌年の2月15日までの間に耐震改修と取り壊しを行った場合も対象物件になる
  • 相続人が3人以上いる場合、空き家特例の控除額3,000万円は取得割合に応じて分割適用される

大きな変更点は、売却した後に買主が耐震補修と取り壊しを実施した場合でも、特例が適用できるようになったという点です。

2023年末までの売却では、耐震改修や取り壊しは売主の責務でしたが、2024年以降では、買主が取り壊しを行っても適用されるように変更されています。

2024年の改正には、売主の負担を軽減することによって、さらに空き家の解消を進める狙いがあります。

また、2023年までは、相続人の人数に間計なく控除額は一律3,000万円でしたが、2024年以降は相続人の人数が3人以上の場合、1人あたりの適用可能控除額が最大2,000万円となることがあります。

空き家特例の申請に必要な書類

空き家特例を申請するためには、確定申告時に要件を満たしていることを証明するための書類添付が必要です。

必要書類は次のとおりです。

  • 譲渡所得の内訳書
  • 登記事項証明書
  • 被相続人居住用家屋等確認書
  • 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
  • 売却代金が1億円以下であることがわかる書類

登記事項証明書には、相続または遺贈によって取得した事実と、昭和56年5月31日以前に建築された空き家であることの証拠、区分所有の建物でないことが記載されている必要があります。

登記事項証明書は「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産にかかる不動産番号等の明細書」に不動産番号を記載すると、添付を省略することも可能です。

耐震基準適合証明書は、更地で売却した場合においては添付不要です。

空き家特例と併用できる特例

空き家特例と併用できる特例の詳細を説明します。

  • 小規模宅地等の特例との併用
  • その他に併用できる特例

小規模宅地等の特例との併用

小規模宅地等の特例は、被相続人が居住していた家を相続した場合に、相続税の評価額を最大80%減額できる制度です。

相続時に小規模宅地等の特例を利用して、その後売却する際に空き家特例を利用することもできます。

ただし、それぞれの適用には個別の要件があるため、両者を同時に使うには注意が必要です。

たとえば、小規模宅地特例で評価減した土地を相続後に一部売却する場合、その売却部分が空き家特例の対象とならないケースもあるのです。

このように、空き家特例の適用範囲が制限される可能性もあるので、必ず専門家に確認しましょう。

参考記事:実家を相続したらどうする?活用方法や手続きの流れ、相続税対策を解説

その他に併用できる特例

空き家特例のように租税特別措置法によって制定されている特例は、他の特例との併用ができない原則があります。

しかし、状況次第では住宅ローン控除との併用ができる可能性があります。

相続した空き家を取り壊し、新たに住宅を建てて居住した場合、その新築住宅で住宅ローンを利用していれば、一定の要件のもとで住宅ローン控除を受けることができる、という具合です。

居住用財産の3,000万円特別控除などの譲渡所得に関する特例との併用はできません。

空き家特例の申請をする際の注意点

空き家特例を申請する際の注意点を4つ紹介します。

  • 納税額がゼロ円でも確定申告をする必要がある
  • 被相続人の家屋を相続以前に取得している場合は適用外になる
  • 店舗や倉庫は適用対象外となる
  • 旧耐震基準の住宅はそのままでは適用対象外になる

納税額がゼロ円でも確定申告をする必要がある

空き家特例の適用を受けるためには、譲渡所得税が0円で納税の必要がない場合でも、確定申告が必要です。

空き家特例の適用要件の一つに確定申告が義務付けられているため、納税額が0円でも申告しなければいけません。

確定申告書に特例を希望する旨を記載したうえで、必要な書類を添付して提出します。

納税額がないから確定申告しなくても良いと自分で判断してしまうと、本来受けられるはずだった空き家特例の措置が受けられなくなってしまいます。

被相続人の家屋を相続以前に取得している場合は適用外になる

原則として、相続の開始前から相続人が自己居住用の建物を所有していた場合、その建物は空き家特例の対象にはなりません。

被相続人の家が空き家だったとしても、相続人がすでに別の居住用物件を所有している場合、相続人が新たに取得した被相続人の家を自分の居住のために使っていた、とは言い切れません。

このような状況では特例の趣旨から外れるため、適用外とされています。

ただし、例外的に相続人が被相続人と同居しており、被相続人の家屋だけを相続した場合など、一定の条件を満たすことで対象となる可能性もあります。

店舗や倉庫は適用対象外となる

空き家特例は被相続人が居住のために利用していた家と敷地を対象としているため、居住の目的がない建物は対象外となります。

倉庫は物品の保管を目的とした建物で、店舗は事業のための建物なので、居住用として認められません。

相続後に空き家となっていたとしても、被相続人が生前住んでいたわけではないため、空き家特例の適用外です。

ただし、店舗兼住宅など用途が事業と居住用を兼ねている場合、居住部分と非居住部分において、取り扱いが異なる場合があります。

旧耐震基準の住宅はそのままでは適用対象外になる

空き家特例を受けるためには、耐震性の確保が必要です。

1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた旧耐震基準の建物でも空き家特例を受けることはできますが、売却までに耐震改修工事を行い、現行の耐震基準を満たさなければいけません。

2024年以降の改正では、買主が譲渡後の翌年2月15日までに耐震改修、もしくは解体を行っても対象となるケースがあります。

旧耐震基準の建物でも空き家特例を受けることはできますが、あらかじめ適用要件を確認しておく必要があります。

空き家特例を確実に受けるにはどうすればいい?

空き家特例は適用要件が細かいため、自分で判断するのが難しいケースもあります。

空き家を売却した後で、実は適用外だった、という事態は避けたいところです。

まずは、以下のポイントを確実に抑えつつ、自分でできることを確実に準備しましょう。

  • 適用要件をしっかりと理解する
  • 必要書類をあらかじめ漏れなく用意しておく
  • 確定申告を忘れない
  • 自分で対応できないと感じたら専門家へ相談する

空き家特例に関する手続きにおいて、多くのケースで専門家の力が必要となるでしょう。

空き家特例に関する手続きに関わる主な専門家、業者は司法書士や税理士、土地家屋調査士、不動産業者などです。

とはいえ、士業や業者へそれぞれ依頼し、手配を進めていくのはとても大変な作業です。

窓口の分だけ費用もかさみます。

業者へ依頼するときは、一つの窓口で完結できる連携力の高いところへ依頼するのが望ましいです。

空き家特例に関するよくある質問

空き家特例についてよくある質問を2つピックアップして紹介します。

  • 建物を売却後に取り壊しても適用が受けられる?
  • 店舗兼住宅の場合は適用が受けられる?

建物を売却後に取り壊しても適用が受けられる?

売却後に買主が建物を取り壊す場合は、適用が受けられます。

しかし、買主が取り壊しをしなければ、適用は受けられません。

空き家特例の適用要件に、売却前に売主が建物を取り壊して更地で譲渡する、または耐震改修を行うと定められています。

2024年以降の改正では、買主が譲渡後の翌年2月15日までに耐震改修または解体工事を行った場合も特例が適用されると変更されました。

しかしこの適用要件は、あくまで買主側に関するものです。

売主が建物を売却した時点では、取り壊し等の要件を満たしていない点に注意が必要です。

店舗兼住宅の場合は適用が受けられる?

居住部の割合と状況によって適用の判断が分かれます。

空き家特例の対象となるのは、被相続人が主に居住用として利用していた部分です。

店舗として利用していた領域が大部分に及んでいると、原則として適用不可です。

一定割合の領域を居住目的で利用していた場合や、被相続人が該当の建物を生活拠点としていたと認められる場合は、適用が認められる可能性があります。

具体的な判断は、建物の登記簿上の種類や構造、被相続人の生活状況、それぞれの部分の利用状況を総合的に考慮した上で行われます。

空き家の相続なら静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへ

空き家特例は空き家の売却を検討している方にとって、とても重要な制度です。

3,000万円もの控除が受けられるため、大幅に納税額を減らすことができます。

「空き家を売却したいけど、譲渡所得税が気になって踏ん切りがつかない」という方には渡りに船と言うべき制度です。

しかし、どんな空き家でも制度が適用されるわけではありません。

適用要件がやや厳しいため、空き家特例を検討するときは、制度の概要や要件をしっかり確認する必要があります。

「自分の空き家が空き家特例を使えるのかよくわからない」と言う方は、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへご相談ください。

数多く取り扱ってきた空き家相続のノウハウを元に、それぞれの課題に対して最適な提案を行っています。

空き家の売却に関わる司法書士や税理士など、すべて一つの窓口で対応できるため、余計な手間や費用もかかりません。

空き家特例のサポートも行っていますので、納税額が気になる方もお気軽にお問い合わせください。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンター

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相続した不動産を売却するには?特例や税金、流れを解説

2025.06.11

相続した不動産を持て余してしまう場合や、相続税の納税資金捻出のために、不動産の売却を検討せざるを得ない場合があります。

不動産の売却で利益を得た場合は、譲渡所得税の納税が必要です。

場合によっては控除の特例を活用することで、課税所得を圧縮し、譲渡所得税を軽減または非課税とすることができます。

この記事では不動産の売却についてわかりにくい特例の適用や、注意すべきポイント、必要経費と売却までの流れを詳しく説明しています。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

相続した不動産の売却を検討する主なケース

相続した不動産の売却を検討するケースは、それぞれの事情によって異なりますが、、大きく分けると、以下3つのケースに分類できます。

  • 相続したものの不動産の使い道がない
  • 相続した不動産を売却して相続税を払いたい
  • 相続した不動産を換価分割したい

それぞれの状況について、詳細を説明します。

相続したものの不動産の使い道がない

相続した不動産の使い道が見当たらない場合、維持費や税金などの負担を考えて売却を選択する方法もあります。

また、譲渡所得税は被相続人が取得した当時の取得費を基準に計算されるため、値上がり前の状態で売却を決めてしまえば、税負担を軽減できる可能性もあります。

相続した不動産を売却して相続税を払いたい

相続税の支払いは基本的に現金払いです。

相続税が発生する見込みなのに手持ちの現金がない場合は、相続した不動産の売却を検討しなければいけません。

なお、相続税の申告と納税は、相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合に義務が発生します。

控除額を超えるかどうかを判断するためには、相続開始後できるだけ早く、不動産を含めたすべての財産の評価を行うことが重要です。

相続税の申告と納税は、「相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」に行う必要があります。

相続税額があるときは、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内(その者が国税通則法第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

引用元:相続税法第27条第1項(相続税の申告書)

不動産の売却には一定の時間を要するため、早めの準備と不動産会社への相談が重要です。

相続税には延納や物納という制度がありますが、要件が厳しいため、不動産の売却と並行して検討を進めるようにした方が無難です。

相続した不動産を換価分割したい

換価分割とは、不動産を現金化して相続人の間で均等に分配する相続の方法です。

相続の分割協議にて換価分割を選択した場合は、不動産は売却しなければいけません。

換価分割では、適正な価格で売却するために複数の不動産会社に査定を依頼します。

最終的に売却代金から諸費用を差し引いた残額が分配代金です。

換価分割は、それぞれの相続人が公平に財産を取得できるメリットの一方で、売却に時間と手間がかかることも認識しておく必要があります。

相続不動産の売却の際に適用を検討すべき代表的な特例

相続不動産を3年以内に売却すると、譲渡所得税を節税できる可能性があります。

節税に大きな効果をもたらす特例は次の3つです。

  • 居住用不動産を売却した際の3,000万円特別控除
  • 相続した空き家を売却した場合の3,000万円控除
  • 相続税の取得費加算の特例

それぞれ詳しく説明します。

参考記事:相続時の空き家特例とは?気になる要件や適用条件を徹底解説

居住用不動産を売却した際の3,000万円特別控除

個人が自分の家を売却して一定の要件を満たした場合に、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度です。

適用要件の中で、もっとも重要なポイントは売却した不動産に住んでいた事実の有無です。

売主が売却する直前まで家に住んでいた事実があれば問題ありませんが、相続した後に住んでいた事実がなく、空き家になっていた場合は、本制度は適用されません。

相続した空き家を売却した場合の3,000万円控除

被相続人が1人で住んでいた家や土地を相続にて取得した後に、空き家としてその家を売却した場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円控除できる制度です。

親から相続した家を空き家として売却し、本制度の適用を受けるためには、次の要件を全部クリアしなければいけません。

  • 売却する人が、相続人もしくは遺言によって指名された包括受遺者であること
  • 売却する人が、相続または遺贈によって被相続人の土地や建物を取得している
  • 過去に本制度を利用したことがない
  • 建物が1981年(昭和56年)5月31日より以前に建てられたものである
  • 建物がマンションなどの区分所有建物でないこと
  • 被相続人が相続開始の直前に1人で居住していた
  • 空き家を買う人が、売却する人の親族などでない第三者であること
  • 売却時期が相続開始日から3年目の12月31日以内、もしくは制度適用期間内の令和9年12月31日までの間であること
  • 売却代金が1億円以下
  • 相続開始から売却までの間に事業や賃貸のために使用していないこと
  • 建物が売却時に耐震基準に適合していること

相続税の取得費加算の特例

相続税の取得費加算の特例とは、相続や遺贈によって取得した遺産を一定期間内に売却した場合に、納税した相続税から一定額を売却した遺産の取得費に加算できる制度です。

取得費加算の特例によって経費を上乗せできるため、結果として譲渡所得税を安く抑えることができます。

相続税の取得費加算の特例の適用要件は次のとおりです。

  • 相続または遺贈によって財産を取得している
  • 遺産を取得した人に相続税が課せられている
  • 相続の開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却を終えている

加算される相続税額は以下の計算式にて算出されます。

加算される相続税額 = 相続税額 × (譲渡した財産の相続税評価額 ÷ 相続財産の課税価格の合計額)

相続不動産の売却の特例制度を使う際の注意点

相続した不動産の売却特例制度や取得費加算の特例を利用する場合は、以下の注意点に気を配る必要があります。

  • 相続開始の翌日から3年以内に売却する必要がある
  • 相続税の納税額がなければ制度は適用されない
  • 相続または遺贈による取得が前提条件
  • 空き家特例と取得費加算特例、マイホーム特例と買い替え特例は併用できない

特例全般に共通する注意点は期限です。

相続開始の翌日から3年以内に売却を終える必要があります。

その他には、相続または遺贈によって財産を取得していること、相続税が発生していることなどが前提条件です。

取得費加算特例とマイホーム特例は併用できないケースがありますので、事前の確認も必要です。

相続した不動産を売却する際に発生する税金と費用

不動産の売却時に必要な税金と費用をまとめました。

税金と費用の詳細を説明します。

税金

不動産を売却する際に発生する税金として、以下の3つがあります。

  • 譲渡所得税
  • 登録免許税
  • 印紙税

それぞれ詳しく解説します。

譲渡所得税

譲渡所得税とは、相続不動産を売却して利益が得られた場合に、利益に対して課税される税金のことを言います。

ここで言う利益とは、売却益そのものではありません。

利益とは、売却益から土地や建物の取得にかかった費用を差し引いた後の金額のことを言います。

課税譲渡所得金額の計算方法は次の通りです。

売却代金−(不動産の取得費+売却手数料など)

取得費用には、物件購入時の仲介手数料、測量費、造成費用、改良費などの諸経費を加えることができます。

取得費は被相続人が物件を購入した当時の金額で計算しなければいけません。

取得費用が不明の場合は、売却価格の5%として計算することも可能です。

算出された課税譲渡所得金額に、譲渡所得税の税率を当てはめて譲渡所得税を算出します。

所有期間ごとに設定されている譲渡所得税を一覧表にまとめました。

所有期間 所得税率 住民税率 復興特別所得税率
5年以下 30% 9% 0.63%
5年超 15% 5% 0.315%

登録免許税

登録免許税

登録免許税とは、相続した不動産の登記の際にかかる税金です。

登録免許税は、相続不動産を取得する人によって税率が異なります。

相続人が取得した場合 固定資産税評価額×0.4%
遺言によって相続人以外の人が取得した場合 固定資産税評価額×2.0%

例えば、相続不動産の固定資産税評価額が3,000万円で、法定相続人が相続不動産を取得した場合、登録免許税は3,000万円×0.4%=12万円です。

印紙税

印紙税は、不動産の売却時に取り交わす売買契約書など、お金が発生する取引の際に作成される書面に対してかかる税金です。

印紙税の税率は、契約金額ごとに決められています。

令和9年3月31日までに作成された契約書は、軽減措置の対象です。

契約金額 印紙税(軽減税額)
10万円超50万円以下 200円
50万円超100万円以下 500円
100万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 1万円
5,000万円超1億円以下 3万円
1億円超5億円以下 6万円
5億円超10億円以下 16万円
10億円超50億円以下 32万円
50億円超 48万円

その他の諸経費

税金の他にかかる主な諸経費は次のとおりです。

  • 仲介手数料
  • 土地の確定測量費
  • 建物の解体費用

仲介手数料は、土地や建物の売却を業者へ依頼する場合に発生する費用です。

仲介手数料は、土地や建物の売却価格に対して上限が設定されています。

土地の確定測量費は、測量を実施した際に必要な費用です。

その他、建物を取り壊す場合は建物解体費用がかかります。

参考記事:相続の費用まとめ|手続き別の金額や報酬相場、専門家へ依頼したほうが良いケースを紹介

不動産を相続して売却に至るまでの流れ

不動産を相続して売却に至る一連の流れは次のとおりです。

  • STEP1:遺言書の確認
  • STEP2:相続人の確定と遺産分割協議
  • STEP3:相続放棄や限定承認の検討
  • STEP4:相続登記
  • STEP5:不動産の査定と不動産業者の選定
  • STEP6:不動産売却の媒介契約
  • STEP7:売買契約の締結
  • STEP8:残金決済と引き渡し
  • STEP9:必要に応じて確定申告

それぞれの手続きの詳細について説明します。

STEP1:遺言書の確認

相続した不動産の売却を検討する場合、まず遺言書の確認をしなければいけません。

遺言書には不動産の相続人が指定されている場合があります。

特定の相続人が指定されている場合、その相続人の名義に変更した後でなければ、売却の手続きを進めることができません。

なお、自筆証書遺言書や秘密証書遺言書の場合は、開封する前に家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。

これを経ずに勝手に開封すると、民法第1004条に違反し、5万円以下の過料が科される可能性があるため注意が必要です。

封を開ける前に、管轄の家庭裁判所に問い合わせ、適切な手続きを取りましょう。

遺言書が存在しない場合や遺言書に相続に関する具体的な記述がない場合は、そのまま遺産分割協議へ進みます。

STEP2:相続人の確定と遺産分割協議

被相続人の戸籍謄本などを集めて法定相続人を特定する作業が必要です。

法定相続人が特定できたら相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産の分割方法や売却後の代金の分配について話し合います。

基本的に全員の合意なしでは、不動産の売却はできません。

遺産分割協議成立後は内容に基づいて不動産の名義を相続人の誰か、もしくは共有名義へ変更する登記手続きを行った後に売却の手続きへ進みます。

遺産分割協議が難航する場合は、家庭裁判所の調停や審判などの手続きを利用することもできます。

STEP3:相続放棄や限定承認の検討

相続放棄は一切の相続権を放棄する手続きで、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎません。

限定承認はプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を引き継ぐという手続きです。

あらかじめ負債の内訳がわかっている場合は、いずれかの選択が有効となる場合があります。

相続放棄および限定承認は、「自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内」に家庭裁判所に申述しなければなりません。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

引用元:民法第915条第1項(相続の承認又は放棄をすべき期間)

ただし、相続放棄をした場合でも、不動産の現状管理義務(民法第940条)は放棄前の相続人に一時的に残る可能性があり、放棄後も損害を防止する管理責任を問われることがあります。

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

引用元:民法第940条(相続の放棄をした者による管理)

相続放棄したことを速やかに家庭裁判所に申述し、適切な手続きを行うことで管理責任から解放されるよう注意が必要です。

STEP4:相続登記

相続した不動産を売却するためには、必ず不動産登記が必要です。

相続登記によって被相続人名義の不動産を相続人名義へ変更します。

不動産は登記によって権利関係が証明されることから、相続登記せずに法的に不動産の所有権を第三者へ主張することはできません。

相続登記をしないままだと買主との売買契約や所有権移転の手続きを進めることができなくなるため、相続不動産の売却には、まず相続登記が必要になります。

なお、2024年4月1日以降、相続登記は義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記申請を行わないと、最大10万円の過料が科される可能性があります。

参考記事:相続の手続きはいつまで?期限と間に合わない場合の対処法を解説

そのため、登記手続きは早めに行いましょう。

参考記事:相続登記の義務化についてわかりやすく解説!罰則や放置するリスクとは?

STEP5:不動産の査定と不動産業者の選定

相続登記完了の後は、いよいよ不動産の売却へ移ります。

売却の前にまずは不動産の査定からスタートです。

査定額は、不動産の種類、立地、築年数、状態、周辺の相場などによって大きく変動します。

より適正な売却価格を把握するために、査定は複数の会社へ依頼するのが基本です。

参考記事:相続した土地の評価額の調べ方と計算方法を解説!節税はできる?

不動産業者を選ぶときは、査定額だけで判断せずに、業者の実績、得意な物件の種類、仲介手数料、営業担当者の信頼性などを総合的に判断する必要があります。

それぞれの不動産業者の強みを把握して、もっともマッチするところへ依頼することが大切です。

また、売却価格の相場を知るには、国土交通省が公表している「不動産価格指数」や「地価公示」を参考にすると良いでしょう。

地域ごとの価格動向や市況を把握することで、より適切な売却タイミングを見極める判断材料になります。

たとえば、2025年4月30日時点で公表された不動産価格指数は以下の通りです。

引用元:国土交通省『不動産価格指数(令和7年1月・令和6年第4四半期分)を公表』

このように不動産価格指数を見ることで、住宅の価値が年々上昇傾向にあるということが分かります。

STEP6:不動産売却の媒介契約

不動産業者との媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。

一般媒介契約は複数の業者に仲介の依頼できますが、専任媒介契約と専属専任媒介契約は一社のみの契約です。

売主自身が見つけた買主との取引でも仲介手数料が発生する場合があります。

契約期間や仲介手数料をしっかり確認のうえ、目的に合う不動産業者を選びましょう。

STEP7:売買契約の締結

売買契約は、不動産の売買の合意内容を明確にするための大事な手続きです。

契約書面には、物件の詳細情報、売買代金、支払い方法、手付金の額、引き渡し時期、瑕疵担保責任の内容、契約解除に関する事項などが詳細に記載されています。

売買契約の締結時には、買い手が手付金を支払い、双方が署名することで売買が成立します。

売買契約成立後の契約解除は原則として不可です。

STEP8:残金決済と引き渡し

残金決済では、買主が売買代金から手付金を差し引いた残りの金額を支払います。

残金決済が行われるのは、住宅ローンが実行されるタイミングです。

売主は残金を受け取るのと同時に、不動産の所有権の移転手続きを行います。

残金決済が終わったら、家の鍵を渡して引き渡し完了です。

残金決済や引き渡しの手続きは、司法書士立ち会いのもと、金融機関などで行われることが一般的です。

STEP9:必要に応じて確定申告

不動産売却後に利益がでた場合は、確定申告を行います。

不動産の売却で得られる譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額です。

売却価格よりも取得費や譲渡費用が上回ってしまい、損失がでた場合は確定申告の必要はありませんが、他の所得と損益通算できる場合や、繰越控除ができる場合があるため、確定申告をすることで節税に繋がる可能性があります。

また、居住用財産の3,000万円特別控除などの特例を適用する場合も確定申告が必要です。

相続した不動産の売却相談は静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへ

相続した不動産の売却にて利益がでた場合は譲渡所得税の納税が必要ですが、特例を使うことで納税を回避することもできます。

税金の他には、登録免許税や印紙代などの諸経費も必要です。

相続した不動産の売却では、必ずしも利益が出るわけではありません。

売却の検討は慎重さが必要です。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、さまざまな士業との連携によってお客さまの課題の解決にあたっています。

相続不動産の売却にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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相続放棄のデメリットとは?ケース別に徹底解説

2025.06.11

相続放棄は被相続人の負債をキャンセルできる大きなメリットをもつ制度ですが、メリットの一方で気をつけるべきデメリットもあります。

メリットだけを見て相続放棄をしてしまうと、取り返しのつかないことになるかもしれません。

この記事では安易な相続放棄によってかえって損をしてしまわないためにも、「相続放棄のデメリット」について、制度の基本から実際に起こりうるリスク、よくあるケースまでを詳しく解説します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

相続放棄の主なデメリット

相続放棄には被相続人が残した負債を負わずに済む大きなメリットがありますが、一方で気をつけるべきデメリットもあります。

相続放棄の主なデメリットとして以下の8つがあります。

  • マイナスの財産だけではなくプラス財産も放棄することになる
  • 一度相続放棄を選択すると撤回できない
  • 相続放棄すると相続権が次順位に移行し、他の相続人に負担がかかる
  • 相続放棄をしても他の相続人が現れるまでは財産管理の義務が残る
  • 遺品整理や金融手続きができなくなる
  • 遺族年金や死亡退職金などが受け取れない可能性がある
  • 扶養義務が免除されない可能性がある
  • 相続放棄手続きにも手間と費用がかかる

それぞれ詳しく解説します。

マイナスの財産だけではなくプラス財産も放棄することになる

相続放棄をすると、借金や買い手の見つからない土地など、マイナス財産の相続をすべて放棄することができますが、同時に預貯金や建物などのプラス財産まで一切相続できなくなります。

深く考えずに、マイナス財産を相続したくない一心で相続放棄を選んでしまうと、価値のある財産まで手放すことになってしまいます。

後からプラスの財産が見つかったとしても撤回はできないため、相続放棄の決断には熟慮が必要です。

一度相続放棄を選択すると撤回できない

相続放棄は原則として、一度手続きが完了すると撤回できません。

相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。

引用元:民法第919条第1項(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)

撤回ができないルールは、相続関係の安定化を図りつつ、後の紛争を避けるための処置でもあります。

たとえば、相続放棄した後に莫大な遺産が見つかると、「やっぱり相続放棄は撤回します」と言いたくなりますが、そのような理由では撤回は認められません。

相続放棄の撤回が認められるケースは、詐欺や脅迫によって相続放棄をせざるを得なかった場合など、法的な問題があった場合に限定されます。

相続放棄の撤回には、家庭裁判所への申し立てが必要です。

また、相続放棄には「期限」がある点にも注意が必要です。

「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に家庭裁判所へ相続放棄の申述を行わなければなりません。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

引用元:民法第915条第1項(相続の承認又は放棄をすべき期間)

この3か月の期間は「熟慮期間」と呼ばれ、これを過ぎてしまうと、単純承認(負債を含めすべてを相続)したものとみなされてしまいます。

このように相続放棄は撤回ができないだけでなく、期限の過ぎた放棄は無効となる点にも注意しましょう。

相続放棄すると相続権が次順位に移行し、他の相続人に負担がかかる

他の相続人と打ち合わせもなく勝手に相続放棄をしてしまうとトラブルに発展する可能性が高まります。

相続放棄した分の遺産は、他の相続人が負担しなければいけません。

プラス財産ならまだしも、大きな負債を何の相談もなく負わされると、不満が生じる可能性があります。

相続放棄をした人が、被相続人の生前に特別な利益を受けていた場合、他の相続人からの不満はかなりのものとなるでしょう。

相続放棄をした場合、その旨を他の相続人へ通知する義務はありませんが、後々のトラブルを回避するためにも、事前の相談と打ち合わせは必要です。

複数の相続人が放棄すると、財産処分に時間がかかることがあるので注意

被相続人の子ども全員が相続放棄した場合、次の相続順位は被相続人の父母、父母が相続放棄すると次は兄弟姉妹へ相続権が移動します。

このように相続権が転々としてしまうと、誰が相続人になるのか確定までに時間がかかってしまい、その間は不動産の売却や預貯金の払い戻しができません。

最終的に家庭裁判所が相続財産管理人を選ぶまで、何も手をつけられなくなります。

相続放棄をしても他の相続人が現れるまでは財産管理の義務が残る

相続放棄をした場合でも、相続人であった者がすでに相続財産を占有していた場合には、次の管理者に引き渡すまで引き続き管理義務を負います。

これは、民法第940条第1項に基づく義務です。

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

引用元:民法第940条第1項(相続の放棄をした者による管理)

相続放棄をしても一定期間は「管理者」としての責任が継続されます。

特に、相続人全員が放棄してしまい、相続財産管理人が家庭裁判所によって選任されるまでの間は、その相続財産を放置することができず、管理義務が発生し続けます。

たとえば、空き家などの不動産を放置していて倒壊や火災、不法投棄などのトラブルが発生した場合、元相続人である放棄者に管理責任を問われる可能性もあるのです。

このように、「相続放棄をすればすべて関係なくなる」と誤解していると、思わぬ損害賠償リスクを負うおそれもあるため、相続放棄後の管理義務についても正しく理解しておきましょう。

遺品整理や金融手続きができなくなる

相続放棄をすると初めから相続人でなかったものとみなされます。

したがって、被相続人の遺品を整理したり金融機関で口座の解約をしたりなどの手続きは原則できません。

遺品や金融手続きに手をつけると、相続財産の処分をしたことになり、相続を承認したとみなされる可能性があります。

相続放棄をした立場から遺品整理を行いたい場合は、他の相続人へ依頼するか、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てなければいけません。

金融手続きについても同じく、相続財産管理人を通して手続きを進める必要があります。

遺族年金や死亡退職金などが受け取れない可能性がある

相続放棄をしても、遺族年金は相続財産ではなく、遺族固有の権利とされているため、基本的には受け取ることができます。

遺族年金の支給対象者(受給資格者)は、被保険者との生計を共にしていたかどうかや、「配偶者・子・父母・孫・祖父母」の優先順位などの要件によって決まります。

そのため、相続放棄の有無にかかわらず、制度上の要件を満たしていれば受給可能です。

一方で、死亡退職金については、企業の規定や遺族給付制度の内容により異なります。

たとえば、受取人が「相続人」とされている場合には、相続放棄によって受給資格を失う可能性があります。

しかし、「配偶者」や「子」など特定の個人が明示されている場合は、その人の固有の権利とみなされ、相続放棄の影響を受けないのが一般的です。

制度ごとに異なる取り扱いとなるため、実際に判断する際は保険者(年金機構など)や企業・勤務先に確認することをおすすめします。

扶養義務が免除されない可能性がある

相続放棄は、被相続人の財産に関する権利や義務を放棄する制度です。

しかし、相続人自身の親族に対する扶養義務と相続放棄は別問題である点には注意が必要です。

民法第877条に基づき、直系血族および兄弟姉妹の間には扶養義務が発生します。

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

引用元:民法第877条第1項(扶養義務者)

これは相続とは無関係であり、相続放棄をしても扶養義務が免除されるわけではありません。

さらに、相続放棄が生活保護制度に与える影響も見逃せません。

たとえば、自分の親が生活保護を受けている場合、相続放棄をしても扶養照会(扶養できるかどうかの確認)が行われる可能性があります。

そのため、自分の親が生活保護を受けている場合は、「相続放棄=扶養義務の免除」とはならないことを、事前に理解しておくことが重要です。

相続放棄手続きにも手間と費用がかかる

相続放棄の手続きには家庭裁判所への申し出が必要です。幾つかの書類を集めて、作成しなければいけません。

具体的には、被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、住民票の除票、申述人の戸籍謄本などです。

手続きに必要な書類を取得するには手数料も必要です。

参考記事:相続放棄の手続きは自分でできる?手続きの流れや知っておきたい注意点を紹介

書類の取得費用の他には、家庭裁判所への郵送費用や、専門家へ依頼する場合には報酬も用意しなければいけません。

相続放棄は、単に相続の意思を表明するだけでは終わらないことを認識しておく必要があります。

書類の取得費用と相続放棄にかかる時間を逆算して、計画的に進めることが大切です。

【ケース別】相続放棄のデメリット

相続放棄のデメリットはケース別のイレギュラーパターンもあります。

より悩み事への具体的な回答を示すために、ケース別のデメリットをまとめてみました。

  • 親の相続を放棄した場合
  • 配偶者の相続を放棄した場合
  • 相続財産に空き家や山林がある場合
  • 事業用資産が相続財産に含まれる場合
  • 相続人が高齢者や未成年の場合

5つのケースについて詳しく解説します。

親の相続を放棄した場合

親の相続を放棄した場合に考えられるデメリットとして、以下の3つがあります。

  • 遺言の効力が相続放棄者には及ばない場合がある
  • 実家に住めなくなる
  • 家の名義変更が自分ではできなくなる

遺言の効力が相続放棄者には及ばない場合がある

相続放棄をした人が、遺言書で相続人として特定の財産を受け取るよう指定されていた場合でも、相続放棄によってその効力は失われます。

相続放棄をした人は初めから相続人でなかったものとみなされるためです。

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

引用元:民法第939条(相続の放棄の効力)

相続人としての立場による遺贈(包括遺贈など)は受け取ることができません。

ただし、遺言書で「〜に財産を与える」など、相続人ではない第三者として受遺者に指定されていた場合は、相続放棄をしていても遺産を受け取れる可能性があります(※特定遺贈に該当)

このように、遺言書の効力が及ぶかどうかは、相続人として指定されているか、第三者(受遺者)として指定されているかによって変わるため、遺言書の内容の確認が重要です。

実家に住めなくなる

親の遺産相続を放棄した場合、法的に相続人でなくなることから、実家に対する権利を主張することができなくなります。

他の相続人は実家の処分を自由にできるため、他の相続人が実家を売却してしまうと、住み続けることはできません。

たとえば、兄弟姉妹が相続人となり、その兄弟姉妹が実家を売却して遺産分割をすると決めた場合、退去を迫られます。

長年住み慣れた実家でも、相続放棄をした以上、他の相続人の決定には従わなければいけません。

家の名義変更が自分ではできなくなる

相続放棄をすると法的に家の所有者ではなくなるため、自分で自由に名義変更することができません。

ただし、家の名義が故人のままになっている場合、行政上の事務処理として、相続放棄をした人にも固定資産税の納付書が届くことがあります。

相続放棄をした人に法的な納税義務はありませんが、支払いを求められるケースもあるため、注意が必要です。

このように、相続放棄をして名義変更や売却ができない状態にもかかわらず、税金などの負担が発生することがあり、状況によっては板挟みのような状態に陥ることもあります。

配偶者の相続を放棄した場合

配偶者の相続を放棄した場合に考えられるデメリットとして、以下の3つがあります。

  • 子供に相続権が移る
  • 配偶者の口座が凍結され、引き出せなくなる
  • 家に住めなくなる可能性がある

順番に見ていきましょう。

子どもに相続権が移る

配偶者の相続を放棄した場合、負債を含む相続財産は第一順位の相続人である子どもが相続することになります。

もし配偶者に借金などの負債がある場合、負債を引き継ぐのは子どもです。

何も知らずに相続放棄をしてしまうと、子どもが経済的な負担を強いられる可能性があります。

参考記事:相続放棄の手続きは自分でできる?手続きの流れや知っておきたい注意点を紹介

配偶者の口座が凍結され、引き出せなくなる

配偶者が亡くなると、金融機関は相続財産の保全と相続の円滑な手続きのために、死亡の事実を確認した時点で口座を凍結します。

配偶者の相続を放棄した場合、最初から相続人ではなかったと見なされることから、凍結された口座から預貯金を引き出すことはできません。

葬儀費用のために引き出す場合でも、原則として相続財産に手をつけることはできません。

家に住めなくなる可能性がある

配偶者の死後に相続放棄をすると、家の相続権を失います。

他の相続人が家を相続すると、処遇次第では住む家を失う可能性があります。

家が配偶者の義父母の持ち家の場合、義父母が家を他の相続人へ売却してしまう可能性も想定しておかなければいけません。

相続財産に空き家や山林がある場合

相続財産に空き家や山林がある場合のデメリットとして、以下の3つがあります。

  • 相続放棄をしても管理責任を問われる可能性がある
  • 処分費用などについてトラブルに発展する可能性がある
  • 不法投棄されたゴミの責任を問われる可能性がある

順番に見ていきましょう。

相続放棄をしても管理責任を問われる可能性がある

相続放棄をしても相続財産に空き家や山林など、管理を必要とする不動産が含まれている場合は、相続放棄してもすぐに管理責任から逃れることはできません。

民法940条によって、次の相続人が決まるまで、もしくは相続財産管理人が選任されるまでは、放棄した相続人に管理義務があります。

管理を怠ったことが原因で損害が発生した場合、損害賠償責任を問われる可能性があるため、注意が必要です。

処分費用などについてトラブルに発展する可能性がある

相続財産に空き家や山林がある場合は、処分のための解体費用や伐採費用として、高額な費用が必要となるケースがあります。

相続放棄をすると処分費用を負担する義務はなくなりますが、他の相続人の負担が大きくなるため、親族の間でトラブルに発展することがあります。

円満解決に落とし込むためには、相続放棄をする前に他の相続人と空き家や山林について話し合い、費用負担においても明確にしておかなければいけません。

不法投棄されたゴミの責任を問われる可能性がある

前述のとおり民法940条の管理義務に基づいて、次の相続人や相続財産管理人が決まるまでの間、適切な管理を怠ったと見なされると、損害賠償責任に問われる可能性があります。

空き家や山林への不法投棄が、何かしらの問題を引き起こした場合、管理責任を追求される恐れがあることは十分に認識しておかなければいけません。

事業用資産が相続財産に含まれる場合

事業用資産が相続財産に含まれる場合のデメリットとして、以下の2つがあります。

  • 事業継続ができなくなる
  • 従業員や取引先からの信頼を損なう可能性がある

順番に見ていきましょう。

事業継続ができなくなる

店舗や工場など、事業資産が相続財産に含まれる場合、相続放棄をすると事業継続が困難になります。

親から引き継いだ店舗で事業を営んでいた場合、相続放棄をすることによって、店舗の所有権を失うことになり、事業を続けるための拠点を失うことになります。

他の相続人に事業を引き継ぐ意思がない場合や、遺産分割協議がまとまらない場合は、事業の継続を諦めなければいけません。

従業員や取引先からの信頼を損なう可能性がある

事業の代表者や経営者が交代することによって、事業継続の不確実性が高まるため、取引先からの信頼を失う可能性があります。

また相続放棄によって、事業に必要とされる工場や店舗、仕入れルートなどがバラバラになり、取引の遅延だけでなく品質の低下を招いてしまうおそれもあります。

健全な取引を継続するには、相続放棄後のスムーズな事業承継は欠かせません。

相続人が高齢者や未成年の場合

相続人が高齢者や未成年の場合のデメリットとして、以下の2つがあります。

  • 放棄手続きに家庭裁判所の許可が必要
  • 放棄の意思確認が難航することで期限を過ぎるリスク

順番に見ていきましょう。

放棄手続きに家庭裁判所の許可が必要

相続人が高齢者で十分な判断力を有していない、または未成年者のケースでは、本人による相続手続きが難しい場合があります。

相続人が高齢者や未成年の場合は、成年後見人や特別代理人を選任したうえで、家庭裁判所の許可を得て相続手続きを進めなければいけません。

手続きには成年後見人選任の申し立てや、特別代理人選任の申し立てが必要です。

多くの手間や時間、費用がかかることから、相続人が高齢者や未成年の場合は、あらかじめ専門家へ相談しておき、適切な手続きを進めることが大切です。

放棄の意思確認が難航することで期限を過ぎるリスク

相続人が高齢で判断力が低下している場合や未成年の場合は、相続放棄の意思確認ができないことがあります。

意思確認が困難な場合は、成年後見人や特別代理人を選任しなければいけませんが、手続きに時間がかかってしまい、熟慮期間である3ヶ月を超えてしまう可能性もあります。

熟慮期間を過ぎてしまうと相続を承認したと見なされてしまい、負債の相続放棄ができません。

相続放棄のデメリットに関するよくある質問

相続放棄のデメリットに関するよくある質問をまとめました。

相続放棄をしても生命保険金は受け取れる?

はい、一般的に生命保険金は受取人固有の権利であり、相続財産には含まれません。

受取人として指定されている限り、相続放棄をしていても受け取れるのが原則です。

ただし、保険契約によっては例外もあるため、契約書の内容を確認しておくことが重要です。

相続放棄をした後に家に届いた請求書は無視すべき?

原則として、相続放棄が家庭裁判所に正式に受理された後は、被相続人の債務に対して法的な支払義務はありません。

ただし、請求先の業者が放棄を把握していないこともあるため、相続放棄の申述受理証明書を提示して通知しましょう。

放置せず、書面で対応するのが安全です。

相続放棄したあとに勝手に遺品を整理してしまったらどうなる?

遺品整理や処分行為は「相続を承認した」とみなされる可能性があり、相続放棄が無効と判断されるおそれがあります。

どうしても遺品整理が必要な場合は、相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てたうえで対応するのが安全です。

相続放棄の申述が却下されるケースはある?

あります。たとえば申述期限である3か月を過ぎていた場合や、既に遺産の処分をしていた場合などは、相続放棄の申述が却下されることがあります。

そのため、相続放棄を検討し始めたら、早めに専門家に相談することが重要です。

被相続人の借金があるかわからないけど相続放棄するべき?

債務の有無が不明な場合、まずは金融機関や信用情報機関(CIC・JICC)などで借入履歴やローン残高を調査することができます。

熟慮期間である3か月以内に判断が難しい場合は、家庭裁判所へ期間伸長の申し立てをする方法もあります。

ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

引用元:民法第915条第1項(相続の承認又は放棄をすべき期間)

相続放棄したら、戸籍には記録が残る?

相続放棄の記録は、戸籍には残りません。

ただし、家庭裁判所での記録としては残り、申述受理証明書を取得すれば証明可能です。

相続関係の手続きで証明が必要な場面では、この証明書を使用します。

相続放棄の相談は静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターまで

相続放棄をすると、被相続人の負債を負わずに済みますが、同時にプラスの財産まで放棄してしまうことになります。

また、相続に関する全てのことを放棄するため、必要な手続きを進められない場合がある点にも注意が必要です。

相続放棄は申し出が認められた後は、原則として撤回できません。

やり直しは効かないため、事前に十分な精査のうえ、慎重に判断しましょう。

相続放棄の判断について、自分では決断できない場合は専門家へご相談ください。

静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターでは、各士業の連携によって、それぞれの課題を解決に導きます。

イレギュラーパターンにも柔軟に対応できますので、お悩みの方はぜひご相談ください。

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相続したアパートは経営を続けるべき?判断ポイントや最適な選択肢を解説

2025.05.07

親からアパートを相続したけれど、「どうしたらいいのかわからない…」という方も多いのではないでしょうか。

相続したアパートがあまり収入につながっていないと、「このまま持ち続けていいのか」「売ったほうがいいのか」と迷ってしまいます。

この記事では、アパートを相続したときに取れる選択肢から、それぞれのメリット・デメリット、相続の手続きまでわかりやすく説明します。

記事監修者

司法書士 川上直也

司法書士 川上直也

当センターの受付を担当しております。

司法書士になる前は、特別養護老人ホームで約10年間介護職に従事しておりました。そこで法律に悩む高齢者の声に触れ、「気軽に相談できる法律の専門家の必要性」を感じ、司法書士を志しました。

ご相談には丁寧に耳を傾け、安心して話せる環境づくりを大切にしています。相続などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

親からアパート経営を相続した時の選択肢

親からアパートを相続したとき、どう活用するかには、大きく分けて次の4つの選択肢があります。

  • そのままアパート経営を続ける
  • アパートを売却する
  • 相続したアパートを壊して新しく建て替える
  • 相続したアパートを解体して新たな土地活用を考える

以下からは、それぞれの選択肢について、どのような特徴があるのか、注意点とともに解説していきます。

そのままアパート経営を続ける

相続したアパートにきちんと入居者がいて、利益(家賃収入)が見込める状態なら、経営を引き継いで続けるというのは有力な選択肢となるでしょう。

ただし、古いアパートであれば、水回り(キッチン・トイレ・お風呂など)を中心に、設備を新しくするための工事・リフォームが必要になることもあります。

たとえば、以下のようなメンテナンスは避けられません。

  • 屋根やベランダの修理
  • 外壁の塗装や補修
  • 水道まわりの不具合の確認

入居率を上げるには、こうした手入れが重要です。

自分では何が必要かわからないという場合は、建物診断をしてくれる専門家に相談するのもよい方法です。

アパートを売却する

もしも、アパートを維持するための費用が出せない、あるいは建物が古すぎて修理しても儲けが出そうにないという場合は、売却という選択肢があります。

売却には、以下のようにいくつかの方法があります。

  • 建物を壊して更地にしてから売る
  • 建物を残したまま売る(アパートごと)

建物の解体には、お金がかかります。

たとえば、木造なら比較的安く済みますが、もし地下に古い配管やごみが埋まっていた場合は費用が高くなることもあります。

また、不動産に詳しい会社がそのままの状態で買ってくれることもあるため、解体しないで売るという選択もありえます。

売るときは、複数の会社に見積もりを出してもらって比較する(相見積もり)ことが重要です。

相見積もりをすれば、以下のようなメリットがあります。

  • より高く買ってくれる業者を見つけられる
  • 今の相場を知ることができる

相続したアパートを壊して新しく建て替える

今のアパートが古すぎて、リフォームしてもあまり収益が出なそうなときには、思い切って建て替えをするという方法もあります。

周辺地域のニーズや人口、家賃相場を調べたうえで、「新しいアパートにすれば入居者が集まりそう」と判断できるなら、建て替えは有効な選択です。

新築のアパートなら、以下のようなメリットがあります。

  • 最新の設備が使える
  • 家賃を高めに設定できる
  • 入居希望者が集まりやすい

また、土地をすでに持っているため、土地代がかからないという点もゼロから賃貸経営を始めるのに比べて、大きな強みです。

さらに、土地を担保(借金の保証として差し出すもの)にして、建築資金のローンを組むことも可能なので、比較的少ない自己資金でも始めやすいです。

ただし、ローンを組むには本人の収入状況や年齢、建物の事業計画の妥当性などが審査対象になります。

銀行などの金融機関に対し、納得してもらえるだけの正当性ある計画を示す必要があります。

相続したアパートを解体して新たな土地活用を考える

「アパート経営を続けるのは大変そう」「そもそも大家業をやる気がない」という場合は、土地をまったく別の形で使うという選択もあります。

たとえば、以下のような活用法が考えられます。

  • 駐車場にしてコインパーキング経営をする
  • 太陽光発電パネルを設置して、電気を売って収入を得る(売電収入)

ただし、エリアによって向いている使い方・向いていない使い方があるため、「どうしたらよいかわからない」と感じたら、土地活用に詳しい専門業者に相談してみるのが安心です。

何社かから話を聞いて、条件・費用・リスクなどを比較したうえで判断するのが理想です。

相続したアパート経営の継続を判断するときのポイント

アパートを相続しても、「このまま経営を続けたほうがいいのか、やめたほうがいいのか」と悩むことは多いものです。

アパート経営を続けるかやめるかを判断するためのポイントは、次の3つです。

  • 毎月の収支の状況
  • アパートの稼働率とローン残高
  • 大規模修繕の時期と金額

どれも経営に大きく関わる内容です。

以下から、一つずつ詳しく確認していきましょう。

毎月の収支の状況

アパートを経営し続けるためには、以下の図式である状態が大前提です。

入ってくるお金(家賃収入)よりも、出ていくお金(支出)のほうが少ない状態=収支がプラスであること

具体的には、毎月の家賃収入から次のような費用を引いて、手元にお金が残るかどうかを確認します。

  • 管理会社への手数料(建物管理や入居対応など)
  • ローンの返済額(借金をして建てた場合)
  • 固定資産税(建物や土地にかかる税金)

こうした支出を差し引いたうえで赤字になってしまうようなら、経営を続けるのはリスクが大きい可能性があるため、売却や他の土地活用も視野に入れるべきです。

アパートの稼働率とローン残高

仮に今の時点で毎月の収支がプラスだったとしても、油断はできません。

次の2つの数字を見て、将来のリスクが大きくないかを確認することが重要です。

  • 稼働率:部屋の何%が実際に入居されているか
  • ローン残高:まだ返し終わっていない借金の残り金額

入居者が減ったり、古くなって家賃を下げざるを得なくなったりすると、ローンの返済が難しくなる可能性があります。

また、入居者が出ていくたびに、室内のリフォーム費用が発生するため、経営がうまくいっているように見えても、将来的に赤字になるケースもあります。

「予想外の出費に対応できるだけの余裕があるか」という視点も忘れずに持っておきましょう。

大規模修繕の時期と金額

アパート経営には、「建物の維持管理」が欠かせません。

小さな修繕で済む場合もあれば、何百万円単位の大規模な修繕が必要になることもあります。

たとえば、以下のような修繕は10~15年に一度は発生する可能性が高く、金額も大きくなります。

  • 外壁の塗り直し
  • 屋根やバルコニーの防水加工
  • 水回り(トイレ・キッチン・風呂など)の交換
  • 給湯器やガス設備の交換

たとえ今の収支がプラスでも、このような大きな出費が一度でも発生すれば、赤字に転落することも十分あり得ます。

そのため、 「いつ」「どれくらいの金額で」修繕が必要になるかを、事前にある程度つかんでおく必要があるのです。

修繕のタイミングや内容については、管理会社や建築士などの専門家に相談することで、見通しが立てやすくなります。

親からアパート経営を相続するメリット

親からアパートを引き継ぐことで、以下のメリットがあります。

  • 収益の柱を確保できる
  • 相続税対策になる
  • インフレ対策になる

ここでは、親からのアパート相続によって得られる主なメリットを3つ紹介します。

収益の柱を確保できる

アパートを持っていれば、入居者からの家賃収入という「定期収入」を毎月得ることができます。

たとえば、部屋数や入居状況によりますが、月に10万円前後の収入が見込めるケースも珍しくありません。

しかも、管理業務を不動産会社に任せてしまえば、自分で何かする必要はほとんどありません。

ほぼ「何もしなくても、決まったお金が入ってくる」状態になります。

このような安定した収入があると、生活や老後の不安が減るだけでなく、大きな出費や転職・退職など、将来の判断にもゆとりが生まれます。

相続税対策になる

相続のとき、「現金で1億円持っていた場合」と「1億円の評価のアパートを持っていた場合」では、アパートのほうが相続税が少なく済むのが一般的です。

なぜなら、相続税の計算では、以下のようなルールがあるからです。

  • 土地の評価額は、実際の市場価格より低く見積もられる(=相続税評価額が下がる)
  • その土地に賃貸アパートが建っていると、さらに評価額が下がる

つまり、「現金よりも賃貸アパートのほうが、相続税の負担が軽くなる」という仕組みになっているのです。

インフレ対策になる

インフレ(物価の上昇)が進むと、現金の価値は目減りしてしまいます。

たとえば、今100万円あっても、10年後に同じ100万円で買える物が減っている、というような状態です。

その一方で、アパートのような不動産は、インフレ時にも価値が下がりにくく、家賃も物価と一緒に上がる可能性があるため、価値を守りやすい資産とされています。

もちろん、不動産の価格はエリアや建物の状態により変動しますが、「現金だけを持っているよりは価値が残りやすい」と考える専門家は多いです。

アパートを持っていることで、「資産を分散して持つことができる=リスクを減らす」という意味でもメリットがあります。

親からアパート経営を相続するデメリット

親からアパート経営を相続するデメリットは、次の3つです。

  • 相続税を支払う必要がある
  • 維持管理費の負担
  • 空室リスクなどアパート経営のリスクを負う

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

相続税を支払う必要がある

アパートを相続したとき、相続税がかかる可能性があります。

税金がかかるかどうかは、「相続財産の合計が基礎控除の範囲を超えるかどうか」で決まります。

基礎控除とは、「これ以下の財産には相続税をかけませんよ」という基準のことで、その金額は次の式で求めます。

3,000万円+600万円×法定相続人の人数

この金額を超えた場合、その超えた部分にだけ相続税がかかります。

また、アパートにはローンが残っていることも多く、さらに固定資産税や建物の管理費用も必要です。

そうした支払いを含めて、「相続税を払う余裕がない」と判断されれば、アパートを売却するという選択肢も検討せざるを得なくなります。

維持管理費の負担

アパートは所有しているだけで一定の費用がかかる資産です。

特に古いアパートでは、建物の劣化や設備の老朽化により、入居者が集まりにくくなることもあります。

そのため、以下のような定期的な維持・管理の出費が避けられません。

  • 給湯器やトイレなどの設備の交換
  • 外壁や屋根の塗装・修理
  • 和室をフローリングに変更するなどの間取り改善

こうした費用を定期的に投じないと、空室が増えて収入が減り、赤字になる可能性もあります。

アパートは「放置しているだけでお金が入る」と誤解されがちですが、現実には安定収入を得るには定期的な投資(修繕・改装)が必要です。

空室リスクなどアパート経営のリスクを負う

アパート経営には、家賃収入という安定的なメリットがある一方で、いくつものリスクも背負うことになります。

たとえば、以下のようなものです。

  • 空室が出て収入が減る(空室リスク)
  • 台風や地震などの自然災害
  • 火災や水漏れなど建物トラブル
  • 入居者とのトラブル(家賃滞納・騒音など)
  • 借入金の利息が上がる(金融リスク)

こうしたリスクを全く想定せずにアパートを引き継ぐと、「思っていたより大変だった」と感じることになります。

アパート経営のリスクとリターンはセットです。

定期収入のある事業であると同時に、事業としての責任も負うことを理解しておきましょう。

親からアパートを相続する時の手続きの流れ

アパートを親から相続する場合には、法律や税金に関わるいくつかの重要な手続きがあります。

手続きの流れは、次の7ステップに分けられます。

  • ステップ1.ローンの残高を確認する
  • ステップ2.分割協議にてアパートの分割方法を決定する
  • ステップ3.準確定申告をする
  • ステップ4.相続税の申告と納付をする
  • ステップ5.相続登記をする
  • ステップ6.入居者への連絡をする
  • ステップ7.アパート経営継続の判断をする

それぞれのステップについて、順番に詳しく見ていきましょう。

ステップ1.ローンの残高を確認する

まず最初に確認すべきは、アパートにローンが残っているかどうかです。

ローンの確認方法として、以下を確かめることが挙げられます。

  • 登記簿謄本
  • 固定資産税の納税通知書

こうした資料をもとに、銀行へ問い合わせましょう。

ローンが残っていた場合は、団体信用生命保険に加入していたかが大切なポイントです。

団体信用生命保険とは、被相続人(親)が亡くなったときにローン残高を保険金で返済してくれる保険です。

ステップ2.分割協議にてアパートの分割方法を決定する

アパートに限らず、不動産の相続では、以下のように「誰がどう相続するか」を決めなければいけません。

  • 遺言書がある場合はその内容に従う
  • 遺言書がない場合は、相続人全員で話し合い(=遺産分割協議)を行い、合意内容を書面にまとめる

アパートのような不動産は、お金のように細かく分けることができないため、分割方法の選択が重要です。

基本的な分割方法は、以下の表の通りです。

分割方法
内容
現物分割
1人がアパートを相続し、他の人は他の財産を相続する
代償分割
1人がアパートを相続し、他の人にはお金で精算する
共有分割
複数人で共同名義として相続する
換価分割
売却して現金化し、それを分ける

ステップ3.準確定申告をする

準確定申告とは、亡くなった方の生前の収入についての税金(所得税)を、家族が代わりに申告して納めることです。

アパート経営をしていた人が亡くなった場合、その家賃収入は準確定申告の対象です。

期限は、相続が発生したことを知ってから4か月以内です。

ステップ4.相続税の申告と納付をする

相続財産が基礎控除を超える場合、相続税を申告して、納める必要があります。

基礎控除の計算式は、次の通り。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数

相続税の申告と納付の期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。

申告書は、被相続人が住んでいた地域を管轄する税務署に提出します。

ステップ5.相続登記をする

相続登記とは、相続した不動産の名義を新しい所有者に変更する手続きです。

これまでは任意でしたが、2024年4月から法律改正により義務化されました。

期限は、不動産を相続した事実を知った日から3年以内と定められています。

正当な理由がないまま登記をしなければ、10万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります。

ステップ6.入居者への連絡をする

アパートの名義変更(相続登記)が済んだら、入居者に対して「大家(オーナー)が変わった」ことを伝える必要があります。

特に、家賃の振込先が亡くなった親の口座だった場合、その口座は凍結されて使えなくなってしまうため、新しい振込先を伝えるなどの連絡が必要です。

オーナー変更の通知は口頭ではなく、書面で通知するのが基本です。

ステップ7.アパート経営継続の判断をする

手続きを終えたら、いよいよアパートをどうするかを判断します。

以下のような視点で検討しましょう。

  • 建物の状態(外壁、内装、水回りなど)
  • 修繕が必要かどうか
  • 家賃収入と支出のバランス(収支)
  • 将来的にその場所に価値があるか(立地)

最終的には、「今後も家主としてアパートを経営するのか、それとも売却するのか」を判断することになります。

アパートを相続する際の注意点

アパートを相続するときに、あとあとトラブルになりやすいポイントが次のようにあります。

  • 共有名義は避ける
  • 相続登記は早めに済ませておく
  • 手続きが難しい場合は司法書士へ依頼する

詳しく見ていきましょう。

共有名義は避ける

兄弟や家族間で「公平に分けよう」と考えた結果、アパートを共有名義(一つのアパートを複数人の名義で共同所有すること)にしてしまうケースがあります。

一見、平等で良いように思えますが、実際には以下のような問題が起こりやすいです。

  • 売却や建て替え、解体などの手続きは、名義人全員の同意が必要になる
  • 1人でも反対する人がいれば、話が止まってしまう
  • 共有者の1人が亡くなると、さらにその相続人が加わり、関係者がどんどん増える

このように、後から名義人が増えてしまうと、ますます話が進みにくくなります。

そのため、最初から共有名義にしないことが大切です。

相続登記は早めに済ませておく

アパートを相続した場合、そのまま何も手続きせずに放置してしまう方がいます。

しかし、相続登記と呼ばれる手続きが済んでいなければ、法的にはそのアパートの所有者が変わったことが認められません。

相続登記をしていないと、以下のような面倒ごとが起きてしまいます。

  • アパートを売却できない
  • 銀行との手続きやローン契約が進められない
  • 修繕や管理に関して法的トラブルが発生するおそれがある

アパートを相続した場合は、できるだけ早く登記名義の変更(相続登記)を行うことが必須です。

手続きが難しい場合は司法書士へ依頼する

もし相続の状況が複雑な場合は、司法書士という法律専門職に相談するのが得策です。

以下のようなケースでは、専門家のサポートが現実的です。

  • 相続人の人数が多い
  • 亡くなった人の子や孫が相続する「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」がある
  • 兄弟姉妹間で相続することになった

自分で手続きをしようとして、書類の不備や記入ミスで最初からやり直しになることもあります。

また、相続登記や遺産分割協議書の作成には時間もかかるもの。

そのため、時間や精神的な負担を避けたい場合には、初めから司法書士へ依頼することで、スムーズかつ確実に手続きを進められ、メリットといえるでしょう。

初回相談無料の事務所も多く、費用対効果としても悪くない選択肢です。

相続したアパートの相談は静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへ

今回は、アパートを相続する際の注意点と、相続後にどう対応すべきかについて解説しました。

アパート経営は、うまくいけば毎月安定した家賃収入を得られる心強い副収入になります。

家賃がローン返済や管理費を上回っていれば、生活にゆとりが生まれるのも事実です。

ただし、アパート経営には、入居者の急な退去や修繕費の発生など、予想外の対応も必要です。

そのため、「少し余裕のある経営体制」が求められがち。

もし、「このまま経営していいのか迷っている」「手放すべきか悩んでいる」といったお悩みがある場合は、静鉄不動産と専門士業の相続サポートセンターへご相談ください。

当センターでは、司法書士・税理士・不動産の専門家などが連携し、数多くのアパート相続案件をサポートしてきた実績とノウハウがあります。

それぞれのケースに合ったオーダーメイドの解決策を提案してもらえるため、自分だけでは判断しづらい問題にも、専門的かつ具体的なアドバイスが受けられます。

メールや電話での相談受付もあり、初回相談は無料です。

少しでも不安や疑問があるなら、早めの相談が安心につながります。

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